業績を上げる営業戦略を設計する手順とポイント、使えるフレームワークを紹介

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2025年05月29日(木)掲載

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営業の成果を上げるには、適切な営業戦略の策定が欠かせません。しかし、「実は営業戦略をしっかりと立てられていない」と課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、営業戦略を設計するために意識したいポイントなどを解説した上で、営業戦略に活用できるフレームワークも紹介します。営業基盤を見直したい方はぜひご一読ください。

営業戦略とは?

営業戦略

企業が、営業活動を実施するために設定する指針を「営業戦略」といいます。営業戦略を立てるにあたっては、市場や競合他社の動向を把握した上で「顧客のニーズに対応し、効率的に営業活動を進めるにはどうすべきなのか?」を検討しましょう。
営業活動の成果によって企業の成長や利益が左右されるため、営業戦略は企業にとって非常に重要な存在なのです。

営業戦略とほかの戦略の違い

営業戦略と似ている言葉として、「営業戦術」「経営戦略」「マーケティング戦略」がありますが、これらの3つと営業戦略は異なるものです。具体的な違いについてみてみましょう。

営業や経営に関連するさまざまな戦術・戦略の概要
営業戦術 営業戦略を実行するための、具体的な手法やアクションプラン
経営戦略 会社全体が目指すビジョンや将来のビジネスモデルなどの、経営の軸となる方針や計画
マーケティング戦略 市場や顧客のニーズに基づき、商材のアプローチ方法を策定する取り組み

上記の中でも、マーケティング戦略は営業戦略と特に意味が似ています。両者は「商材の売上を伸ばすため」という目的は共通していますが、役割が異なります。
営業戦略では主に商材の販売方法に焦点を当てますが、マーケティング戦略では市場全体への価値提供に重点を置いてアプローチする点が、大きな違いです。

営業戦略が機能していない場合に考えられること

営業戦略を立てても、組織内で適切に機能せず、営業活動が難航する場合もあります。そのようなときは、以下の原因が考えられます。

データの活用ができていない

データを適切に活用できていなければ、営業戦略を立てても根拠のないものになってしまいます。過去の売上目標に対する進捗や商談成約率などのデータを分析し、根拠のある戦略を設計しましょう。

営業活動では、いわゆる「個人の勘」と呼ばれるものが通用しない場面もあります。まずは自社の現状を把握し、その上で現状に対し適切な目標やアプローチの手法を考えることが重要です。

目標設定があいまい

目標設定があいまいでは、せっかく立てた営業戦略も意味をなしません。チーム全体の方向性が定まらず、思うような成果も上げられないでしょう。
営業戦略を立てるにあたっては、可能な限り具体的な数値の目標を設定してください。たとえば「売上を上げる」と漠然とした目標を掲げるのではなく、「5月末までに10件受注する」といったように、期限や件数、売上額などの目標を数字で示します。

チーム内に営業戦略が浸透していない

営業戦略は、チーム内に浸透して一人ひとりが当事者意識を抱くことで力を発揮します。つまり、チーム内に営業戦略が浸透していなければ、目標に向かって営業活動を進められないということです。
そのため、営業戦略を立てるだけではなく、メンバーの教育やチーム内でのコミュニケーションの強化などで共有、浸透させる環境づくりの必要もあります。

定期的な見直しや改善をしていない

PDCAサイクルを回していない場合もまた、営業戦略が適切に機能しないことが考えられます。

現状に即した目標を立てられたとしても、市場の変化をはじめとするさまざまな要因により、営業活動が思い描いた通りに進まないことは往々にしてあります。そのため、定期的に営業戦略と現状を照らし合わせた上で、内容を見直すことが欠かせません。

機能する営業戦略を設計する手順とポイント

営業戦略が機能しない理由を踏まえ、適切に機能する営業戦略を設計するために必要なことを確認していきましょう。以下では、営業戦略を設計する手順とともに、各工程で押さえておきたいポイントを解説します。

STEP1.現状の分析

具体的な営業戦略を考える前に、まずはその基となる現状を分析し、把握します。具体的には「外部環境分析」「顧客分析」「競合分析」「自社分析」の4つを実施すると良いでしょう。

分析の種類と具体的な内容
外部環境分析 社会や政治など世の中の大きな動向や、市場全体のトレンドを把握する
顧客分析 顧客の属性や購買行動、ニーズなどを深く理解し、「どのような顧客に、どんな手法でアプローチするか」を明確にする
競合分析 同業他社の強みや弱み、市場での立ち位置などを調査し、自社と競合の差別化ポイントを見つける
自社分析 自社の経営資源を洗い出した上で、自社の強みや弱みを見極め、改善点を明確にする

特に顧客分析では、顧客を徹底的に理解することがポイントとなります。具体的には「顧客はなぜ、自社の商品やサービスに興味を持っているのか」「なぜ契約に至ったのか/至らなかったのか」といった要素の分析などが挙げられます。

また現時点での課題を特定することも重要です。課題に対して適切な解決策を見いだすことで、営業活動の効率や成果が大幅に改善する可能性もあります。
営業活動で工数がかかりすぎている業務や、ボトルネックの要因などを見つけましょう。

STEP2.目標の設定

続いて、中長期的な目標を設定します。ここで適切な目標を設定することで、チーム全体の指針やあるべき姿が明確になります。

目標の設定にあたっては「SMART法則」の活用を検討しましょう。以下の5つの要素に当てはめて考えることで、明確かつ実現可能性の高い目標を立てられます。

SMART法則の5つの要素
  • Specific:具体的である
  • Measurable:測定可能である
  • Achievable:達成可能である
  • Relevant:関連性がある
  • Time-bound:期限がある

STEP1.で分析した情報を基に、SMART法則を踏まえて具体的な目標を設定しましょう。

STEP3.ターゲット/ペルソナの設定

次に、商品やサービスのターゲットおよびペルソナを設定し、見込み顧客の層となる集団の属性を絞り込みましょう。
ターゲットを設定することで、この層のニーズを満たすにはどのようにアプローチすべきか、といった施策の方向性を定められるようになります。

ペルソナは、ターゲットよりもさらに細かく設定する、架空の顧客像のことです。ターゲットとペルソナの違いについては、以下の具体例をご覧ください。

ターゲットとペルソナの具体例
ターゲットの例 20代後半~30代前半の美容が好きな女性
ペルソナの例 27歳女性、メーカー営業担当者。東京都内で一人暮らしをしており、年収は350万円。メイクや美容が好きだが、仕事が忙しくてセルフケアができていない。主な情報収集源はSNSとファッション雑誌。趣味は休日の美術館巡り。

上記のように、ペルソナでは細部の情報やストーリーを細かく定めます。アンケート結果や過去の取引履歴など、信頼性の高いデータを参照すると良いでしょう。

STEP4.カスタマージャーニーの策定

ターゲットとペルソナを定めたら、カスタマージャーニーを策定します。カスタマージャーニーとは、見込み顧客が顧客となるまでの一連の流れを整理したものです。
カスタマージャーニーの作成により「顧客はどのようなプロセスを経て商品やサービスを購入するのか」を把握することで、各プロセスに適したアプローチが浮かび上がります。

なお、カスタマージャーニーは主に「認知」「情報収集」「意思決定」「購入」「使用・体験」「共有・拡散」の6つのステップに分けて考えるケースが多いため、顧客の立場に立って心情をイメージしながら考えていきましょう。

関連記事:これからのカスタマージャーニーの捉え方、マップの作り方やペルソナ設計

STEP5.営業プロセスの設定

ここまでで洗い出した情報を基に、具体的な営業施策を決めていきます。たとえば、以下のような内容を一つひとつ明確にしていくことが挙げられます。

営業施策を考える上で決めたい内容例
  • 価格設定
  • プロモーション戦略
  • 販売チャネル など

なお、目標を達成できる方法は一つとは限りません。ターゲットとなる層に対し、効果的にアプローチして目標達成につながるアクションプランを考えましょう。

関連記事:新規開拓営業の流れと効果的な手法、成功のポイントを解説

STEP6.KPIの設定

最後に、KPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIは、「自社の営業活動で何を達成したいのか」「そのために、どのような行動が必要なのか」などを明確にする指標です。 KPIを設定することで、その後の営業活動の進捗が可視化され、同時に課題の発見や解決にもつながります。

なお、KPIに設定する指標は状況によりさまざまです。たとえば、「新規見込み顧客の獲得数」「訪問件数」のほか、「新規顧客・既存顧客それぞれの売上」「成約率」などもKPIとなり得ます。

営業戦略の策定に役立つフレームワーク

「フレームワーク」と呼ばれる枠組みを用いると、効率的かつ正確に現状を分析し、実態に基づいた営業戦略を立てやすくなります。以下で紹介する各フレームワークを参考に、自社に適したものを取り入れてみましょう。

PEST分析【マクロ環境が与える影響の分析】

PEST分析は、Politics(政治)・Economics(経済)・Society(社会)・Technology(技術)の4つの視点から、事業を取り巻く環境を分析する手法です。特に、変化の激しい市場で営業活動を行う場合や、長期的な営業戦略を立てる必要がある場合に活用できます。

これらの4つの視点は、いずれも自社にとって外部環境となるものです。PEST分析を行うことで、外部環境によって自社にもたらされる変化やリスクが想定でき、対処方法を定められます。

5F(ファイブフォース)分析【競争環境の分析】

5F(ファイブフォース)分析では、「業界内の競争」「新規参入者の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」の5つの競争要因を分析し、市場の収益構造を把握します。新規事業への参入を考えているときや、既存事業の見直しを図りたいときに活用できる手法です。

この5つの脅威が自社にもたらす影響力が強い場合は、その業界で収益性を高めることは難しいとされています。反対に、影響力が弱い場合は収益性を高められる可能性があります。

3C分析【競合・顧客・自社分析】

Competitor(競合)・Customer(顧客)・Company(自社)の、3つの利害関係者それぞれの視点を整理する手法が、3C分析です。自社の現状や立ち位置を把握できるほか、顧客分析や市場分析に活用できます。

3C分析の結果によって、自社が営業活動で起こすべき具体的なアクションプランが浮かび上がってくるでしょう。

SWOT分析【自社の課題や市場機会の分析】

SWOT分析では、内部環境の強み(Strength)と弱み(Weakness)、外部環境の機会(Opportunity)と脅威(Threat)をそれぞれ洗い出し、営業課題を把握します。また、洗い出した4つの要素をかけ合わせる「クロスSWOT分析」を行えば、営業戦略の立案も可能です。

たとえば、内部環境の強みと外部環境の脅威をかけ合わせることで「自社の強みをどのように伸ばしていけば、外部環境の脅威(競合など)に打ち勝てるのか?」が見えてくるでしょう。

STP分析【市場細分化・ターゲティング・ポジショニングの分析】

Segmentation(市場の細分化)・Targeting(ターゲット市場の選定)・Positioning(差別化できるポジションの設定)の3つの要素から市場を分析し、市場での自社のポジションを明確にする手法が、STP分析です。これまでになかった商品やサービスを展開するとき、既存商品に対するニーズが変化したときなどに役に立ちます。

分析を通じて市場を細分化することで、自社が活躍余地のあるポジションや、競合と差別化できるポジションを見つけられるかもしれません。

4P分析【マーケティング・営業戦略の設計】

4P分析は、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)の4つの観点から、自社の商品・サービスを分析する手法です。この4つの要素を整理することで、自社の強みやアピールポイントが明確になります。

営業戦略を具体的に立案する段階で4P分析を行えば、営業活動で訴求すべきポイントや、行うべきアプローチがわかるでしょう。

営業戦略を成功させるためのポイント

最後に、営業戦略を成功させるために意識したいポイントをお伝えします。以下のポイントを押さえて、営業活動を成功に導きましょう。

チーム全体に営業戦略を浸透させる

営業チームの全員が営業戦略の内容を正確に理解し、自分事として捉えている必要があります。目指すべき未来を関係者全員が共有し、日々の業務に落とし込んでいくことで営業戦略が機能します。営業戦略を立案したら、まずはチーム内に浸透させる方法を考え、メンバーにビジョンを共有しましょう。

営業戦略を都度見直す

「時間と手間をかけて立てた営業戦略だから、そのまま進めればうまくいくだろう」と捉えず、定期的に見直すことも重要です。実行と改善を繰り返すことで、より実現可能性の高い営業戦略にブラッシュアップされていきます。
市場環境の変化を意識しつつ、営業戦略を定期的に見直していくことも成果獲得に欠かせません。

市場調査を行い、顧客ニーズを把握する

顧客ニーズの理解は、営業戦略の成功を左右する要素の一つです。アンケートや市場調査を行い、顧客ニーズを把握しましょう。

なお、顧客ニーズには顧客が認識している「顕在ニーズ」と、顧客がまだ自覚していない「潜在ニーズ」があります。潜在ニーズを満たせば顕在ニーズ以外の顧客獲得のきっかけにもなり、それが新しい競合との差別化へもつながるでしょう。

営業支援ツールを活用する

営業支援ツールを取り入れることで、営業戦略の立案をはじめとする営業活動全般の効率化につながります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

営業支援ツールの種類
SFA(営業支援システム)ツール 営業活動の進捗を可視化し、課題発見や営業活動の支援に役立てる
MA(マーケティングオートメーション)ツール マーケティング活動を自動化し、見込み顧客の獲得や育成に役立てる
CRM(顧客関係管理)ツール 顧客情報を一元管理し、過去の分析データを営業戦略の立案に役立てる

営業戦略の立案にあたり自社が解決すべき課題を洗い出した上で、上記を参考に、導入するツールを決めましょう。

関連記事:【入門編】営業のDXはなぜ必要なのか?成功例・失敗例をそれぞれ解説

自社の課題を分析した上で、適切な営業戦略の立案を

以上、営業戦略を考えるフローや関連するフレームワークなどを紹介しました。

営業戦略では、綿密な現状分析やターゲット設計などが鍵を握ります。また、立案した戦略をチーム内に浸透させることも非常に重要です。
本記事の内容を参考に、自社の営業戦略の策定や見直しをしてみてはいかがでしょうか。

なお、「営業戦略の見直しにチャレンジしてみたけれど、うまくいかない…」、「営業戦略がチームに浸透しないので、組織を根本から改善しないといけない」という課題を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、プロ人材による経営支援サービス「HiPro Biz」にご相談ください。営業や経営領域での知見が豊富なプロ人材が、営業課題の解決を解決に導きます。

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