組織活性化とは?目指すべき組織の状態と実現方法、取り組み事例を紹介(前編)
2024年11月27日(水)掲載
- キーワード:
組織活性化とは、共通の理念に基づいて構成員が主体的に活動できる状態をつくることを指します。企業が継続的な成長を目指すうえでは、組織活性化を図り、仕組みのうえから力強い組織づくりを実現することが大切です。
今回は組織活性化の目的や重要性、実現に向けたフレームワークについて解説します。また、組織活性化に取り組む企業の事例もあわせて見ていきましょう。
組織活性化とは
組織活性化とは、端的にいえば所属する組織の理念やビジョンをメンバー一人ひとりが理解し、主体的に活動している状態を指します。組織が高い生産性を発揮するためには、所属するメンバーそれぞれが自発的に行動し、主体性を持って判断できる状態を築かなければなりません。
そのためには、従業員個人のレベルまで、理念やビジョンを浸透させる必要があります。そして、自身の役割や日々の業務の意味を前向きに理解したうえで、生き生きと仕事に取り組める状態を築くことが組織活性化の目的ともいえるのです。
そうした意味では、単に従業員が忙しくはたらいている状態や、数人のみに負担が偏っている状態では組織が活性化しているとはいえません。全員が同じ目的を共有し、相互にコミュニケーションを図りながら、生き物のように動ける有機的な組織づくりを行うことを組織活性化と表現します。
組織が活性化している状態とは
組織活性化は幅広い意味を含む概念であるため、自社に当てはめて考える際は、より具体的な観点でとらえることも大切です。ここでは、組織活性化によって目指すべき状態について、4つの視点から見ていきましょう。
経営理念や経営ビジョンが共有されている
繰り返しにはなりますが、組織活性化を目指すうえでは、全体に経営理念や経営ビジョンが浸透している必要があります。特に経営層と従業員の間でギャップが少なく、できるだけ同じ目線で目的を共有できていることが重要です。
理念やビジョンの共有には、「企業の価値観を分かち合い、意思決定のベクトルを合わせる」とともに、「顧客やステークホルダーに自社の事業目的と価値を伝えていく」という目的もあります。多くの場合、顧客と接点を持つ機会が多いのは現場ではたらいている従業員です。
従業員一人ひとりに企業理念が行き届いていれば、顧客や関係者にも自然と自社の価値が伝わっていきます。
従業員が自発的な行動を起こせる
組織が活性化すれば、従業員が組織の目標と自身の業務目標を的確にとらえ、両者をリンクさせながら自発的な行動を起こせる状態を築くことができます。上意下達型の指揮命令系統に依存せず、一人ひとりが自律的に活動し、必要に応じて協働できる組織づくりを実現可能です。
また、組織活性化には、人材育成のシステムを充実させるといった側面もあります。活性化した組織では、従業員がキャリアのビジョンを描きやすくなるため、離職率が低くなり人材の定着が期待できるのも特徴です。
円滑なコミュニケーションが図れる
組織が活性化している状態とは、社内で円滑なコミュニケーションが図れることも指します。具体的には、「組織内のコミュニケーションが循環している」「意見交換などを積極的に行える」といった状態が挙げられます。
個人間や部門間でスムーズに意思疎通が図れていれば、立場にかかわらず主体的な意見が生まれやすく、何か問題が起きたときにも迅速に対応することが可能です。また、個人や部署に蓄積されたノウハウも適切に情報交換できるため、組織全体としての能力も向上していくでしょう。
そのうえで、優れた組織に育てるためには、特に失敗事例をフラットに共有できるかどうかが重要な課題となります。日頃からコミュニケーションの仕組みが充実していれば、失敗を隠すことなく客観的に分析し、今後に活かせる財産として役立てられるようにもなるのです。
生産性が高い
活性化した組織では情報の行き違いが少なく、連絡手段も効率的なため、無駄な作業を大幅に削減できます。個人の力量だけに頼らず、組織全体として生産性を高める仕組みを構築できるため、従業員の負担を減らすことも可能です。
その結果、「残業が少ない」「理想的なワークライフバランスを実現しやすい」など、さまざまなメリットが生まれます。また、組織活性化には非効率的なシステムから脱却するという側面もあるため、情報やツールの取捨選択も進みます。
それにより、情報や資材の整理整頓が行き届き、必要なときに必要なものを速やかに取り出せる状態が保たれるのも大きなメリットです。
組織活性化に向けたフレームワーク①
組織活性化を実現するためには、ゴールまでの全体像をイメージして取り組むことが大切です。以下の項目では、組織活性化に活かせるフレームワークとして、3つのポイントをご紹介します。
共通の価値観の定義
組織活性化の第一歩は企業理念の共有です。企業理念は組織における共通の価値観となるため、不明確な状態で活性化を目指そうとしても思うような成果は得られません。
したがって、まずは自社の企業理念をしっかりと見つめ直し、明確に定義することが重要です。そのためには、「ミッション・ビジョン・バリュー」と「パーパス」に着目し、それぞれについて検討する必要があります。
ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリューとは、経営学者のピーター・ドラッカーによって提唱された企業理念を示す3つの要素です。
- ミッション:企業の存在意義や使命
- ビジョン:中長期的な目標
- バリュー:企業が大切にする価値観・行動指針
ミッションは企業が何のために存在するのかを決定する根本の要素です。ミッションを明確に示すことで、組織のメンバーは自身の仕事に意味ややりがいを見出せるようになり、組織への貢献意欲を高めます。
ビジョンはミッションに沿った具体的な目標のことであり、各部門や従業員が取り組む日々のテーマと密接なかかわりを持ちます。ビジョンは目標が達成された場合や、ビジネス環境、ビジネスモデルの変化によって更新されていくことが前提です。
バリューは組織が大切にすべき価値観のことであり、企業文化や風土と表現されることもあります。また、「顧客へ提供する価値」を具体的に示すものでもあり、現場での細かな意思決定にも大きな影響を与える指標となります。
従業員に自社の理念を深く理解してもらうためには、3つの要素の違いや目的を踏まえて、それぞれ具体的な言葉で設定することが大切です。
パーパス
パーパスもミッションと同じように企業や組織の存在意義を示す言葉ですが、厳密には少し意味が異なります。パーパスはどちらかといえば社会的な意義を意識したものであり、具体的にはサステナビリティやSDGsの推進に向けた取り組みが当てはまります。
パーパスを明確にすることで、従業員には自社がどのように環境や社会とかかわっていくのか、基本的な姿勢を示せるようになります。その結果、自分の仕事や役割に社会的な意義を感じてもらいやすくなるのです。
また、パーパスは顧客や投資家にとっても、商品購入や投資の判断基準となります。つまり、社会に広く共感を広げるためのブランディングにつながるポイントでもあるということです。
OKR
「OKR」とは、「Objectives and Key Results」の略語です。それぞれ「O」(Objectives)は達成すべき目標を、「KR」(Key Results)は主要な成果を示しています。 OKRの目的は、達成目標をできるだけ数値化し、定量的な目標に変換することにあります。1つのOを複数のKRに分解することで、より目標管理を容易にするのがOKRのプロセスです。
組織活性化に向けて企業理念を浸透させていくためには、OKRがとても重要です。なぜなら、企業理念はあくまでも定性的な目標であり、そのままでは具体的な業務に落とし込むのが難しいためです。 部門や従業員によってとらえ方が異なる場合もあるため、OKRによってロジカルに目標を共有することで食い違いを防ぎ、同じ方向を見ながら行動できるように情報を整理しましょう。
以上、この前編では組織活性化の概念や活性化している状態の解説、組織活性化に向けたフレームワークの3つのポイントのうちの2つまでをご紹介してきました。
後編ではフレームワークの3つ目を皮切りに、組織活性化に向けた取り組み例などさらに具体的な内容をお届けする予定です。 より実践的なイメージを持ちながら取組めるよう解説していきますので、ぜひご覧ください。 (編集/d’s JOURNAL編集部・HiPro Biz編集部)