QCサークル活動事例から紐解くQCサークルの進め方
2023年02月06日(月)掲載
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この記事では、QCサークルによって成果を出している事例の紹介に加え、事例をもとに成果を出せるQCサークルの進め方を解説します。QCサークルの導入を検討しているのであれば、ぜひご一読ください。
QCサークルとは
QC(Quality Control)サークルとは、現場の従業員が品質管理や業務効率改善などについて議論し、アイデアを出し合う小集団のことです。アメリカの統計的品質管理手法が日本に持ち込まれ、それが日本独自の手法に変化してQCサークルが生まれました。
QCサークルはもともと製造業で行なわれていましたが、現在では営業職などの非製造業でも広く普及しています。
QCサークルの事例紹介
QCサークルによって成果を出している事例を見ていきましょう。
厨房機器メーカーA社の事例
厨房機器メーカーのA社では、部署・年齢・性別が異なるメンバーでQCサークルを構成しています。同社がQCサークルの定着化に向けて取り組んでいるのが、各チームのQCサークル活動を評価する選考会の設置です。
これによって、業務に関わる1人ひとりが日頃の業務で困っていることなどをベースに、品質について考え、解決する力を養うことに成功しています。
自動車メーカーB社の事例
自動車メーカーのB社では、QCサークル活動が活発に行なわれていますが、サークルによって活動状況に差がありました。そのなかで休止状態に陥っていたQCサークルを活性化させた事例です。
休止状態になっているQCサークルの活性化に向けて、同社はサークルの目標を段階的に定めました。
・1年目:チームワークの育成
・2年目:既存施策の課題改善
・3年目:新規施策の企画・実行
それぞれの目標に紐づく具体的なアクションを決めることで、着実に課題を解決しながら このチームの取り組みは社内でも高く評価され、QCサークルの効果的な事例として選出されています。
射出成形メーカーC社の事例
射出成形メーカーのC社は、製造現場だけでなく、営業や総務、生産管理など、あらゆる部署でQCサークルに取り組んでいます。
この風土によって、同社はQCサークルの活動で他部署の協力を得たい場合も、スムーズな連携ができる強みがあります。この強みが結果的にQCサークルの活動期間を短縮し、より素早く成果を出すことにつながっているのです。
QCサークルの進め方
QCサークルで成果を出すためには、正しい方法でQCサークルの活動を行なわなければなりません。
以下で解説するQCサークルの正しい進め方を実践してみてください。
テーマを決める
まず、テーマを決めましょう。メンバー1人ひとりが問題意識をもち、テーマの材料となる問題を見つけ出すことが必要です。
問題を見つけ出すヒントとしては、目標と実績の差が激しいものや、日常業務で困っていることなどに着目するとよいでしょう。製造業であれば、製造リードタイムや不良発生率などがあげられます。
問題をいくつかピックアップしたあとは、緊急性、重要性、コスト、効果などから評価して、優先度が高いものをテーマにしましょう。
難しいテーマは敬遠されがちですが、わかりやすいものばかりを選んでいてはQCサークルを行う意義が薄れてしまいます。テーマが難しい場合でも、優先度が高いものは挑戦してみましょう。
テーマの目標は、「何を、いつまでに、どれだけ」といったように定量的なものにすることをおすすめします。具体的には、「製造リードタイムを10%短縮する」「不良発生率を5%下げる」などです。「品質向上を心がける」「連携を意識する」といった定性的な目標にすると、評価が難しくなります。
また、難しいテーマの場合は、一度で達成しようとするのではなく、目標を段階的にして徐々に達成していくとよいでしょう。
現状の問題点の認識
テーマを決めたら、次は現状の問題点を洗い出します。問題点を認識するためにはデータを収集して定量分析を行うことが必要です。
データ収集の際は、テーマをグループ分けしましょう。製造業の場合であれば、生産設備、作業者、作業方法などに分けてデータを集めれば、それぞれの関係がわかりやすくなるためです。
また、現状の認識では、三現主義を心がけます。三現主義とは、現場・現物・現実の各観点から課題を認識し、具体的な解決策を模索するための考え方です。想像だけで話を進めていくのではなく、実際に現場を自分で確認しましょう。
原因の発掘
次に収集したデータを分析して、原因を発掘します。データの分析には4M分析が便利です。4M分析とは人(Man)、機械・システム(Machine)、手順・方法(Method)、材料(Material)の4つに分類して分析する手法を指します。
典型的な原因としては次のものが考えられます。
・人:労働者のスキル不足、労働者の作業ミス
・機械・システム:機械の能力不足・故障
・手順・方法:作業手順の誤り、マニュアルがない
・材料:材料の欠陥、在庫切れ
分析した内容は、特性要因図にするとわかりやすくなります。特性要因図はフィッシュボーン図とも呼ばれ、魚の骨のような図が特徴です。具体的には、問題の大きな要因を大骨として書き込み、大骨を生み出す要因を小骨として大骨に加えます。さらに小骨の要因を孫骨という具合に要因の大小と関係性を明らかにしていきます。
対策を行なう
原因を推定したあとは、対策をおこないます。対策を立てるには「ECRSの4原則」を利用すると便利です。ECRSの4原則とは、排除(Eliminate)、結合(Combine)、交換(Rearrange)、簡素化(Simplify)の頭文字を取ったものです。
ECRSをもとにした対策としては、以下のようなものが考えられます。
・排除:不良を発生させやすい作業を止める、不要な報告書を作成しない
・結合:2つ必要だった道具を1つにする、チェックシートを1つにまとめる
・交換:作業手順を入れ替える、工具や部品の位置を変更する
・簡素化:業務の一部自動化、パターン化
また、発生原因と流出原因という2つの視点で対策することも必要です。発生原因への対策の例としては、スキル不足が原因の場合、作業の簡素化やスキル不足を補う道具の開発などがあげられます。一方で、流出原因への対策としては、不良品を次の工程へ流さないために機械的に不良を検知するツールの開発などが考えられます。
また、対策で注意しなければならないのが、追加型改善です。追加型改善の典型例としてはダブルチェックを増やすことが挙げられます。しかし、このような対策は問題の根本的な対策になっていないだけでなく、工数の肥大化と作業の煩雑化につながりやすいです。さらなるミスをまねくなどのデメリットもあるため、導入は慎重に行ないましょう。
効果測定を行なう
対策を行なったあとは、速やかに効果を測定します。テーマの選定で定量的な目標にしていれば、客観的でわかりやすい測定結果が得られるはずです。逆に、定性的な目標にしていた場合は、効果の測定があいまいになる可能性があります。
効果測定により新たな課題が見つかった場合は、もう一度目標を修正する必要があるでしょう。
このように、QCサークルの活動は1回で成果が得られるものばかりではなく、トライ&エラーを繰り返さなければならないものも多くあります。そのため、テーマの選定から効果測定までの流れはスピーディーに行なうことが大切です。
結果を発表する
QCサークルによって得られた効果は、場を設けて発表しましょう。QCサークル活動の過程を多くの人に知ってもらえば、メンバーのモチベーション向上に役立ちます。また、他のQCサークルの事例に触れることで、QCサークル同士の切磋琢磨にもつながるためです。
ただし、発表自体が目的になり、QCサークルが形骸化しないように注意することが必要です。また、発表用の資料作りで業務負担が増すのであれば本末転倒です。発表自体は必要ですが、頻度を減らす、内容を簡素化するなど本来の業務に負担がかからないような工夫が肝心です。
まとめ
QCサークルは、現場の従業員が品質管理や業務改善などについてアイデアを出し合う小集団、もしくはその手法を指します。
今回紹介した事例とやり方を参考にQCサークルをうまく活用して現場の声をくみ上げ、生産性の向上に努めていきましょう。