営業計画はどう立てる?成功する営業計画書の作成方法を解説
2025年05月29日(木)掲載
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限られたリソースの中で事業を成功させるには、営業活動を計画的に進める必要があります。しかし、理想だけを追い求めた無理のある営業計画では、目標を達成できずに業績の悪化を招きかねません。そのような事態を防ぐためには、営業計画書が役に立ちます。
本記事では、営業計画書に必要な項目を記載例とともに紹介します。現実的で無理のない営業計画書の作り方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
■営業計画書とは?
■営業計画書の主な項目と記載例
■営業計画の立て方・実行方法
■営業計画書を書く際に起こり得る失敗
■営業力の改善や組織強化ならHiPro Biz
■営業計画書を作成して、適切なアクションプランを設定しよう
営業計画書とは?
営業計画書とは、企業の営業活動における目標とその達成に必要な情報をまとめた書類のことです。具体的には、営業戦略の概要やターゲットとなる市場、アクションプランなどが記載されます。
営業計画を文書化することで、社内での共有が可能となり、部門間や社員間で連携が取りやすくなります。また、営業計画書に照らし合わせれば、現時点での課題が明確になり、目標に向けた施策が立てられるようになるでしょう。
営業計画書の主な項目と記載例
ここからは、営業計画書に記載する内容と、各項目の具体例を紹介します。
なお、ここで挙げる内容は、必ずしも全て記載しなければならないわけではありません。あくまでも参考として捉え、自社に必要な項目のみをピックアップすると良いでしょう。
①ミッション
営業計画書の冒頭には、まず「何のために営業を行うのか」という営業活動の根幹となるミッションを記載します。ミッションを掲げることで、数値目標だけでなく、その目標の達成が企業にもたらす貢献をチーム全体で共有できます。
また、チームの方向性が明確になれば、日々の行動に一貫性が生まれ、モチベーションの維持にもつながるでしょう。
当社のミッションは、革新的なソリューションを通じて顧客企業の業務効率を最大化し、持続可能な成長を支援することです。全ての営業活動は、この理念を実現するために存在します。
②チーム体制
次に、営業活動を行うチームの体制を記載します。成果を挙げるためには、組織内の役割分担が明確であることが不可欠です。営業部門の組織図がある場合は、それを転載しても問題ありません。
必要に応じて新規の採用計画や外部パートナーの情報も盛り込むことで、急なリソース不足にも対応できる体制を構築できます。
営業部長(Aさん):全体戦略の立案とKPIの管理
営業マネージャー(Bさん):営業部長のサポートと案件進捗の管理
フィールドセールス(Cさん、Dさん、Eさん):訪問営業による新規顧客の開拓
インサイドセールス(Fさん、Gさん):リードの生成と初期対応
営業アシスタント(Hさん):資料作成およびバックオフィス業務
③ターゲット市場
限られたリソースで最大の成果を出すためには、営業活動の範囲を絞り込むことが大切です。ターゲット市場は、業種だけでなく企業規模や地域、さらには意思決定者の属性やニーズまで掘り下げる、いわゆる「ペルソナ」まで設定しましょう。
ペルソナを明確化することで、提案内容やコミュニケーションの方向性がぶれず、商談成功の可能性が高まります。
【ターゲット企業】
業種:ITサービス企業
地域:関東圏
従業員数:100~300名
【意思決定者のペルソナ】
職種:営業
ポジション:マネージャー以上
年齢:30代以上
ニーズ:現場の営業管理やデータ分析に課題を感じており、ツールの導入を検討している
④必要なツール
適切なツールを導入すれば、営業活動の意思決定にデータを活用できるので、生産性を高めることにつながります。代表的なツールには、SFA(営業支援システム)やCRMシステム(顧客管理システム)などがあります。
必要となる機能を整理した上でツールを選定し、営業計画書には導入の時期や担当者の研修計画も盛り込みましょう。
SFA:営業活動の一元管理と案件ごとの進捗の可視化
CRM:顧客管理とフォローアップ業務の自動化
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⑤ポジショニング
ポジショニングの項目では、自社の製品やサービスの市場での立ち位置を明示し、競合他社と差別化できるポイントを洗い出します。3C分析やSTP分析などのフレームワークを用いて環境を整理してください。
自社の強みと弱みを可視化することで、営業トークや提案資料の説得力が増すはずです。
市場環境:中小企業向けクラウドツール市場が拡大中
強み:操作性に優れたUIとスピーディーな導入サポート
弱み:エンタープライズ領域での実績の乏しさ
機会:DX推進によるニーズの高まり
脅威:大手企業による価格競争の激化
⑥マーケティング戦略
営業活動を加速させるためには、製品やサービスのマーケティング戦略も欠かせません。
WebコンテンツやSNS、オフラインイベントなど、ターゲットに即したチャネルでプロモーション活動やブランディングを実施します。マーケティング部門と連携し、チャネルごとの役割と目標を設定すると良いでしょう。
コンテンツマーケティング:週1回のブログ更新でSEOを強化
SNSの活用:XとInstagramを活用した製品のプロモーション
オンライン広告:Google広告によるリードの獲得
オフラインイベント:年4回の展示会出展で新規商談を創出
⑦新規顧客の獲得戦略
新規顧客を獲得するための具体的な方法を記載します。新規顧客の獲得には、初めにリードジェネレーション(見込み顧客の獲得)、次にリードナーチャリング(見込み顧客の育成)といったフェーズが存在します。戦略を練る際は、各フェーズに適切な方法を意識して設定してください。
また、見込み顧客の定義や初回接触時のトークポイントを細かく詰めれば、担当者ごとのパフォーマンスにばらつきが生じることを防ぎ、属人化を避けられます。
見込み顧客の獲得:ブログやSNSでの情報発信、月1回のウェビナー開催
見込み顧客の育成:メルマガの配信、架電
見込み顧客の優先度設定:見込み顧客のスコアリングによる優先順位の明確化
⑧具体的なアクションプラン(行動計画)
ここまでの情報を基に、具体的なアクションプランを設定します。これはいきなり考えることは難しく、チーム体制やターゲット市場、必要なツールが明確になってこそ、設定できるものです。
アクションプランの設定にあたっては、日次、週次、月次のタスクを明示し、進捗確認のタイミングや評価基準を設けることがポイントです。
目標:月間受注件数50件の達成
日次:テレアポ30件、メール送信10件
週次:商談件数10件、提案書作成3件
月次:既存顧客へのフォローアップリストを作成、失注理由の分析会議を実施
⑨営業目標(KGIとKPI)
最終的な売上や利益を表す「KGI」と、そこに至るまでの中間目標である「KPI」を設定します。KGIには、企業のビジョンに則った中長期的な目標を定めます。一方でKPIには、商談数や提案件数、受注率など、具体的かつ測定可能な数値に落とし込み、達成状況をモニタリングしましょう。
あらかじめKPIを設定しておけば、進捗を見てKGIの達成が難しいと判断したときに、適切な改善策を取り、営業活動の取り組み方を修正することもできます。
KGI:年間売上6,000万円の達成
KPI:月間商談数100件、受注率30%
⑩予算
最後に、営業活動に必要なコストを算出し、予算を各施策に対して適切に割り当てます。人件費やツールの導入費用、広告出稿費、教育や研修費などを項目別に洗い出し、営業計画がコストの面で無理のないプランであることを示します。
なお、営業活動の中で市場を取り巻く環境が変化し、必要なコストにずれが生じる場合があるため、四半期ごとに実績と比較して軌道修正できる体制を整えておくことが重要です。
年間予算:40,000,000円
人件費:22,000,000円
ツール導入・維持費:6,000,000円
マーケティング費用:8,000,000円
教育・研修費用:2,000,000円
営業計画の立て方・実行方法
繰り返しになりますが、営業活動を成功に導くには、明確で実行可能な営業計画が欠かせません。現状、営業活動がうまくいっていない場合は、営業計画に何かしらの問題がある可能性が高く、事業を継続するためにも早急な改善が求められます。営業計画を立てる際は、単に売上目標を掲げるだけでなく、営業プロセス全体を整理し、数値と行動に落とし込むことが重要です。
ここからは、営業計画を立案し、実行に移す際の基本ステップを紹介します。
①営業プロセスの全体を可視化する
営業計画を立てる第一歩は、営業活動の流れを明らかにすることです。見込み顧客へのアプローチから始まり、商談、提案、クロージング、受注に至るまで、各段階を洗い出します。
マーケティングやカスタマーサポートも含めたビジネス全体の流れを可視化し、可能な限り把握することが理想です。各ステージがどのようにつながり、どこでボトルネックが発生しているのかを認識するためには、営業プロセスの可視化が必要です。
②各プロセスのKPIを設定する
営業プロセスを可視化したら、それぞれのフェーズでKPIを設定します。成果を数字で確認できるよう、商談数や提案件数、受注率などに数値目標を定めます。
KPIの設定時には、過去の営業データを活用すると効果的です。仮に、月に100件の商談があり20件の受注に至ったという実績がある場合、受注率は20%となります。この実績を基に、受注率30%という現実的なKPIを定める、という具合です。
③特に注力する営業プロセスを把握する
各フェーズのKPIを設定したあとは、現状で成果が思うように出ていない箇所、すなわち注力するポイントを特定します。次のフェーズへの転換率を分析することで、数値的な裏付けをもとに問題点を見極められます。
例えば、提案までは順調でも受注につながっていない場合は、クロージングの手法や提案内容に課題がある可能性が考えられるでしょう。営業プロセスのボトルネックを明確にすることで、優先的に取り組む必要がある領域が浮かび上がってくるのです。
④アクションプランを考える
改善が必要なプロセスが特定できたら、それを解決するための具体的なアクションプランを立案します。例えば、商談から受注への転換率を高めたい場合には、提案書の見直しやトークスクリプトの改善など、複数の施策が考えられます。
ここで重要な点は、一つの手法にこだわらず、いくつかの選択肢を並行して準備することです。全ての施策が期待通りの成果を出すとは限らないため、代替案を用意してリスクを分散させましょう。
営業計画書を書く際に起こり得る失敗
最後に、営業計画書を書く際によくある失敗を紹介します。同じ轍を踏まないように、どのようなパターンが存在するのかをしっかりと把握しておきましょう。
営業計画の目的や目標が不明瞭
目的や目標が不明瞭な営業計画書では、社員が何を目指せばよいのかがわからず、営業活動が難しくなります。
また、目的や目標が設定されていなければ、営業の成果に対して、適切な評価を下すことができません。目的や目標は全ての営業活動の指針となるため、営業計画書には具体的に記載しましょう。
アクションプランが不明確
アクションプランが明らかでない場合も、営業活動の失敗を招くことがあります。目的や目標だけでなく戦略もわからなければ、社員がどう動けばよいのかを判断することは難しいです。
上に立つ人間のみが営業戦略を把握していても、思うような結果にはなりません。営業計画書にアクションプランを明記し、実際に営業を行う社員全員に共有する必要があります。
目標の設定が不適切
目標を適切なレベルで設定できていない場合も、営業計画書を適切に作成できているとはいえません。
設定する目標は、高すぎても低すぎても不適切です。低い目標に意味がないことは当然ですが、高すぎる目標もまた、社員のモチベーションを低下させる要因となります。成果の向上につなげるためには、現状よりやや高い目標を設定すると良いでしょう。
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営業計画書を作成して、適切なアクションプランを設定しよう
今回は、営業計画書に必要な項目を具体的な記載例とともに紹介しました。
一貫性のない営業活動では、リソースを適切に活用できず、目標を達成することができません。現状に基づいた営業計画書を作成し、実現可能な目標をチーム全体で共有すれば、何をすれば良いかが自ずと明確になり、営業活動の効果を最大化できるはずです。
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