営業生産性148%アップの裏側!Forbes受賞チームが語る“組織全体の底上げ”の仕方
2025年10月17日(金)掲載
「HiPro Biz」には、さまざまな企業の営業組織の責任者から、「営業スキルが個人に依存していて、共有や可視化ができていない」「組織全体の営業力底上げに向けた具体的なアクションが定まっていない」といった悩みの声が多く寄せられています。
「HiPro Biz」においても、事業の成長に伴って営業組織の標準レベルを高める必要性を感じていました。目指したのは「人材提供型」から「課題解決型」への営業スタイルの転換です。スキルマップやセールスハンドブックを整備し、営業一人ひとりの成長を支援するセールスイネーブルメントによって営業生産性148%向上を実現した「HiPro Biz」の取り組みは、Forbes JAPANの「NEW SALES OF THE YEAR 2025」セールスイネーブルメント賞を受賞しました。大規模な営業改革の裏側にはどんなストーリーがあったのでしょうか。取り組みを主導する杉原 仁美と中島 千香子に聞きました。
■プロ人材の本質的な価値発揮につなげる「課題解決型」を目指して
■営業フェーズごとに必要なスキルを定義し、行動に落とし込むハンドブックも作成
■「生産性148%向上」の背景には、プロ人材による厳しいフィードバックも
■まとめ
プロ人材の本質的な価値発揮につなげる「課題解決型」を目指して
——「HiPro Biz」が営業改革に取り組んだ背景を教えてください。
中島:パーソルキャリアが展開する「HiPro」傘下の「HiPro Biz」は営業担当が介在し、営業担当がいるだからこそ実現できるコンサルティングサービスを提供しています。
ただ、「HiPro Biz」の営業メンバーは異業種出身者や新卒入社者も多く、メンバーによって「HiProBiz」が提供する価値とは何かの基準に個人差がある側面もありました。それぞれの経験に基づいた成功パターンが混在している状態だったのです。
私たち営業担当が介在することが求められる「HiPro Biz」だからこそより一層、経営層の顧客からリアルな経営の悩みを聞き、解決に寄り添う「課題解決型」の営業スキルが求められているという背景もありました。
杉原:「HiPro Biz」には、高度な専門スキルを持ち経験豊富なプロ人材の方々にご登録いただいています。こうした人材の力を活用したいというニーズが高まっていることから、お客様からは現在直面している緊急かつ具体的な課題についてのご相談を数多くいただいています。
一方で、営業担当がお客様の中長期的な課題を理解する段階まで至らず、プロ人材の本質的な価値発揮につながらないケースも見られました。だからこそ「HiPro Biz」においては、課題解決型のスタイルへ転換していく必要があると感じていたのです。
——課題解決型への営業変革を目指したプロジェクトは、どのように立ち上がったのでしょうか。
中島:「HiPro Biz」が課題解決型への営業変革を意思決定し、当時のマネジメント陣で約3か月にわたり議論しました。
最終的に目指している姿は共通していても、それを表現する言葉はマネジャーによって違いました。だからこそ議論が続いたのですが、それでもトップダウンで一方的に進めることはしませんでした。マネジメントもそれぞれ、営業で大きな成果を出してきた経験があります。メンバーの行動まで変えていくためには、まずマネジメント陣の目線をそろえたほうがよいと考えていました。
こうした議論を経て、2024年にセールスイネーブルメントグループが設立され、課題解決型の営業スタイルを根付かせるための新たな取り組みを進めていきました。
営業フェーズごとに必要なスキルを定義し、行動に落とし込むハンドブックも作成
――「HiPro Biz」が進めているスキル育成プログラムは、どのようにして生まれたのでしょうか。
杉原:以前は人によって価値提供の基準が異なっていたため、「組織全体の営業成果を高める」というテーマについても、それぞれ異なる回答が返ってきていました。これではメンバーは何に集中して取り組めばよいかがわかりません。
そこで「ハイパフォーマー」「ミドルパフォーマー」「入社直後」の各層ごとに商談内容を録画し、膨大な商談記録を見て、何が成果につながる営業活動なのか分析しました。これによって課題が明確になり、スキル育成プログラムへとつながっていきました。
――ハイパフォーマーの特徴とは?
中島:相手が何を求めているかに意識を向けて対話する「対人折衝力」が高い点が挙げられます。
私たちが対話する経営層の方々は、物事の価値を冷静に見極めます。お客さまも状況によっては本音をお話いただけないことも少なくありません。そのような相手の表情を察知し、興味や関心を持っていただくためのスキルを高めなければなりません。
――ハイパフォーマーの行動を分析した「スキルマップ」や、その行動を標準化した「セールスハンドブック」とはどのようなものでしょうか。
杉原:スキルマップは、営業の生産性向上を目指し、スキルの現在地を測るためのものです。営業はこれを見て強みや弱みを自覚し、「営業のこのシーンにおいて、○○ができるようにしよう」と目標設定できるようにしています。
中島:営業フェーズ毎に設定、そして、アソシエイト未満、アソシエイト、コンサルタント、リードコンサルタントと階段になるようにスキルを設定しています。これは具体的な営業シーンで実践しないとスキルは高まらないため、活用のしやすさを重視しました。
また、日々忙しい営業にとって、スキルの開発は一見遠回りにも見えるため、成果相関性の高いスキルを設定することにこだわりました。これによってスキルを身につければ成果が上がると信じて取り組めるようにしました。
杉原:育成プログラムも「プランニング」「商談フェーズ」「提案フェーズ」などに分け、スキルマップのスキルレベルに応じた内容で設計しています。弱いスキルが明確になったら育成プログラムを受講する、というサイクルが回しやすくなっていることで、個人の目標設定にも活用でき、マネジメントにも寄与するツールとなりました。
こうして可視化されたスキルに基づき、「セールスハンドブック」を作成しました。70の営業ファクターごとに必要な標準行動の基準をまとめており、たとえばテレマーケティングでは「この状態がOK」「この状態はNG」「成果を出すためにはこんな準備や行動、またはツール活用」などのポイントを細かく具体化しています。
「生産性148%向上」の背景には、プロ人材による厳しいフィードバックも
――スキル育成プログラムの受講者には、どのように変化が現れていますか。
中島:スキル育成プログラムでは2か月間、週2回のロールプレイングと、週1回の実際の商談を録画して振り返るプログラムを実施しました(計週3回の実施)。受講翌月の段階で、案件獲得率は112%、生産性は148%伸長しており、MVPなどの受賞をした営業メンバーも誕生しています。
——生産性148%向上を実現した要因はどこにあると考えていますか。
杉原:営業戦略の大きな柱の一つとしてセールスイネーブルメントに取り組んでいることが大きいです。
私たちのようなミドルの組織が頑張るだけでは、なかなか成果につながらないこともあると思います。「HiPro Biz」では事業責任者が、組織が成長するためにセールスイネーブルメントが必要なのだとメッセージを発しています。営業メンバーも期待を持って取り組み、マネジャーも本気でプログラムに送り出せているのではないでしょうか。
だからこそ私たちミドルの組織も結果にこだわっています。高いモチベーションを持って取り組んでくれている営業メンバーに感謝したいです。
中島:スキル育成プログラムは社内だけでなく、外部のプロ人材の力も借りています。顧客である経営層に近い立場のプロ人材にロールプレイングを担当いただき、「あなたの営業は受け入れがたい」といった厳しいフィードバックも伝えていただきました。これまで課題に気づかず、「できているつもり」だったメンバーはショックを受けますが、だからこそ「できるようになりたい」という動機につながっているようです。
さらに、ロールプレイングのみならず日々の商談で実践できているかを一緒に確認し、日常の営業活動に反映できている点がこの成果に繋がっていると思います。
——営業改革に大きな成果を収めた今だからこそ感じる新たな課題や、今後の取り組みの展望を教えてください。
杉原:2024年までは一人前の成果を出せる営業メンバーを増やすために取り組んできました。しかし本当にサービス価値を高めていくには、ハイパフォーマーを増やしていく必要があります。ハイパフォーマーの世界はさらに属人的です。個別の強さを失わないようにしながら、いかにトップ営業を育成していくか、こちらにも取り組んでいきます。
中島:私たちがセールスイネーブルメントプログラムをどれだけ提供しても、対象にできる人数は限られます。かつ、人が寄り添いながら支援する体制を取っているので、物量的な限界もあります。今後は現場のマネジメント層もセールスイネーブルメントに取り組み、現場の工数を減らしながら成長につなげられるよう、体制を強化していきたいと考えています。
<プロフィール>
写真右/パーソルキャリア株式会社 HR Development部 ゼネラルマネジャー 杉原 仁美(すぎはら・ひとみ)
写真左/パーソルキャリア株式会社 HR Development部 マネジャー 中島 千香子(なかじま・ちかこ)
まとめ
「HiPro Biz」の営業改革は、営業スタイルの再定義から始まり、スキルマップやセールスハンドブックといった仕組みを通じて成果に直結する育成を実現しました。外部のプロ人材によるフィードバックや現場との目線合わせが功を奏し、営業生産性148%向上という手応えにつながっています。属人化の壁を越え、営業組織全体の力を底上げしたいと考える企業にとって、「HiPro Biz」の実践知が参考になれば幸いです。