破壊的イノベーションとは?必要な理由や種類、課題と解決方法について解説
2025年05月29日(木)掲載
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IT技術やグローバリゼーションの進展により、ビジネス環境は目まぐるしく変化しています。企業の存続、また成長を目指すため、既存事業にのみ特化した戦略ではなく、市場を創造する「破壊的イノベーション」への取り組みにもご興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、破壊的イノベーションについて詳しく解説します。企業規模の拡大のために、「従来の常識を覆すような新しい価値を生み出したい」とお考えの場合は、ぜひ参考にしてください。
■破壊的イノベーションとは
■破壊的イノベーションが必要な理由
■イノベーションのジレンマ
■破壊的イノベーションの種類
■破壊的イノベーションの課題と解決方法
■破壊的イノベーションは、これまでにない新たな価値を創造する概念のこと
破壊的イノベーションとは

破壊的イノベーションは、ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏が、自著『イノベーションのジレンマ』で提唱した考え方です。革新的な技術やアイデア、価値基準により、既存の市場構造を根本から覆し、変革させることを指します。
たとえば、破壊的イノベーションによる取り組みの一つに格安航空会社が挙げられます。従来の飛行機では、機内食や客室乗務員による手厚いおもてなしや、広々とした機内を価値として提供していました。しかし格安航空会社では、飛行機本来の目的である「移動」に重きを置き、最低限のサービスを安価で提供したことで、瞬く間に利用が広がりました。
ビジネスシーンでは、このように業界の構造が劇的に変わるような取り組みや、柔軟な発想力を活かした先進技術の活用などを破壊的イノベーションと呼んでいます。
持続的イノベーションとの違い
持続的イノベーションとは、既存の市場で顧客に求められている商品やサービスの価値をさらに高めるイノベーションを指します。破壊的イノベーションの対義語とされる言葉で、「改善」や「改良」といった領域での取り組みです。
前述の破壊的イノベーションは、既存市場にはない着想で新しい商品やサービスを生み出す「革新」や「刷新」を指す言葉です。つまり、過去に例を見ない価値を生み出すものが破壊的イノベーションであり、既存の商品やサービスの品質や機能性を改善するような取り組みが持続的イノベーションということになります。
破壊的イノベーションが必要な理由
近年ではIT化やグローバル化の進展に伴い、多くの企業があらゆる持続的イノベーションに取り組んでいるため、さまざまな市場が供給過多になりつつあるとされています。こうした状況下で他社が新たな価値を生み出すと、これまで売上が安定していた企業であっても急激に業績が悪化してしまう恐れがあります。
このようなリスクを回避すべく注目を集めている破壊的イノベーションの必要性について、以下であらためて確認してみましょう。
新しい市場を開拓するため
企業の成長戦略に、新たな市場の開拓は欠かせない要素です。
前述のように、多くの市場は既に飽和状態に達しており、顧客を増やすための競争が激化しています。そうした中で、持続的イノベーションを図り続けることはあまり効果的ではないかもしれません。
破壊的イノベーションで新しい市場を開拓し、これまでにない商品やサービスを提供する試みが有力な手段の一つとなり得ます。新たな市場を切り開くことで、競合相手が少ない状態で多くの市場シェアを獲得することが期待できます。
既存の商品やサービスの売上低迷を改善するため
既存の商品やサービスが技術の進歩に追いつかず陳腐化が進むと、市場での価値を失い収益性が担保できなくなります。このような状態では、企業の成長を望むことも難しいため、破壊的イノベーションで新たなビジネスチャンスの獲得を検討してみましょう。
たとえば、新たな技術や材料を開発しそれを活用できると、既存商品の性能向上にも寄与しやすくなります。また競合他社との差別化だけでなく、製造プロセスの見直しによって生産性の向上にもつながるかもしれません。
社会的貢献につながるため
新たに生み出した革新的な商品やサービスが、競合他社だけでなく社会全体に影響を与えることも、破壊的イノベーションが昨今求められる理由の一つです。
たとえば新規市場であれば、その市場での新たな雇用の創出につながります。また、成長段階にある業界では、その取り組みに共感を抱く即戦力層の転職希望者が増加するなど、業界全体の活性化が期待できます。
そのほか、最先端の技術で地球に優しいエネルギーを供給できる、また業務効率化によって従業員のワーク・ライフ・バランスが向上するといった、副次的なメリットも考えられます。
このように、破壊的イノベーションでは雇用の創出をはじめとして、さまざまな社会的貢献への寄与にも期待が持てるでしょう。
イノベーションのジレンマ
既存事業の成長を優先するあまり、新たな技術や商品の創出が後回しとなり、破壊的イノベーションを起こす後発企業に先手を取られる事象を「イノベーションのジレンマ」といいます。
既に特定の業界で成功している企業は、既存の商品やサービスの改良に注力する一方で、新たな技術やアイデアに目を向けにくくなる傾向にあります。これは、持続的イノベーションで軌道に乗っているからこそ、「革新的な先進技術やアイデアが、既存事業にマイナスな影響を与えないか」と危惧してしまうためです。
特に、既存顧客や株主といった、さまざまなステークホルダーが存在する大企業であるほど、このジレンマを抱える傾向にあります。反対に、スタートアップ企業やベンチャー企業をはじめとする、起死回生の一手を打とうとしている企業では、イノベーションのジレンマは起こりにくいと考えられます。
イノベーションのジレンマに陥ると、市場に既存路線の商品があふれ返り、破壊的イノベーションに取り組んだ企業にシェアを譲る結果を招く可能性があります。そのため、既に成功している企業からは、「破壊的イノベーションは市場に対する脅威」と捉えられやすい傾向にあります。
破壊的イノベーションの種類
破壊的イノベーションは、「ローエンド型破壊的イノベーション」と「新市場型破壊的イノベーション」の2種類に分けられます。それぞれの特徴を以下で確認しましょう。
ローエンド型破壊的イノベーション
ローエンド型破壊的イノベーションは、高価格で高性能な商品やサービスが主流の市場の中、必要最低限の性能を備えながら、より低価格で提供するイノベーションモデルです。
「安価」「シンプル」「利便性」を重視した破壊的イノベーションであり、身近な例では100円ショップや格安航空会社などが挙げられます。いずれも、もともと市場に存在していた商品やサービスですが、販売手法を根本的に変えたことで、消費者のニーズをつかむことに成功しています。
ローエンド型破壊的イノベーションでは、低価格でありながらも顧客が求める必要最低限の機能や性能を担保できれば、多くのローエンド層顧客の獲得に期待が持てます。
新市場型破壊的イノベーション
新しい技術やアイデアを積極的に取り入れ、1からニーズを作り上げていくイノベーションモデルを「新市場型破壊的イノベーション」といいます。
前述のローエンド型では、既存の市場に対して主に価格面での変革を図りますが、新市場型では、新たな価値を創出しニーズを掘り起こすことで、シェア獲得を目指します。
たとえば、固定電話から携帯電話への変遷は、これまでにはない「持ち運べる電話」という観点で大きな注目を集めました。さらに電話やメールだけでなく、決済やクラウドツールも活用できるようになったスマートフォンの誕生も、新市場型破壊的イノベーションの一つといえるでしょう。
新市場型破壊的イノベーションは、既存市場での事業に難航している企業や、市場への新規参入を目指す企業に向いています。取り組む場合には、あらゆる分野のリサーチ能力やマーケティング能力が求められるため、簡単に取り組めるイノベーションではない点には注意しましょう。
破壊的イノベーションの課題と解決方法
現状打破に有効な考え方である一方、破壊的イノベーションにはどのような課題があるのでしょうか。以下で解説する課題と解決方法を押さえた上で、破壊的イノベーションに取り組みましょう。
市場や社会に与える影響の課題
まず挙げられる課題が、破壊的イノベーションを起こすことで、参入を検討している業界だけでなく、社会全体に大きな影響を与える可能性がある点です。
市場を劇的に変えるような新商品やサービスの開発に注力すると、そのぶん収益圧迫などの経営リスクも高まり、株主や取引先などのステークホルダーに大きな影響を与える可能性があります。また、破壊的イノベーションによって、雇用している従業員の仕事が減少、あるいは変化するケースも考えられます。
破壊的イノベーションを起こす場合は、企業側の社会的責任を十分に考慮した上で、自主的な規制や規律を設けるといった対策を取る配慮が求められます。
資金とリスクの課題
破壊的イノベーションでは、新たな商品やサービスの創出が主な目的となるため、多額の投資が必要になります。しかし、資金調達に失敗する可能性や、市場参入後に事業が立ち行かなくなるリスクがある点も忘れてはなりません。
また破壊的イノベーションを追求する企業は、従来の商品やビジネスモデルそのものを刷新することになるため、ステークホルダーから反発を受ける恐れもあります。
そのため、破壊的イノベーションを成功に導くには、事前の入念なシミュレーションが欠かせません。市場調査や顧客のニーズの把握、リスクマネジメント強化の遂行、失敗を最小限に抑えるための戦略立てなどを綿密に行いましょう。
破壊的イノベーションは、これまでにない新たな価値を創造する概念のこと
本記事では、破壊的イノベーションが必要とされている理由や取り組む際の課題について解説しました。
破壊的イノベーションは、企業にとって大きなビジネスチャンスになり得る一方、失敗するリスクもあるため、市場のリサーチや戦略立てなどを綿密に行わなければなりません。
また、新しい考え方が必要となる取り組みのため、従来の知識と視野のみに捉われていると成功しない可能性がある点にも注意が必要です。
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