サービス導入事例

株式会社IHI物流産業システム

売上:
100億円~1000億円未満
業種:
機械・電気製品

物流

数百億円規模の市場可能性を秘めたシェアリング物流施設プロジェクト。「モノ売りからコト売りへの転換」に伴走したプロ人材の存在感

ロジスティックBU
イノベーション部
  • 取締役
    関 雅美 氏
  • 次長
    藤村 英和 氏

  • 坂倉 秀紀 氏
  • BEFORE導入前の経営課題

    機械設備や情報システムの提供を強みにしてきたが、新たな課題解決型の事業として、BtoBシェアリング物流施設の構想が浮上。当時日本初のユニークな企画だったが、社内では施設自体の運用経験やノウハウを有しておらず、プロジェクトのスタートを切るには大きな不安があった。

  • AFTER導入による成果

    物流コンサル会社を経営するプロ人材との協働により構想が具体化し、プロジェクトが本格始動。自社で何をやるべきかの取捨選択からプライシングまで、初参入の領域ながら、当初の予定通り2025年の施設竣工に向けて、順調にプロジェクトが進行している。新たに創出される市場規模は数百億円規模と予想され、今回得た知見を従来のビジネスにも応用できる手応えを得た。

物流ビジネス立ち上げにおける数多の知見、経験不足。それらを解消しうるプロ人材との出会い

総合物流機器メーカーとして50年以上、自動倉庫をはじめとする自動化設備を展開してきた株式会社IHI物流産業システム。特に「マテハン(マテリアルハンドリングの略)」と呼ばれる、生産拠点や物流拠点内の原材料、仕掛品、完成品の移動や搬送に利用される機器を主軸に、物流業界の効率アップに貢献してきた物流機器のプロフェッショナル企業だ。
近年は、従来のビジネスモデル以外にも、同社イノベーション部を中心に、コロナ以降高まり続けるEC需要への対応など、業界全体が抱える課題解決にも取り組み始めている。

2021年、同社の親会社である株式会社IHIと野村不動産株式会社により、神奈川県横浜市の杉田エリアで、大規模物流施設の協業プロジェクトが浮上する。2024年施行の「車両運転業務への時間外労働上限規制」を踏まえ、物流の労働力不足の解消とさらなる物流効率化を実現するための取り組みだ。同社営業本部長の関氏は次のように語る。

「当社としては、まさに課題解決型といえる同プロジェクトにぜひ参画したいと考えました。施設に当社の機器を設置するのはもちろん、物流情報サービス起点での運用最適化や効率化も含め、全般的なソリューション提案を担うことも想定しました。そこで、イノベーション部の力を借りて、プロジェクトを推進することにしたのです」

一方、イノベーション部グループ長でシステム設計を担当した藤村氏は、プロジェクトの話が立ち上がった当時を次のように振り返る。

「複数テナントが入る『シェアリング』という新たなビジネスモデルへ取り組むことに、大きな意義を感じました。ただ、私たちは機械設備や情報システムの提供が強みである一方、物流施設の立ち上げや運用の経験はありません。テナントに対する付加価値構築やサービスづくり、運営に関するノウハウも同様です。
ビジネス全体としてどうのろしを掲げるかに始まり、どのように利益を出していくかという具体的な部分まで、幅広い知見を外部に求める必要性を感じていました」

プロジェクトチーム一丸となって目指す「モノ売りからコト売りへの転換」。そのために欠かせないピースを埋められる存在を求め、同社は他セクションで取引があり、その実績から信頼を寄せていた「HiPro Biz」へ相談した。

「早速ご紹介いただいたプロ人材候補4名との面談を経て、物流コンサル企業を経営するT氏に満場一致でお願いすることになりました。求めていた物流ビジネスの立ち上げ経験や、運営スキルがあることに加え、ユーザーニーズに応えるために必要なサービスが何であるのか? さらにそのサービスにどれくらいのプライシングをつけるべきなのか?といった判断における指標を明確に提示してくださる方であったことも決め手になりました」と藤村氏。

今回、サービス設計やT氏との窓口を担当したイノベーション部の坂倉氏もこう続ける。

「どの候補の方々もそうそうたる実績をお持ちでしたが、当社に対する興味と熱意を一番感じたのがT氏でした。上長と自分をつなぐ、担当課長のように頼れる存在になってくださると感じました」

視座の高い提案型支援により、プロジェクト第一段階でやりたかったことを完遂

坂倉氏の言葉の通り、T氏はコアメンバーとして同プロジェクトの総合的支援を担うことになる。
たとえば、物流施設を運営するには、倉庫業法や派遣法、下請法など、どのような法令の確認や遵守が必要になるかなど、事業を始める前提のところから、当初チームメンバーは積極的にT氏へ相談した。

またチームメンバーだけでは行き詰まりを感じていたプライシングの設計についても、T氏の助言によって大きな手応えを得た。
T氏は具体的な相場感を共有することはもちろん、物流業界の根本的な仕組みに始まり、今回のシェアリング物流施設で想定されるユーザー層や、それらの企業がどのようなビジネスを行い、どのような採算で、どのように料金を支払うか、といった構造面からも丁寧にアドバイス。そのおかげで、自分たちでも料金設定の筋道を立てて考えられるようになった。

このようにT氏から物流業界の知見を惜しみなく共有されることで、協業プロジェクト関係各社が週次会議に出席する際も、「自信をもって議論できるようになった」とうれしそうに語る関氏。続けてこう振り返る。

「会議には物流事業者から転職された方も出席しますが、その方々とも視座を合わせて意見を交わすことができるようになりました。
また、物流コンサルを専門にされるT氏のアドバイスは、常に施設側と物流事業者などテナント側のニーズ双方に留意されており、私たちに足りない部分を埋めるだけでなく、プロジェクト全体をけん引するような高い視座でのご意見を多数いただけました」

物流業界でさまざまな規模感や業態のクライアントと仕事をしてきたT氏。俯瞰的な視点によるアドバイスなどを通じ、物流施設の立ち上げだけでなく“物流ビジネス全体のプロ”としての存在感が高まっていた。それを一番実感したのは、直接的なやり取りが多かった坂倉氏だった。

「社内では週次で半年間、T氏とのミーティングを重ねましたが、プロジェクトが成熟するうちに、どうしても次のアジェンダを決めにくくなる場面がありました。
そんな時、T氏が次に話し合うべき課題を積極的に提案してくださいました。またサービス設計においても、私たちがやるべきこと、逆に他社に協力いただいた方が労力のかからないこと、それぞれを明示してくださるなど、熟練したご経験に基づく助言には大変助けられました」

たとえば料金設定ひとつとってみても、T氏の積極的な提案によって、当初の見立てより良い条件で決められるようになるなど、チーム内でも物流業界への知見が想定以上に蓄積されていった。

「T氏に参画していただき、第1フェーズでやりたかった、サービスや料金設定などの決定はすべてやり切れた実感があります。
BtoBシェアリング物流施設に潜在的なビジネスチャンスの可能性を感じた一方、正直に言うと私たちにとっては初参入領域で大きな不安もありました。そんな中、T氏というプロの支援のもとでビジネスが成立する確信を持てるようになりました」と関氏も笑顔を見せる。

数百億円の市場可能性を秘めた「大きな一歩」。今回の知見をもとに他事業での水平展開も

2025年サービスローンチに向けてプロジェクトは今後、物流施設のリーシング活動、そしてテナント運営についての詳細を決定する実装段階に入っていく。最終調整においては、またT氏の力を借りることもあり得る、と関氏は語る。

「BtoBのシェアリング物流施設というアイデアは、2021年の構想段階においては日本初のものでした。物流業界からの注目度も非常に高く、確かな顧客ニーズを感じられた一方、市場に勝機を感じた競合他社も出現してきています。彼らのスピード感に負けないためにも、T氏のようなプロフェッショナルに、プロジェクトにまた伴走してもらう必要があるかもしれないと気を引き締めています」

いよいよ実装段階に入り、緊張感を増してきた本プロジェクト。今回T氏の支援を受けて構想が具体化したことによって社内で正式に稟議が通り、予算化したこともプロジェクトへの追い風となった。
プロジェクトが正式決定した理由の一つが、このプロジェクトが秘めるポテンシャルに対してのメンバーも含む社内周知だ。

「従来私たちのビジネスモデルは、物流システムを個々の企業様に数十億円規模で買い切っていただくというものでした。それが今回、“シェアリング”というモデルをとることで、今までお取引のなかった中小規模の事業者様との接点が増え、数百億円の市場規模を新たに創出できる可能性があります。
ただ、T氏からの考えはそこにとどまりませんでした。例えば、今回ターゲットとして想定していなかった大手企業においても、切り口によってはシェアリング物流施設へのニーズがある事例を具体的に示してくださり、大変驚かされました」と関氏。

藤村氏も「このような知見や実績のある方を、自分たちで採用するとなると非常に難易度が高かったと感じる」と振り返りながら、今回のT氏との協働で得たことを次のように語った。

「T氏からの一番の学びは、ユーザー視点に立ってサービスを考え抜くことでした。
かねてより、これからの製造業は、ものを作るだけでなく、ものをどのように売るかまで一貫して考えなければならないと感じていましたが、やはりそこが足りていなかったことをT氏の存在によって痛感しました。
その一方で、私たちはポテンシャルを秘めており、それに気づけたことがIHI物流産業システムにとって“大きな一歩”だと思います。このチャレンジは、従来の物流機器におけるものづくりや他事業にも必ずや良い影響があると確信しています」

「このプロジェクトは、PoC(概念実証)でもある」と同氏。同プロジェクトが軌道にのれば、新たにより大規模な施設、BtoBシェアリング物流施設をシリーズ化させていく、と関氏も意気込む。
メンバーとプロ人材に育まれた新規事業という新たなビジネスの種が、どのように芽吹き、物流業界にどのような花を咲かせるか、今後もその動向から目が離せない。

企業名
株式会社IHI物流産業システム
設立
1984年7月
従業員
非公開
売上
非公開
事業内容
(1)物流機器、FA機器ならびに産業機械に関する販売、設計、製作、調達、建設、据付工事、改造修理ならびに機器、部品の整備およびメンテナンスサービス
(2)物流プラント、FAプラントならびに産業機械のコンサルティング、エンジニアリング

担当プロ人材より

同社は物流自動機器での技術とご経験を元に、新規事業の立ち上げを計画されているとのことで、今回お手伝いさせていただきましたが、予想に反して、自由闊達な社風に驚かされました。先入観にとらわれず、自由な発想で、会社の役職に関係なく議論ができる社風です。
今回、私は、物流自動機器を使うユーザー様の観点からの知見をご提供させていただきました。技術面では「流石はプロ」と感じた半面、ユーザー様側の経済性などは、当方の知見が役立つ部分があったかと思います。私はユーザー様側の視点に立ち、実現場での保管効率や単価相場、それを加味したマーケティング戦略について、アドバイスをさせていただきました。さらに本事業の拡がり(領域拡大のアイデアや可能性)についても価値のある議論をさせていただけたと思っております。
個人的にも記憶に残るお仕事となりました。近々サービスがリリースされるとのことで、業界での反響や今後の展開がとても楽しみです。

登録プロ人材 T氏 一橋大学経済学部卒。ボストン・コンサルティング・グループにて、経営戦略コンサルタントを経験。物流専門のコンサルタントとしては20年以上のキャリアを持つ。小物からバルク品まで、プロジェクト経験は200件以上。公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士」の専門委員(論文審査・面接)を務める。

ページTOPへ戻る