なぜSFA活用は進まないのか? 「データの断絶」を乗り越え、売上につなげる組織の条件

営業

2026年02月17日(火)掲載

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企業の売上拡大において重要な要素の一つとなりつつあるSFA(営業支援)ツール。近年のSFAツールは、AIによる商談記録の自動化や、失注理由に応じたフォロー施策の自動化など、人手では対応しきれなかった営業活動を実現できるほど進化しています。

しかし、実際にツールを運用するマーケティングの現場からは「営業側が情報を入力してくれない」という悩みの声が聞こえたり、営業の現場からは「作業負荷が増えて、メリットをあまり感じない」という不満の声が上がったりと、せっかくのツールが宝の持ち腐れになってしまっているケースも少なくありません。

SFAツールなどの運用を通じて数多くの企業の収益向上に貢献するプロ人材、富田 直宏氏は、「マーケティングと営業の間にある“データの断絶”が悪循環の要因となっている」と指摘します。両部門がメリットを感じられる状態を実現し、セールスオペレーションを向上させていくためには何が必要なのか。現場の知見に基づく打ち手を聞きました。

SFAツールによって「人がやりきれなかった」営業活動を実現できる

——SFAツールが進化し、最近ではAIを活用した機能も拡張されていると聞きます。現状、SFAツールではどんなことができるのでしょうか。

富田氏:商談管理においては、IP電話やオンライン会議システムの音声データをもとに文字起こしができるようになり、SFAツールが自動的に詳しい商談履歴を残してくれるようになりました。

大手外資系企業が提供するSFAツールでは、顧客情報やメール送受信履歴などのデータをもとに、状況に応じたメール文面案の提示や、営業ごとに最適なやり方をコーチングする機能が備わっています。

私がよく支援先企業にアドバイスしているのは、「失注履歴」の管理を強化することです。このデータがあれば、失注理由ごとに、適切なタイミングで自動アプローチできるようになるからです。

たとえば「なんとなく今のタイミングじゃない」という判断軸が曖昧なまま断られた見込み客であれば、3か月ごとに状況確認のメールを送る手法が有効です。「競合サービスに負けた」という失注理由なら、競合サービスの更新タイミングを見越して「お困りのことはありませんか?」とアプローチするといった具合です。

現在のSFAツールは、こうしたアプローチを、文面の生成も含めて自動でできるようになりました。これまで「必要性を認識しつつも、実行に移せなかった」営業活動を実現できるようになったのです。

——大きなメリットがある一方、費用をかけてSFAツールを導入したにもかかわらず、利活用がなかなか進まない企業も多いようです。富田さんのもとへは、支援先企業からどのような相談が寄せられていますか。

富田氏:「ツールを導入しているが活用できていない」というマーケティング部門からの相談や問い合わせが多いですね。その原因を深掘りしていくと、「営業サイドが記録を入力してくれず、データが途切れ途切れになっている」といった状況が見えてくることが多いです。

一方の営業部門からは、インサイドセールスや営業企画のトップから「ツールをもっと使いこなしたい」「より効果的に成果を上げたい」といった課題の声を聞きます。マーケティングも営業も、ともにSFAツールを活用したいと考えているのに、両者の間でデータが共有されていないのです。

企業によっては、このような状況のなか、月額100万円を超えるコストをSFAツールに投じているケースもあります。

マーケティングと営業、それぞれの問題点が悪循環の要因となる

——マーケティング部門と営業部門、それぞれの立場で抱えがちな悩みについて詳しく教えてください。まずマーケティング側では、何が問題視されているのでしょうか。

富田氏:マーケティングとしては、獲得したリードの「その後」を正確に把握したいという本音があるでしょう。

たとえば、リスティング広告で獲得した見込み客について、マーケティングと営業がSFAツールを通じて連携できていれば、「商談まで進んだか」「受注に至ったか」などの結果を追跡することが可能です。基本的なことに思えるかもしれませんが、これができていない企業も少なくありません。結果として、営業側へ提供したリードの質を担保できているのか、振り返ることができません。

また、契約中の顧客に対してナーチャリングを行ってしまうなど、無用のトラブルを招いてしまうリスクもあります。すでに自社と取引があるのに、未取引のような文面で案内してしまうケースです。どんな企業でも経理システムなどで顧客情報を管理していると思いますが、営業上の最新ステータスがマーケティング側に共有されていないことが多いのです。

——営業側の問題点についてはいかがでしょうか。

富田氏:ツールへの入力を求められた営業メンバーが、「この作業の目的や意義が十分に理解できない」と負担に感じてしまうケースです。

私も営業経験者なので、心情は理解できます。多くの場合、営業は、成果さえ出していればある程度裁量が大きい職種といえます。ツールへの入力作業といったタスクが生じると、締め付けられているような、行動を細かく管理されているような感覚を覚えてしまうのでしょう。これは営業側の管理職にとってもデメリットだと思います。

結果的に営業側でデータが入力されず、マーケティングから提供されるリードの質も向上しないという悪循環に陥る懸念があります。

SFAツールを活用して「セールスオペレーション」向上へ

——こうした問題点を乗り越えるために、企業はどんな打ち手を取ると良いでしょうか。

富田氏:本来の目的はSFAツールを使いこなすことではなく、その先にある売上拡大にあると考えられます。それを実現するためには、マーケティング側と営業側それぞれで「セールスオペレーション」の体制を整えていく必要があります。

セールスオペレーションとは、企業としてどれくらいの顧客を持ち、どのように営業活動が進捗しているのかを把握し、中長期的な経営基盤を見通していくために必要なオペレーションを指します。SFAツールの活用を促進することによって、セールスオペレーションの向上に寄与します。

——マーケティング側に求められるセールスオペレーションの工夫をお聞かせください。

富田氏:短期的にすぐできることは、「こんなステージの顧客が、これくらい存在する」という情報を営業側に出すことです。この可視化した情報をもとに、さらにセールスオペレーションを進化させていきたいという意思を営業に伝えるのです。

たとえば新しい見込み客との接触時に、その企業が「自社のサイトをどれくらい見ているか」「自社の商品にどれくらい興味があるか」といった情報があれば、営業側にとって有力な材料となるはずです。

見込み顧客をトスアップ(※)する際に商談手前の状態まで持っていければ、営業側にはさらにメリットを感じてもらえるでしょう。営業としては「マーケティングと連携すれば新しい顧客が増える」という大きな手応えを感じられます。少しずつでもいいので実例として見せ、ベネフィットを伝えていくことが重要です。

そのうえで、営業には「顧客のステータスや、“対応NG”の情報だけ更新してほしい」といった形で、まずは最低限の作業だけを依頼することが推奨されます。プルダウンのように何かを選択するだけで更新できるようになっていれば理想的ですね。

このようにベネフィットを伝え、作業面での負荷も十分に考慮して、無用な摩擦をなくすことがポイントではないでしょうか。

※マーケティング部門が接点を持った見込み顧客を営業部門に引き継ぎ、商談が見込める状態まで整理した上で共有すること

——営業側にはどんな工夫が求められますか?

富田氏:営業側では、現状のルールや仕組みに問題がないかを見直すことが推奨されます。

たとえば、すでに別の基幹システムをSFAツールとして利用しているのに、さらに別のシステムに入力するように言われると、現場の営業担当者は手間を感じるだけでしょう。もし重複して運用しているシステムがあるのなら、一つのシステムに統一することを推奨します。

こうした無駄をなくしたうえで、経営層や上長からの業務命令として入力指示を出していけば、情報が着実に更新されるようになるでしょう。

また、営業の実績や成果をSFAツールの入力内容をベースに評価することも有効です。営業担当者からすれば、最終成果だけではなく、プロセスも含めて評価してもらえるというメリットがあります。仮に成果が出ていない状態でも、「実はリードの質に問題があった」など、営業個人に起因しない理由が見つかるかもしれません。

これはマネジメント層にとってもベネフィットがあります。リアルタイム、もしくはリアルタイムに近い状態で、営業の結果指標や行動指標を把握できるようになるからです。

経営陣がやる気でも、現場に火がついていなければ成果は出ない

——富田さんが実際に支援したなかで、SFAツール活用を通じてセールスオペレーションを向上させたケースをお聞かせください。

富田氏:従業員数が数十名規模の人材系企業では、マーケティングからのトスアップを強化する施策として取り組みをスタートしました。

この企業では、以前から「サイトに来訪してくれる求職者が多い」という強みがあったので、求職者がサイト上のポップアップ機能で便利に面談予約などができるよう改修。営業側に供給できるアポイントメントが増え、現場に理解が広がっていきました。

他に、従業員数1000名超のIT企業においては、マーケティングと営業の連携で何ができるかの理解を広げるために、ロードマップを整えて資料化。事業部長クラスがそろっている会議で提案し、合意形成を進めていきました。

そのうえで、セールスオペレーション強化の取り組みに乗り気な部門へは失注先フォローの仕組みを入れたり、一定期間アプローチし続ける仕組みを作ったりして、新たな取り組みによる実績を全社へ共有していきました。大規模な組織では、このようにスモールスタートから成果を広げていくことが重要です。

——富田さんのようなプロ人材の力を活用し、セールスオペレーション向上を図っていくために、企業はどんな体制を作ると良いでしょうか。企業とプロ人材の連携を深めるためのポイントをお聞かせください。

富田氏:どんなに立派な計画を立てても、企業側の当事者が静観している状態ではプロジェクトが進みません。理想的なのは、プロジェクトの成否が担当者の評価に直結するくらいの状態です。

セールスオペレーション向上を実現するためには、マーケティングと営業それぞれの部門に本気度が求められます。経営陣がどれだけやる気になっていても、現場に火がついていなければ成果に結びつきにくいのです。本当にセールスオペレーションを向上させて売上拡大につなげたいのであれば、評価制度の見直しも検討して、現場担当者の本気度を醸成していただければと思います。

【プロフィール】

株式会社マーケティングアカデミア 代表取締役 富田 直宏(とみた・なおひろ)
慶應義塾大学卒業後、JTB、リクルートを経て、教育・人材領域のベンチャー企業へ。求人メディアの事業責任者として領域シェア首位を獲得。その後EdTechスタートアップにて公教育進出の事業開発を牽引し2019年に株式会社マーケティングアカデミアを設立。2000年代からインサイドセールス・カスタマーサクセスを実践し、営業現場のデジタル化と成果創出に精通。現在はリードナーチャリング・CRMマーケティングの運用代行・伴走支援を主軸に、MA・SFA・CRM運用を通じた企業の収益最大化をハンズオンで支援している。

まとめ

SFAツールの真価を引き出し、売上拡大につなげるには、マーケティングと営業をつなぐ「セールスオペレーション」の再設計がカギとなります。 とはいえ、現場の入力負荷を最小限に抑えつつ、使うメリットを明確に提示するような仕組みを、多忙なマネジメント層だけで構築するのは容易ではありません。

そこで、知見豊富なプロ人材の力を借りてみてはいかがでしょうか。彼らが第三者の視点で現場に入り込み、ボトルネックを解消することで、現場は本来の営業活動に集中できるようになります。

運用が軌道に乗れば、将来的には評価制度との連動もしやすくなり、組織としての推進力はさらに高まるでしょう。 まずは「外の知見」を取り入れて現場の空気を変え、SFAを「武器」に変える最初の一歩を踏み出してみませんか。

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