物流業界のDX事例を紹介!物流業界が抱える課題と物流DXで実現可能なこととは
2023年04月03日(月)掲載
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物流DXを推進していきたいと考え、物流業界のDX事例を探している方は多いのではないしょうか。
物流業界でDX化が推進されている背景には、物流の需要が高まる一方で、労働者の高齢化や労働力不足が深刻化している問題があります。物流関係の企業だけでなく、政府もその需要過多な状況を危惧しており、物流DXを推進しています。
本記事では、物流DXの概要や課題、DX化により実現可能なこと、事例について解説します。最後までお読みいただくことで、物流業界の問題・背景から、物流DXでどのような改革が進んでいるのか、具体的な事例をもとに理解していただくことができるでしょう。
物流DXとは?
国土交通省では、物流DXを以下のように定義しています。
機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること
例として、これまで不規則に積み上げられた段ボールを運ぶ作業は、技術面の問題から機械でおこなえず、人力で対応していました。しかし、技術の進歩により、規則的に積み上げられていない貨物も機械で運べるようになりました。
このように、物流業界ではデジタル技術を活用し、作業の効率化を図る企業が増えています。昨今、物流業界は多様化するインターネットショッピングや配送需要の高まりでニーズが加速しており、その流れは今後も高まると考えられています。
その一方で、物流業界は労働力不足や従業員の高齢化など多くの問題を抱えています。
これらの理由から、物流業界はDXによる改革を早急に必要としています。そして、わずかながらも物流DXは進んでおり、いくつかの事例が生み出されてきました。日本は物流DXの推進が遅れており、そのことが問題視されています。日本企業が物流DXに取り組めば、海外企業にも対抗できるほどの競争力強化につながるとも考えられています。
物流業界の課題
現在の物流業界の課題として、主に以下の3つが挙げられます。
- 労働力不足
- 小口配送の増加による業務効率の悪化
- 働き方改革関連法による時間外労働の制限
労働力不足
物流業界は、労働力不足および人材の高齢化の問題を抱えています。
国土交通省の調査によると、トラックドライバー不足を感じる企業は増加傾向にあり、2021年は54%の企業が「不足」または「やや不足」と回答したことが明らかになりました。
※出典:我が国の物流を取り巻く現状と取組状況(経済産業省・国土交通省・農林水産省)
背景として、オンラインショッピングの市場の拡大による、配送需要の高まりがあります。この流れは今後も続き、人手不足はさらに進むと予測されています。また、物流業界への就労希望者が伸び悩んでいる点も、労働力不足の原因です。
物流業界で人手不足が深刻化している背景として、国土交通省は、低賃金や長時間労働という厳しい労働環境を指摘しています。事実、運輸・郵便業の所定外労働時間の長さは、日本の産業のなかでも高い状況があります。この業界イメージも、労働力不足の要因でしょう。
さらに高齢化問題も深刻です。国土交通省の調査の発表によると、トラック業界で働く人のうち、約45.2%が40~54歳、29歳以下が全体の約10%となっており、高齢化が進んでいることが明らかになっています。
このままでは配送システムが回らなくなると懸念があり、物流のDX化は急務とされているのです。
※参考:我が国の物流を取り巻く現状と取組状況(経済産業省・国土交通省・農林水産省国土交通省)
小口配送の増加による業務効率の悪化
コロナ禍で発生した巣ごもり需要の影響もあり、ECサイトの利用者は増加傾向にあります。EC需要の高まりによって、物流業界は配送量が増加する恩恵を受けました。一方で、個人宅への小口配送が増加し、新たな課題を生んでいます。
小口配送とは、1つの配送先に対してわずかな貨物を送る配送方式を指します。企業や店舗への大口配送と比較すると、小口配送は配達する品数が多く、物流の複雑化や工数の増加など、業務効率に影響を及ぼします。
小口配送の場合、時間や曜日の指定だけでなく、不在などによる再配達の発生など、配送ルートの複雑化につながるケースが少なくありません。そのため、小口配送の増加は、労働環境の過酷化と人手不足に拍車をかけると言われています。
働き方改革関連法による時間外労働の制限
働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降は自動車運転業務の年間時間外労働時間に上限が設けられることになりました。これは「物流の2024年問題」と呼ばれています。
「自動車運転の業務」において、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限は年960時間となります。1カ月月あたりの労働日数を20日と仮定した場合、1日あたりの時間外労働時間を4時間と計算すれば、年間時間外労働時間は960時間になります。
2024年の規制によって、ドライバーの働ける時間が制限され、今までは1人で運送できた量の貨物が運べなくなるという問題が発生するのです。その結果、物流業界全体の売り上げは減少し、労働者の収入も減少すると見られ、課題となっています。時間外労働が常態化した現状から転換を図ると、企業も従業員も大きな影響を受けることが避けられないでしょう。
以上のように物流業界ではさまざまな課題があり、これらを解決する手段としてDX化の推進は注目を集めています。
物流DXによって実現可能なこと
現在、物流業界は多くの課題を抱えています。しかし、物流DXによって業務効率化や労働力削減が可能になり、これらの課題は改善されると考えられています。
物流DXによって実現可能なことは、以下の5つです。
- 物流の機械化
- AIによる配送ルートの最適化
- 再配達の削減・効率化
- 倉庫システムの効率化
- 労働環境の改善
物流の機械化
物流DXにより物流の機械化が進み、ドローンでの商品配送や、倉庫内の荷物の移動を機械でおこなえるようになります。これまでは人間がおこなっていた作業をDX推進により機械に任せることで、業務の効率化・労働改善が実現できます。結果、少ない労働力でも多くの業務を回せるようになるでしょう。
機械化の具体的な事例としては、ピッキングロボットの導入があります。ピッキング作業を効率化できるロボットで、リアルタイムで在庫状況の把握などが可能になります。
AIによる配送ルートの最適化
物流における配送ルートは、AIを活用して最適化できます。配送ルートは、配送先が1カ所であれば、カーナビゲーションで十分対応できますが、配送先が複数ある場合は、細かなルート作成が必要です。
そのため、これまではドライバーや専門人材が経験を頼りに配送ルートを決めなければなりませんでした。これは手間がかかるだけでなく、属人的な業務のため、配送ルートを決められるベテラン社員がいなくなると、支障が出るような状態でした。
しかし、AIを用いて配送ルートを最適化することで、特定の社員の経験や勘に頼らずに配送ルートを作成できるようになっています。さらに、AIの学習によって既存のルート以上に効率的に配送ルートが作成されます。
こうして、配送ルート作成の手間が省け、経験の浅いドライバーでもベテランドライバーと同じように効率的な配送ができるようになりました。
再配達の削減・効率化
AIを用いれば、再配達の削減ができ、業務の効率化を図れます。現在、宅配・配送業界の抱える課題となっているのが「再配達問題」です。届け先に配達しても受け取り主が不在で、後日に改めて配達するため、配送効率が悪化し、人手不足を深刻化させる問題です。
しかし、AIでデータを分析して各顧客の活動時間を算出し、その顧客の在宅率が高い時間帯の予測を立てることも将来的には可能でしょう。届け先の不在時間を避けて配達できれば、繰り返し荷物を届けにいく必要がなくなります。
また、配達時間や配送に関するやり取りをAIに学習させる方法もあります。ECサイトの情報と連携させ、支払い代金や配達予定日・時間の設定などを自動に行うことで、業務の効率化が図れます。顧客のスマートフォンなどのデバイスに配達日時を直接通知する方法もあります。この技術を活用すれば無駄な配送が減らせるため、物流業者と顧客の抱える不満も軽減されます。
倉庫システムの効率化
物流DXで倉庫を管理しているシステムにAIを導入すれば、倉庫業務の効率化が実現できます。物流の中で倉庫業務は要です。倉庫業務の種類は、大きく分けて2つあります。
- 荷受け:入荷した荷物の荷役・検品・移動など
- 出荷:ピッキング・検品・梱包・荷役など
上記の2つの倉庫業務には、事務的な作業が付随します。
「荷受け」のAI活用事例として、倉庫の作業状況をリアルタイムでモニタリングし、最適な配置の提案をして業務効率化を促すシステムがあります。
「出荷」のAI活用事例としては、ピッキング業務の時間短縮および効率化があります。顧客からオーダーを受け、商品が保管されている場所まで行き、集品し、出荷指示するピッキングの時間短縮が倉庫業務では求められていました。
AIにピッキングの指示を出させることで、必要な貨物の確認や、積み込みの指示などを人間が出す必要はなくなります。複雑な倉庫業務にAIを活用すると業務効率化ができ、少ない労働力で倉庫内の仕事が回せるようになっていきます。
労働環境の改善
物流DXでデジタルツールを活用することで、労働環境の改善が期待できます。物流業界における作業員やドライバーの労働時間管理を、システム導入によって見える化することで、労働者一人ひとりの負担状況などは可視化され、労働環境を改善することにつながります。
また、勤務状況の把握は、生産性の向上に欠かせません。運送ドライバーに関しては、2024年施行予定の働き方改革関連法により、時間外労働時間の規制が入ることから、今まで以上に効率よく配送することが求められています。
物流DXが労働環境改善につながった事例としては、物流量の変動や最適な人材の配置をAIが予測し、最適なシフトを作成可能になったことです。シフトの作成担当者や現場監督者の負担が軽減されるほか、各作業員の生産性向上も実現できます。人的リソースに余裕が生まれることで、人件費の削減も可能になります。
このように、労働時間や業務の無駄を発見し、適切な対処をとることで、労働環境の改善につながります。結果、長時間労働の是正が可能となります。
【国内企業】物流業界のDX事例
物流DXによって、物流業界の業務は効率化が可能です。他社はこれまでどのような改革をおこなったのでしょうか。ここでは、国内企業の物流業界のDX事例を紹介します。
バース予約・受付システムを導入し物流の集中を防いだDX事例/A社
A社で導入された技術は、バース予約・受付システムです。バースとは、倉庫内の貨物の積み降ろしに使用するスペースのことです。A社では、物流が集中した際、荷下ろしや積み込みで混雑が発生することが問題となっていました。混雑時は作業員の仕事が進まずに待機時間が発生し、近隣への迷惑にもなっていました。
そこで、A社はバース予約の専用システムを導入しました。受付状況やバース状況を可視化することで、情報が社内に共有され、混雑の発生を防ぐことに成功しています。物流の集中を防いで渋滞が緩和され、作業の効率化が実現した事例です。
日用品卸売業者の事例/B社
日用品卸売業者B社で導入されたのは、荷下ろしロボットです。この業者では、毎日1万個近くの段ボールをコンベヤに投入する作業があり、段ボールの重さや高さが従業員の負担になっていました。
そこで、荷下ろしロボットを導入し、不規則に積まれた段ボールもロボットが自動で運ぶようにしました。従業員が段ボールをコンベヤに運ぶ必要がなくなったため、怪我などが減り労働環境が改善しました。今後は、自動化を前提とした物流センターの開設も検討しているそうです。従業員の労働環境が改善され、作業が効率化した好事例です。
物流業のDX事例/C社
大手総合物流企業C社で導入された技術は、自動フォークリフトです。C社の物流センターでは、従業員の高齢化、従業員不足が問題となっていました。貨物の積み重ねに技術を要することや、ピッキング作業が複雑であったことも、業務効率化の妨げでした。
そこで、同センターでは、無人搬送フォークリフトを導入することで作業効率化を図りました。その結果、必要な作業員の人数は半分以下に減り、人員の削減に成功して生産性を高められた好事例になっています。
【海外企業】物流業界のDX事例
続いて、海外企業のDX事例を紹介します。海外では、日本より先進的なAIを使った物流DXが盛んにおこなわれています。ぜひ、参考にしてみてください。
冷暖房機卸売業者の事例/D社
米国の暖房器具販売業者D社が導入した技術は、クラウド型在庫管理システムです。D社は全米で多くの卸販売店を展開しており、配送センター間の在庫のデータ管理が困難でした。
その解決策として、同社はクラウド型在庫管理システムを導入することで、在庫管理はもちろん、注文・調達、機器・従業員管理の可視化が実現しました。その結果、D社の生産性は大幅に向上し、在庫精度は99.9%にまで改善した、物流DXの好事例です。
AIを活用し配送ルートを最適化した事例/E社
米国を拠点とする貨物運送会社E社が導入した技術は、ドライバーのルート最適化のためのAIです。配送ドライバーが配送ルートを定めていた頃は、最適なルートで配送することが困難でした。
そこでE社は、ルート最適化が可能なAIを導入しました。AIを用いてドライバーのルートを最適化することに成功したのです。配送業務を効率化でき、毎年数億ドルのコスト削減が達成できた好事例です。
まとめ
本コラムでは、物流DXの概要や課題、物流DXによって実現可能なことについて、事例を含めて解説してきました。物流業界の労働力不足は深刻化しています。そのような環境下で、さまざまな企業が物流DXに取り組み、業務効率化、労働力の削減に成功しています。
インターネット上の取引が拡大を続けていることからも、物流の需要は高まっていくと予想されています。多くの企業が物流DXに取り組むことで、物流がスムーズになり、需要の拡大にも対応できるでしょう。
ぜひ、本コラムで紹介した内容や事例を参考に、物流DXを推進してみてはいかがでしょうか?