OKRの目標設定とは?組織で成果を上げるためのポイントを解説
2025年05月20日(火)掲載
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OKR(Objectives and Key Results)は、企業の業績を伸ばすために効果的な目標管理方法です。しかし、OKRの導入を決めたものの、「どのように目標を設定すれば効果を最大限に引き出せるのか」と悩む経営者は少なくありません。
そこで本記事では、設定する目標の具体例を挙げつつ、OKRを効果的に運用する手順をご紹介します。あわせて、失敗しないためのポイントも紹介しますので、ぜひご参考ください。
■OKRとは?
■OKRの目標設定の特徴
■OKRとほかの目標管理方法との違い
■OKRを進める手順とポイント
■OKRの設定にかかる期間
■OKRの目標設定方法
■OKRの効果を高めるための注意点
■OKRの目標には、適度なストレッチゴールを設定しよう
OKRとは?

OKRは、目標管理方法のひとつで、今では多くの企業が業績を伸ばす目的で取り入れています。
具体的には、達成したい「Objectives(目標)」を基に、それを測るための「Key Results(主な成果指標)」を設定します。これらを社内に共有することで、組織全体が同じ方向を向いて目標達成に取り組めます。
OKRは、ビジネスシーンで組織が目指すビジョンを明確にし、成果の達成に向けて推進するための手法といえるでしょう。
OKRの目標設定の特徴
OKRは従来の目標管理方法と異なり、適度に挑戦的なゴールを設定する点が特徴です。とはいえ、あまりにも高すぎる目標の設定は、かえって社員のモチベーションの低下につながる可能性があるため、注意が必要です。
Objectivesはシンプルで覚えやすいことが重要となるため、多少抽象的でも差し支えありません。一方、Key Resultsには正確な数字で表せる具体的な内容を設定しましょう。
OKRで適切な目標を設定することで、社員がビジョンを共有し、着実な計画の推進に役立てることができます。
OKRとほかの目標管理方法との違い
OKRのほかに、MBOやKPIといった目標管理に関する手法があります。これらは混同されがちですが、いずれも重要な概念であるため、それぞれの違いを正しく理解することが必要です。
項目 | OKR | MBO | KPI |
---|---|---|---|
目的 | 組織の目標達成 | 社員の評価 | プロジェクトの目標達成 |
サイクル | 1~3か月程度 | 半年~1年程度 | プロジェクトによる |
共有範囲 | 全社 | 上司と部下 | プロジェクトの参加メンバー |
期待する達成率 | 60~70% | 100% | 100% |
OKRは組織の成長を目的としているため、初めから高い水準の目標が設定されます。従って、達成率は一般的に60~70%で十分だとされており、達成率100%が望まれるMBOやKPIとは役割が異なっています。
以下では、今回のメインテーマであるOKRを軸に、各方法にどのような違いがあるのかをさらに深掘っていきましょう。
MBOとの違い
MBO(Management by Objective)は、1954年にピーター・ドラッカーが提唱して以来、多くの企業が活用してきた目標管理方法です。売上や顧客数といった最終的な目標を数値で表し、達成率に基づいて社員を評価するために用いられます。
あくまでも個人の評価が目的であり、企業全体のパフォーマンスの向上を目指すOKRとは趣旨が異なります。MBOの場合、目標の達成が評価に直結することから、理想の達成率は100%となります。
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicator)は、目標を達成するまでの各プロセスの達成率を測る指標です。日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
たとえば、企業の営業部門が新規顧客獲得の目標件数を30件と設定した場合、KPIにアポイント件数や成約率などを設定して、進捗状況を可視化します。KPIの達成率に応じて、最終的な目標に対する進捗が一目で確認できるようになります。
OKRの運用には、プロジェクトごとにKPIの適切な設定が欠かせないため、両者は相互に補完し合う関係にあるといえます。
OKRを進める手順とポイント
OKRを導入する際は、以下の流れに沿って進めます。
- 企業全体のOKRを設定する
- 企業全体のOKRを全体に共有する
- 部署やチームごとのOKRを設定する
- 部署やチームごとのOKRを全体に共有する
- 社員個人のOKRを設定する
- 社員個人のOKRを全体に共有する
- 定期的に進捗を確認する
- 達成率を計測し、評価する
- 新しいOKRを設定する
まずは、企業全体のO(Objectives)、KR(Key Results)の順に設定します。この段階での目標は、組織が向かうべき方向性をトップが示すものであり、ほかの全てのレイヤー(部署、チーム、個人)にとっての基盤となります。トップダウンでビジョンが共有されることで、組織内の一貫性が保たれるようになります。
次に部署やチームごとに、さらには社員一人ひとりに落とし込み、企業同様にO(Objectives)、KR(Key Results)を順に設定します。それらを社内全体で共有することで、部署や個人間のコミュニケーションが活性化し、モチベーションの向上にもつながります。
OKRを設定したあとは、定期的な進捗確認が欠かせません。週次や月次で現状の進捗を把握しながら、柔軟に対応しましょう。
評価のフェーズでは、達成率の測定と振り返りを行います。100%を目指すのではなく、60~70%の達成率を理想とし、挑戦的な目標に取り組むことがOKRの特徴です。レビューでは達成できた成果に注目し、成功体験を次の目標設定に活かす姿勢を意識して取り組みましょう。
最後に、新たなOKRを設定します。前回の結果を踏まえて、目標の難易度や方向性を見直し、より高い成果を目指しましょう。このサイクルを継続することで、OKRは組織の成長を後押しする強力な仕組みとなります。
OKRの設定にかかる期間
OKRを効果的に運用するには、事前に十分な準備期間を設けることが重要です。特に初めてOKRを導入する場合は、スムーズなスタートを切るためにも、全体のスケジュールを逆算して計画的に進めなければなりません。
一般的に、運用開始の約3か月前から準備を始めるのが目安とされています。「企業全体」「部署やチーム」「個人」のOKRの設定に、それぞれ1か月程度の期間を確保するとよいでしょう。
OKRの目標設定方法
OKRは、企業、部署、個人の3つの階層で目標を設定し、それぞれが連動することで全体の成果を最大化するフレームワークです。ここでは、上位層から順に目標を設定するプロセスを6つのステップにわけて解説します。
STEP1:企業のO(Objectives)を設定
企業のビジョンや方針に基づいて、全体の方向性を定める「Objectives(目標)」を設定します。数値的な目標は「Key Results(成果指標)」で設定するため、ここではあくまでもビジョンや理想の姿を描いてみましょう。「どのような姿を目指すのか」「どのような価値を届けたいのか」といった定性的な目標にすることが重要です。
設定のポイントと設定例
目標は1~3個程度に絞ると、社内全体の認識がそろいやすくなります。社員の意欲を引き出すためにも、前向きでインパクトのある表現を心がけましょう。
ポイント | ・目標は1~3個程度に絞る ・社員のモチベーションを引き出す表現を用いる ・ここではビジョンや理想の姿を描き、数値的な指標はKRで設定する |
---|---|
良い例 | ・イノベーションを起こして市場をリードする ・顧客の課題解決に最も貢献するパートナーになる |
悪い例 | ・30億円の売上を達成する ・新規顧客を1,000社獲得する |
STEP2:企業のKR(Key Results)を設定
先に設定した企業のOを達成するために必要となる、定量的な指標がKRです。実際の成果や進捗を測る指標として機能し、目標達成の具体性を高めます。
設定のポイントと設定例
1つのOに対して、3~5個程度のKRを設けることが理想的です。客観的に数値で測定できる指標を設定し、60~70%の達成率が見込まれる難易度にすることで、やりがいと現実性のバランスを取りましょう。
ポイント | ・1つのOにつき、3~5個程度設定する ・達成率が60~70%となる難易度にする ・達成結果が明確に可視化されるよう、数値で示す |
---|---|
良い例 | ・新製品の導入により、既存顧客の契約更新率を20%向上させる ・米国市場での新規契約数を前年と比較して150件増加させる |
悪い例 | ・新しい市場を開拓する ・顧客の反応を見ながら改善を重ねる |
STEP3:部署・チームのO(Objectives)を設定
部署やチーム単位では、企業のOを意識しつつ、より現場に近い目線で目標を考えます。各部門の業務範囲に応じて、挑戦的な内容を設定しましょう。
設定のポイントと設定例
企業のOと同様に、定性的で魅力的な表現を用いることで、チームの士気を高められます。企業のOと矛盾していないかを確認することも重要です。
ポイント | ・定性的な目標を設定する ・部署の役割や業務内容に即した目標にする ・企業のOと連動した内容であることを確認する |
---|---|
良い例 | ・顧客満足度No.1の営業チームを目指す ・業務効率化により、戦略的に経営を支えるバックオフィスになる |
悪い例 | ・契約件数200件を達成する ・コストを10%削減する |
STEP4:部署・チームのKR(Key Results)を設定
部署やチームでもOを実現するために達成すべきKRを設定します。現場での行動に直結する内容にすることで、具体的な行動指針となります。
設定のポイントと設定例
計測不能な指標は避け、現実的な内容にすることが基本です。Oとの関連性を確認し、適切な数値を設定しましょう。
ポイント | ・定量的な指標を設定する ・Oとの関連性を確認し、適切な内容にする ・計測不能な表現は避ける |
---|---|
良い例 | ・サポート対応の初動時間を平均5分以内に短縮する ・定型業務を自動化し、月20時間の工数削減を達成する |
悪い例 | ・顧客満足度を高めるように努力する ・業務を振り返る時間を設ける |
STEP5:個人のO(Objectives)を設定
個人のOは、所属する部署やチームのKRに基づき、その人が主体的に取り組むテーマを定性的に表現します。社員自らが考えた後に、上司やメンターと相談しながら、最終的な目標を設定するとよいでしょう。
設定のポイントと設定例
社員が個人で取り組むべき課題や、成長のテーマを軸に考えます。数値では測れない定性的な内容であっても、第三者に目指す姿が伝わるように意識して設定してみましょう。
ポイント | ・各自が取り組むべき課題を軸に考える/目指す姿が伝わる表現を用いる/上司やチームメンバーと相談しながらすり合わせる |
---|---|
良い例 | ・お客さまの課題を的確に理解し、信頼関係を深める/コストへの意識を持ち、無駄を削減する |
悪い例 | ・売上100万円を達成する/書類を作成するスピードを2倍にする |
STEP6:個人のKR(Key Results)を設定
個人のKRでは、設定したOを達成するために行うべきことを数値で具体化します。定量的かつOと一貫性のある指標にすることを意識します。
設定のポイントと設定例
KRもOとあわせて、上司やメンターと相談した上で設定しましょう。無理なくチャレンジできる水準に設定することがポイントです。
ポイント | ・定量的で観測可能な指標にする ・Oとの整合性が取れていることを、上司と一緒に確認する ・無理なくチャレンジできる水準に設定する |
---|---|
良い例 | ・月10件の顧客面談を実施し、課題を5件以上抽出する ・毎月1つ、削減可能な経費項目を洗い出して報告する |
悪い例 | ・無駄な作業を減らすように意識する ・他部署に協力を依頼する |
OKRの効果を高めるための注意点
OKRの効果を最大限に引き出すには、いくつかのポイントに注意を払う必要があります。よくあるつまずきと、その回避策を見ていきましょう。
目標を日常的に意識する
どれほど意欲的な目標を設定しても、それが日々の業務の中で意識されなければ意味がありません。OKRを形だけで終わらせないためには、定期的に目標を確認する仕組みが不可欠です。
たとえば、週次や月次の会議でOKRの進捗をチェックする時間を設けると、チーム全体の認識が深まり、目標達成に向けた行動が促されます。目標を常に意識し続けることで、現状を改善する自発的な行動が自然と生まれてくるでしょう。
目標を途中で変更しない
OKRは「挑戦的でありながら一貫性のあるゴール」を掲げる仕組みです。とは言え、あらかじめ定めていた期間の途中で目標を変えると、社員が困惑し、意欲を失ってしまう可能性があります。
目標を修正したい場合は、現在のサイクルが終わってから、結果の振り返りを実施したうえ次回のOKRで調整しましょう。
KRを増やし過ぎない
Key Results(成果指標)は、Objective(目標)の達成度を測るための重要な指標です。しかし、あれもこれもと増やし過ぎると、注力するポイントがぼやけてしまい、結果として中途半端なパフォーマンスにつながる可能性があります。
KRは1つのOに対して5つ程度にとどめるのが一般的です。焦点を絞ることで、社員がより明確な成果に向けて集中できるようになります。
社員に導入の目的を理解してもらう
OKRの真価を引き出すためには、現場で働く社員の理解と納得が欠かせません。「なぜOKRを導入するのか」「自分たちにどのようなメリットがあるのか」といった点を、丁寧に説明することが重要です。
目的や意図が不明瞭なまま運用を始めると、社員の姿勢が受け身になり、OKRが形骸化してしまう恐れがあります。導入前に双方向のコミュニケーションを重ねて、全員が納得して取り組める環境を整えましょう。
OKRの目標には、適度なストレッチゴールを設定しよう
本記事では、OKRを導入する手順や、運用時のポイントについて解説しました。
OKRは従来の目標管理方法と比べて、適度な難易度のストレッチゴールを設定する点が特徴です。極端に高過ぎない目標を設定することで、社員のモチベーションを維持し、ひいては企業全体の業績の向上につながります。
まずは、企業全体、次に部署、そして個人という順に、各レイヤーのOとKRを設定しましょう。設定した目標は社内全体で共有し、コミュニケーションを活性化させることが成功の鍵となります。
なお、目標を設定する際は、外部のプロ人材の客観的な視点や専門の知見を求めるのもひとつの選択肢です。経験豊富なプロ人材が多数登録する「HiPro Biz」にぜひご相談ください。