リバースイノベーションとは?注目される理由やメリット・注意点を解説

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2025年05月20日(火)掲載

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企業のグローバル化が進む昨今、「リバースイノベーション」という新しい手法が注目されていることをご存じでしょうか?すでに多くの企業が取り組みを進めており、今後の市場競争の行方を左右する要因のひとつであるといっても過言ではないでしょう。

本記事では、リバースイノベーションの概要、得られるメリットや実行時の注意点について解説します。「競合他社に後れを取る前に手を打ちたい」とお考えなら、ぜひご覧ください。

リバースイノベーションとは

reverse-innovation

リバースイノベーションとは、先進国に本社を置く企業が新興国や途上国に拠点を持ち、そこで商品の開発や販売を行い、さらに自国へと「逆輸入」することを指します。詳細なメリットは後ほど解説しますが、このリバースイノベーションを活用すれば、競合他社との差別化や、それまでになかったアイデアの創出が期待できます。

これまでグローバル企業は、グローカリゼーション、つまり「自国で生産している商品をほかの地域や国ごとに調整して販売する」という戦略を重視してきました。しかし、昨今の世界情勢、特に新興国の目覚ましい発展などの影響から、このような企業戦略が通用しないケースが増えてきたのです。リバースイノベーションは、そうした状況下で考案された新しい観点での企業戦略といえるでしょう。

リバースイノベーションとグローカリゼーションの違い

リバースイノベーションはこれまで主流であったグローカリゼーションとは方向性の異なる手法です。具体的には、以下の観点で違いが存在します。

リバースイノベーションとグローカリゼーションの違い
リバースイノベーション グローカリゼーション
目的 新興国や途上国で生じたイノベーションを基に商品やサービスを開発し販売し、さらに先進国へと流通させる 企業が本拠地とする先進国で開発した商品やサービスを、地域や国ごとにローカライズして展開する
開発拠点 新興国や途上国に置かれる 先進国に置かれる
アプローチ方法 新興国や途上国に存在する課題を解決するために、商品やサービスをゼロから開発する 既存の商品やサービスを地域や国ごとに調整して提供する

上記の通り、両者はそもそもの目的、そして根本的なアプローチ方法が正反対の手法であるといえます。リバースイノベーションを最大限に活用したいのであれば、この違いをしっかりと把握しておきましょう。

リバースイノベーションが注目されている背景

リバースイノベーションが多くの企業に注目されている背景には、以下の2つの事象が密接に関係しています。

グローバル企業の成長戦略に適している

グローバル企業が躍進を遂げる上で、今やリバースイノベーションは必要不可欠な要素となっています。先ほどもお伝えした通り、グローカリゼーションを主とする従来的な戦略では、売上の拡大が狙えなくなってきているためです。

新興国や途上国の市場には、新しいビジネスチャンスを得るべく多くのグローバル企業が進出しています。そこへさらに現地企業も参入するとなれば、市場競争が苛烈を極めることは想像に難くありません。

単にローカライズしただけの商品で、このような競争の激しい市場のシェアを獲得することは難しいでしょう。新興国の市場でシェアを獲得し、企業として大きく飛躍するためには、現地のニーズにしっかりと合致した商品やサービスを提供する必要があります。こうした経緯から、現地で商品やサービスを開発する手法である、リバースイノベーションに注目が集まり出しました。

革新的な商品や手法が生まれる可能性がある

革新的な商品や手法を生み出せる可能性があることも、リバースイノベーションが注目されている理由のひとつとして挙げられます。

新興国や途上国は、先進国では見られない社会課題を抱えていますが、それゆえに課題の解決に役立つ新しいテクノロジーが受け入れられやすい傾向もあります。そのため、新興国での商品やサービス開発では、既成概念にとらわれない柔軟なアイデアが生まれる可能性が高いのです。

さらに、新興国の課題を解決するための技術やアイデアが先進国でも受け入れられれば、大きなビジネスチャンスを得られるでしょう。多くのグローバル企業がリバースイノベーションに注目している背景には、このような事情もあります。

リバースイノベーションのメリット

ここからは、リバースイノベーションのメリットをさらに深掘りしていきます。リバースイノベーションが企業にもたらすメリットとしては、主に以下の4つが挙げられます。

市場での差別化を図れる

リバースイノベーションを取り入れることが、競合他社との差別化にもつながります。

先述した通り、リバースイノベーションによって、先進国ではなかなか誕生しにくい新しい商品やサービスを開発できる可能性があります。そうした革新的な商品やサービスは、自社の明確な強みとなるはずです。特に、国内だけで開発を行っている企業に対して、大きな差をつけられる可能性が高まるでしょう。

新興国や途上国の社会課題を解決できる

新興国や途上国の抱える課題に有効な商品を開発できることも、リバースイノベーションのメリットの一つです。リバースイノベーションを活用し、各国の社会課題を解決し得るソリューションを提供すれば、海外市場で大きな存在感やアドバンテージを得られます。

また、新興国や途上国で開発を行うことは、現地での雇用の創出にもつながります。雇用の創出によってその国の経済的な課題にもアプローチできれば、世間やステークホルダーからも高い評価を得る要因となるでしょう。

高品質で低価格の商品を提供できる

リバースイノベーションの商品は、必要な機能が厳選されたシンプルなものが多く、開発や製造にそれほどコストがかかりません。また、一度に大量の商品を量産するため、1ユニット当たりの生産コストはさらに抑えられます。そのため、一定の品質を維持しつつも低価格で販売できる傾向にあります。

事業展開スピードを早められる

リバースイノベーションの強みは、海外事業をスピーディーに展開できる点にもあります。

たとえば、海外向けの商品を日本で一から開発するとなると、現地の市場調査や新しい人材の採用などにどうしても時間がかかります。その点、リバースイノベーションであれば現地にすでに拠点があるため、市場の動向を把握できている上に、新しく人材を採用する必要もありません。このように、海外での事業を迅速に展開できるので、競合他社に対して後れを取るリスクが減りやすいでしょう。

リバースイノベーションの注意点と取るべき対応方法

企業に多くのメリットをもたらすリバースイノベーションですが、実践に際してはいくつか注意すべき点があります。それぞれの詳細と対応方法をご紹介します。

既存商品やサービスの転用になってしまう

リバースイノベーションを実施する際には、自社の既存商品やサービスを転用しないよう注意が必要です。

海外で事業を展開するにあたって「少しでもコストを抑えたい」「スピーディーにビジネスを進めたい」と考えることもあるでしょう。しかし、そのような考えを実現したいからといって、既存のノウハウやアイデアを転用することは避けた方がよいでしょう。リバースイノベーションの本質は「現地の課題やニーズに対応する商品を、ゼロから開発する」ことにあるためです。

この本質を見失ってしまうと、現地で本当に必要とされている商品やサービスの展開、革新的なアイデアの創出が難しくなります。リバースイノベーションを実施する際は、既存の考え方にとらわれず、課題の解決にゼロベースで取り組む姿勢が重要です。

コストカットのために商品自体の品質を下げてしまう

リバースイノベーションでは低価格な商品を開発し製造することが一般的ですが、コストカットを優先するあまり、品質を犠牲にしては本末転倒です。品質の低い商品を販売すれば顧客満足度は下がり、長期的に見れば大きな損失にもなりかねません。

「品質をそのままにコストを下げるなんて可能だろうか?」と思われるかもしれませんが、そこでの工夫がリバースイノベーションの成否を左右します。デザイン設計を見直して必要な部品の数を減らす、または仕入れ先を見直して原価を削減するなど、創意工夫をこらしてコストカットに取り組みましょう。

対象国の文化やルールを無視してしまう

政治や宗教、技術レベル、気候など、国が異なればさまざまな面での違いがあります。このような点を考慮せずに現地で商品開発を進めてしまうと、予期せぬトラブルに見舞われてしまうかもしれません。内容次第では、現地に住む人々からの大きな反感を買い、その地でビジネスを進めることが困難となる可能性もあります。

リバースイノベーションを滞りなく進めるためには、その国に根付いている文化やルールを理解し、尊重する姿勢が必要不可欠です。「技術的には可能だが、実行に移しても問題ないだろうか?」という観点を常に持ち、現地の価値観やニーズに合ったビジネスを進めることが、何よりも重要といえるでしょう。

リバースイノベーションを行う上でのポイント

最後に、リバースイノベーションを成功させるためのポイントを解説します。リバースイノベーションで成果を出したいとお考えであれば、以下の2点を着実に押さえておきましょう。

グローバル人材の育成と体制の整備

新興国や途上国に拠点を置いてビジネスを進める以上、グローバルに活躍できる人材、そしてその人材を育成しサポートする体制が必須といえるでしょう。

前項でもお伝えした通り、海外でビジネスを進めるにあたっては国ごとの違いを最大限に考慮する必要があります。そのため、日本とは異なる文化やルールにも柔軟に対応できる、グローバル人材が欠かせません。

グローバル人材を育成するためには、まず組織としての体制整備や意識改革が必要となります。日本の従来的な考えにとらわれず、ゼロベースでビジネスに取り組む姿勢を社内に浸透させることが、リバースイノベーションの第一歩だといえます。

対象国の課題やニーズの明確化

リバースイノベーションの基本ではありますが、その国が抱えている社会課題やニーズをしっかりと捉える、という姿勢も非常に重要です。

日本をはじめとする先進国と、リバースイノベーションの対象となる新興国や途上国との間には、環境や技術などの面で大きな違いがあります。その違いに着目し、現地に住む人々が本当に必要としているソリューションを開発することが、リバースイノベーションの本質です。

ただし、「日本ならこうだろう」という固定観念にとらわれていては、現地の本当の課題やニーズを把握することは難しいでしょう。繰り返しにはなりますが、ゼロベース思考を持ちながら、現地の人々の生活に根付いた要望を汲み取ることが、リバースイノベーションでは重要です。

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リバースイノベーションが、企業のさらなる発展に効果的であることはお分かりいただけたことと思います。しかし、進出先の選定や各国のルールや法律への準拠、そしてそれらに対応できるグローバル人材の育成など、実施に際してのハードルが非常に高いこともまた事実です。

そういった、リバースイノベーションに関する課題を解決する上で役立つサービスが、この「HiPro Biz」です。「HiPro Biz」は経営課題に取り組む企業向けに、高度な課題を解決できるプロ人材と共に、課題解決に導く経営支援サービスです。さまざまな領域のプロ人材が登録している「HiPro Biz」であれば、新興国や途上国への進出をサポートできる、経験豊富な人材をマッチング可能です。

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