調達が企業価値を左右する時代へ - ESG対応とデジタル化の実践ポイント

調達

2026年03月31日(火)掲載

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近年、企業にはESGへの取り組みが強く求められるようになり、調達部門の役割も大きく変わりつつあります。これまでのように「できるだけ安く買う」だけではなく、環境や人権に配慮し、安心して取引できる相手を選ぶことが重要な時代となりました。さらに、こうした取り組みを継続的に進めていくためには、情報を適切に管理し、業務の生産性を高めるためのデジタル化も重要なテーマとなっています。

本記事では、調達・サプライチェーン領域の実務支援を数多く手がけてきた藤原 慎二氏監修の資料をもとに、調達とESGの関係整理、対応を進める際の考え方、さらにデジタル化による実行力確保のポイントについて、一部を抜粋してご紹介します。

▼ 藤原氏監修の資料はこちら

なぜ今、調達にESGとデジタル化が求められるのか

本記事では、「調達」を単なる発注・購買業務ではなく、サプライヤー戦略やリスク管理を含む経営機能として扱います。

実務上は「購買」と「調達」が混在して使われることも少なくありませんが、両者の役割には明確な違いがあります。

・購買:見積、発注、照合、契約、検収などの実行業務
・調達:サプライヤー戦略、KPI設計、リスク管理などを含む戦略設計と意思決定

多くの企業において、購買に関わる実行業務が一定の工数を占めているのが実情です。これらは定型性・反復性が高い業務も多く、デジタル化による効率化効果が比較的得やすい領域とされています。

つまり、実行業務の効率化によって戦略領域にリソースを再配分できるかどうかが、ESG対応やデジタル化を進めるうえでの重要な論点となります。

次に、調達部門における業務とESG対応にはどのような関連性があるのか、それぞれ見ていきます。

Environment(環境)

企業活動におけるCO2排出量のうち、70〜90%をScope3(サプライチェーンによる排出)が占めると言われています。企業のカーボンニュートラル実現に向けては、サプライチェーンにおけるCO2排出削減が必要不可欠です。

Social(社会)

サプライチェーンにおける児童労働、強制労働、低賃金労働、ハラスメントなどは「人権リスク」であり、ブランド価値の低下につながります。「サプライチェーンのブラックボックス化」は今や大きなリスクです。

Governance(ガバナンス)

社会全体でガバナンス意識が高まり、株主やステークホルダーへのアカウンタビリティの確保が欠かせない取り組みとなっています。「なぜこの取引をしたのか」を正確に説明できる体制の構築が求められています。

このように、環境負荷の低減や人権尊重といったESGへの対応は、サプライチェーン全体での取り組みが重要であり、調達部門がその中心的な役割を担うようになりました。調達部門の役割は、現場の購買担当から経営戦略の要へ、コストセンターからプロフィットセンターへと変化しつつあるのです。

また、ESGへの対応を進めるだけでなく、その内容や結果を客観的に提示することの重要性も増しています。しかし、紙での受発注やExcelでのデータ管理など、従来のやり方では正確性やスピードの面で限界が見え始めています。あらゆる業務がデジタル化へと移行する中、調達においても同様の変革が求められている状況です。

停滞の根本原因は“優先順位がない”こと。解決に向かうためのステップとは

※出典:調達DXの必携ガイド — ESG×デジタルを“明日から回す”最短手順

ESG対応やデジタル化の重要性は理解できても、なかなか実務に落とし込めないと悩んでいる企業は少なくありません。
その主な理由は、次の三つです。

数値目標、期限、評価方法があいまい

「ESGやデジタル化の目的は何か」「進捗をどのように評価するのか」「いつまでに何を達成するのか」といった点が明確でないため、取り組みを実行に移せない企業は少なくありません。

業務の属人化が進んでおり、データの分析方法が確立されていない

調達や購買の業務が属人化しているため、サプライチェーンに関するデータを収集しても、「どのように分析すればいいのかわからない」という声も多く聞かれます。

すべてを一度に進めようとする

ESG対応やデジタル化の論点は多岐にわたるため、優先順位を定めることができず、結果として取り組みが頓挫するケースも見受けられます。

これらの課題を解決するためには、次に示すステップを順番通りに進めていくことがポイントです。

1. 方針の決定
2. サプライヤーの分類
3. リスクアセスメント
4. デューデリジェンス
5. 改善支援
6. 検証

各ステップの詳細な説明は、以下の資料にてご確認ください。

社内とサプライヤー両面への戦略的アプローチで取り組みを前進

※出典:調達DXの必携ガイド — ESG×デジタルを“明日から回す”最短手順

前項でご紹介した6つのステップに取り組む中で、壁にぶつかることもあるかもしれません。円滑に進めるために重要となるのは、社内向け・サプライヤー向けそれぞれに適切にアプローチすることです。それぞれどのようなコミュニケーションが必要となるのか、具体的に説明します。

社内向け

ESG対応では、生産部門からの「効率よく生産したい」という要望と、企画・マーケティング部門からの「良いものを作りたい」という要望の「板挟み」に陥りがちです。そのため、関係部門との合意形成が重要です。合意形成の際には、最終製品として市場に受け入れられるコスト水準を基準に据えながら、各部門との合意形成を慎重に進めていく必要があります。
その他、ESG対応に伴い、サプライヤーとの接触機会も増えるため、「癒着」を避けるための社内ルールづくりも必要です。

サプライヤー向け

サプライヤーへの「高圧的な態度」は禁物です。ビジネスパートナーとして、目線を合わせながら改善を促しましょう。現状の是正を求める際には、漠然と指示するのではなく、分析結果や目標数値を示して、ゴールイメージを明確に伝えます。また、一律に対応するのではなく、重要度の高いサプライヤーから入念に改善を促し、メリハリをつけて取り組みを推進しましょう。
サプライヤーとの関係構築は欠かせませんが、関係を近づけすぎると「癒着」を疑われるおそれもあります。あらかじめ社内でルールを決めておくことが重要です。

“実行を効率化し、戦略に人を戻す”ためにデジタル化を

ここまで見てきたように、調達部門にはESG対応を含めた新たな役割が求められています。一方で、従来業務を担いながらこれらを追加的に進めることに、限界を感じている企業も少なくありません。
そこで有効な手段の一つとなるのが、第1章でも触れたデジタル化による生産性の向上です。本章では、デジタル化の代表的な打ち手をご紹介します。

※出典:調達DXの必携ガイド — ESG×デジタルを“明日から回す”最短手順

<代表的な打ち手>

RPA

在庫補充の発注といったルーチン業務や、Excelへの転記、「注文書」「納品書」「請求書」の照合などの検収業務に用います。プロセスが固定化されており、高頻度で実施される業務に適しています。

電子契約書

サプライヤーとの秘密保持契約、下請業者との「3条書面」の締結などの契約業務を電子化します。契約締結までのリードタイムの長期化や契約書の証跡管理に課題がある際に効果的です。

E-Procurement

見積り依頼のオンライン一括化や履歴管理、サプライヤーごとの価格や不良率の一元管理が可能になります。物品の発注や発注申請、価格履歴の管理などを集約して、一元的に実行・管理できるのがメリットです。

AI活用

AIは需要予測や契約書のリスクレビュー、削減実績量(REP)の自動作成など、調達業務のさまざまな場面で活用できます。導入時には蓄積した過去のデータをもとに、需要予測や異常検知などのPoCを実施するのがお勧めです。

デジタルツールは、やみくもに導入すればよいわけではありません。自社の購買業務において、一番工数がかかっている業務や作業頻度が高い業務は何かを見極め、効率化が実現できるツールを選定することが推奨されます。
デジタル化の目的はツール導入だけではなく、実行業務のスリム化によって戦略にリソースを戻すことにあります。

まとめ

ESGの重要性が高まる中、調達部門には「安く買う」から一歩進んだ、リスク管理と価値向上を両立する戦略的な役割が求められています。本コラムでは、調達を取り巻く環境変化と、ESG・デジタル化を調達プロセスに組み込む際の考え方を整理してきました。社内外への丁寧なコミュニケーションを通じて合意形成を図り、着実に改善を進めることが成功の鍵となるでしょう。また、購買業務のデジタル化により、戦略立案に時間を割ける体制をつくることも重要なポイントの一つです。

自社だけで進めることが難しい場面では、外部の専門人材を積極的に活用することが有効な手段と言えます。「HiPro Biz」には、調達・ESG・デジタル化の領域で実務経験を持つプロ人材が多数登録しており、変革を着実に前へ進めるためのご支援が可能です。調達が企業価値向上のドライバーへと変わる今こそ、「HiPro Biz」のプロ人材と共に、実行可能な一歩から取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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