離職率が高くなる会社の特徴とは?基本的な原因と対策を解説(前編)
2024年12月17日(火)掲載
- キーワード:
多くの業種や職種で人手不足が経営課題となるなか、人材をいかに定着させるかは重要なポイントだといえるでしょう。新たに人材を採用する取り組みを行うことは大事ですが、一方で従業員が長くはたらき続けられる職場環境を整備していくことも必要です。
離職率が高い会社にはいくつかの特徴が見られるため、自社の現状がどうであるかを定期的にチェックしてみましょう。この記事では、離職率が高まる原因や対策について詳しく解説します。
離職率が高い会社の特徴
新たに人材を採用しても、なかなか定着してもらえないという場合、慢性的な人手不足に陥りやすくなります。離職につながる原因はさまざまですが、主なものとして次のような点が挙げられます。
離職率が高い会社の5つの特徴
- 人事評価制度に問題を抱えている
- 業務量が多く、労働時間が長い
- 職場の人間関係が悪化している
- 人材を育成する体制が整っていない
- 経営理念やビジョンが浸透していない
上記の点について、さらに詳しく解説します。
人事評価制度に問題を抱えている
離職率が高くなる会社の特徴として、まず人事評価制度に問題を抱えている場合が挙げられます。従業員からすれば、「一生懸命に仕事に取り組んでいるのに、会社がなかなか評価してくれない」「現在の業務と待遇が釣り合っていない」など、人事評価に関する不満が生じる場面があります。
すべての従業員が納得する人事評価制度の構築は難しい部分がありますが、企業側が具体的な改善策をとらなければ、従業員のモチベーションは低下してしまい、離職率が高くなってしまうでしょう。近年では、リモートワークなどの普及によってはたらき方も多様化してきています。
制度そのものに問題はなかったとしても、フルタイムでの出勤を前提とした人事評価制度となっている場合、在宅勤務を行う従業員などにとって適切な評価をなされていないといった不満が生じる恐れがあります。
また、競合他社や業界の平均水準と比較して、著しく待遇が悪い場合も制度への不満を抱えやすくなるでしょう。
業務量が多く、労働時間が長い
慢性的な人手不足などを理由として、特定の部署や従業員の業務量が過剰に多い状態が続いてしまうと、離職率が高くなる傾向が見られます。残業を頻繁に行わないと業務が片付かなければ、自ずと労働時間が長くなってしまい、従業員はなかなか休みを取ることができません。
思うように休暇が取得できない状態であれば、ストレスなどの影響からメンタルヘルスの不調が生じる恐れもあります。仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、やがて離職につながる原因になるでしょう。
業務を遂行するために必要な人員を割り当てていたとしても、目標設定が高過ぎたり、従来の業務フローのまま進めていたりすれば、効率の悪い業務に時間や労力がかかっている可能性があります。
職場の人間関係が悪化している
職場の人間関係がうまくいっていなければ、従業員はストレスを感じてしまいやすくなり、離職を考えるような場面もあるでしょう。特に人の入れ替えが激しい職場であったり、新入社員をサポートする体制がきちんと整えられていなかったりすれば、人間関係が次第に悪化していく場面が生じてきます。
また、仕事に関する悩みや相談事が生じても、年齢の近い同僚がおらず誰にも相談できないまま、不安を抱えてしまうというケースもあります。毎日のように顔を合わせる従業員同士の人間関係が悪化すれば、チーム全体のパフォーマンスが低下するだけでなく、離職の原因を生み出すことにもつながるでしょう。
離職者が増加する流れができてしまうと、状況を改善するのに時間がかかる恐れがあるので、コミュニケーションが円滑に行われているかを把握しておく必要があります。
人材を育成する体制が整っていない
職場の労働環境に問題がなかったとしても、将来的なキャリアに不安を抱えてしまうと、従業員が離職を考える原因になるでしょう。定期的に面談を実施していても、現在の業務に関することや人事評価のみに話が終始すれば、「このままはたらき続けて大丈夫なのだろうか」といった考えを従業員は抱きやすくなります。
従業員の人材育成に消極的な姿勢の会社は、キャリア支援についても消極的だと思われてしまいがちになるので注意が必要です。人材育成に関する計画を定めていない会社の場合、たとえキャリア支援に取り組んでいても場当たり的な対応になりがちな部分があります。
業務に必要なスキルを身につけてもらうだけでなく、従業員自身が活き活きとした気持ちで仕事に取り組むためのキャリア支援を行うには、中長期的な視点に立ってキャリア支援を行っていくことが大切です。
経営理念やビジョンが浸透していない
会社が掲げる経営理念や事業に関するビジョンがうまく浸透していなければ、従業員が仕事に対するやりがいを見出すのは難しい部分があるでしょう。与えられた業務をただこなしていくだけでは、仕事に対するモチベーションは低下してしまいます。
経営目的や事業計画を達成するために、従業員に仕事を任せていくことは大事ですが、従業員自身が設定した目標と擦り合わせる機会を設けるのも重要です。会社が一方的に指示を出すのではなく、従業員とともに考えていく姿勢を見せなければ、離職率を高める原因となるでしょう。
離職率の基本的な捉え方
離職率を改善するには、基本的な考え方をよく理解しておくことが大事です。ここでは、離職率の具体的な計算方法や平均的な水準を解説します。
離職率の計算方法
離職率とは、特定の期間において従業員が離職した割合を示す指標のことです。期初から期末までの1年間で計算するケースが多いですが、離職率のデータを用いる目的に応じて、計算の根拠となる期間が設定されます。
具体的な計算式は、次の通りです。
離職率の計算式
離職率=離職者数÷従業員数×100%
定年退職者などが多いタイミングでは離職率が高くなる傾向が見られるため、過去のデータと比較して考える必要があります。また、業界平均よりも高い状態が続いているのであれば、どのような原因があるのかを調べることが肝心です。
一般的に、従業員の不満が高くなれば離職率は増加する傾向にあるため、早めの対策を講じることが求められます。
離職率の平均
厚生労働省が公表している「令和4年 雇用動向調査結果の概況」によれば、離職率は全体で15.0%となっており、前年と比べると1.1%増加していることがわかります。業種別では、「宿泊業、飲食サービス業」で26.8%、「サービス業(他に分類されないもの)」で19.4%、「生活関連サービス業、娯楽業」で18.7%の順に離職率は高くなっています。
また、「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」において、就業後3年以内の離職率は新規高卒就職者で37.0%、新規大卒就職者で32.3%という結果です。
(参照:厚生労働省『令和4年 雇用動向調査結果の概況』)
(参照:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)』)
まとめ
ここまでで、離職率が高い会社のさまざまな特徴や要因、離職率の計算式や基本的な捉え方などについてご紹介してきました。 日々職場の中にいると、ついつい主観的になったり、慣例にとらわれてしまうものです。この機会に、あらためて客観的な視点から職場環境を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。
後編では、離職率が高いことで考えられるデメリットや離職率低下に向けた具体的対策などをご紹介していきます。ぜひあわせてご覧ください。
(編集/d’s JOURNAL編集部・HiPro Biz編集部)