生産管理の重要性(価値)とは?~生産管理システムの導入により、管理の質を向上させるために考えておきたいこと~

システム

2020年07月22日(水)掲載

生産管理とは何か、なぜ重要なのか

世の中にあふれている多くの製品は、工場で造られています。工場では、材料を仕入れ、人や機械を使い製品を造っています。この時、材料や人や機械を無計画に使い製品を造ると、
その製品はいつ頃できるのか、費用がいくらかかるのか、いつもと同じ製品ができるのか、わかりません。このため、材料や人、機械やその使い方など、これらの要素をどのようにまとめて製品を納めるかということが生産管理です。製造業をはじめ、企業経営において生産は基本的な活動です。

JIS Z 8141の「生産管理用語」には「経営」は以下のように定義されています。
「経済的な目的を達成するため、財・サービスの生産・流通・販売・リサイクルを計画的に設計し、組織し、運用する総合的な活動、又はその意識的活動形態」と定義しています。
また、「生産」は、「生産要素である素材など低い価値の経済財を投入して、より高い価値の財に変換する行為又はその活動」としています。
経営活動においては資源を配分し「価値」を継続的に生み出すことが、生産活動の根幹です。

生産管理は、この企業経営における生産から販売やリサイクルまでの活動であり、これらを効率的行うために計画し設計して運用するための管理活動なのです。

生産管理に含まれる業務

生産管理業務は、「仕入→製造→在庫→販売→回収」という通常の事業のサイクルにおける資源を適正に配分する必要があります。つまり営業サイクルでの資源配分を考えて生産性(投入に対する産出)を高めていかなければなりません。生産性を高めるためには、生産速度を上げること、稼働率を上げること、良品率を上げること、材料費を下げること、販売価格を上げることなどを行います。

また、それを実行するための総合的な活動は、
・計画を作る(生産計画)
・作業の進み具合をチェックする(進捗管理)
・ムダな作業を減らす(現場改善)
・設備の稼働率をあげる(設備管理)
・不良品を減らす(品質管理)
・高付加価値商品を開発する(商品開発)
・買い方を工夫して材料費を下げる(購買管理)
・在庫を減らす(在庫管理)
・損をしない価格をきめる(原価管理)
思い当たるところを挙げただけでも生産管理にはこれだけの業務があります。企業によって文化や生産管理の範疇は微妙に異なるので、この業務は含まれない、この業務は含まれるというものもあるかと思います。
しかし、共通して言えることは、いずれも広範囲な業務を総じて生産管理とよんでいるところです。

では、実際の現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

製造部門は、顧客の声を直接聞く機会が少なく、顧客の窓口である営業部門のいうことを受けて製造せざるをえません。営業部門からは、限りなく品質を良くして、限りなくコストを下げて、限りなく早い納期で納品するよう要求されるでしょう。製造部門は、すべてを同時に満たすには限りがあるため、作業場所や設備の確保、人員配置や必要に応じた教育など様々な要素を進めていかなければなりません。
製造部門と営業部門は相反して互いに意見をぶつけ合うことが多くなりますので、生産管理はそれらのすべてにおいて製造(造る側)と営業(売る側)の利害を調整することも必要です。

生産管理の課題

生産管理の課題について、ある工場の管理者に聞いてみたところ次の話が出てきました。
・熟練工の退職で現場力が低下している
・少子高齢化で日本人のみならず外国人の協力もなければ生産もままならない
・設計図の不備による生産現場の負担が増えている
・製品がどこにあるのか工程管理、進捗管理ができていない
・製品の加工順序の変更に対応できない
・一部の機械が故障するとライン全体が停止する
・製品の移動経路が複雑になりやすい
・材料や部品などの資材を発注している外部業者の納期管理ができていない
・顧客から注文を受けた時点で、迅速に受注情報を生産計画に反映できない

生産現場は毎日のように変化しているため、多くの課題を抱えています。これらの課題は、「3×3のマトリックス」にまとめることにより、目の前の生産の問題点について、どこでどのような課題があるのか「見える化」することができます。
3×3のマトリックスとは、(設計、調達、作業)×(品質、価格、納期)です。
例えば、「熟練工の退職で」(作業)×「現場力が低下している」(品質)や「少子高齢化で外国人の協力がなければ」(設計or作業)×「生産もままならない」(納期)のようにまとめます。
このように「どこで・なにが」起こっているか「見える化」ができれば、着眼点が明確になり工程カイゼンへの手がかりが解ってきます。
カイゼンを進めるにあたり、頻繁に活用されるツールに「生産管理システム」があります。しかし、カイゼンしようと突然「生産管理システム」を導入して、一気に解決しようすることを考えると大きな火傷(やけど)をおってしまいます。
※生産システムとは、製造業における生産活動において、計画、生産、販売、在庫管理、原価計算、品質管理などの求められる要件を統合して管理できるITシステムのことです。

生産管理システムとは?どのようなことが行えるのか

生産管理システムのメリットをシステム側から説明すれば「1.不良率の管理、2.在庫管理の適正化3.生産計画の短縮、4.業務負荷の平坦化、5.利益率の向上」ということになります。これは、ゴールとしての「あるべき姿」であって、決して導入することですべてが現場カイゼンにつながるわけではありません。

生産管理システム導入までに「考えておきたいこと」があります。それは、「お金につながる指標を明確にすること」です。生産管理の視野を営業サイクルで考え、材料を買い加工をして、最終製品として出ていくところをしっかり確認して流れを止めないことです。
これは、実際の生産現場を訪問した時も同じことが言えます。工場に行き必ず見なければならないところは、製品が工場から出ていくところです。これを見れば工場の生産性がすぐにわかります。工場から製品が出ていかなければお金にはなりません。つまり、製品在庫の状況を含めて流れの徹底を図り、企業が資金を回収する効率性・スピードをあげていくことにこだわりをもつことが重要です。特に、2000年を境に「売れる時代(需要>供給)から売れない時代(需要<供給)」へ転換してきて、なおさら重要性は増していると思います。
営業サイクルで考えれば、企業はモノを販売することで利益を得るので、いかに効率良くモノを現金化するかが大切であると私は考えています。特に、在庫とは「現金化を待っているモノ」です。ここが原因で流れが停まっていないかを確認してください。
例えば、製造業では、原材料を仕入れ製造から販売活動にいたるまではキャッシュアウトが続きます。その後、販売先に対して製品が売れると、一般的に売掛金が発生します。それを回収して初めてキャッシュインとなります。この一連のサイクル(期間)をいかに迅速に回せるかが資金効率を左右します。事業活動のために投じた資金(キャッシュ)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているか企業活動の効率性を考えることが大切です。企業は儲ける仕組みづくりを行なわなければなりません。これが、「お金につながる指標を明確にすること」につながります。
財務的な視点で考えますと、仕入から製造、販売に伴う現金回収までの日数がかかると生産価値がさがります。在庫予測が甘くなることで資金繰りに影響を及ぼし、売上総利益を大きく圧迫することになります。営業販売予測を厳密化することで現金循環サイクルを短くすることが「稼ぐ力」を付けることにつながってきます。

生産管理システムを導入する際には「お金につながる指標を明確にすること」を進めることで、ゴールとしての「あるべき姿」に近づけることができるのです。これを考える生産管理でないと価値が生まれてこないでしょう。

まとめ

生産管理は、企業経営における生産から販売やリサイクルまでの活動であり、これらを効率的行うために計画し設計して運用するための管理活動です。

生産管理業務は、「仕入→製造→在庫→販売→回収」という通常の事業のサイクルにおける資源を適正に配分する必要があります。総合的な活動は、生産計画、進捗管理、現場改善、設備管理、品質管理、商品開発、購買管理、在庫管理、原価管理など広範囲な業務を総じて生産管理と呼んでいます。

生産管理の課題は、「3×3のマトリックス」にまとめることにより、目の前の生産の問題点について、どこでどのような課題があるのか「見える化」することができます。

生産管理システムを導入する際には「お金につながる指標を明確にすること」です。現金循環サイクルを短くすることが企業の利益効率高めて「稼ぐ力」を付けることができます。生産管理で企業が儲ける仕組みづくりができれば、ゴールとしての「あるべき姿」に近づけることができるのです。これを考える生産管理でないと価値を生まれてこないと私は思います。

執筆者T.K氏

秋田大学鉱山学部卒業後、エレクトロニクス業界の企業に入社し、事業の立上げから閉鎖までを経験。その後、品質管理部門にてキャリアを積む。 この部門での経験を通して、「金脈を掘り当てる」ための品質を見極める眼力を身につけ、現在は製造業専門の売上アップをサポートする経営コンサルタントとして活動中。

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