UXでよく生じる4つの誤解とは?

マーケティング

2020年07月07日(火)掲載

今回は、「なぜあなたのサービスは使われないのか?(愛されるUX)」の続きとして「UXはデザイナーの仕事?UXでよくある誤解4つ」についてお話ししたいと思います。

前回お話しした通り、愛されるUXになるためには、お客様が「時間やお金を使ってでも」そのサービスを「継続的に」利用したいと思えるようなサービスを目指すことが非常に重要です。
そのためには、まずはお客様が欲しいサービスを理解することが大切です。いくら良いサービスを作ったとしても、それがお客様のニーズにマッチしなければ事業として成立しないからです。

次に、圧倒的にコストパフォーマンスや価値が高いこと、そしてそれがお客様にしっかり伝わることが大切です。お客様は時間やお金などのコストをかけてサービスを利用するため、その見返りであるコストパフォーマンスや価値が高くなければ、お客様の継続的利用は見込めなくなってしまうからです。

更に、サービスとして使いやすいものであること、使い続けるインセンティブを与えることも重要です。類似したサービスの中で圧倒的に使いやすいサービスであれば、お客様はそのサービスを利用したいと考えるからです。また、使い続けることで良いことが起きるというユーザー体験によって、お客様が継続的にそのサービスを利用する可能性は圧倒的に高くなるからです。

上述のポイントに加えて、一度満足できるサービスができたとしても、その後も良いサービスであり続けるために更に追求していくことも求められます。そのために、日頃からPDCAサイクルを心がける必要があります。
以上を意識することで初めて、お客様にとってなくてはならないサービスを実現することが可能になるのでしょう。お客様にいつまでも使い続けてもらえる、愛されるサービス・愛されるUXを目指していきましょう。

愛されるUXになるポイントを抑えた上で、今回はUXでよくある誤解と、私なりの考えをお話しします。

よくある誤解1:「UXはUIの体験設計をすればよい」⇒「体験全体がUX」

まず1つ目に一番良くある誤解として、「UXはUIの体験設計をすればよい」という考えている人がいるようです。しかし実際は、「体験全体がUX」です。

UIとUXが同じものであると間違えて理解している人も多くいるようですが、この二つはまったくの別物です。
前回のおさらいをしますと、UX(ユーザーエクスペリエンス)は「人工物(製品、システム、サービスなど)の利用を通じてユーザーが得る経験」とwikipediaに書かれています。日本語では「ユーザー経験」「ユーザー体験」などと訳されます。

一方でUIはユーザーインターフェイスの略で、Interfaceは「接点、接触面」という意味です。UIはユーザーと製品・サービスの接触面を指し、「ユーザーの目に触れる部分使用する部分」は全てUIということになります。

ユーザーにより良い・愛されるUXを作るためには、優れたUIが必要になります。なぜなら、ユーザーとの直接の接触面であるUIがユーザーにとってわかりにくい構成となると、ユーザーは離れていってしまうからです。

しかしその一方で、UXを得られるのはUIの部分だけではありません。接触面である UI以外にも、「愛される体験」となる要素はたくさん存在します。
また、スマホアプリを中心として、特定のインタフェースだけを最適化しても、UXが最大化されているとは限りません。

例えばECサイトについて考えてみます。商品をサイトで注文し終えたらそこでUXが終わりではなく、商品が届いて、商品を使ってみて、喜びを感じるまでがUXです。つまり、いくら商品が良くても商品が届くまでに時間がかかったり、お客様への対応が雑であったりすれば良いUXとはいえないでしょう。逆にUIが完璧であったとしても商品の質が低い場合も同じです。

スマートフォンアプリでも同様に、仮にスマートフォンのUXが最高であったとしても、到着まで2週間以上かかってしまう、壊れた商品が届いてしまう、などが起こってしまうと体験は台無しです。
お客様がほしかった素敵な商品が届いて初めて良いUXであったと言えます。
例えば、食品業界の某大手企業が提供するスマートフォンアプリで、ある対応自販機と接続してドリンクを購入すると、その都度スタンプを集めることができ、特定数のスタンプを集めるとドリンク1本と無料で交換することができるというアプリがあります。
このアプリを利用することで、顧客側にとっては、スタンプを集める楽しさや、それによってドリンクを無料でもらえる嬉しさを体験することができます。
そのようにすることで、企業側としては、顧客に自動販売機でドリンクを購入するインセンティブを与えることができると同時に、企業イメージの向上へと繋げることができるでしょう。

このように、UXはUIの体験設計をすればよいのではなく、体験全体がUXとなります。サイトやデバイスのUXが最高でも、そのほかのサービスを疎かにしてしまってはその体験は良いUXとは言えません。体験全体がUXであるため、全ての過程において良い体験が必要となります。

よくある誤解2:「UXはデザイナーの仕事」⇒「UXは誰もが考慮する必要がある」

次に多い誤解として、UXはデザイナーの仕事であると考えている場合があります。「UXデザイン」という考え方が、近年ビジネスの中で重視されるようになっていることもあり、この誤解が生じやすくなっています。しかし実際は、UXは誰もが考慮する必要があるのです。

デザイナーは、サービスの意匠を考える担当のことです。「UXデザイナー」という言葉があるように、デザイナーはもちろんUXの大事な一部を担っています。しかし、デザイナーだけでなく、施策の設計を行うマーケッター、商材の調達を行うMD、発送を行う発送担当などの様々な担当者が関わって初めてサービスは実現していきます。

そのため、UXは特定の担当が考えるだけで完結するわけではありません。デザイナーだけではなく、そのサービスに関わる誰もがUXを理解するように努める必要があります。そして、担当者同士で連携を取り、UXの改善をしていくことが非常に重要なのです。

他方で、それぞれの担当が最適化するだけでは限界もあります。
可能であればサービス全体をend-to-endで見るUX担当を1名、アサインすると効果的でしょう。

よくある誤解3:「UXは専門家が必要」⇒「UXは一人一人の創意工夫が必要」

続いて、「UXは専門家が必要」であると考える人が多くいるようですが、UXの専門家資格として、人間中心設計(HCD)が上げられます。

まず初めに人間中心設計(以下、HCD)とは、ユーザーを中心において製品やサービスを開発するPDCAプロセスのことで、商品を使う人間の要求に応えるために「人間」を中心にすえて、人間の要求に合わせることを優先した設計のことです。
HCDにおいて目指すのは、問題点の改善や魅力の創造など、ユーザビリティの向上です。これは単純に現状の問題点を改善することではなく、積極的に「人間の要求」に応えるべく、新たな魅力を設計することです。
人間中心設計(HCD)について学んだ方がUXを担当することで、よいUI・UXを作ることができる事例も多くあります。

しかし、それがUXの全てではありません。例えば、HCDはソフトウェアの開発において編み出された設計手法です。洋服をデザインする、街づくりをする、などの局面では、設計手法外で、よい体験を考える必要があります。

構想段階から人間中心設計のプロセスを取り入れて開発された事例として、2001年に発売されてヒットした調理器具の商品を全面リニューアルし、再開発された某調理器具があります。リニューアルする際に、既存ユーザーを対象にしたヒアリングで、好きなところや嫌いなところ、改善点などを細かく洗い出したそうです。さらに調理中の様子を撮影し、ユーザーの料理体験を把握する「行動観察」が行われ、それをもとにした工夫をコンセプトやデザインに取り入れたとのことです。

このように、人間中心設計を取り入れたデザインが、より良いUXを作り上げていきます。

よくある誤解4:「UXは1つのサービスのことである」⇒「UXはブランド群全体のことである」

最後に、UXは「1つのサービスのこと」と誤解をしている人が多くいるようですが、実際のところは「ブランド群全体のこと」を指しています。

例として、デベロッパー業界の某企業について考えてみましょう。

マンション等の物件、各路線の電車や駅施設、スーパーやデパートなどの商業施設など、顧客が様々なUXを体験できるように設計されており、それによって、購入物件での生活、沿線での交流関係、商業施設で遊んだ思い出など、単なるインフラとしての役割を超えた様々な付加価値を得ることができます。

つまり、より良いサービス・UXを実現するためには、ブランド全体の価値を考えながら、サービスのUXを設計していくことが非常に重要となってくるのです。

まとめ

今回のコラムでは、「UXはデザイナーの仕事?UXでよくある誤解4つ」についてお話ししました。
簡単におさらいしましょう。

まず「UXはUIの体験設計をすればよい」のではなく実際は、「体験全体がUX」です。サイトやデバイスのUXのみならず、そのほかのサービスを含め、全ての過程において良い体験が必要となります。

次に多い誤解として、UXはデザイナーの仕事だと考えている場合があるとお話ししました。デザイナーもUXの大事な一部を担っていますが、様々な担当者が関わって初めてサービスは実現します。よって、サービスに関わる誰もがUXを理解するように努める必要があります。担当者同士で連携を取り、UXの改善をしていくことが非常に重要です。

続いて、「UXは専門家が必要」であると考える人が多くいるようですが、UXの専門家資格として、人間中心設計(HCD)がよく上げられます。
UXには専門家が必要なのではなく、人間中心設計について学んだ方がUXを担当すると、よいUI・UXを作ることができるということです。

最後に、UXは「1つのサービスのこと」と誤解をしている人が多くいるようですが、実際のところは「ブランド群全体のこと」を指しています。より良いサービス・UXを実現するためには、ブランド全体の価値を考えながらサービスのUXを設計していくことが非常に重要です。

UXで良くある誤解をまとめると、UXは体験やサービス・ブランド全体で考え、専門家やデザイナーだけではなくサービスに携わる全ての人が連携を取り、改善していく必要があります。一見難しく感じるUXですが、まずは全体的にサービスを見直し、愛される、良いUXを作るためには全ての過程での改善がポイントになることを抑え、ブランド全体の価値を考えながらサービスのUXを設計していきましょう。

執筆者D.Y氏

東京大学卒業後、大手事業会社の担当部長として多くの事業成長及び新規事業創出に貢献。現在は、会社を設立し、代表取締役と某国立大学情報学科の客員研究員を現任。
自らが代表を務める会社では、事業立上げ・グロースハック・DXを推進。その傍らで、事業投資・エンジェル投資を推進。

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