中途社員の採用基準|優秀な人材を獲得する方法
2020年05月18日(月)掲載
近年の日本社会では少子高齢化が進行し、働き手不足が深刻化しています。企業間での人材獲得競争が激化し、十分な人員を確保できないことで慢性的な人手不足に悩んでいらっしゃる企業経営者の方も多いのではないでしょうか。 人手不足を補い、即戦力となる優秀な人材を獲得するために重要なのは中途社員の採用です。
しかし、明確な基準がないまま選考を進めてしまうと、優秀な人材が流出し、必要以上に教育コストがかかるなど、せっかくの採用チャンスをふいにしてしまう恐れがあります。
特に「社員が入社してもすぐに辞めてしまう」「業績目標を達成できていない」など社員の勤務態度や仕事の成果に問題がある場合は、現状の採用制度に何らかの原因があるかもしれません。
今回は、自社にマッチした優秀な人材を取り逃さないためにはどのようにして採用基準を設定すればよいのか、その方法についてお伝えしていきます。
中途採用の市場の変化
まずは、近年起きている労働市場の主な変化について簡単に見ていきましょう。現在の労働市場で顕著にみられる傾向として「労働人口が減少している」「転職者が増加している」「即戦力のある人材への需要が高まっている」の3つが挙げられます。
労働人口の減少で採用が難しくなっている
最も大きな現在の労働市場の変化は、少子高齢化による労働人口の減少です。現在、多くの中小企業や大企業が十分な人材を確保できず人手不足に悩まされているという現状があります。優秀な人材ほど多くの企業が求めるため、採用チャンスを逃さないことが重要です。
働き方の多様化により転職者が増加している
また、働き方や価値観の多様化によって長期間同じ企業に勤める労働者が減り、転職をする労働者が増えています。
現在の転職者は、個人のスキルアップやワークライフバランスの改善を目的とした転職など、仕事より個人の働き方を重視した会社選びをする傾向があります。このような転職者の中からいかに自社とマッチした人材を企業が確保できるか採用の力が問われていると言えます。
企業は中途社員により即戦力を求める傾向へ
現在の企業は、日々状況が変化する国内外での競争やIT化・グローバル化への対応など事業の変革を迫られています。そのため、教育にかける時間やコストの余裕がなく、より一層即戦力となる人材への需要が高まっています。企業側は、専門能力や技術を持っていたり、ポテンシャルが高かったりするなど優秀な人材を確実に採用していく必要があるのです。
・労働人口の減少で人材獲得競争が激化。採用チャンスを逃さないことが重要。
・働き方の多様化により転職をする人が増加。重視する価値観が人によって異なるため、自社にマッチした人材を見極めることが採用の課題。
・グローバル化やIT化で、企業は日々事業変革の必要に迫られている。現場では即戦力のある人材が求められ、経験値の高い中途社員への需要が高まっている。
採用基準の重要性
ここまで見てきたように、日本の労働市場は現在大きな転換点を迎えています。こうした変化の中で、優秀な人材を確保し長期的に企業を安定させるために重要なのは、「どのような人材を採用するのか」という採用基準を明確に設定し企業内で共有しておくことです。
採用基準が曖昧なままですと、せっかく募集をかけて一定の人数を集めても、会社にとって本当に有益な人材が見極められず、優秀な人材を他社へ流出させたり自社とマッチしない人材を採用するなどマイナスの事態を招きかねません。しかし、採用基準を明確に定めれば、自社で活躍できる人材を確実に見極められるようになるのはもちろん、長期的に採用を成功させることができるようになるのです。
このように採用基準の設定は人材の獲得において非常に重要なものです。しかし、現在採用基準を設けている企業でも、その基準が適切でない場合や不十分であるなど有効に機能していない場合も多く見受けられます。採用基準を見直す必要があるケースについて次にご紹介していきます。
・優秀な人材を獲得するために、採用基準の明確化が重要。自社で活躍できる人材を見極められ、長期的に採用を成功させることができる。
現在、採用基準を見直すべき具体的なケース
採用基準の設定の仕方は、各企業によってさまざまかと思います。特に中途社員の採用では即戦力のある人材を求めてスキルや専門性に採用基準の重点を置いている場合が多いでしょう。しかし、即戦力に重きを置くあまり、採用基準を高く設定してしまう、または、自社にマッチしない人材を採用してしまうことは避けなければいけません。こちらでは、採用基準を見直すべき3つのケースについてご説明します。
例1:十分な採用人数を獲得できていない場合
応募総数が少ない、もしくは十分な採用人数を獲得できていない場合は、現在設定している募集条件や採用基準が高すぎている可能性があります。現在の転職市場の状況と照らし合わせて採用基準を見直し、高すぎる条件になっていないか今一度確認しましょう。また、現在の採用基準から自社にとって「譲れない要素」と「譲歩できる要素」を分け、基準を緩めるのも一つの手です 。
採用人数の確保には、採用ブランディングの設定が不可欠です。
例2:会社への定着率が低い場合
また、入社後の社員の離職率が高い、もしくは仕事や会社へのコミットメントに消極的である場合は、企業との適性が低い人材を採用してしまっているかもしれません。社風に適していて自社の仕事にやりがいを持って積極的に取り組めるのはどのような人材なのか、再度採用基準を見直す必要があると言えるでしょう。
例3:業績や仕事の成果が想定より低い場合
業績や仕事の成果が十分に出ていない場合は、現在設定している採用基準の重点がずれてしまっているということが原因として考えられます。例えば、採用基準の重心を「専門的なスキルがあること」に置いていても、実際に社内で実績を上げている社員に共通する最も大きな特徴は「問題解決のための主体的な行動力」である、といった場合です。こうしたケースでは、採用基準を再確認し「自社にとって本当に必要な力は何なのか」を分析し直す必要があります。
・採用人数が少ない場合は、採用基準が現在の転職市場にそぐわない水準になっている可能性がある。採用基準を緩めるなどの見直しが必要である。
・会社への定着率が低い場合は、自社にマッチしない人材を多く採用してしまっていると考えられる。採用基準の人材像を定め直す必要がある。
・業績が十分にあがっていない場合は、設定している採用基準が不十分な可能性がある。重視する条件や能力を再確認する必要がある。
採用基準の設定方法と採用までの流れ
採用基準は、以下でご紹介する5つのステップを踏むことで、簡単かつ有効に設定することができます。採用基準を一から設定したい場合も、見直しを行いたいという場合もこちらの方法をぜひ参考にしてください。
1:まずはペルソナを決める
まず第1ステップとして、「採用したい理想的な人物像」であるペルソナを設計します。このとき、年齢や人柄、スキルの有無や過去の経験、趣味などできる限り具体的に人物像を設計するようにします。特に中途社員の場合は即戦力を重視するのか、それとも人柄やコミュニケーション能力などポテンシャルを重視するのか、企業が教育にかけられるコストから判断してペルソナを決定すると良いです。
ここで設計したペルソナは一つの選考基準となりますが、必ずしも全てがペルソナと一致した人材を探す必要はありません。ペルソナを基準にその人物像に近い応募者を探すというイメージで選考を行っていきます。
2:自社にとって有益な能力を言語化する
次に、社内で高い業績を上げている社員の価値観や行動特性、思考傾向を分析しその能力を言語化します。成果を出す人に共通する能力は「コンピテンシー」と呼ばれ、「問題解決力」や「目標達成志向」、「統率力」など人によってさまざまな要素があります。自社で活躍するためにどのような能力が必要なのか明確に言語化し、第1ステップで設計したペルソナと合わせて採用基準の指針にしましょう。
3:募集を開始し母集団を形成する
第3ステップではここまでで設計したペルソナから必須条件を絞り込み、それを募集条件として人材の募集を開始します。募集条件を厳しく設定しすぎると十分な応募者が集まらず採用できる可能性のある人材を逃してしまう恐れがあるため、募集条件は最低限にとどめ一定数の応募者を確保したうえで選考を進めていくとチャンスを逃さずに採用を行うことができます。
4:履歴書・職務経歴書にてスクリーニング
中途採用における書類選考では以下の点からふるい分けると良いでしょう。
✔前職で学んだ活かせるスキルや経験があるか
✔他社ではなく自社を選んでいる根拠や熱意が伝わる内容か
✔ビジネスの場での自分の強みを理解しているかどうか
社会人として最低限必要な力(書類作成能力など)を見るのはもちろん、どの程度の市場価値の人間なのかを、応募者の申告から推察しましょう。具体的には設定したペルソナやコンピテンシーに近い要素があるかをチェックし、「自社にマッチしており、求める能力を身につけている人材」を次の面接段階へ進めていきます。
ここで注意しておきたいのは、必ずしもペルソナにぴったりと会った人間でなくとも構わないということです。ペルソナは入社するにふさわしい理想像に過ぎないので、どのような点がペルソナと合致しているか、さらに、どのような点がペルソナと合致してないために懸念要素か、を言語化しておきましょう。
5:面接やそれ以外でも徹底的に会いマッチングする
仕事をする際は対面で多くのコミュニケーションをとるため、面接でどのようなコミュニケーションをとれるかはチェックしておきたいところです。受け答えや振る舞いを見るのはもちろんですが、さらに面接外でもコミュニケーションをとる方法をつくっておくと効果的です。一日体験入社やランチ会などのコンテンツを用意する会社が増えてきています。書類選考では掘り下げられなかったより深いレベルでペルソナやコンピテンシーに基づく判断を行い、最終的な採用者を決定します。
・理想的な人材であるペルソナを設計。また、社内で実績を出している社員からコンピテンシーを分析し、自社で求める能力を言語化しておく。
・最低限必須である募集条件を設定し、採用チャンスのある人材は自社の選考にのせる。
・書類選考や面接でふるい分けを行う。社会人としてのマナーがあるかを確認したのち、ペルソナを採用基準とした選考を行っていくと自社にとって最も有益な人材を獲得できる。
以上が、採用基準の設定方法とそれに基づく選考の進め方です。
より洗練された採用制度を整えるために
今回は、現在最も有効に採用を進めることのできる採用基準の設定の方法についてお伝えしてきました。ご紹介した方法を実践すれば、十分に自社にとって有益な人材を獲得することができます。
しかし、「さらに採用効率を上げたい」「採用チャンスのある潜在層を広げたい」「選考にかかる手間をできる限り簡略化したい」などより高度な水準での採用を行いたい場合は、最先端の採用手法を取り入れていくことが必要になります。
例えば、現在実際に大手企業や有名企業で行われている採用手法に人事データのテクノロジー化やAI(人工知能)による人材採用、ダイレクト・リクルーティングなどがあります。こうした採用手法は多岐に渡り、その中から自社にとって最適な手法を見つけることは人事・採用に関する豊富な知識や経験がなければ難しいものです。
こうした企業のお悩みを解決するために、人事・採用に特化した専門的な知識のある経営プロ人材をHiPro Bizのサービスでは多数紹介しています。経営プロ人材に相談することで、最適な採用手法を見つけ、企業にとってより理想的な採用を実現することが可能です。採用や人事に関するお悩みの解決はぜひHiPro Bizにお任せください。