【セミナーレポート】マーケティングのヒト・モノ・カネ、それらが無くても成果は出せる~営業のアシストからスタートさせる「戦略で勝つ日本型BtoBマーケティング」とは~
2024年10月16日(水)掲載
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近年、SNSの普及やフリーランスのマーケターが増えたことにより、世の中にマーケティングのテクニックやノウハウが溢れています。一方、それらの情報がフリーランスやマーケティング部門のマーケター個人にとっては有益であっても、企業としてはそれだけではなかなか成果を出すことができません。
そこで今回は、「マーケティングのヒト・モノ・カネ、それらが無くても成果は出せる~営業のアシストからスタートさせる『戦略で勝つ日本型BtoBマーケティング』とは~」と題したパネルディスカッションを開催。話し手は数多くの大手企業のマーケティング戦略を支援され、「HiPro Biz」でもプロ人材として活躍するデ・スーザ リッキー氏です。今回は、効果的かつ効率的に営業につなげる「仕組み」や「組織」など、企業におけるマーケティングの在り方など当日お話しいただいた内容をレポート仕立てにまとめてご紹介します。
■登壇者プロフィール
株式会社Marketer's Brain 代表取締役社長
デ・スーザ リッキー氏
営業および、マーケティング領域において「商い」を、しくみ化し「戦略だけで儲かるようになる」を合言葉に、クライアントの業績を急進させるプロ人材。クライアントは年商数億円規模の企業から東証プライム上場企業まで支援実績多数。2024年10月に『逆論のBtoBマーケティング 受注プロセス戦略 ~実話で証明する十か条の提言~: 最高の人時生産性を実現し、戦略だけで収益を最大化させる』を発刊予定。
“勝ちパターン”のための設計こそ、マーケティングの大前提
――まず、前提となる「マーケティング」という存在について、ご自身ではどのような捉え方をされていますか?
デ・スーザ リッキー氏(以下、デ・スーザ氏):昨今のBtoBマーケティングの関連セミナーで話されてきた内容は、プレイヤー向けの情報が非常に多い印象があります。例えば日用品に使われる「素材」を取扱うBtoB事業を展開している場合、その顧客はWeb経由で接触してくるケースは少ないのではないでしょうか。そうしたケースに対し、一般的によく言われるような「SEO対策をしましょう」とアドバイスを受けても、ピンとこない。こういうシチュエーションが頻発していると感じます。
つまり、“王道こそ勝ちパターンである”と言われることはよくあっても、その手法は一般論でしかなく、その企業にとって、それが必ずしも正解ではないと思います。 ただ一方で、この企業固有の状況やゴールに合わせた設計を行うことで“勝ちパターン”は簡単に作ることができると思っていて、それこそが今各企業が求めているマーケティングではないでしょうか。
――一概に、ポピュラーな手段を取り入れればいいというわけではないんですね。では個々の企業における“勝ちパターン”とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
デ・スーザ氏:実は、この“勝ちパターン”というものはすでにその企業の中に存在していて、でもそれを明確に見極めて、可視化ができていないだけというケースが多いと思います。 おそらく多くの企業においてそれらは勘や経験、引き出しといった言葉で営業担当者の中で整理されており、具体的に言語化がされていない。ゆえに、上手く社内で伝達もしていかないのではないでしょうか。 ただ、これらは言語化するための仕組みを上手に活用すれば、言語化も可視化も可能になります。言葉になるからこそ、勝ちパターンが見えるようになるわけですね。
そして、私がご支援する企業の皆さんによくお伝えしているのが「モノ売りでなくコト売りにしましょう」という提案です。例えば、「私たちの企業では、ゴムを代替する樹脂でAという素材を開発しています」とアピールするのではなく、「ゴムよりも“自由”になる素材があることを、ご存知ですか?」と問いかける方が、「え、それは何?」と圧倒的に興味を持っていただけます。 つい前者になりがちなのは、「会社の中にある事実」として日常的に認識しているため。それゆえ、こうした逆算の流れを作るための言葉の転換に苦手意識を持たれる方が多いと感じます。
「この商品は面白そうだから、担当者に話を聞いてみたい」と相手にイメージしてもらうための流れをつくることもマーケティングの一環です。この流れができてくれば、受注獲得の入口である商談にもつながりやすくなります。つまり、商談化や商談での成果を最大化することこそ、本来企業がすべきマーケティングであり、そのゴールに向かって設計をしていくことが大前提だと、私は考えています。
顧客心理の掘り下げや顧客タイプごとの接し方に工夫を
――先ほど勝ちパターンの可視化ができていないというお話も上がりましたが、ほかにも企業が抱えるマーケティング課題があれば伺えますでしょうか?
デ・スーザ氏:こちら側から一方的に情報を出し過ぎる、というケースはよくあると思います。商談前に資料などで必要以上の情報を発信し過ぎてしまうと、「一度お会いしてご説明させていただけませんか」とアプローチをしても「資料でだいぶ理解できたので大丈夫です。何かあればこちらから連絡します」と断られてしまう。 先にお伝えしたように、マーケティングとは商談での成果の最大化です。しかし、とにかく引き合いを増やそうと一方的な情報を大量に盛り込んだ資料を用意しても、このような顛末になりがちです。人間の欲求というのは「もっと詳しく、もっと具体的に知りたい」という“もっと”という感情が原動力。そこにつながるように配慮された設計や仕掛けこそ重要だと思います。
――社内でのあるある課題について伺いましたが、一方で顧客やマーケットなど社外での観点については、どのような課題感をお持ちですか?
デ・スーザ氏:1つは、自社の戦略が固まっていない状態で市場に出ることのリスクですね。商談現場で、「御社はそんなサービスもされていたんですね、知りませんでした」という言葉を投げかけられたことはありませんか?これこそまさに機会損失。こうした状況をなくすためにも、私はまず成約率が一番高い、既存顧客からアプローチを始めるようにお願いしています。自社サービスをよく理解してくれる対象に売ることで、そのサービスがなぜ売れているのかが見えてきますから。あとは同じような顧客を市場の中から探していけばよいのです。もしそれで成果が出なくとも露出した場所を間違えただけなので、次へと切り替えればいい。でも、この一連の流れを踏まえていないと、露出場所を間違えたのか、伝えている中身が間違っているのかさえも分からなくなってしまいます。
2つ目は、いきなり結果となる数字から分析しがちである、ということ。マーケティングとは本来、あらかじめ仮説と予見を設計、実績に対してどれだけ乖離しているかを検証し、そのズレの中から「このようなニーズもあるのか!」という気付きを得ることが肝心です。
例えば同じ商材であっても、顧客によって「Aさんのような人には話は刺さりやすいが、受注にはつながりにくい」、「Bさんのような人はほぼ案件化しないが、向こうから相談があった際は高確率で商談が進む」といった違いが生まれるはずです。異なるタイプの顧客からの受注の総和が売上であるわけで、これら一つひとつの違いへのフォローが欠かせません。違いを整理することで顧客タイプに応じて自社サービスの魅力を分解してみることもできるでしょう。そのためにもさまざまな顧客像を意識した設計が重要。この設計がその後の売れ行きを左右することになると思います。
「Suit you」の発想と新たな取組みのためのソリューション
――自社起点ではなく、しっかり顧客起点による言語化とトークを意識することが大事なんですね。これまでお話しいただいた課題を踏まえ、改めてリッキーさんが考えるBtoBマーケティングのポイントを伺えますか?
デ・スーザ氏:すべての企業に通じる万能の考え方は存在せず、それぞれの企業に「最適解」があると思います。私がよくお伝えしているのは「Suit you(あなたに似合うものを)」という考え方です。格好いい服と自分自身が似合う服は必ずしもイコールではありません。同じように、みんなが実践したがる格好いいマーケティングではなく、自社に似合う、最適なマーケティングをしましょう、とお伝えしたいですね。
競合ひしめく市場の中でその企業が長年存続できているという事実は、まぎれもなく“勝ちパターン”がある証。これを社内で言語化し可視化することが重要であるのは、既にお伝えした通りですが、これができていないと、例えば今まで色々依頼してきた代理店などの取引先に言われるがままになってしまう。一見正しそうなだけに、自社に最適なマーケティングの方向性を「本当なのか?」が見極めきれず、最終的にさまざまな提案を受けても何が正しいのか分からない状態に陥り、自ら判断ができなくなってしまいます。私はこれを「最後のジレンマ」と呼んでいます。 それを解消するためには「専門知識を身につける」ことを目指すのではなく、自社が長年存続している理由を整理・言語化し、可視化する。そうすることで「自らの軸を持ち、自らで判断する」ことが大事になると思います。
――ありがとうございます。ここまで、多角的な視点からBtoBマーケティングの捉え方や各課題感、ポイントなどを伺う中で、「自社でも新しい取組みを実践したいが知見が足りないな…」と思われている方々も多いかと思います。 そんな時、「外部の人材活用」という考え方も1つの選択肢になってくると思いますが、実際にプロ人材として企業の支援をされているリッキーさんから見た、外部の人材を活用するメリットを最後にお聞かせいただけますか?
デ・スーザ氏:まず採用に比べて、外部の人間だからこそ「忖度なしで意見を言ってもらえる」ことは挙げられると思います。客観的立場からフラットな意見を得ることは大きいのではないでしょうか。
加えて、採用に比べて、よりスピーディに、フットワークよく事を進められることもメリットかと思います。万一思ったような成果に至らなかった場合は、新たに異なる外部人材の選定もしやすいため、長期雇用を前提とする正社員の採用よりも挑戦しやすいアプローチといえるのではないでしょうか。例えば特定の新規部署を立ち上げたばかりで、成果は出さないといけないけれど知見が足りない。でもメンバーを採用するにはハードルが高い…という場合にこそ、外部人材を積極的に検討した方がリスクは少なくなると思います。
それに、プロ人材が築いた実績は、そのプロ人材の活用を選択したその人自身の功績ともいえるのではないでしょうか。現に、私がご支援させて頂いた企業のご担当者様の中にはプロジェクトが完了したのちに昇進されるケースを多々目の当たりにしていますが、私はそれが然るべきことと思っています。なぜなら、それはプロ人材の活用によってプロジェクトの成果が出ているという証だから。その道の専門家であるプロ人材の力を借りることは、人件費ではなく、投資なのだと考えて、ぜひ積極的に選択肢に加えて頂きたいですね。
まとめ
今回、登壇いただいたプロ人材のデ・スーザ氏には、今日のBtoBマーケティングの要となる「“勝ちパターン”の見える化」の重要性をはじめ、企業が抱えがちな課題とそれに対する解決のヒントなど、独自の視点から多くの気づきをいただきました。
「HiPro Biz」にはデ・スーザ氏のように、業界が抱える課題を知り尽くし、解決へのアイデアを有するプロ人材が多数在籍しています。 「自社と相性の良い外部人材と出会いたい」「まずは壁打ちから始めたい」などのご要望をお持ちの企業様は、まずはお気軽にご相談頂ければと思います。