DX推進における企業課題と実現に向けたポイント・進め方

経営全般・事業承継

2023年04月04日(火)掲載

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変化の激しい現代社会で企業が生き残るには、DX推進が必要不可欠です。日本では政府がDX推進を推奨しており、大企業を中心に少しずつ浸透し始めています。企業のDX化推進によって、業務の効率化や売り上げ向上、認知度拡大などのメリットが期待できます。

今回は「DXを推進すると、自社のサービスや製品にどのような影響があるのか」「DXを推進したいが、どのように進めるべきかイメージが湧かない」という方に向けて、DX推進の概要やメリット、具体的な活用方法、導入事例を解説します。本記事を参考にDX推進を検討し、企業の成長に役立てましょう。

DX推進とは

DX推進

企業におけるDX推進とは、組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めていくことを指します。経済産業省では、DXを以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

つまりDXの目的は、変化の激しい時代に適応するため、AIやIoTなどのデジタル技術やビッグデータを用いてビジネスモデルや組織を変革することです。

現代は技術革新のスピードが早く、さらに新型コロナウイルス感染拡大をはじめとする予測困難な事象が多発した影響もあり、企業の業績が不安定になりやすい時代です。そのような時代背景のなかで、企業経営を継続するためにDX推進は重要なテーマとなりました。

経済産業省も企業のDX化を推奨しており、現在もIT人材の育成やレガシーシステムの撤廃など、課題解決に取り組んでいます。DXを推進せず、既存のシステムを利用し続ける企業は、老朽化によるOSアップデートの不具合、業務の効率性の減少、バグによる個人情報の流出など、セキュリティアクシデントが起こる可能性があります。今後は大企業だけでなく、中堅企業や零細企業を含めた中規模程度の企業でもDX推進が求められていくでしょう。

経済産業省がDXを推進する背景

経済産業省がDXを推進する背景として、2025年の崖があります。2025年の崖とは、企業がDXを推進せず、老朽化したITシステムを使い続けると、最大で年間12兆円もの経済損失が発生すると試算されている問題です。

このことからも、政府がDXによる環境構築を推進していることがわかります。

IT化との違い

DXと混同しやすい言葉に「IT化」があります。IT化とDXは、どちらもデジタルを活用するという共通点はありますが、最終的な目的が異なります。

IT化とは、業務効率やコスト削減、生産性の向上を目的としてデジタル技術を導入することです。一方でDXは、デジタル技術をサービスや仕組みに活用し、企業の競争優位性を高めるために改革・変化を起こすことを指します。

重要な違いは、DXはIT化のデジタル技術を手段として活用していることです。つまり、DXはデジタル技術を通じて、組織や事業を変革し、時代に適した競争優位性の確立を目指す取り組みです。

DXIT
目的業務やビジネスモデルの変革を通じて、変化の激しい現代に適応した組織を生み出し、競争優位性を確保する(IT技術はあくまで手段)特定の業務でシステムやツールなどのIT技術を活用し、生産性の向上を目指す
特徴データとデジタル技術を活用し、製品やサービスなどの利便性を高め、生活やビジネスを豊かにするアナログでおこなっていた業務をデジタル化し、効率性や品質の向上につなげる

DX推進によるメリット

DX推進によるメリットは、以下の3点です。

  • 生産性を改善できる
  • BCP(事業継続計画)の内容を充実させられる
  • レガシーシステムによるリスクを回避できる

生産性を改善できる

DX推進のメリットは、デジタル化によって生産性を向上できることです。業務のデジタル化は、作業時間の短縮や人員と人件費の削減、ヒューマンエラーの防止につながります。

つまり、DX推進によるデジタル化で業務時間が短縮されることで、人件費やシステム運用・保守運用費の削減が実現できるのです。

BCP(事業継続計画)の内容を充実させられる

BCP(事業継続計画:Business Continuity Planning)とは、システム障害や自然災害などの危機的状況に陥った場合でも被害を最小限に抑え、業務を継続させるための対策方法を盛り込んだ計画です。

日本は地震などの自然災害が多く発生します。また、オンラインコミュニケーションが増えた現在では、セキュリティリスクなどにも常にさらされています。このようなシステム障害や災害が発生した際、対処が長引くほど、企業の業績に与える影響は増大し、事業運営にも大きなダメージを与えます。

しかし、DX推進によってデータを収集・分析できる環境が整えば、潜在的なリスクをもとにした対策を立てやすく、不測の事態でも対応することが可能です。

レガシーシステムによるリスクを回避できる

レガシーシステムとは、長期運用して複雑になった古い社内システムのことです。レガシーシステムは長期運用によるコードの継ぎ足しによって中身が複雑化し、開発に携わった社員の退職などとともにシステムの全容を知る人材がいないという状況に陥りやすい傾向にあります。

システムのレガシー化が進んでいる企業は、レガシーシステムありきで業務プロセスが設計する必要があり、生産性の低下や維持費の増大という課題を抱えやすいといわれています。また、レガシーシステムの引き継ぎが適切に行われず、扱える人材がいなくなるというリスクもあるでしょう。

DX推進によってシステムのあるべき姿を見出し、レガシーシステムから脱却することは、これらのリスクを回避することにつながります。

DX推進に向けた企業の課題

DX推進の際に発生しやすい企業の課題として、以下の3点があります。

  • 明確な目的や経営戦略がないままのDX推進
  • レガシーシステムの放置
  • IT人材の不足

明確な目的や経営戦略がないままのDX推進

多くの企業が、DX推進の必要性を理解しています。一方で、DX推進の方向性を具体的に定められず、DXを推進している企業も少なくありません。目的が曖昧なままDXを推進してしまうと、DXの手段であるIT技術の活用が目的化してしまい、単なるデジタル化で終わってしまうこともあります。

ただ最新のIT技術を活用するのではなく、競争優位性を確保するというDX本来の目的を理解し、経営戦略に取り込むことが重要です。

レガシーシステムの放置

社内のレガシーシステムの放置は、DX推進が遅延する原因のひとつです。システムが長期的に運用されていると自社のみに適応したものに少しずつ変容していき、APIによる外部システム連携などが難しくなり、データの活用や機能拡張に制限事項が増えてしまいます。

さらにシステムが長期的に運用されると、業務プロセスがシステムに合わせて設計されやすく、改善に大きな痛みを伴うこともあります。システムを使い慣れた従業員にとっても負担になることが予想できるでしょう。しかし、レガシーシステムは、業務効率の悪化や維持費の高騰を招きます。業務プロセスの効率化につなげるためにも、レガシーシステムを抜本的に見直し、誰でも使いやすい一貫性のあるシステムの構築や導入が求められます。

IT人材の不足

日本ではDXの成功事例が決して多いといえず、DXを推進できるIT人材がまだ不足しており、外部のIT企業に依存しているのが現状です。変化の激しい昨今、ビジネスを進めるうえで、大事なのはスピードです。顧客満足度を高めていくために、定期的な改善を行おうとした際、外部にシステム開発を依存していると、どうしても他社に後れを取るという事態が起こりやすくなるでしょう。

だからこそ、IT人材の確保による内製比率の向上が重要視されているのです。一方で、今後もDX推進ができる人材の需要はさらに高まることが予想されます。今のうちから人材採用や社内育成を進め、必要な人材を確保しましょう。

企業のDX推進事例

DXを推進した企業の事例を2つご紹介します。DXを推進する際の参考にしてください。

AI画像認識導入の事例/A社

レンタルユニフォーム事業を運営するA社は、返品や交換対応に、多大なコストや労力が発生しているという課題を持っていました。原因を調査すると、普段着る私服のサイズがメーカーによって違うことで、正確なサイズを把握することが難しいということが判明しました。

そこでA社が開発したのが、AI画像認識を搭載した自動採寸アプリです。アプリではAIによる自動採寸を活用し、ユーザーに最適なサイズをリコメンドする機能が搭載されています。このアプリによって、結果的にサイズ交換にかかる送料や、サイズ交換に備えて抱える余剰在庫が抑えられ、コストダウンに成功したのです。

DX推進により、サービスのコスト効率と利便性の改善を両立した事例といえます。

セルフオーダー導入の事例/B社

ファストフードブランドを展開するB社は、従来のサービスの質を損なわず、新たな顧客体験を創出するため、注文のデジタル化を目指していました。

そこで同社が導入したのが、セルフオーダーが手軽にできるオンライン注文アプリです。アプリでは注文から支払いまでがデジタル化され、注文後の待機時間を削減しています。加えて対応の分散化を図るため、キオスク端末を店舗に導入することで、注文前の待機時間の削減にも成功しました。また、アプリによるユーザーの購買データを分析し、レコメンド機能などと組み合わせることによって、アップセルやクロスセルの機会創出にも役立てています。

これらの取り組みによって、同社は業務の効率化だけでなく、顧客満足度の向上やLTV(顧客生涯価値)の改善も実現できています。

DX推進の進め方

DX推進の主な進め方は、以下の3点です。

  • DXの目的を設定・共有する
  • DX推進体制を整える
  • DX推進の計画・実行・改善

それぞれのポイントや進め方を、くわしく解説します。

DXの目的を設定・共有する

DX推進で最初に決めるべきなのは、目的の設定・共有です。目的が不明確だと、DXの手段が目的となり、単なるITツールの導入で終わってしまうことも少なくありません。また目的がないことで、計測や改善の対象がわからず、PDCAサイクルにも混乱が生まれます。

このような状況を避けるためにも、社内課題を洗い出し、DXの目的を明確化しましょう。短期的な業務プロセス改善だけでなく、ビジネスモデルや組織の変革などの中長期的な状態目標とセットで考えることが重要です。

また、目的が決まったら社内に周知します。DX推進のポイントは、従業員の理解を得ることです。DX化の過程では、ITツールの導入や事業の改革など、従来のやり方を大きく変えます。理解がないままにDXを推進すると、従業員が不満を抱く可能性もあります。

DX推進体制を整える

社内のDX推進をするためにDXの専門部署の新設や予算確保をおこないましょう。担当者が通常の業務と兼務している状況では、DX推進の優先度が下がってしまいます。予算を確保しやすくするためにも、DX専門部署の新設は重要です。

また、DX推進ではデジタル技術やデータ活用が不可欠です。社内のIT部門や必要に応じて外部のIT企業と連携し、体制を整えましょう。

DX推進の計画・実行・改善

DX化で事業の課題解決を図るために、DX推進計画を立てます。綿密な計画を策定してDX化を進めることで、本来の目的から軸がぶれるリスクを軽減できます。

計画策定時には、段階的にDX推進が図られるよう、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。いきなり大きく変革してしまうと、社内が混乱し従業員を不安にさせてしまう可能性があります。

初期段階では特定の事業部・部署に対象を絞って、小さなデジタル化から進行するようにしましょう。スモールスタートでDXを推進することでリスクを低減でき、成果が出た際は別の事業部・部署へと展開できるため、組織横断的な取り組みの足掛かりをつくりやすくなるでしょう。

DX推進計画をスタートした後は、DX推進部署でミーティングを実施し、目的と計画がスケジュールどおり実行されているか定期的に確認します。DXの目的と実行状況を照らし合わせ、検証や改善を繰り返すことで、DX推進による課題解決は進みます。適宜、状況を確認し、問題点があれば計画自体の見直しも検討しましょう。

まとめ

DX推進の実現に向けたポイント・進め方、メリットなどについて、事例を交えながら解説してきました。2025年の崖が問題視されているように、変化が著しい現代社会において企業のDX推進は避けて通れません。企業としての競争力の維持、価値向上のためにも、社内の理解を深めてDX推進を検討しましょう。

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