セールスイネーブルメントとは?導入時の3つのメリットや企業課題を解説!
2021年11月25日(木)掲載
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CRM(顧客管理)やSFA(営業支援)など各領域のツールの登場により、営業活動が数値分析できるようになった昨今、セールスイネーブルメントの活用が市場の注目を集めており、その重要性が多くのメディアや書籍で取り上げられています。
これまで事業成長の阻害要因となっていた営業活動の属人化を防ぎ、営業力の強化を早期に実現できる点が、セールスイネーブルメントの大きなメリットです。また、コロナ禍の影響により、営業手法がこれまでの対面商談からオンライン商談へとシフトしたことで、これまでと異なったコミュニケーションが顧客から求められるなど、多くの企業にとって営業改革は喫緊の課題となっています。
実際に、データを活用した営業活動の分析により、最適な改善施策を行えるだけでなく、マーケティング部門などと連携した新しい営業支援体制を構築できることから、2021年現在、セールスイネーブルメントはますます市場で注目され始めています。ただし、セールスイネーブルメントは近年脚光を浴びたビジネス用語のため、正しく意味を理解している方は少ないのではないでしょうか。
そこで本コラムは、そもそものセールスイネーブルメントの語句説明にはじまり、近年注目されている背景や導入メリット、実施前に把握すべき課題などにつき詳しくご紹介します。ぜひ本コラムを最後までお読みいただき、セールスイネーブルメントの積極的な導入を通し、貴社の今後の事業成長にお役立ていただければ幸いです。
セールスイネーブルメントとは?
はじめに、「セールスイネーブルメント(Sales enablement)」の定義について解説します。セールスイネーブルメントとは、一般的に「成果を出す営業パーソンを輩出し続ける人材育成の仕組み」であると定義づけられており、 「成果を出す営業人材育成のための、企業の取り組み」であると言い換えることもできます。
<セールスイネーブルメントにおける、企業の取り組み事例>
・優秀な営業人材のナレッジ・行動パターンをマニュアル化し、他社員がリアルタイムで活用できるようにする
・営業施策の達成状況などを数値分析の上、営業活動の効率化を図る
・営業人材の研修や実践トレーニングを、組織内で横断的にフォローする
成果に厳しい米国では、セールスイネーブルメントはすでに営業活動に不可欠とされており、日本でもセールスイネーブルメントを経営に取り入れる企業は増加傾向にあります。
近年注目されている背景や重要性
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)が注目されている背景や重要性につき、以下3つの観点から解説します。
営業の属人化による、売り上げ低下を防ぐため
成果の出る営業活動の属人化を防ぎ、売り上げアップの糸口を掴めることが、セールスイネーブルメントが注目を集めている理由の一つです。セールスイネーブルメントは前述の通り、高い営業成績を誇る営業人材の顧客とのやりとりや営業ノウハウをベースに、改善施策を構築の上、目標到達までの進捗状況や成果への貢献度などを数値化できる取り組みです。セールスイネーブルメントの活用が叫ばれている背景には、多くの企業が営業ノウハウをマニュアル化できずに、効果的な営業活動を行えていない実態が読み取れます。
営業活動は個々人の裁量に委ねられる部分が多く、営業プロセスは属人化しがちです。営業組織として成果に直結する再現性のある取り組みを推進し、売り上げアップの実現を目指すべく、現在多くの企業でセールスイネーブルメントの導入が実施・検討されています。
営業力の強化を促進するため
現在、CRM(顧客管理)やSFA(営業支援)、MA(マーケティングオートメーション)などの各領域のツールが市場に登場し、広く普及しているのは周知の通りです。ツールの導入による企業側のメリットは、日々の顧客管理や営業支援に関する工数や成果が数値として把握できるようになり、営業施策の費用対効果の「見える化」につながることです。
ただし、各領域のツールを導入したものの、営業力の強化や受注率向上などに関し、導入以前に思い描いていた目標まで届かず、ツールのみの活用に限界を感じている企業も多いようです。そのような状況もあり、ツールの活用と併せ、営業力の標準化・強化を促進できるセールスイネーブルメントに注目が集まっています。
マーケティング活動の活発化に伴う、顧客の期待に応えるため
情報化社会の急速な発展をはじめとするビジネス環境の変化に伴い、現在の営業担当者にはマーケティング感覚や、各領域のツールを活用するスキルが求められるなど、担う職務は広範囲に渡っています。
基本的な情報はインターネットを通し収集可能なため、営業担当者には経営課題の解決に直結する分析や、市場動向をベースにした質の高い提案などを期待する顧客が増えています。顧客の期待に応えるため、営業担当者は以前に比べて、情報収集や分析、資料作成などに多くの時間が割かれるようになり、肝心の顧客との商談に注力できない状況に直面するケースが増えています。そこで効果を発揮するのがセールスイネーブルメントです。
セールスイネーブルメントを上手に経営に取り入れることで、マーケティング部門などと連携した新しい営業支援体制を構築できる点も、近年セールスイネーブルメントが注目されている背景の一つであるといえるでしょう。
セールスイネーブルメント導入による3つのメリット
セールスイネーブルメントの導入により、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下に主だったものをご紹介します。
営業スキルや生産性の向上
前述の通り、企業における営業活動は、個々人の裁量が大きいことや経験に依存する部分が多く、営業ノウハウなどが「属人化」しやすい傾向があります。セールスイネーブルメントの導入により、優秀な営業人材のナレッジや行動パターンを体系化し、マニュアルとして他社員に共有することで、部門全体の営業スキル向上が期待できます。
また、成果に結びつく営業ノウハウや資料を、営業メンバーがすぐにアクセスできる体制が構築できれば、資料作成や受注獲得に向けた工数の削減にもつながり、生産性を向上できる点も大きなメリットです。
業績への貢献度などが数値化可能
セールスイネーブルメント導入による営業施策の達成状況などの「見える化」を通し、各営業担当者の「業績への貢献度」や「受注までのアプローチ手法」などが、数値面で定量的に分析できるようになります。その結果、各営業担当者の適切な評価につながるため、評価への納得感があり、社員のモチベーション向上も期待できます。
顧客ニーズの把握・管理が可能
顧客ニーズを把握するため、多くの企業がマーケティングに注力していますが、実際にマーケティング施策が日々の顧客獲得や売り上げ拡大にどれほど貢献しているかを数値として計測するには、マーケティング部門と営業部門間での綿密な連携が欠かせません。顧客の価値観の多様化と細分化が進む昨今の市場において、顧客ニーズをしっかりと把握・管理でき、業績拡大につながる事業部連携を強化できる点も、セールスイネーブルメント導入のメリットです。
実現に向けて取り組むべきポイント
前述で示したメリットの実現に向け、企業が取り組むべきポイントにつき、以下に解説します。
各領域のツールの活用
CRMやSFAなど各領域のツールの活用により、属人化しやすい営業活動をデータ主導へとシフトすることで、営業スキルや生産性の向上を目指せます。現在、市場にはさまざまなCRM、SFAなどの各領域のツールがリリースされているため、自社の営業活動の強化に寄与する最適なツールを選択することが重要です。部門間でデータや蓄積したノウハウをスムーズに共有できるよう、費用対効果も勘案の上、自社に適したツールの導入を進めましょう。
営業活動の分析と評価システムの構築
経済のグローバル化に伴い、企業間競争が激しさを増す中、価格やブランド、製品特性といった要素だけで、市場優位性を確保することは困難です。競合他社との差別化を図るには、自社の営業活動が「本当に顧客の経営課題の解決や事業成長に役立っているか」につき、数値面で分析できる組織体制を構築する必要があります。顧客への営業活動の貢献度などが数値分析できれば、今後の営業部の方針を決める際にも役立つはずです。
また、営業活動の分析と連動した「評価システム」も併せて構築することで、社員のモチベーションの向上や営業部門の強化へとつながるため、積極的な導入の検討をおすすめします。
営業スキル向上のための教育体制の構築
営業力の強化に向け、営業担当者に対する営業スキル向上のための教育体制の構築は欠かせません。社内研修や外部セミナーへの参加なども会社方針として推奨し、顧客課題の解決につながる市場分析のスキルやハイレベルな提案スキルの習得を積極的にサポートしましょう。
実施前に把握すべき課題
セールスイネーブルメントを事業成長に結びつけるためには、把握すべき課題を事前に理解しておくことが重要であり、代表的な課題として、以下があげられます。
営業力の強化には時間とリソースが必要
営業人材の研修や実践トレーニングは、社内の優秀人材の知見や成功事例などを体系化した上で、教育プログラムとして提供することが一般的です。
プログラム内容は、営業プロセスの理解や各領域のツールの活用法、成功事例をもとにした顧客提案~クロージングまで多岐に渡るため、一朝一夕で習得できるものではなく、予め研修対象となる営業担当者の業務時間をしっかり確保する必要があります。また、営業力の強化の早期実現に向け、社内のハイパフォーマーや同じ教育プログラムを受講した先輩社員を研修担当として登用するのも効果的です。
成果が表れるまで一定の準備期間が必要
データ活用を得意とするIT企業であっても、セールスイネーブルメントを事業成長に活かすための必要なデータが揃うには、一定の準備期間が必要であるといわれています。セールスイネーブルメントの導入に際し、まずは大量の営業データを蓄積するようにしましょう。データが蓄積すればするほどデータ分析の精度が増し、より効果的な営業手法の選択や育成プログラムの構築へとつながります。
まとめ
本コラムでは、セールスイネーブルメントの導入が、企業の営業力強化による事業成長には欠かせないこと、また、セールスイネーブルメントの実現には、営業活動の数値分析を通し、評価システムとの連動を図った上で、教育体制を同時並行で構築する必要がある点などにつき、詳しくお伝えしました。
業種や事業規模問わずデータ活用の重要性が叫ばれている日本社会において、2021年以降、企業経営におけるセールスイネーブルメントの重要性はさらに高まることでしょう。今後の事業成長の実現に向け、ぜひ本コラムを参照の上、セールスイネーブルメントを積極的に推進いただけると幸いです。