テレワーク化が加速する中で変化する購買モデルとこれに伴う営業スタイルの今後

営業

2021年01月06日(水)掲載

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テレワーク化が進む中での課題、営業部署の課題が浮き彫りに?

2020年、企業のテレワーク化が急激に加速した。営業部門は、テレワークで存在意義をしっかり作っていく必要がでてきている。理由は簡単で、世の中がテレワークの状況で結果を出すためにどうするかという点だ。
「コロナ禍だから」は都合の良いフレーズにはできるが、この環境でも結果を出す営業部門作りが課題になっているのではないだろうか。

テレワーク環境での状況は、企業により様々で一概に断言はできない。ところが、このテレワークに馴染んだのは意外に事務系の部署で、オフィスにいても家にいても環境の違いだけでやる事は同じであるため、家での業務の環境設定だけクリアしていれば、問題なく遂行できているだろう。
一方で、営業部門は、あまりテレワークに馴染んでいないのが現状ではないだろうか。形式上は、在宅でWEB商談ができるということになっているので、テレワークしている雰囲気の企業はたくさんあるが、実態はうまくいかず結果も出ていない企業が多くなっているように思う。
例えば
【ルート営業部門】
●特需案件がなくなり、在宅でやる事がない。
●定番受注は遠隔でもできるため電話で終わる、もしくは事務員でも受注できる。
●WEBでは完結できないため会社には行かないが、クライアント先には訪問している。
課題:
プロジェクト進行を全て営業が行う必要もなくなっているので、営業の仕事内容を見直して工数をかけるところを明確にする必要がある。
※逆に、商品需要が時流にマッチしてインバウンド受注が増えているところは、結果は良いが、営業がいなくても売れているということなので、売れているうちに次の一手を打つ必要があると考える。
【新規営業部門】
●ご案内WEB商談予約はとれるが、次の具体的な契約までの話にならない。
●インサイドセールスがいて、同じWEB商談なのでインサイドセールスから外勤営業(フィールドセールス)にパスしている理由がない。相手側も人が変わるので違和感を覚えることが多い。
課題:
遠隔でも契約を取れる仕組みは作れるのかということについては知恵を絞る必要がある。
インサイドセールスと営業の縦割りがわかりにくくなっている。
以前はWEB商談のインサイドセールス、訪問→契約の外勤営業(フィールドセールス)と、受け手側が納得の違いがあった。今は両方WEB商談になっているので受け手側は違いがわからない。
営業部門の変革が重要になってきているのが現状である。

【ポイント】
・テレワーク化が進み、インサイドセールスと外勤営業(フィールドセールス)の役割分担が、契約を取るために非常に重要になってきた。
テレワークのカタチに固執せず、契約を増やしていくために、リモートでどこまでできるかをしっかり考える必要がある。

Beforeコロナの購買モデル(情報収集、比較検討、稟議、意志決定、導入)

情報収集
展示会、商談会など、現地に出向くイベントが頻繁にあることが主流だったため、イベントで情報収集していることが多かった。

比較検討
来社をしてもらい、サービスの中身、金額の内容を実際に目の前で見せてもらい説明してもらう。
これを複数社にオリエンテーションを行い比較検討するということが多かった。

稟議
稟議を上げる担当者が、決裁者、もしくは相手の営業と密に打ち合わせをかさね、稟議の上げ方、内容の話をするだけではなく、その中で関係値を築くということが多かった。プラス、相手営業には社内状況や雰囲気を把握してもらいやすい、対面ならではのやり方が多かった。

意思決定
稟議プロセスを重視して動いていることが多いので、1度、2度、稟議の差し戻しにあっても、担当者の熱意でロジックを組み直し、決定させることが多かった。
もしくは、稟議時点で意思決定者にあらかじめ面談してネゴシエーションを行うということも、対面ならではのやりやすさがあった。

導入
導入後は、稟議時点に社内状況、意思決定時に決裁者の思いなどを肌に感じていることが多いため、
サービスの構築、スタートがスムーズにいきやすい。

【ポイント】
・情報収集の時点で自発的に動いていることから、比較検討、稟議の時点で担当者の熱意が高いということが言える。
・稟議、意思決定の時点では、事前に決裁者のアプローチも対面で行う。

Afterコロナの購買モデル(情報収集、比較検討、稟議、意志決定、導入)

情報収集
アナログイベントがほぼなくなったため、WEB展示会、WEB商談会、もしくは、サービスを提供している企業からのアプローチDM、WEB広告が増えている。イベントに行かなくても、情報が自分次第、もしくはWEB広告で勝手に入手できるようになってきた。
【メリット】
情報量はイベントに行くより断然多くはなっているので、イベントに行かなくても収集できることが増えている。
【デメリット】
情報が安易に入手できるため、リアルイベントと違い、情報収集が広く浅くなってきている。

比較検討
WEB商談と提案資料、もしくはデモサイトの閲覧、動画の閲覧が増えてきている。
遠隔での比較検討が増えてきている。
【メリット】
提案資料、デモサイト、動画など転送して、関係者との意思疎通をとることが増えてきたので、よりサービス内容と金額で判断しやすくなってきた。他社との違いを明確にすることが増えたので、検討の精度は上がってきている。
【デメリット】
サービス提供会社の雰囲気、企業スタイル、この人と仕事したい、熱意、などが対面していると読み取れたものが、リモート主流になってくるとサービスと金額で判断しないといけない。

稟議
ここは決裁者との意思疎通がリモートにより、非常に難しくなってきていることが多いだろう。
最終稟議を上げる担当者の熱意などが伝わりにくいなどの理由が考えられる。
【メリット】
稟議書、提案資料を完璧にさえ作れば、差し戻しされる理由がなくなってきている。
【デメリット】
決裁者とある程度事前に話を通して、熱意などを対面で伝えていることが多かったため、人間味のような部分がなくなってきている。
それゆえに、稟議自体あげない担当者まで増えてきているということが起きていると考えられる。

意思決定
決裁者が稟議書、提案書などのみで判断することがより増えたため、善し悪しの判断が早まっている。
【メリット】
稟議書の返答が早まり、スピーディーに進めることが増えてきている。
【デメリット】
稟議書、提案書にロジックができてないと即却下されやすくなってきている。

導入
導入後に、リモートにて関係者全員との共通認識をとることが、以前に比べて多少弊害は出てきているが、できないわけではないため、慣れていくことが必要。

【ポイント】
・情報収集や比較検討に関しては、beforeコロナと違い、安易さが増えていることが良いことであるが、情報集者の起点の熱意が以前より落ちていると感じる。
・稟議、意思決定に関しては、担当者と決裁者の間にコミュニケーションがうまくいってないことが多い。
・全てにおいて対面と違い、よりドキュメントで判断するため、メリットや金 額などの導入意義についての明記わかりやすさが重要。

Beforeコロナの営業(コンテンツマーケティング、ターゲティング、セールスプロセス、クロージング)

コンテンツマーケティング
マーケティング、インサイドセールスがすでに確立されている企業では、各種広告やメルマガ配信など、新規顧客獲得のためにコンテンツの配信を行っていた。SaaS企業が多かった。

ターゲティング
主にSaaS企業においては、ターゲティングとランクやステージわけなどのセグメントし、それぞれにあったコンテンツを配信するスキームを作っていた。また、MA(マーケティングオートメーション)を活用していた。
大半の企業ではターゲティング自体があいあまいで明確にはなっていないことも多かっ た。

セールスプロセス
基本的にはアウトバウンド企業が多く、一部の企業はインサイドセールスから降りてきた顧客へ訪問する効率的なセールスプロセスを行なっていた。

クロージング
「2」でも記載している通り、決裁者との面談などアナログな関係地作りによってクロージングを行なってきた。

【ポイント】
Beforeコロナでは、コンテンツマーケティング自体を重視しているBtoB企業が少なかったように思う。

Afterコロナの営業(コンテンツマーケティング、ターゲティング、セールスプロセス、クロージング)

コンテンツマーケティング
Beforeコロナと劇的に変わっていることは、推進している業種や業態が増えたことである。
アナログなイベントができなくなったために、遠隔でも潜在顧客への情報発信が必要になったためである。
ここで非常に重要なことは、潜在顧客のペルソナ(ここでは内容割愛)を理解してコンテンツを作ることである。新たに始めた企業で多いのが、アウトバウンド感覚で物を売りに行くコンテンツを作ることである。潜在顧客へのアプローチのため、課題は顕在化していない人たちに響く内容にする必要がある。
配信することは大事であるが、「たしかにこんな課題がある」と思わせるコンテンツ作りを行うよう努めて欲しい。

ターゲティング
コンテンツマーケティングでも記載したが、beforeコロナと劇的に変わっていることは、こちらもコンテンツマーケティングを行う業種や業態が増えたことである。改めてターゲティングをする企業も潜在顧客は誰なのかということを是非考えてもらいたい。順番的にはターゲティング→ニーズにあったコンテンツ作成→発信→顧客のセグメントである。
このターゲット企業マスタの母数さえ理解すれば、あとはシェアとるためにどうやっていくかを考えるだけである。
※beforeコロナであると、EC販売などを行なっていなかった企業が、インターネットでの販売に注力をしはじめ、ターゲットが増えている企業もある。
ECサービス提供企業は、インターネット販売する会社が増えたため、ターゲットが増えている。そもそもコンテンツマーケティングを推進する会社が増えたことから、MAサービス提供企業はターゲットが増えている。

セールスプロセス
「3」でも記載している通り、WEB面談、資料提供のみで進めることが増えているため、遠隔でいかに比較検討に持っていくかかが重要になってきている。
そのためにも、転送されても同じ認識を持ってもらいやすい資料、情報を提供する必要がでてきている。

クロージング
Beforeコロナであれば、稟議前後に決裁者とも面談を行うように営業が動くことが多かったが、今は決裁者とは会わず、先方担当者と決裁者の間のみで完結することがほとんどになっている。
会わなくてもいかに決裁してもらえるか、そしてそのメリットを提供できるかが非常に重要である。
転送のみでわかりやすいメリットを提示し、担当者と決裁者間で共通認識をとってもらいやすい資料を作成することにこだわる必要があると考えている。

【ポイント】
・コンテンツマーケティングでは、潜在顧客へのアプローチのため、物売りではなく、課題を気づかせてあげる内容にする。
・ターゲティングは自分たちのプロダクトを購入してくれる企業はどのようなところかということを明確にして、リストを作成する。
・コンテンツマーケティングは、ターゲティングを明確にした上で、潜在顧客へのアプローチ(課題に気づかせる)ということを忘れずに、物売りにならないようなコンテンツを作る。
・セールスプロセスは、比較検討にするまでの顧客との関係性、提案内容が非常に大切である。
・クロージングは資料、見積などだけで判断されやすいためメリットを明確にする。

売る側のポイント

●比較検討の時点でメリットと導入熱意をしっかり構築する
 以前は、この先の稟議に一番力を注いでいた人も多いだろうが、今は比較検討で安易に落とすことが増えている。比較検討時の提供資料を一番にこだわり、先方担当者の熱意をあげることが重要。ここがbeforeコロナとの大きな分岐点になっていると考える。先方が共通認識をとりやすいニュアンス、共通言語、このようなところは要注意である。自分本位で作り、説明が必要になっている、相手がわからないとなる時点で落とされやすい。
●動画の活用
遠隔で情報収集、比較検討をさせるためには、人のノウハウに左右されないように動画の活用も大切。
●オンライン&オフラインのコミュニケーションを大切し、相手への伝え方と伝わり方にこだわりをもつ
遠隔でセールスプロセス、クロージングの精度を上げるには、対面以上にWEB、オンラインでのコミュニケーションを頻繁に行うことや、共通言語、ニュアンスなどの理解、稟議書、提案資料の相手への伝わり方をこだわる必要が有る。

まとめ

新型コロナ危機の影響で顧客の購買モデルが変化している。これを好機ととらえて課題解決ができるか、これまで通りの営業を貫くか、営業成果が変わってくるだろう。このコラムが、営業スタイルを再考し、コロナ前よりも生産性を上げる一助となれば光栄である。

執筆者T.S氏

SaaS系ベンチャーに入社以来、営業部門に関わり会社の利益に貢献後、
新規事業の立上プロジェクトに責任者として事業推進。その後、独立。
営業チームの支援だけでなく、システム営業、インサイドセールス、カスタマーサクセス、企画自体の立案まで幅広い領域を経験している。

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