新たな社会変革GX(グリーントランスフォーメーション)とは?事例をご紹介
2022年04月14日(木)掲載
現在EU諸国をはじめ世界各国で、脱炭素化社会の実現に向けた動きが加速しており、日本も例外ではありません。
2020年10月、日本政府が臨時国会において「脱炭素社会の実現を目指す」と宣言して以降、GX(グリーントランスフォーメーション)という言葉が市場で注目を集めるようになりました。
GXの推進を経営ビジョンに掲げる企業の事例も増えており、脱炭素化の実現に向け、GXは多くの企業にとって欠かせない経営アジェンダの一つになっています。
GXとはどのような意味を持ち、企業事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
本コラムでは、GXの基本的な知識や重要視される背景、企業の取り組み事例(業種別メーカー事例や電気通信事業の事例など)についてご紹介します。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは
GXとはグリーントランスフォーメーションの略称であり、温室効果ガスの排出につながる化石燃料などの使用を、再生可能エネルギーや脱炭素ガスに転換することで、経済社会の変革を目指す言葉です。
GXへの取り組みを通して、企業は環境保護と経済成長の両立を目指しているクリーンな会社として、ブランド力の向上が見込めます。
また、環境対策を新規事業に盛り込むことで、金融機関からの融資も得られやすくなり、資金調達力の向上や市場競争力の強化も期待できるのは大きな利点です。
GXの推進により、様々なメリットと将来の事業成長が見込めることから、現在GXは多くの企業にとって重要な経営テーマになっています。
GX推進の鍵となる温暖化の現状とは
GXが重要視される背景にあるのが、世界で深刻さを増している温暖化問題です。大規模な森林火災の発生など、温暖化がもたらす経済損失は無視できないレベルにまで拡大しています。
仮に温暖化への対策をせず、従来の経済活動を続けた場合、2100年には気温が4度前後上昇し、未曾有の干ばつや洪水の発生などに見舞われるリスクが増加するとの予測が立てられています。
このような予測を受け、2020年12月ブリュッセルで開催されたEU(欧州)理事会では、2030年の温室効果ガス削減目標について1990年比で55%に据えることが合意されました。
いまや経済成長と環境保護の両立は国際社会の共通課題であり、GXの実現を目指す動きはEU諸国に限らず、米国や韓国など、世界各国に広がっています。
日本も例外ではなく、日本政府は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを、2020年10月の臨時国会において宣言しました。
この宣言は、次世代の蓄電池技術の開発などをはじめ、日本企業がGXに取り組む契機となりました。
GXの取り組み事例
ここでは実際に、日本企業が取り組んだ8つのGXに関する事例をご紹介します。
自動車メーカーの事例
A社は、今後クリーンエネルギーやカーボンニュートラルを軸に据え、製品開発および新技術の導入に取り組むことを市場に対して発信しました。
あわせてA社は、日本政府が宣言した2050年までのカーボンニュートラルの実現と足並みを揃えるように、長期に渡って段階的に、電気自動車の販売比率を増加する方針を打ち出しました。
一般的に化石燃料で動く従来の自動車は、温室効果ガスの主な発生源の一つと見なされていることもあり、A社の発表はカーボンニュートラルの実現に寄与するGXの先端事例として、市場で好意的に受け入れられています。
協同組合の事例
B協同組合は、全国展開する店舗への省エネ機器の導入や、太陽光を採り入れた店舗設計などを通して、大幅な使用電力の再エネルギー化と電力削減化を中期目標に掲げています。
B協同組合は、企業が事業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す、国際的なイニシアティブの一つである「RE100(Renewable Energy 100%)」にも加盟するなど、日本の再エネ普及の向上に向け、多岐に渡る取り組みを推進している点が特徴です。
化粧品メーカーの事例
C社は明確なESG戦略を策定しています。
顕著な特徴として、約10年スパンという中長期のESG戦略を経営の核に据えることで、CO2排出量削減に寄与する、製品・サービス開発の推進に成功している点が挙げられます。
電通通信事業者の事例
D社は、日本政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」の実現に向けた取り組みを、積極的に推進していくことを経営ビジョンに掲げています。
取り組みの一例として、再生可能エネルギー利用率の拡大を通した温室効果ガスの削減などがあり、環境課題の解決と経済成長の両立を目指す特徴的な事例といえるでしょう。
建設メーカーの事例
E社は、脱ZEBの普及に注力しています。
ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称であり、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指します。
太陽光発電や地中熱利用を取り入れることで、省エネルギー化を図れるZEBの普及は、温室効果ガスの発生を抑制する技術として、市場での注目を集めています。
食品メーカーの事例
F社は、環境負荷の少ない包材・食材の調達や、食品廃棄物の削減に取り組んでいます。
また、企業活動において使用する水などの地球資源の削減や、商品生産時の電力の再生可能エネルギー比率向上も目指すなど、多岐に渡る環境戦略の遂行を目指している点は、競合ブランドとの差別化につながっています。
家具メーカーの事例
G社はエネルギーバリューチェーンの最適化に向け、自社工場において、太陽光や水力発電などによる再生可能エネルギーを積極的に採用しています。
再生可能エネルギー事業を展開する地域の電気事業者から電力供給を受けることで、業界に先駆け循環型のものづくりと環境負荷の低減の両立を目指しています。
住宅メーカーの事例
H社は電気自動車の電力を家庭用の電力源として利用する、先端技術の導入を進めています。
あわせて太陽光発電などによる「創エネ」と高効率機器などによる「省エネ」の効果を組み合わせた、一次消費エネルギーの少ないZEH住宅の普及にも取り組むなど、事業拡大への寄与が見込まれるGX推進に多くの経営資源を投入しています。
まとめ(自社のGX推進に向けて)
今回はトレンドのGXについて、概要から重要視される背景、企業の事例を順にご紹介しました。企業のGX推進は、時代の要請としての側面と併せ、様々なメリットや将来の事業成長が見込めることから、今後推進企業は増加していくことでしょう。
ただしGX推進は、日本政府が宣言した2050年までのカーボンニュートラルの実現に沿って策定されるケースが多く、数十年先を見越した上でビジョンを策定していく必要があります。
GX推進による経営への効果を最大化させるためには、GXに関する専門知識と推進経験を持ち合わせた人材の活用は欠かせません。中長期の経営ビジョンの策定において、GXに詳しい専門家の活用は大いに役立つでしょう。