課題解決の具体的なプロセスや課題別の有用なフレームワークを解説
2025年05月29日(木)掲載
自社を成長させて安定した収益を出すためには、現状と理想像のギャップ、つまり課題を解決しなくてはなりません。しかし、そうと理解していてもなかなか実行に移せない、あるいは実行しても成果が出ない、ということもあるでしょう。
そこで本記事では、課題解決の基本となるプロセスと、有用なフレームワークを解説します。解決できずに残っている自社の課題を何とかしたいと考えている経営者や管理者は、ぜひご覧ください。
■課題解決とは
■課題解決のプロセス
■課題解決に使えるフレームワークの具体例
■職場で課題解決に取り組むポイント
■課題解決の経営支援サービス「HiPro Biz」
■適切なプロセスを踏み各種フレームワークを活用することで、課題解決は実現する。
課題解決とは
課題解決とは、企業の現状と理想像のギャップ(課題)を解決するために、その背後にある要因を分析し、適切な対策を講じることです。この性質上、企業の成長のためには欠かせない対応だといって差し支えないでしょう。
課題解決で最も重要となるポイントは、「課題の本質を理解すること」です。つまり、その課題の本質的な原因は何か、そしてどうすれば根本的な解決が可能であるかを考えることが非常に重要なのです。
問題解決との違い
課題解決と似た概念として「問題解決」と呼ばれるものもあります。
「課題解決は理想像とのギャップを埋めることで、問題解決は現状のネガティブな事象に対応すること」と使い分けられる場合もありますが、実際には明確な違いはありません。社内で認識が統一されていれば、どちらの文言を使っても問題ないでしょう。
本記事では、以降「課題解決」に文言を統一し解説を行います。
課題解決のプロセス
より高い効果の見込める課題解決を行うためには、以下の5つのプロセスに沿う必要があります。
- 課題の特定
- 原因の調査・分析
- 解決策の選定
- 解決策の実行と効果検証
- 継続的な改善
それぞれの詳細を順に解説します。
課題の特定
課題解決を実行に移すためには、対処すべき課題を明確にしなくてはなりません。そのためにも、まずは自社の現状を正確に分析した上で、目標として定めている指標とどれだけの乖離があるのかを調査しましょう。
ここで、例えば売上が目標の数字に到達していないなどのギャップが判明したのであれば、それが解決すべき課題となります。また、数値化の難しいものであれば、別途情報収集などを行い言語化に向けてアプローチします。
原因の調査・分析
課題の特定が完了したら、次はその課題の発生した原因の調査や分析を行います。課題に関連する要因を一つひとつ掘り下げていき、中でも最も強い関係があると思われるものを特定することが、このプロセスの目的です。
表面上は似たような課題であっても、その原因は異なるというケースがあるため、先入観や主観を排して調査や分析を行うことが非常に重要です。客観的なデータや情報を収集し仮説を立てて、それを一つずつ確実に検証し、解決策の手がかりを探っていきましょう。
解決策の選定
このプロセスでは、先の調査や分析の結果を基に有効な解決策をいくつか検討し、選定を進めます。
例えば、売上目標の未達が「営業力の不足」によって引き起こされているのであれば、ナレッジ共有の場を設ける、または人材を採用するなどが解決策の候補として挙がります。そのいくつかの候補に対して実効性の観点から優先順位をつけて、上から順に実施していく、というのが基本的な流れです。
この際、実効性の高さだけではなく、実現可能性や要する期間、また担当者、部署ごとの役割分担なども必ず検討しましょう。
現実的に実行できる解決策を基に、具体的な計画を立てることが大切です。
解決策の実行と効果検証
前プロセスで立案した計画に基づき、解決策を実行します。
ここでは、計画で定めた手順やスケジュールに沿うだけでなく、実行プロセスや進捗なども逐次記録することが重要となります。効果検証の材料となるだけではなく、予期せぬトラブルの発生時に、その原因を探るための足がかりにもなり得るためです。
解決策の実行後は、課題が解消できたかどうかの効果検証を行います。ここでの内容次第で次の継続的な改善プロセスの精度も変わるので、少しでも多くの情報を収集し検証を行いましょう。
継続的な改善
最後に、効果検証の結果に基づいて良かった点や改善の余地がある点を洗い出していきます。良かった点はノウハウとして蓄積し、改善点はPDCAサイクルを回すための材料として活用します。
一度の取り組みで組織的な課題が解決されるというケースは、非常にまれでしょう。取り組みを何度か繰り返してPDCAサイクルを回し、徐々に確度を上げていくことが、課題解決では必要不可欠な対応です。
課題解決に使えるフレームワークの具体例
ここからは、課題解決の取り組みで有用となるフレームワークを、ステップごとに分けて解説します。以下のフレームワークを活用できれば、課題解決が成功する可能性も高まるでしょう。
課題発見や現状の分析に使えるフレームワーク
課題発見や現状分析のプロセスでは、以下の4種類のフレームワークが効果を発揮します。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、一つの課題をさまざまな要素に分解し、大きな影響を与えている要因を洗い出すためのフレームワークです。
例えば、売上が少ないという課題は、「ターゲット層へのアピールが十分ではない」「商品の強みが認知されていない」「価格が高い」などの要素に分解されます。これらを因果関係や包含関係に基づきツリー状に整理して、課題の全体像と本質を明らかにしていく、というのがロジックツリーを用いた分析の進め方です。
複雑に関係し合った要因を可視化して整理できるため、チーム内での議論も活発に行えるようになります。
3C分析・4C分析
課題やその原因が市場に関連すると考えられる場合は、3C分析および4C分析を活用しましょう。
3C分析では、以下の3つの外部要因から、市場での自社の状況や弱点などを分析します。
- Customer(顧客)
- Company(自社)
- Competitor(競合)
4C分析も目的は同じですが、以下の通り、分析の基となる要因が異なっています。
- Customer value(顧客価値)
- Customer Cost(顧客コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーションの取りやすさ)
もちろん、この二つを併用して市場分析を行うことも可能です。「新規層が増えない」「売上が伸び悩んでいる」などの課題があるなら、3C分析や4C分析を活用してその原因を探ることをおすすめします。
SWOT分析
内部環境と外部環境、そしてプラス要因とマイナス要因の2軸をかけ合わせて自社の現状を分析する手法が、SWOT分析です。2×2の4象限から自社を取り巻く状況を多角的に分析し、課題の特定や取るべき解決策の検討を行います。
プラス要因 | マイナス要因 | |
---|---|---|
内部環境 | Strength(強み) 自社の商品やサービスが、他社のものに勝っている部分 |
Weakness(弱み) 他社に後れを取っている、あるいは苦手としている部分 |
外部環境 | Opportunity(機会) ビジネスチャンスにつながる環境の変化 |
Threat(脅威) 競合他社の伸張といった、自社に影響を与えるような環境の変化 |
なお、SWOT分析は課題解決の取り組みだけではなく、新規事業の立ち上げ時にも非常に有用なフレームワークとなります。
自社をさまざまな観点から成長させるためにも、積極的に活用していきましょう。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、商品やサービスが顧客に届くまでのプロセスに特化した分析フレームワークです。企業の活動を、商品やサービスの生産から販売までの「主活動」、そして主活動を間接的に支える「支援活動」の2種類に分けて分析を行います。
自社の流通に関する業務や対応が細分化され、潜在的なボトルネックが洗い出されるため、コストや業務負担に関する課題を根本的に解決できる可能性があります。
課題解決の戦略設計に使えるフレームワーク
課題解決のフェーズでは、その用途に適したフレームワークを選定して活用したいところです。候補としては、以下の4つのフレームワークが挙げられます。
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)では、「市場成長性」と「市場占有率」の2軸を用いた事業や商品の分析が可能です。具体的には、以下の表のどの分類に自社の事業が該当するのかを検討し、そこから課題解決のための足がかりを獲得します。
市場占有率:高 | 市場占有率:低 | |
---|---|---|
市場成長性:高 | 花形 成長性、占有率ともに高く、継続的な投資が必要 |
問題児 成長性はあるがシェアは見込めないため、投資に対する慎重な判断が必要 |
市場成長性:低 | 金のなる木 占有率が高いため安定した収益が見込めるが、プラスの投資は不要 |
負け犬 成長もシェアも見込めないため、撤退が妥当 |
例えば、「金のなる木」に分類される事業に対して過剰な投資が行われている、と判明したのであれば、「花形」事業への再分配を行う、といった対応を行いましょう。
このように、プロダクトポートフォリオマネジメントは、自社の経営資源の配分に関する課題を解消するのに最適な方法です。
7S
ハード面(構造に関する要素)とソフト面(人に関する要素)の観点から自社組織を分解し、課題を分析するフレームワークが7Sです。
ハード面とソフト面には、それぞれ以下の要素が含まれています。
ハード面 |
・戦略(Strategy) ・組織構造(Structure) ・仕組み(System) |
ソフト面 |
・共通の価値観(Shared Value) ・スキル(Skill) ・人材(Staff) ・組織風土(Style) |
これらの相互関係を明確にし、自社のどこに改善の余地があるのかを整理することで、課題の解決に取り組みます。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスとは、以下の9つの要素からなる、ビジネスモデル可視化のためのフレームワークのことです。
Customer segments (顧客層) |
自社の商品やサービスのターゲットとなり得る層 |
Channels (チャネル) |
自社の商品やサービスをターゲット層に届けるために必要なチャネル |
Value proposition (提供価値) |
自社の商品やサービスを通じて顧客に提供できる価値 |
Key resources (リソース) |
資金や人材など、価値提供のために必要な経営資源 |
Key activities (主要活動) |
商品生産や課題解決の取り組みなど、価値提供のために必要となるアクション |
Customer relationships (顧客との関係性) |
顧客との間に築く関係性 |
Key partners (パートナー) |
自社の活動を支援してくれる外部のパートナー |
Revenue streams (収益の流れ) |
提供した価値に対する利益を得る際の流れ |
Cost structure (コスト構造) |
ビジネスの運用に際して発生する全てのコスト |
上記を一つずつ整理することで、複雑化したビジネスモデルの整理が進み、改善すべき点も自然と洗い出せます。そうなれば、課題に対する効果的なアプローチ方法や、取るべき戦略なども検討できるようになるでしょう。
MECE
MECEは、自社の状況や課題を網羅的に分析し、解決するためのフレームワークです。
Mutually(互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れなく)の頭文字を取った名称で、そのことが示す通り、漏れや重複を排した上での課題分析がかないます。
複雑な状況をシンプルに切り分けて、個別の課題を正確に分析できるため、課題解決の取り組みをよりスムーズに進められます。
計画や実行に役立つフレームワーク
課題解決プロジェクトの計画や、策定した解決策の実行に際して有用となるフレームワークが、以下の3つです。
5W1H
計画を実行する際に有用なフレームワークの一つが、5W1Hです。以下の6つの要素を明確化することで計画がより具体的なものとなり、実行に移しやすくなります。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
「誰がいつまでにやるのか」「どのように実現するつもりなのか」が整理されていなくては、課題の解決に取り組むことはできません。
計画が暗礁に乗り上げないように、5W1Hを活用して容易に実行できる状態にしたいところです。
6W3H
5W1HにWhom(誰に)、How many(どれほどの数)、How much(どれほどの金額)の3要素を追加した、6W3Hというフレームワークも存在します。関係者や数量、金額といったビジネスに関わる要素が含まれているため、現場でのより実践的な活用に適しています。 5W1Hだけでは計画の実行に十分ではない場合は、こちらを活用しましょう。
PDCAサイクル
計画を実行する際に有用なフレームワークとして、PDCAサイクルを外すことはできないでしょう。
PDCAサイクルでは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を一連の流れとし、そのサイクルを繰り返すことで目標達成に向けて着実に歩を進めていきます。計画を段階的かつ着実に進められるので、「課題解決策を検討したが、宙に浮いたまま放置されてしまった」といった事態に陥らずに済みます。
また、サイクルの最初で必ず目的を定めるため、実行に移した段階で目的を見失ってしまうこともありません。
職場で課題解決に取り組むポイント
実際に課題解決に取り組む際は、先に紹介したフレームワークを活用するだけではなく、以下のポイントも意識したいところです。それぞれの詳細を順に解説します。
実践するための仕組みを整備する
社員がスキルを活用できる仕組みを整備することが、課題解決に向けた取り組みとしては欠かせません。
チーム長や管理者だけが課題解決に取り組んでも、大きな成果は出せないでしょう。社員一人ひとりが課題解決能力を備え、改善活動に意欲的に取り組むことではじめて、意義のある施策になるといえます。
そのためには、まず研修などで社員に課題解決に関するノウハウを身につけてもらう必要があります。その上で、身につけたノウハウを社員が職場で活用できるように、仕組みづくりを済ませておくことが大切です。
課題や目的をチーム内に浸透させる
自社にどのような課題があるのか、そしてどのように解決すべきなのかをチーム内に周知することも、非常に重要なポイントです。メンバー間の課題に対する認識を統一することで、チームでの一体感が生まれる上に、より効果的にディスカッションを行えるようにもなります。
個人で解決可能な課題にはどうしても限界がありますが、チーム内で協力体制を組み意見を交換し合えば、重要度の高い課題にも迅速に対応できるでしょう。
経営支援サービス「HiPro Biz」
フレームワークが課題解決に有用であることは確かですが、それでも全ての課題に対応できるとは限りません。自社内の人材にフレームワークを活用するノウハウがない、ということも考えられます。
そのようなケースでおすすめのサービスが、プロ人材による経営支援サービス「HiPro Biz」です。
「HiPro Biz」は、経営課題解決に取り組む企業向けに、経営層、CxO 、エキスパートクラス等、高度な課題を解決できるプロと共に、課題解決に導くサービスです。フレームワークを駆使しても対処できなかった課題も、プロ人材のサポートがあれば解決が見込めるでしょう。
プロ人材とともに社内の課題を迅速に解決したいのであれば、ぜひ一度お問い合わせください。
適切なプロセスを踏み各種フレームワークを活用することで、課題解決は実現する。
今回は、課題解決の5つのプロセスと、有用なフレームワーク11種類を解説しました。
課題解決には5つのプロセスが存在し、それらを適切に実行することで、課題に対してより効果的な施策を打ち出せるようになります。また、状況に応じて各種フレームワークを活用することでも、課題解決の取り組みの精度は向上するでしょう。
その上で、もしフレームワークを活用しても解決できない課題が残ったのであれば、一度「HiPro Biz」にご相談ください。
多種多様な領域のプロ人材の中から、貴社の課題を解決するためのスキル、ノウハウを持った人材をご提案し、改善に向けてサポートさせていただきます。