セールスイネーブルメントとは?営業DXと営業力強化に効く具体的手法と導入手順

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2021年11月25日(木)掲載

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近年、さまざまなメディアで「セールスイネーブルメント」の重要性が取り上げられています。詳しい内容や進め方はまだまだ浸透していませんが、営業DXや営業力の強化につながる取り組みなため、導入による効果が期待されています。

本記事を参考に、セールスイネーブルメントのメリットや具体的な手順を把握し、営業活動の最適化に役立ててください。


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セールスイネーブルメントとは

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、営業組織の強化や改善によって、成果を継続的に挙げられる体制を整える取り組みのことです。具体的には、ツールの開発や営業人材への研修、営業活動の見直しなどを行います。

この取り組みを実施する際に重要なことは、「課題の明確化」と「できることの最大化」です。「今の営業組織に足りないものは何か」「組織の強化や改善のために何ができるのか」を意識することで、セールスイネーブルメントの効果を最大限に引き出せるようになります。

営業企画との違い

セールスイネーブルメントは「営業企画」と混同されることがありますが、両者には次のような違いがあります。

セールスイネーブルメントと営業企画の違い
  セールスイネーブルメント 営業企画
目的 ・営業組織の強化や改善 ・営業目標の達成
アプローチ ・目的を達成するために必要なツールや研修などを営業人材に提供する ・営業戦略の立案や実行を支援する
関わる部門 ・営業組織のほか、マーケティング部門やカスタマーサクセスなど ・基本的には営業組織のみ

どちらも「営業活動を支援する取り組み」ではあるものの、その目的やアプローチの方法、関係する部門などは明確に異なります。それぞれにメリットやデメリットがあるため、自社の課題に応じて適切に使い分けることが大切です。

セールスイネーブルメントが注目される理由

セールスイネーブルメントに注目が集まっている理由を、以下2つの観点から解説します。

  • 営業の属人化による、売上低下を防ぐため
  • 営業力の強化を促進するため

営業の属人化による、売上低下を防ぐため

成果の出る営業活動の属人化を防ぎ、売上アップの糸口をつかめることが、セールスイネーブルメントが注目を集めている理由の一つです。セールスイネーブルメントは高い営業成績を誇る人材(ハイパフォーマー)を参考に、目標到達までの進捗状況や成果への貢献度などを数値化する取り組みです。セールスイネーブルメントの活用が注目されている背景には、多くの企業が営業ノウハウをマニュアル化できずに、効果的な営業活動を行えていない実態があることが読み取れます。

営業活動は個々人の裁量に委ねられる部分が多く、営業プロセスは属人化してしまう傾向にあります。営業組織として成果に直結する再現性のある取り組みを推進し、売上アップを目指すために、現在多くの企業でセールスイネーブルメントが導入されています。

営業力の強化を促進するため

現在、CRM(顧客管理)やSFA(営業支援)、MA(マーケティングオートメーション)などの各領域のツールが市場に登場し、広く認知されています。ツールの導入による企業側のメリットは、日々の顧客管理や営業支援に関する工数や成果が数値として表れ、営業施策の費用対効果の「見える化」につながることです。

ただし、各領域のツールを導入したものの、営業力の強化や受注率向上などが目標値まで届かず、ツールのみの活用に限界を感じている企業もあります。そのような状況もあり、ツールの活用と併せ、営業力の標準化、強化を促進できるセールスイネーブルメントに注目が集まっています。

セールスイネーブルメント導入による3つのメリット

セールスイネーブルメントの導入により、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下に主だったものを紹介します。

  • 営業力や生産性の向上
  • 業績への貢献度などを数値化することが可能
  • 顧客ニーズの把握、管理が可能

営業力や生産性の向上

前述の通り、企業の営業活動は、個々人の裁量が大きいことや経験に依存する部分が多く、営業ノウハウなどが「属人化」しやすい傾向にあります。セールスイネーブルメントの導入により、ハイパフォーマーのナレッジや行動特性を体系化、マニュアル化することで、組織全体の営業力向上が期待できます。

また、成果に結び付く営業ノウハウや資料を、営業人材がすぐにアクセスできる体制を構築できれば、資料作成や受注獲得に向けた工数の削減にもつながるでしょう。その結果、生産性を向上できる点も大きなメリットです。

【関連記事】
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業績への貢献度などを数値化することが可能

セールスイネーブルメントを導入することで、営業施策の達成状況などの「見える化」が可能になります。各営業人材の「業績への貢献度」や「受注までのアプローチ手法」などが、数値面で定量的に分析できるようになります。その結果、各営業人材の適切な評価につながるため、評価への納得感が生まれやすく、社員のモチベーション向上も期待できます。

顧客ニーズの把握、管理が可能

顧客ニーズを把握するため、多くの企業がマーケティングに注力しています。実際にマーケティング施策が日々の顧客数の増加や売上拡大にどれほど貢献しているのかを計測するには、マーケティング部門と営業組織間での綿密な連携が欠かせません。顧客の価値観の多様化と細分化が進む昨今の市場では、業績拡大につながる事業部連携を強化できる点も、セールスイネーブルメント導入のメリットです。

実施前に把握しておきたい課題

セールスイネーブルメントを事業成長に結び付けるためには、課題を事前に理解しておくことが重要です。代表的な課題としては以下が挙げられます。

  • 営業力の強化には時間とリソースが必要
  • 成果が表れるまでに一定の準備期間が必要

営業力の強化には時間とリソースが必要

営業人材の研修や実践トレーニングは、社内のハイパフォーマーの知見や成功事例などを体系化した上で、教育プログラムとして提供することが一般的です。

プログラム内容は、営業プロセスの理解や各領域のツールの活用法、成功事例を基にした顧客提案からクロージングまで多岐にわたります。一朝一夕で習得できるものではないため、あらかじめ研修対象となる営業人材の業務時間を確保する必要があります。また、営業力強化の早期実現に向け、社内のハイパフォーマーや同じ教育プログラムを受講した先輩社員を研修担当として登用することも効果的です。

成果が表れるまでに一定の準備期間が必要

データ活用を得意とするIT企業であっても、セールスイネーブルメントを事業成長に活かすために必要なデータをそろえるには、一定の準備期間が必要であるといわれています。セールスイネーブルメントの導入に際し、まずは大量の営業データを蓄積しましょう。データが蓄積するほどデータ分析の精度が増し、より効果的な営業手法の選択や育成プログラムの構築へとつながります。

セールスイネーブルメント導入の具体的な方法と手順

ここからは、セールスイネーブルメントを実施する際の流れを、各ステップでの具体的な取り組みとともに見ていきましょう。

セールスイネーブルメントを導入する際の流れ
  • 1.現状の課題分析、ゴール設定
  • 2.スキル要件定義、スキルマップ作成
  • 3.育成プログラムの企画、開発
  • 4.営業プロセスの整備、ツール導入
  • 5.マーケティング、他部門との連携
  • 6.効果測定

STEP1.現状の課題分析、ゴール設定

具体的な取り組み
  • 営業組織の課題を洗い出す
  • 目指す営業像やKPIを設定する

まずは営業組織の課題を明確にした上で、セールスイネーブルメントの最終的な目標を設定します。

この段階では、営業活動に関するデータの収集と分析に注力することが重要です。成約率や売上高などのデータを詳細に分析することで、現状の課題が浮き彫りとなり、より適切な目標を設定できるようになります。CRMやSFAを活用し、営業組織の強化や改善に役立つデータを集め、最適な目標を設定しましょう。

また目標と同時に、各課題に対するKPIを設定することも重要です。KPIを定めてからセールスイネーブルメントを実施すれば、目標の達成状況が可視化されるため、取り組みの軌道修正や効果測定を円滑に進められます。

関連記事:営業戦略の立て方とは?設計手順とポイント、フレームワークを紹介

STEP2.スキル要件定義、スキルマップ作成

具体的な取り組み
  • 役割ごとに必要なスキルを定義する
  • 現状のスキルレベルを可視化し、育成の優先順位を決定する

続いて、セールスイネーブルメントを円滑に進めるために必要な、スキルマップを作成します。

スキルマップとは、「目標を達成するために、営業人材にどのようなスキルを求めるのか」を体系的にまとめた資料のことです。営業人材がスキルを磨く際の指標となるほか、人事評価面談や1on1での評価基準としても役立ちます。この資料に記載するスキルの例としては、ロジカルシンキングの能力やコミュニケーション能力などが挙げられます。

スキルマップの作成時には、ハイパフォーマーのナレッジや行動特性を洗い出し、その結果を基に要件定義を行うと良いでしょう。ハイパフォーマーのスキルを細分化してスキルマップに反映し、営業活動の指標とすることで、組織全体の営業力を向上させる効果が期待できます。

STEP3.育成プログラムの企画、開発

具体的な取り組み
  • 営業資料やナレッジを整備する
  • 研修やOJT、eラーニングなどを組み合わせた育成プログラムを企画する

スキルマップの作成を終えたら、営業人材が必要なスキルを習得できるようにするための育成プログラムを企画します。ハイパフォーマーの行動特性を分析してプログラムに落とし込み、全員のスキルを伸ばして、成果を安定して挙げられる組織を目指しましょう。

育成プログラムを企画する際のポイントは、研修やOJT、eラーニングなどの数ある人材育成の手法から、目標達成に最適なものを選択することです。例えば営業活動と並行して実施したい場合はOJT、業務の合間に受講してもらいたい場合はeラーニングといった具合に使い分けることで、プログラムを効率良く進行できます。

STEP4.営業プロセスの整備、ツール導入

具体的な取り組み
  • CRMやSFAなどのツールを導入し、営業活動を可視化、効率化する
  • データに基づいた改善サイクルを構築する

次に、組織全体の業務効率を向上させるために、営業プロセスの最適化を図ります。アポイントメントの獲得から商談、アフターフォローに至るまでの一連の流れを見直し、不要な部分があれば削除しましょう。この作業では営業に関する膨大なデータを整理する必要があるため、CRMやSFAなどのツールを活用することが一般的です。

なお営業プロセスの整備は、一度実施するだけでは十分な効果が得られません。営業活動の傍ら、蓄積していくデータを分析し、改善サイクルを継続的に見直すことが非常に重要です。

「ツールの選定方法やデジタル技術の活用方法について、より詳しく知りたい」という経営者や管理者の方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。

関連記事:営業DXとは?必要な理由や進め方、成功例・失敗例をそれぞれ解説

STEP5.マーケティング、他部門との連携

具体的な取り組み
  • 顧客ニーズに沿ったコンテンツを、他部門と連携して作成する
  • インサイドセールスやカスタマーサクセスとの連携を強化する

セールスイネーブルメントを成功に導くには、他部門との連携も欠かせません。特に、マーケティング部門との連携は強化する必要があります。

マーケティング部門の役割は、見込み顧客の購買意欲を高めた上で、営業組織に商談を引き継ぐことです。しかし、マーケティング部門との関係が希薄だと、見込み顧客に行ったアプローチの内容を正確に引き継がれず、商談を円滑に進められなくなってしまう可能性があります。

詳しくは後述しますが、こうした懸念を払拭するには、日ごろから他部門とのコミュニケーションを積極的に取ることが大切です。

STEP6.効果測定

具体的な取り組み
  • KPIを定期的にモニタリングする
  • PDCAサイクルを回して営業組織を継続的に改善する

セールスイネーブルメントの開始後は、効果測定が不可欠です。なぜならセールスイネーブルメントの効果は、確実に表れるとは限らないためです。「課題や目標の設定が不適切」「営業人材に求めるスキルの要件定義があいまい」などの理由で、十分な成果を得られない可能性も考えられます。

このようなリスクを避けるために必要な取り組みが、効果測定です。繰り返しになりますが、KPIを事前に定めておくことで、目標の達成状況を常に可視化できます。その結果、万が一目標の達成を妨げる問題が生じても、早急に修正できるようになります。

商談からの受注率や売上高、営業活動の経費などのデータを基に効果測定を行い、セールスイネーブルメントの内容をブラッシュアップしましょう。

セールスイネーブルメントを定着させるポイント

続いて、セールスイネーブルメントを実施する際に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。

  • 営業トレーニングを継続的に行う
  • ツールを活用し、データを基に改善を行う
  • 営業人材から取り組みへの理解を得る
  • マーケティング部門など関連部門との連携を行う
  • 外部のプロ人材を活用する

営業トレーニングを継続的に行う

セールスイネーブルメントの一環として、営業人材向けのトレーニングを継続的に実施することは非常に有効です。

営業人材向けのトレーニングは、コミュニケーション能力や商材に関する知識、交渉術など、商談の成約率向上に必要なスキルの定着に役立ちます。このトレーニングを継続的に行うことで、営業組織全体のスキルアップ、ひいては業績改善の効果が見込めます。

ツールを活用し、データを基に改善を行う

セールスイネーブルメントを効率的に進めるためのポイントには、ツールの活用も挙げられます。前述の通り、CRMやSFAを活用することで、営業に関する大量のデータを分析できるため、より精度の高い取り組みを行えるようになります。

顧客管理や営業支援など、目的に応じてツールを使い分けて、そこから得られるデータをセールスイネーブルメントに活用しましょう。

営業人材から取り組みへの理解を得る

営業人材に対して新たな取り組みを行う目的をしっかりと説明し、セールスイネーブルメントへの理解を得ることもポイントです。事前説明を実施せずに取り組みを行っても、目的が不明瞭で営業人材の行動指針が定まらず、失敗に終わってしまう可能性があるためです。

「なぜセールスイネーブルメントを実施するのか」「どのような変化を求めているのか」などを伝え、全員の目線をそろえた上で、小さな取り組みから始めることをお勧めします。

マーケティング部門などの関連部門と連携を行う

セールスイネーブルメントでは、他部門との連携も欠かせません。マーケティング部門をはじめ、インサイドセールスやカスタマーサクセスなどの部門と連携すれば、セールスイネーブルメントの効率化を図れます。

さらに、部門間で営業活動の考え方やマニュアルを共有することで、顧客対応に一貫性が生まれ、結果として顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

外部のプロ人材を活用する

営業のプロ人材を外部から迎え入れることも、セールスイネーブルメントを成功するための一つの方法です。「社内に営業人材を教育するノウハウやリソースがない…」という経営者や管理者は、「HiPro Biz」の活用をぜひご検討ください。

「HiPro Biz」は、各専門領域のプロ人材が登録している経営支援サービスです。貴社のセールスイネーブルメントを成功に導くプロ人材を提案いたします。

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セールスイネーブルメントを導入することが向いている企業

ここでは、セールスイネーブルメントの導入によって、営業に関する課題を解決できる可能性がある企業の特徴を紹介します。

  • 大規模な営業組織を持つ企業
  • 営業プロセスが複雑な企業
  • 営業人材の育成に課題を抱えている企業

大規模な営業組織を持つ企業

営業人材が多数在籍している企業は、セールスイネーブルメントの効果が大きいといえます。一人ひとりの営業力を伸ばすことで、売上の大幅な向上が見込めるためです。

また営業組織が大規模になるほど、全員にノウハウを共有することが困難になります。そこでセールスイネーブルメントによって営業力を統一すれば、どの営業人材でも一定以上のサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上につながります。

営業プロセスが複雑な企業

複雑な商材やサービスを取り扱っている企業も、セールスイネーブルメントの導入によって効果が得られやすいでしょう。

このような企業の営業人材は、営業活動を行うにあたって、専門的な知識を身に付ける必要があります。さらに、自社が提供する商材やサービスについて顧客に理解してもらうことに時間がかかるため、営業プロセスも複雑になる傾向があります。

その点、セールスイネーブルメントを実施すれば営業人材の知識を深められる上に、営業プロセスが効率化され、より多くの顧客へのアプローチが可能となります。

営業人材の育成に課題を抱えている企業

セールスイネーブルメントは、研修プログラムに課題がある企業にも向いています。

営業組織に限った話ではありませんが、若手の人材が育たなければ組織は安定しません。育成の方法に問題があると売上が伸びず、人材の定着率にも悪影響を及ぼす可能性があります。

セールスイネーブルメントを通して研修プログラムを見直し、十分な成果を挙げられる営業人材を育成しましょう。

パーソルキャリアのセールスイネーブルメントの導入事例

パーソルキャリア株式会社のプロフェッショナル人材による経営支援サービス「HiPro Biz」でも、セールスイネーブルメントを実施しています。業績に直結するスキルセットを定義したスキルマップや、行動に落とし込む行動ハンドブックを作成。また、これをベースに開発した育成プログラムを実施し、受講者の生産性は148%に。また、直近4年間で営業人員数が188%増加しましたが、一人当たりの受注金額は123%向上するなど実績を残しています。

その結果、営業の新たな在り方を実践する企業として、「NEW SALES OF THE YEAR 2025」でセールスイネーブルメント賞を受賞しました。

出典:「 Forbes JAPAN NEW SALES OF THE YEAR 2025」にてセールスイネーブルメント賞を受賞

セールスイネーブルメントを実施することで、組織全体の営業力を向上させられる

セールスイネーブルメントは、営業企画とは異なり、営業組織の強化や改善を目的としています。これを実施すれば、単に営業目標を達成できるだけでなく、安定した成果を挙げられる営業組織を育成することが可能です。大規模な営業組織を持つ企業や、営業人材の育成に課題を感じている企業は、導入を検討してはいかがでしょうか。

またその際には、「HiPro Biz」の利用もぜひ検討してください。営業の知識や経験を豊富に持つプロ人材が、貴社の課題を解決し、事業のさらなる発展を支援いたします。

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