採用戦略の立て方と効果的なフレームワーク・成功事例を解説
2023年02月06日(月)掲載
少子高齢化にともない労働人口が減少している昨今、優秀な人材を採用するには、採用戦略を立てることが重要です。しかし、採用戦略がどのようなものか、何をどのように組み立てれば良いのか、悩んでいる採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
当コラムでは、採用戦略の概要やメリット、戦略の立て方を解説します。また、採用戦略を立てるうえで効果的なフレームワークや、採用戦略の成功事例を紹介します。
採用戦略とは
採用戦略とは、企業が求める理想の人材を採用するための戦略です。
企業の存続には経営資源の最適化が欠かせず、中でも人材は企業の業績を左右するほどの影響力を秘めています。そのため、採用活動では優秀な人材の確保が求められます。
しかし、分母となる労働人口が減っている今、従来どおりの採用活動を続けても、優秀な人材の確保はもちろん、母集団形成すら難しいといえます。そのため、経営計画や事業計画をもとに、長期的な視点で採用戦略を立てることが大切です。
採用戦略の重要性とメリット
採用戦略を立てることには大きく3つのメリットがあり、いずれも採用活動を成功させるうえで重要なポイントです。
母集団形成ができる
応募者がいなければ、採用自体を行なうことができません。優秀な人材を採用するとなれば、優秀な人材を選び出せるだけの応募者を集めたほうが、リスクを抑えた採用活動が可能です。
募集の段階で自社の強みや魅力をアピールできれば「この企業で働きたい」「自分のスキルを活かせそう」と考える応募者を集めやすくなります。採用戦略を立て採用活動をすることで、母集団形成だけでなく、自社が求める人材を採用できる可能性も高まります。
内定辞退対策
採用活動では、どの企業も優秀な人材を確保したいと考えるものです。そのため、自社が優秀だと判断した人材は他の企業も採用を検討している可能性が高く、複数の企業から内定を得ているかもしれません。
内定辞退を減らすためには、入社前の不安や疑問を解消することが重要です。内定後のフォロー体制を確立し、内定者が入社に対するモチベーションを保てるように尽力しましょう。
入社後のミスマッチを防ぐ
入社後にミスマッチが起こる原因のひとつは、求める人材像が不明確であることです。求める人材像が明確でない状態で採用を行なうと、採用基準があいまいになり、結果としてミスマッチや早期退職につながります。
優秀な人材を採用しても、入社後のミスマッチで退社することになっては意味がありません。
ミスマッチを防ぐには、採用戦略において自社の求めるスキル、価値観を明確にすることが重要です。
また、採用基準を設定することで、採用担当者や現場責任者が考える人物像の認識のずれも予防できるでしょう。
採用戦略の立て方
採用戦略の計画・実行には、主に6つのプロセスがあります。
採用戦略チームの設立
採用戦略を立てる前に、まずは採用戦略チームを作ります。
チーム作りでは、実際に採用活動を行なう人事が対象となりがちですが、自社の強みや弱み、今後のビジョン、求める人材像などを洗い出す必要があるため、現場責任者や経営陣を含めて構成するのがポイントです。社内に誘導・まとめ役を担える社員がいない場合は、外部の専門家などを活用するのもよいでしょう。
採用戦略に必要な人員を確保できたら各部門と連携し、協力してもらえる体制を整えます。
現状把握
採用市場の動向や競合・自社の状況を調査・分析します。調査・分析する点
は、以下のとおりです。
・求職者の動向
・採用市場の動向
・過去の採用活動の結果
・採用活動の課題
・自社の強み・弱み
・競合他社の採用状況
また、調査や分析を進める際には、後述するフレームワークを活用するのが効果的です。
採用ターゲットの設定
自社のビジョンや事業戦略を考慮したうえで、必要な能力や経験などを洗い出し、求める人材像を明確化します。
求める人材像は募集する部署によっても異なるため、幹部や各部門の責任者と擦り合わせを行ないましょう。「必須条件」「歓迎条件」「NG条件」などを設定しておくと、面接を進めるうえでの判断が容易になります。
採用施策の設計
採用スケジュールや採用手法、面接官の選定など、具体的な採用施策を決定します。決める内容は以下のとおりです。
・採用スケジュール
・選考フロー
・会社説明会の日程・内容
・インターンシップの日程・内容
・面接の担当者(1次・2次など)
・選考フェーズ単位での判定基準
施策の全体設計を可視化することで、スムーズに採用を進められます。
求人施策の選定
自社のターゲット、募集内容に適した求人施策を選びます。
求人の手法は、自社のホームページをはじめ、求人広告サイト、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、イベント・セミナーへの出展など、さまざまな種類があります。予算とのバランスを考慮し、自社の強みや弱みを活かせる施策を選ぶことが大切です。
また、求人施策では、自社のSNSを活用するのも効果的です。認知向上の他、求人広告やスカウトメールだけでは表現しきれない自社の魅力を伝えられます。
採用後のフォロー
採用後のフォローは懇親会や勉強会などを開催するのが一般的ですが、独自のイベントやワークショップを開催するのもよいでしょう。採用者を入社まで放置してしまうと、モチベーションが下がるきっかけにもなり、内定辞退のリスクが高まります。そのため、定期的に接点を持ちながら、入社意欲を高めるためのフォロー施策をおこなうのがおすすめです。
また、入社後もすぐに組織に馴染めるよう、教育体制や精神面のフォロー体制を整え、早期離職とならないような仕組みを作りましょう。
採用戦略のポイントと効果的なフレームワーク
採用戦略を立てる際のポイントを紹介します。また、採用戦略を立てる際に使えるフレームワークも合わせて紹介いたします。
自社の強みを把握する
応募を獲得するためには、数ある企業の中から「この企業に入りたい」と思ってもらう必要があります。そのためには自社の強みを明確にし、他社との違いをアピールするとよいでしょう。
自社の強みを洗い出すためのフレームワークとしては、3C分析、SWOT分析が有名です。
3C分析は、マーケティング環境の分析をおこなうフレームワークです。外部要因と自社を照らし合わせることで、自社の強み・弱みを把握します。
・Customer:求人倍率、就職・転職顕在層の数・ニーズ・価値観など
・Competitor:競合の強み、弱み、採用数、採用倍率など
・Company:自社の強み、過去の採用数など
SWOT分析も自社の事業を内部要因と外部要因の両面から統合的に分析するフレームワークです。
・Strength:自社の強み
・Weakness:自社の弱み
・Opportunity:外部環境におけるチャンス
・Threat:外部環境における脅威
これらの分析を通じて、企業としてのUSP(Unique Selling Proposition/自社だけが持つ強み)を導き出すことが重要です。
本当に必要な人材を採用ターゲットにする
自社が求める人材像は、具体的であるほど選考がしやすく、ミスマッチの可能性も低くなります。そのため、ペルソナ分析を行なうのがおすすめです。
ペルソナ分析とは、ターゲット人材の能力やスキルのほかに、年齢や人格、家族構成、生活イメージ、趣味などを細かく設定することです。ペルソナを設定し人物像が具体的になれば、どの求人手法を選択すればよいか、どのような人材を採用すればよいかなど、施策のアイデア出し等の精度があがります。
求職者目線で取り組む
優秀な人材に自社を選んでもらうためには、求職者目線で採用活動を行なうことが重要です。求職者の視点を軸としたフレームワークとして、4C分析があります。
4C分析は、求職者の価値観やニーズを明確にできます。
・Customer Value:自社に入社することのメリット
・Cost:自社に入社した場合のデメリット
・Convenience:やり取りのしやすさ、スケジュールの組みやすさ、情報収集のしやすさなど
・Communication:コミュニケーションの取りやすさ
PDCAを回す
採用戦略は、効果の検証・改善を繰り返すことで質が高まっていきます。そのため、採用戦略を立てて終わりではなく、PDCAを回し続けることが重要です。半期、もしくは年度ごとに振り返りを行い、どのくらいの効果があったか、改善するべき点がどこにあるかなどを分析しましょう。
また、振り返りの際は、応募数や内定者数だけでなく、入社後の活躍も含めて検証することが大切です。優秀な人材を採用できても、早期退職につながると意味がありません。応募・選考・内定・入社後のそれぞれで振り返りを行い、検証で浮き彫りになった課題や問題点を改善していきましょう。
採用戦略の成功事例
人手不足が進む近年では多くの企業が採用に力を入れており、各社さまざまな採用戦略が存在します。ここでは、採用戦略の成功事例として3社の採用戦略を紹介します。
電気通信事業/A社
A社は、ジョブ型採用を導入しています。ジョブ型採用とは、募集する職務領域を明確に決め、その職務に適した人材を採用する手法です。
競合他社との採用競争が激化したことで、事業の拡大と優秀な人材の獲得が必要となり、同社は採用戦略としてジョブ型採用を導入しました。また、採用担当者などが候補者に対して積極的にアプローチをする、ダイレクト・ソーシングにも取り組み、採用目標を達成しています。
IT事業/B社
B社は、リファラル採用の導入によって採用数を年々拡大することに成功しています。
リファラル採用とは、社内もしくは社外の人脈を利用した採用手法です。
B社では、学生に多くの体験をしてほしいという思いから、多数のインターンシップを開催しています。しかし、こうした取り組みに採用チームのみで対応していたため、思うように採用活動を進めることができませんでした。
リファラル採用によって採用チャネルが拡大したことで、採用難易度の高いDX人材なども確保できるようになり、企業の成長にもつながっています。
まとめ
企業が求める人材を採用するためには採用戦略が重要であり、採用戦略の質が高いほど優秀な人材を確保しやすくなります。採用戦略を立てる際は、自社の現状をはじめ、市場の動向や競合の状態、求職者のニーズなど、さまざまな要素を明確にしなければなりません。そのため、難しく感じる方も多いですが、フレームワークを活用することでスムーズかつ効果的な採用戦略を立てることが可能です。
採用戦略を立てることは、母集団形成や内定辞退対策、ミスマッチの防止にもつながるため、採用活動の一部として取り入れることを推奨します。