人材育成研修の重要性と研修効果を高める計画の立て方を解説

人事

2023年03月06日(月)掲載

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企業が成長していくには、社員一人ひとりのスキルが向上していく必要があります。そのため、近年では人材育成研修に力を入れている企業が増えていますが、研修の内容や進め方、マネジメントで悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。

人材育成研修は内容だけでなく、研修前の準備、研修後の振り返りというマネジメントも重要になるので、計画的に実施することが大切です。

この記事では、人材育成研修の基本手法と種類、研修計画の立て方をご紹介します。

成功のポイントを押さえ、効果的な人材育成研修を行なっていきましょう。

企業における人材育成とは

人材育成研修

企業における人材育成とは、企業が掲げる経営目標の達成に向けて、社内の人材のパフォーマンスを高めるための施策のひとつです。

とはいえ、単純に仕事ができる人材を育てるものではありません。人材育成は主体性やコミュニケーション能力、リーダーシップなど、業務遂行に必要な共通のヒューマンスキルが基本となります。

そのため、長期的な視野で実施することが大切です。

人材育成研修の目的と必要性

人材育成研修は、企業が成長していくうえで欠かせない要素であり、多くの企業が実施しています。

人材育成研修の目的

人材育成研修の目的は、組織の生産性を上げ、業績の向上につなげることです。

パフォーマンスレベルの高い社員が増えることで組織全体の生産性がアップし、結果として業績の向上や、組織力を高めることにつながります。

また、人材育成研修を通じて、社員が業務内容に対する理解度を深めることも期待できます。報酬アップややりがいを見いだし、モチベーションの維持にもつながるでしょう。その結果として、離職率の低下や従業員満足度の向上の手段にもなりえます。

人材育成研修の必要性

企業を運営するうえで最も重要な資源となるのは人であり、社員の能力やマネジメントが業績に直結するといっても過言ではありません。

近年は、少子高齢化の影響で採用が困難となっており、人手不足に悩む企業が増えています。さらに、グローバル化によって競争の激化が進み、従来に増して企業の組織力が重視されています。

こういった状況下で企業が成長していくためには、既存社員の能力を最大限に活かすことが重要です。

また、先述したように人材育成には離職率をおさえる効果も期待できます。社員満足度の高い職場は人が集まりやすいほか、他社の引き抜きを予防することも可能です。

人材育成は長期的な視野でマネジメントする必要があるので、長く働いてくれる社員が多いほど育成効果も高まりやすくなります。

人材育成研修の基本手法

人材育成研修にはさまざまな手法があり、目的や目標、社員のスキルなどに合わせて使い分けることが重要です。

ここでは、人材育成教育の基本手法の内容を5つご紹介します。

OJT

OJTは「On The Job Training」の略称で、現場での実践を通じて育成する手法です。

一般的には上司や先輩と一緒に、実務を共同体験することで、業務に必要な知識を学ぶことを指します。

OJTはその特徴から、上司や先輩社員による密なサポートが受けられるので、新人でも安心して業務に取り組むことが可能です。

ただし、OJTは育成する側に負担がかかりやすいほか、育成する人によって教え方や内容が違う、新人の育成度合いが異なるなどのデメリットもあります。

OFF-JT

OFF-JTは「Off The Job Training」の略称で、研修やセミナーなど、実務から離れて育成する手法です。

社内に限らず、外部の研修などもOFF-JTに該当します。内容も基本的なビジネスマナーからマネジメントスキル、経営のノウハウまでさまざまです。

そのため、現場では学べない知識を習得できる、外部の客観的な評価を得られるというメリットがあります。

一方、研修を外部へ委託する場合はコストがかかります。また、研修の内容が豊富で選択が難しい、内容によっては実務に活かせないなどのデメリットもあるでしょう。

集合研修・セミナー

集合研修とは、集団で行う講義式の研修です。

集合研修には「外部講師による集合研修」「内部講師による集合研修」「小規模集合研修」の3つがあり、それぞれメリット・デメリットが異なります。

外部講師による集合研修

外部講師は専門的な知識や技術を持つプロフェッショナルなので、自社では学べない知識や技術を習得できます。

また、教え方もわかりやすい可能性も高く、受講者が知識や技術を習得しやすい点もメリットです。

デメリットとしてはコストが高い、スケジュールや業務のマネジメントが難しい点が挙げられます。

内部講師による集合研修

内部講師による集合研修は、外部講師による研修とくらべて低コストです。また、自社の業務を熟知している社員が講師となるので、習得した内容を実践に活かしやすいのもメリットです。

ただし、講師の適任者がいない場合は研修が実施できないほか、専門的な知識やスキルがあっても、教え方が悪ければ社員をうまく育成できないこともあります。

小規模集団研修

部内や課内で実施する小規模集団研修は、人数が少ないぶん、業務やスケジュールをマネジメントしやすく、より実践的に行なえます。

デメリットは、各部や課ごとに講師が必要になる点、講師によって研修の質が異なる点です。

オンライン研修・通信教育

オンライン研修・通信教育は、社員が各自で受講する研修です。

時間や場所を選ばない点が最大のメリットで、隙間時間や就業後の時間を活用すれば、業務への影響を最小限におさえられます。

ただし、オンライン研修・通信教育は受動的になりがちなので、社員のモチベーションや理解力によっては大きな差が出てしまう可能性があります。

人材育成研修の種類

人材育成研修で学ぶべき知識やスキルは、新入社員、中堅社員、管理職によって異なります。そのため、それぞれの役割に適した内容を選ぶことも大切です。

新入社員研修

新入社員研修は、これから社会人として働くうえで最初の育成となります。社会人としての自覚を持つための内容やビジネスマナーの習得、モチベーションアップなどの研修が最適です。

また、実施のタイミングとしては、内定後に内定研修、入社後に導入研修、担当部署へ配属後にOJT研修、フォローアップ研修を行なうのが一般的です。

研修プログラムには、以下のようなものがあげられます。

  • 職場見学
  • コンプライアンス研修
  • ビジネスマナー研修
  • コミュニケーション研修
  • セルフマネジメント研修
  • ロジカルシンキング研修
  • OJT

中堅社員研修

会社として成果を上げること、社員と管理職の橋渡し役が求められる中堅社員は、自分のポジションや役割を理解することが重要になります。

そのため、リーダーシップや問題発見能力、指導力、判断力、対人スキルなどの研修が効果的です。

研修プログラムには、以下のようなものがあげられます。

  • コーチング研修
  • フォロワーシップ研修
  • オーナーシップ研修
  • リーダー研修
  • 心理学研修

管理職のマネジメント研修

経営者の代わりに決断をくだす、組織の優位性を保つことが求められる管理職は、自分の立場を適切に理解することが重要です。

また、部下を導くリーダーシップやマネジメント、育成方法、組織運営の強化など、幅広い知識やスキルも必要になります。

研修プログラムには、以下のようなものがあげられます。

  • 次世代リーダー研修
  • マネジメント研修
  • アンガーマネジメント研修
  • 管理職研修
  • 戦略マネジメント研修
  • ダイバーシティ研修

人材育成研修の流れと計画の立て方

効果的な人材育成研修を行なうためには、事前の準備と研修後の振り返りが非常に重要です。そのため、人材育成研修の流れを理解したうえで、計画的にマネジメントしましょう。

現状の把握

まずは自社の現状を把握します。

自社のビジョンや目標に対し、現状は何が足りないのか、どのような人材が必要なのかを考えましょう。そのうえで、5年後、10年後にどうなっていきたいのかを具体化します。

また、誰が何の仕事をしているのか、社員一人ひとりのスキル、生産性など、社員の現状についても詳しくマネジメントしましょう。

KPI設定

人材育成を戦略的に行なうために、KPIを設定します。KPIは「重要業績評価指標」とも呼ばれており、人材育成の成果を把握・評価することが可能です。

人材育成のKPIとしては、研修の受講率や満足度、特定スキルを保有している人の人数・増加率などが挙げられます。

研修方法・担当者の選定

研修を実施するうえでの担当者と、研修の内容・方法を選定します。

担当者は、社内研修と外部研修とでは、適任の人材像が異なることもあります。社内研修の場合は、社員をうまく誘導できる社員が適任です。

一方、外部研修の場合は、研修会社と円滑にやり取りができ、社内全体を巻き込める社員がよいでしょう。

研修方法は、社員の課題や目標に合わせて選択します。例えば、新入社員の最初の研修であればOFF-JT、中途採用の新人社員であればOJTなどが最適です。

研修内容は、人材育成の目的や方針、企業が抱えている課題などを考慮したうえで選択します。ただし、内容が難しすぎると社員が理解できない、あるいはモチベーションが下がるため、社員のレベルに合わせることが大切です。

研修の実施

研修がスムーズに進むよう、担当者はサポートに徹しましょう。

社員が学びやすい環境、研修講師が教えやすい環境を整えることが大切です。特に、集団で受講するタイプの研修では、タイムマネジメントやファシリテーションを行ないます。

また、現場で実施するOJTでは社員のケアやフォローをして、不満や悩みを抱えてしまわないように気を付けましょう。

研修の振り返り

研修実施後は振り返りを行います。

例えば、研修を受けた社員にレポートを書いてもらい、研修で学んだことや気付いたこと、自分がやるべきことなどを明確にします。研修に対する感想や意見などを書いてもらえば、研修内容の質を上げることにもつながります。

また、研修を実施した側もうまく教えられたか、社員の反応はどうだったかなどを振り返り、次回の研修に活かしていくことが大切です。

人材育成研修を成功させる内容のポイント

人材育成研修にはいくつかのポイントがあり、これらを意識することで研修効果が大幅に高まります。

明確な目標を提示する

社員が目標を理解していない状態で研修を実施しても、社員は何のために研修を受けているのか、学んだことをどう活かすのかを理解できないので、モチベーションや理解度が下がってしまいます。これは社員だけでなく、育成する側にとっても同じことがいえるでしょう。

そのため、人材育成研修の目的や目標を全社に提示したうえで、研修をマネジメントすることが大切です。

スキルマップを活用する

スキルマップとは、企業にとって必要なスキルを可視化した表です。人材育成研修を実施する際には、必要なスキルを積極的に習得・飛躍させていくことが求められます。

そのため、スキルマップの活用によって、自社に最適な研修内容を選択でき、より効果的な育成が可能となります。また、習得するべきスキルや能力が明確になることで、社員の自主性や積極性の向上にもつながります。

スキルマップの作り方は、社員に求める能力やスキル、経験、資格などを漏れなく洗い出し、習得してほしい期限ごとに分けます。その後研修を実施していき、必要な能力やスキルに対する評価を行ないます。

スキルマップの評価は5段階程度に設定し、それぞれの段階がどのような状態かを定義したうえで評価をしましょう。

実践の機会を与える

研修内容を定着させるためには、実践の機会も必要です。特に座学研修の場合は、実践に活かしにくいというデメリットがあるので、研修後に実践の場を設けることが大切です。

実践の機会を設ける際には、研修を受けた社員に行動計画を立ててもらい、研修内容を理解していることを確認したうえで業務を任せます。また、研修を終えているとはいえ、ひとりに任せるのではなく、先輩社員や上司がマネジメントし、安心してチャレンジできる環境で実践させましょう。

指導者側の育成も行なう

人材育成研修は内容や手法だけでなく、指導者の育成も重要なポイントです。それによって、効果的かつ継続的な人材育成研修を実現できるでしょう。

指導者に求められるスキルは、現状把握スキル、目標設定スキル、コミュニケーションスキル、リーダーシップ、マネジメントスキルなどがあります。自社で指導者を育成するのが難しい場合は、外部研修などを活用するのもよいでしょう。

まとめ

企業にとって最大の資源は人材です。人材の能力やスキルは企業の業績に大きく影響するので、多くの企業では人材育成研修を積極的に実施しています。

人材育成研修にはさまざまな手法や内容があり、社員のポジションや抱える課題に適した研修をマネジメントすることが大切です。

また、研修の効果を高めるためには、事前の準備と研修後の振り返りが重要になるので、人材育成研修の流れを理解したうえで、計画的に実施しましょう。

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