レベニューシェアとは?仕組みやメリットや契約時のポイントを解説
2025年05月29日(木)掲載
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新規事業の立ち上げに際し、ネックとなる問題のひとつにコスト面があるのではないでしょうか。新たなビジネスを始める前には、市場調査や開発などを一から行う必要があるため、多くの費用が発生します。
このような課題感に対して有効なのが、「レベニューシェア」を活用して費用面の問題解決を図るという方法です。
本記事では、レベニューシェアの仕組みを、メリットやデメリットとともに解説します。新規事業開発を成功させるためにご参照ください。
■レベニューシェアとは
■レベニューシェアと似た用語との違い
■利益配分の比率の相場
■レベニューシェアのメリット
■レベニューシェアのデメリット
■レベニューシェアで契約する際のポイント
■レベニューシェアは事業によって生じた収益を発注者と受注者で分配する契約形態
レベニューシェアとは

レベニューシェアとは、報酬額があらかじめ決められた固定報酬契約とは異なり、成果報酬型の契約形態の一つで、主に新サービス開発などの場面で採用されます。同契約では事業の発案元である「発注者」から、事業の開発を引き受ける「受注者」に無償、または安価で開発を依頼します。そうして事業が始まった後、得られた収益を契約時に決めた割合で分配する、という仕組みです。
レベニューシェアは、単に新たなプロジェクトを他企業と契約して外注するものではありません。企業同士が協力関係を結び、リスクと報酬を共有する「事業提携」のようなイメージに近く、受注者には高い信頼関係を築ける相手を選ぶことが求められます。
レベニューシェアと似た用語との違い
ここではレベニューシェアへの理解を深めるために、以下で似た用語を2つ挙げ、それぞれとの違いを紹介します。
プロフィットシェアとの違い
プロフィットシェアは、レベニューシェアと同様に成果報酬型の契約形態ですが、分配する「報酬」の中身が異なります。
プロフィットシェアでは発注者と受注者で報酬を分配する際に、売上から経費を差し引いた「利益」のみを対象とします。つまり、事業で利益が発生しなかった場合には、受注者に報酬は支払われません。
一方、レベニューシェアでは「売上」を報酬と見なして分配が実施されるため、経費の大小を問わず受注者に報酬が支払われます。
ロイヤリティとの違い
ロイヤリティとは、特許権や商標権などの知的財産権の利用に対し、定期的に支払う報酬のことです。フランチャイズのブランド名や、ノウハウなどの利用に際して発生します。
レベニューシェアも、定期的に報酬の授受が発生するという面では、ロイヤリティと共通する部分はあるといえます。しかし、それぞれ「成果報酬型の契約形態」と「知的財産権の利用に対する対価」を指すことを考えると、まったく異なるものであることがわかります。
利益配分の比率の相場
レベニューシェアでの契約を検討するにあたっては、利益配分の比率の相場も気になるところではないでしょうか。
結論からお伝えすると、レベニューシェアの利益配分の比率に決まった相場はありません。収益を発注者・受注者間で定めた割合で分け合うという原則は変わりませんが、その比率は、ビジネスの内容や売上規模、また収益率などさまざまな条件で変わってきます。
以下では、利益配分の比率の決まり方の参考として、3つのケースを紹介します。
想定通りの収益を得られた場合
レベニューシェアの利益配分の基本的な考え方は、収益が想定通りの場合に、受注者が固定報酬契約で請け負うよりも高額になるように調整するというものです。
同契約を結ぶ場合、事業が成功しなければ収益が発生しないため、受注者は固定報酬契約よりも大きなリスクを負うことになります。その対価として、発注者は固定報酬契約の場合よりも多くの報酬を支払うのが基本となります。
一部固定報酬と組み合わせる場合
レベニューシェアでの利益配分の方法として、配分比率に応じた報酬とは別に、毎月固定報酬を受注者に支払うケースもあります。このように継続的な支払いが発生することで、発注者側の事業に対する責任感や意欲的な姿勢の醸成を促すことができます。
変動型比率の場合
レベニューシェアの利益配分の決め方として、状況に応じて柔軟に変動させる方針を取るケースも見られます。
たとえば、事業開発にかかった費用を回収するまでは受注者への配分を多く設定し、事業開発費用の回収ができたタイミングで受注者への配分比率を下げることで、発注者の費用面の負担を軽減し、費用不足による事業の失敗を避ける効果が見込めます。
レベニューシェアのメリット
新規事業開発をレベニューシェアによって進めることには、多くのメリットがあります。ここでは、レベニューシェアを活用するメリットを発注者側と受注者側に分けて解説します。
発注者側
発注者側はレベニューシェアの活用により、以下の2つの恩恵を得られます。
初期開発にかかる費用を抑えられる
冒頭で紹介してきた通り、レベニューシェアの発注者側のメリットとしては、新規事業の開発時に負担する費用を大きく軽減できることが挙げられます。
同契約では、原則として受注者側が開発費用を負担するため、発注者側は無償、また場合によっては通常よりも少ない負担で事業を展開できます。これにより発注者側は、新規事業開発に際し予算が限られている場合にも、事業を始めやすくなります。
事業を失敗したときのリスク分散・低減
レベニューシェアの活用は、事業を失敗したときに発注者のリスクを分散することにもつながります。初期投資が少ないため、固定報酬契約の場合に想定されるような多額の損失を心配する必要がありません。
前述の内容もあわせて、発注者側は、総じてレベニューシェアによる費用面でのメリットが大きいといえるでしょう。
受注者側
続いて、受注者側がレベニューシェアで契約を結ぶメリットを解説します。
長期の安定収入を確保できる
受注者側がレベニューシェアで契約を結ぶメリットの一つは、新規事業が成功すれば、安定した収入を継続的に得られる点にあります。
同契約を結べば、契約期間によって異なるものの、基本的に売上に応じた報酬が期間中継続して受注者に支払われます。受注者側は開発費用を負担するリスクを負うことになりますが、その分固定報酬契約以上の報酬を得られる可能性があります。
また、報酬は新規事業の売上によって増えるため、高いモチベーションで新規事業の開発や運用に取り組むことにもつながるでしょう。
受注のハードルが低い
レベニューシェアによる契約は、成約率が高いことも受注者側にとってのメリットです。
前述の通り、同契約は発注者にとって事業リスクの分散・低減ができるため、発注者は新たなビジネスモデルの開発することや受注者と提携することに寛容的かつ積極的になります。そのため、受注のハードルが低く、スムーズに成約まで進む傾向にあります。
レベニューシェアのデメリット
上記のようにレベニューシェアには、発注者と受注者の双方にメリットがある一方、あらかじめ留意しておかなければならない事項も存在します。以下では、レベニューシェアの活用に際し、デメリットになり得る点を解説します。
発注者側
まずは、発注者側が気をつけなければならない2つのポイントを確認していきましょう。
長期的に報酬を支払う
発注者側はレベニューシェアで事業を展開していく上で、受注者側への継続的な支払いが発生することは避けられません。また、事業が成功し収益が上がるほど、支払う報酬額も増加します。
一方、固定報酬契約では、報酬額が一度確定すれば、その後追加で報酬が要求されることは原則ありません。
こうした点から、レベニューシェアでは想像以上の収益が出た場合に、固定報酬契約で発注するよりも発注者側の利益が少なくなってしまうデメリットがあるといえます。
意思決定のスピードに時間を要する
意思決定に時間がかかることも、レベニューシェアでのマイナス面の一つです。
レベニューシェアは、提携関係に近いため、事業の開始にあたっては発注者と受注者双方の合意が必要です。しかし、これにより事業の意思決定に時間がかかり、機動性が低下することが否めません。
意思決定のスピードは、変化が激しい業界では特に重要な点のため、フローをあらかじめ決めておくなど、一定のルールを定めておきたいところです。
受注者側
レベニューシェアによる事業開発に際し、受注者側が留意すべきは次の2点です。
開発費用とそれに対するリターンが見合わない場合がある
レベニューシェアでは、受注者側に利益が発生しない可能性があります。
基本的に受注者は、事業が順調に進み、売上が出るまで報酬を得られません。その上、開発費用は原則受注者負担のため、事業が成功しない限り開発費用や初期費用を回収できないケースも考えられます。
特に新規事業の開発では市場の反応が読めずに不確定要素も多いため、こうしたリスクを直接的に負うことのデメリットは大きいでしょう。
費用の回収に時間がかかる
レベニューシェアで契約を結ぶ受注者側の懸念点として、費用の回収が長期化しやすいことが挙げられます。
固定報酬契約であれば、プロジェクトの完了後に報酬が支払われるため、受注者側としては費用回収時期のめどを立てやすいものです。
一方レベニューシェアでは、報酬が事業の収益に連動しているため、最初の支払いがいつなのか、また費用回収にどれだけかかるのかという点が不透明です。従って受注者側は、事業が軌道に乗るまでの間、収入が得られない状態が続くことを認識しておく必要があります。
レベニューシェアで契約する際のポイント
ここでは、レベニューシェアによる契約で事業を展開していく前に、発注者が意識しておきたい5つのポイントを紹介します。
ビジネスモデルを理解する
レベニューシェアの契約前には、まず今回の新規事業開発において、レベニューシェアの契約形態が適しているのか確認することが重要です。
ここで、レベニューシェアの特徴を再確認しておきましょう。
レベニューシェアは、発注者・受注者間で利益配分の比率を決め、それに応じて報酬を分け合う成果報酬型の契約形態です。この点を踏まえると、全ての業種、業界で活用できる契約形態ではないことがわかります。
まず、利益配分を互いが納得いくように算出するために、成果や費用を定量的に可視化できるような事業である必要があります。また、売上に連動するため、付加価値が高いものでなければ、受注者に報酬を支払ったあとに発注者側に利益は残らないでしょう。
新規事業の開発でレベニューシェアを活用すべきかどうかは、こうした点からビジネスモデルを確認した上で検討していきましょう。
発注者・受注者間で長期的に信頼関係を築けそうか確認する
レベニューシェアによる新規事業を進めるにあたっては、長期的に信頼関係を築けるパートナーを探すこともポイントの一つです。
レベニューシェアの契約相手とは、単なる受発注の関係を結ぶわけではありません。事業の成功に向けて並走できるような、パートナーシップを構築できる相手でなければならないのです。
そのために、受注者を選定する際に相手の人柄や業務内容などを確認しましょう。そうして、「長期的にともにはたらいていける」と確信できる相手を選ぶことが重要です。
ともに成長ができるパートナーを選ぶ
新規事業の開発をレベニューシェアで進める際のパートナーには、信頼関係を構築できるだけでなく、互いに高め合えると思える企業を選びましょう。
発注者側は受注者のノウハウを借りることで、新たな技術やサービスを提供できるようになり、顧客の満足度向上や競合他社との差別化といった恩恵が期待できます。また、受注者も、発注者側の顧客層に認知されることで事業が拡大できる可能性があります。
このように、レベニューシェアは双方の成長機会を創出できる契約です。こうした魅力を最大限に享受するためにも、パートナーにはノウハウや経験などを円滑に共有してくれる相手を選ぶことも成功のポイントです。
契約内容を明確にする
レベニューシェアでの契約を結ぶ際は、契約内容を詳細に決めて契約書にきちんと記載することも意識すべきポイントです。
契約書は、双方の権利と義務の所在を明確化するために重要なものです。契約内容を明らかにした上で契約書に記載すれば、将来的なトラブルの発生を防ぎビジネスのスムーズな進捗が望めます。
契約書には利益配分の比率や分配方法、また業務範囲や契約期間など具体的な契約内容などを、認識に齟齬が生まれないよう正確に記載しましょう。
利益配分の比率や分配方法は慎重に決める
レベニューシェアの契約内容の中でも、利益配分の比率や分配方法は特に慎重に決めたいところです。
先述の通り、利益配分の比率に相場はなく、ビジネスの内容や収益率などの要素によって大きく変化します。そのため、ほかのケースを参考にすることが難しく、話し合いがもつれるケースもあります。
しかし、これは必要な工程であり、避けて通れるものではありません。従って、利益配分の比率、また分配の方法は発注者と受注者の双方が納得できるまで話し合いましょう。
また、契約時に配分比率の見直しを行う時期をあらかじめ決めておくのも有効でしょう。契約書に再交渉の旨を記載しておくことで、事業の状況が変わったときにスムーズに調整できるようになります。
レベニューシェアは事業によって生じた収益を発注者と受注者で分配する契約形態
本記事では、レベニューシェアの仕組みを、メリットやデメリットとともに解説しました。
レベニューシェアとは、事業から生み出された収益を発注者・受注者間で事前に定めた割合で分配する契約形態のことです。開発にかかる費用は原則として受注者が負担するため、発注者は費用面のリスクを抑えて事業拡大を図れます。
同契約を結ぶ際は、後々トラブルにならないよう配分比率をお互いが納得いくまで話し合い、新規事業を成功に導きましょう。
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