品質管理体制を構築するには?構築によるメリットや重要性を解説

品質

2022年11月30日(水)掲載

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製品の品質を維持するには国や自治体が定めた基準に沿った品質管理体制の構築が求められます。不適合品や欠陥製品に気づくことなく顧客へ製品を納品してしまった場合、品質劣化や大きな事故につながる可能性もあるでしょう。そのため、製造業などの企業は品質管理体制の構築や維持を求められます。

本記事では、品質管理体制を構築する方法やメリット、重要性について解説します。

品質管理とは?

品質管理とは製品の生産過程において一定の品質を備えていることを検査、検証し、保証することです。品質管理は、3つの管理を通じて品質を保証します。

工程管理・・・作業手順の標準化や設備の維持管理など
品質改善・・・製品品質の検査や管理状態の監視など
品質検証・・・不適合の再発防止改善や未然防止改善など

品質管理体制の重要性

品質管理体制の構築は、製造業を営むうえで重要です。万が一品質管理体制に問題があった場合は、業務停止の可能性もあります。なぜ品質管理体制が重要視されるのか理由を見ていきましょう。

事故防止

品質管理体制の構築は、消費者の安全を保証するために重要です。品質管理体制が整っていない工場では不良品が増え、欠陥品が消費者の元へ渡ってしまう可能性が高くなります。例えば、電気ストーブの発火による火事や、おもちゃにバリが残っていたことで子どもが怪我をするケースなど重大な事故につながるのです。事故防止の観点からも、品質管理体制の構築が重要視されています。

社会的信用

企業視点では、品質管理体制の構築は社会的信用の向上につながり、会社を守ってくれます。当然、品質管理の行き届いた製品は安心して使用したり、販売したりできますが、反対に品質管理の欠陥がある場合、事故の多発や顧客からのクレームが増え、信用性は低くなっていきます。品質管理体制の構築し、社会的信頼性を向上させましょう。

品質管理体制の構築は企業全体の信用性や業務を継続していくうえで必要なことが分かりました。品質管理体制の構築は社会的信用の向上の他にさまざまなメリットがあります。

品質管理体制の構築によるメリット

品質管理体制の見直しを検討する場合はどのようなメリットがあるかを理解しておきましょう。

内部監査基準の明確化

品質管理体制を構築すると、内部監査を効果的に実施可能です。内部監査とは企業の監査役や担当者が監査を行い、不正防止や質の良い製品を作るための改善策を出す業務です。品質管理体制の構築にあたり業務マニュアルを整備するため、作業工程の中に欠陥はないか、現在の管理レベルに足りない部分はないかなどの問題点が見出しやすくなります。

トラブル発生時の原因究明時間の短縮

品質管理体制の構築によって全工程の作業内容や検査内容が明確のため、トラブルが発生した際にどの部門が原因か迅速な把握が可能になります。トラブルが発生した原因の迅速な究明は、被害を最小に止め、信頼性を維持するために必要です。作業の標準化を行い、トラブルの原因究明にかかる時間を短縮しましょう。

不適合品を出荷しない体制構築

取引先が商品を受領した後に不適合品が発見されると、回収や再生産または修理や廃棄が必要で、多大な時間とコストがかかってしまいます。品質管理体制を構築しておけば、検品作業などで出荷前に不適合品を発見することが可能です。事前に不適合品を出さない体制があれば、取引先に迷惑がかかることもありません。

予防措置の予測

トラブル発生後の対応は企業の損失が拡大するため、未然に防ぐことが重要です。品質管理体制の構築が整っていれば、トラブルや不適合品発生時のデータ収集や分析がしやすくなります。トラブルの事前予測で予防設置を取り、大きな事故につながる前に対応が可能です。

取引先からの信用性向上

品質管理体制の構築によって、品質の不安定な商品や不適合品が取引先へ出荷されるリスクは低くなり、信頼性の向上につながります。また取引先が商品を受領後に不適合品を発見しても、代替品や改善対応を迅速におこなえるので信頼性を失うリスクが低減できます。

品質管理体制を構築することでさまざまなメリットがあると分かりました。では品質管理体制を構築するには何から始めたら良いのでしょうか。

品質管理体制の構築方法

品質管理体制の構築には以下の5工程があります。

品質管理体制図の作成
管理する項目の明確化
作業のマニュアル化
機器のトレーサビリティ導入
適正な測定器の見直し・導入

各工程のポイントを理解したうえで、体制を整えていきましょう。

品質管理体制図の作成

はじめに、作業の全体像を把握するために品質管理体制図を作成しましょう。品質管理体制図を作成し社内に共有することによって、全体的な流れと各部門が担当する役割を理解しやすくなります。

品質管理体制図を作成する際には、社内責任者や各工程の担当者を決め記載しましょう。責任者や担当者を明確にすることにより、自覚と責任が生まれミスや失敗を防ぎます。また、品質管理体制図は各部門の作業負担状況や全体の課題を発見する際にも活用できます。

管理する項目の明確化

品質に影響を与える可能性のある要因や生産における作業の過程をすべて洗い出します。改善方法や見直すべき過程を項目化し、品質管理体制を整えましょう。管理する項目を明確化することで管理漏れを防ぎ、作業者や作業工程全体が常に管理された状態に保ちます。

作業のマニュアル化

製品品質の安定化のため、業務のマニュアル化を行います。作業者による業務のバラつきがある場合は、工程の停滞や業務の属人化が起こりやすくなり品質の低下や商品の不安定性に繋がります。正しい作業を徹底するために各作業に一定の基準を定め、作業手順書を作成して業務を標準化しましょう。

また、ベテラン作業員のスキルやノウハウを作業手順書に反映させることによって、社内全体でノウハウ共有ができ商品の品質を上げます。

機器のトレーサビリティ導入

トレーサビリティとは部品の調達から生産、消費までの一連の流れを追跡可能な状態にすることを指します。一般的にはバーコードや二次元コードで管理され、コードを読み取ることによって作業内容や検査内容、検査画像を記録する仕組みです。トレーサビリティを導入することによって問題がある製品の製造番号を迅速に把握し、不適合品の回収をスムーズにします。不適合品が発生したときの対応時間や手間が短縮され、リスク管理体制の強化も可能です。

また、トレーサビリティによって不具合が発生した部門や工程が明確になり、現場の見直しや改善をおこなえるため、社員の意識も高まります。

適正な測定器の見直し・導入

品質管理体制の構築には、アプリケーションや生産過程に適した計測器を導入しましょう。測定器は不具合を早期発見し、不適合品の発生を検知したり未然防止に繋がります。劣化している測定器があれば修理や交換をして、適切な状態で生産がおこなえるように機器を整える必要があります。また、設定値のズレが生じていないか設備能力が規定を満たしているかなども定期的に確認し、調整しましょう。

品質管理体制の強化を図る製造業の事例

企業の品質管理体制の重要性は、年々増しています。では企業では実際にどのような方法で品質管理体制の強化をしているのでしょうか。事例を確認していきましょう。

部品メーカー/A株式会社の事例

部品メーカーであるA株式会社では、2020年4月に一部の製品の検査成績書に不適切な数値が記載されていました。また、検査結果の書き換えのほかに取引先の承認がない4M(Man 人、Machine 機械、Material 材料、Method 方法)の変更などの不適切な行為が発生しており、品質管理体制の改善が求められました。

その後、責任者の設置やガイドラインを作成。書類書き換え防止のために、検査データの適切な生成や自動的に管理されるシステムを構築し、問題の改善に努めています。

他には再発防止策推進プロジェクト体制や定期的な品質コンプライアンス強化会議、4Mの正常化活動など、再発防止のためさまざまな取り組みを実施しています。

製薬業界/B工業会の事例

製薬業界のB工業会では企業価値を向上させるため、製品や工程、サプライチェーンなどを踏まえた品質管理体制を構築しています。主な実施内容は以下の通りです。

・品質管理担当の明確化
・品質管理部門に責任者を設置
・品質管理に関する検査データを、役員へ報告

検査データに関しては、データが自動的に記録される仕組みを構築しており、管理業務では確認や共有が徹底されています。また、品質管理体制の見直しでは、ISO9001やJIS指定工場の取得などの認証制度を活用。定期的な内部監査により、品質管理体制を適切に維持しています。

自動車メーカー/C社の事例

自動車メーカーC社では顧客ニーズに応えるために品質管理体制を強化しています。情報収集機能を強化することによって問題解決と共に対策を講じ、再発防止へと努力を重ねています。

例えば、お客様センターや販売店から収集した顧客の安全に関わる情報を分析し、派遣された技術フィールドスタッフによって24時間以内にファーストコンタクトを実施。その後自動車の確認やデータ収集、部品を回収。顧客のトラブル解決策を講じているのです。

また、C社が車両搭載を促進しているのが、事故前後のドライバー操作や車両の動作などを記録する装置である、イベント・データ・レコーダー(EDR)です。イベント・データ・レコーダーの情報を基に事故原因を調査し、品質改善や事故防止に努めています。

さらに、C社は情報開示も強化しています。グローバル品質特別委員会で決まった事故防止に関する改善内容についても、専門家が確認や評価結果を公表する仕組みです。

まとめ

本記事では、品質管理体制を整える重要性や体制づくりについて解説しました。

品質管理体制を構築することで、商品の安全性や取引先や顧客からの信頼性を高められます。また、不適合品やトラブルに対して迅速に対応できるため、大きな被害を受けるリスクを低減します。顧客満足度を向上させるだけでなく、自社に関しても良い環境を構築するために、品質管理体制の見直しや強化をしていきましょう。

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