再構築プロジェクトのキックオフ迄になすべきこと、ベンダーとの契約は?

システム

2020年04月12日(日)掲載

これまでのコラムで、基幹システム再構築開始前の準備ステップについて、ステップ1からステップ7まで解説してきました。そして、最後の準備ステップがこの「ステップ8:再構築プロジェクトのキックオフ迄になすべきこと」となります。
 
再構築プロジェクトを開始するにあたりキックオフ前に実施しておくべきことは、決定したベンダーとの契約推進やプロジェクトキックオフに向けての準備、調整など色々ありますが、ここでは特に重要な準備項目の2点について、以下にて解説いたします。

契約関連:法的な内容も含めての契約形態・契約事項の明確化

ベンダーとの大まかな契約内容に関しては、既にこの段階では決まっていると思います。しかし、ここで重要なのは、実際にプロジェクトに参画するベンダーのキーパーソンが、プレゼンテーションの段階で変更になっていないかということです。良くありがちなのが、プレゼンテーション時には参画予定と言っていたキーメンバーが、急遽変更となるケースです。
当然、ベンダー側としては、スキルが同等以上のメンバーを同じ費用であてると簡単に言ってくると思いますが、ここが落とし穴です。

既に以前のコラムでも書きましたように、貴社はベンダーの実績やパッケージ自体の機能ではなく、そのベンダーからプロジェクトに参画するベンダーのキーパーソンを評価して選定しているわけです。よって、この段階でそれが変更になるとどのようなことなるか、既にお判りでしょう。
したがって、ベンダーとの契約を交わす際もこの点を明確にして、PMPの体制図におり込む必要 があります。

最初の要件定義フェーズの契約の場合、通常はまだ正確な要件が固まっていないため、成果物の責任は依頼企業側ということから、成果物納入方式でなく業務委託準委任契約となるケースが多いです。準委任契約は、成果物単位ではなく、時間や期間によって報酬を出すという契約です。よって、たとえ作業のアウトプットをベンダー側が作成するとしても、それは責任のある納入物ではなく、単なる作業の成果となります。よって、この契約方式では、プロジェクトへのベンダーからの参画者の指定はお願いできたとしても、契約上は明記できません。決められた作業内容や決められた時間の対応をベンダーが実施する契約であり、お互いの信頼関係で成り立つ契約なのです。

したがって、この「要件定義フェーズ」の契約でもっとも重要なのは、そのベンダーが立ててくる人なのです。そのため、「ステップ7」のところでベンダープレゼンテーションを実施した参画予定キーメンバーの「コミュニケーション力」をもとに選定を進めたのです。ここで、メンバーを変えられては「梯子を外された」も同然でしょう。

仮に、どうしてもメンバー変更となる場合には、そのメンバーの技術面だけでなく、これまで選定のポイントで触れました内容も含め、良くご判断なさってください。
これらのリスクを踏まえると、もし可能であれば、理想的には最初の「要件定義」の段階から「成果物確認(請負)方式」契約のほうが良いでしょう。

POINT

・ベンダーとの契約は、業務委託準委任契約になることが多い。決められた作業内容や決められた時間の対応をベンダーが実施する契約であり、お互いの信頼関係で成り立つ契約である。
・プレゼンテーション時の予定メンバーが変わる場合もある。そのリスクを考えると、可能であれば、「成果物確認方式」をとるほうが良い。

以下に、ご参考までによくITプロジェクトで用いられる契約形態の比較表を示しておきます。派遣法の改定等により契約の言い方が変わってきていますが、基本的に以下のようになります。

5-1.表1 ITプロジェクトにおける契約形態の比較表

(表:筆者作成)

ベンダーも含めてのキックオフミーティングへの準備

つぎに重要なのは、キックオフミーティングの準備です。実は、再構築プロジェクトのキックオフに向けて、行うべき重要な点がいくつかあるのです。これらを、以下の「5-1.表2 プロジェクトキックオフ前の準備事項一覧」に纏めました。

5-1.表2 プロジェクトキックオフ前の準備事項一覧

(表:筆者作成)

要するに、この「キックオフ」の目的は、プロジェクト開始前から社内のIT部門のみならず、関係する業務部門メンバーも含めて、プロジェクト支援ベンダーとのコミュニケーションを良くはかることです。これにより、キックオフ後にスムーズにプロジェクトが進められるようになるでしょう。

以上で、これまで一連のコラムで長々と解説しました、基幹システムの再構築に向けての「準備フェーズ」が完了になります。そして、いよいよこれからが慎重に選んだ支援ベンダーとの二人三脚での基幹システムの再構築プロジェクトが、実務としてスタートするのです。

次の最後のコラムでは、この一連のコラムの締め括りとして「おわりに:基幹システム再構築プロジェクト成功への実践KSF」と題して、今回の基幹システムの再構築に限らず、ITプロジェクトで押さえておくべき重要な内容「ITプロジェクト成功への実践KSF(Key Success Factors)」をお伝えします。これまでの私の国内外のITプロジェクトの経験から、貴社の基幹システム再構築プロジェクトの成功の為に纏めます。

POINT

・プロジェクトをスムーズに始めるためには、社内全体でコミュニケーションをとっておくことが重要。

基幹システム再構築の支援について

ここまでの内容で、基幹システムの再構築の難しさをご理解頂けたでしょうか。
IT分野での2025年問題に向き合うためには、正しい対策とポイントを理解することが重要です。しかし、一口に基幹システムの再構築と言っても、ベンダーへの頼り方、DXへの知識、諸々の知見がないと難しいことです。その対策として、多くの企業が外部人材をスポットで契約するようになってきています。例えば、外部人材としてフリーランスの人を雇う、経営プロ人材を契約して経営やDXに関して多角的にアドバイスをもらう、などの方法があります。

HiPro Bizでは、様々な経営課題を解決してきた専門の経営プロ人材が多数在籍しております。基幹システム再構築に向けて、プロの力を借りてみてはいかがでしょうか。
過去に解決してきた実績やノウハウを活かした支援をすることができるでしょう。
ぜひ、一度お気軽にお問い合わせください。

執筆者H.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門勤務。米国への社費留学にて、コンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はITプロ人材として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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