新規事業の立ち上げプロセスと成功させるためのポイントを解説

新規事業

2021年11月25日(木)掲載

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――どんな企業・業界でも新規事業立ち上げのリスクがある!?――

社会情勢や経営環境が急激に変化する現代。昨年までは大きな収益を生んでいた事業が翌年には赤字に転落する、なんてことも少なくなりません。この先も生き残っていくため、また成長し続けるため、新規事業の立ち上げはしばしば企業の命題となります。しかしその一方で、どんな企業・業界であっても新規事業の立ち上げにはリスクが潜んでおり、成功を収めることは決して容易ではありません。

そこで今回はリスクを抑え成功するために知っておきたい、新規事業立ち上げのプロセス、役立つフレームワーク、成功のポイント、失敗事例をご紹介します。

新規事業の立ち上げプロセス

新規事業の立ち上げ成功には、正しいプロセスを踏み計画を立てることが重要です。必要なプロセスを解説していきます。

課題を見つける

“顧客(世間)が抱える課題”を探し、それを解決する製品・サービスを提供することが需要の高い事業と言えるでしょう。自分たちがやりたいことを事業化するパターンも見受けられますが、自己満足で進めても顧客が求めることから離れていては成功しません。まずは業界、市場、既存商品・サービスを分析し顕在化されたニーズを見極め、「顧客(世間)が何に困っているか」を軸に考えていく必要があります。

事業ドメインを決める

事業ドメインは企業が経済活動を行う事業領域のことです。具体的には「誰に、何を、どのように提供するのか」を示すことを意味します。事業ドメインが決まることで、今後どのような戦略を立てるべきか、顧客にどんなアプローチをすべきかなど、方向性が明確になります。

事業ドメインの決定と混合されがちなものに、市場セグメンテーションがあります。市場セグメンテーションは顧客のニーズや嗜好を分析し市場を細分化する顧客視点の行為です。一方事業ドメインの決定は、経営戦略や自社の強みに重きを置いて事業の活動領域を決める自社視点の行為です。

事業ドメインの決め方には、物理的定義と機能的定義があります。

・物理的定義:「医薬品をつくる」といったように製品やサービス、技術など物理的側面から定義する方法です。物理的定義は何をするかがイメージしやすい一方、事業領域を狭める恐れがあります。

・機能的定義:「人々を健康にする」といったように製品・サービスの持つ価値の側面から定義する方法です。機能的定義はイメージしにくいためメンバー内で方向性にブレが生じる恐れがある一方、将来的に事業を多角的に展開しやすいメリットがあります。

理念・ビジョンを明確にする

新規事業立ち上げに携わるメンバーが同じ方向に進むためにも、新規事業の理念・ビジョンは明確にするべきです。理念・ビジョンはプロジェクトリーダーや経営者の頭のなかにあるだけでは意味がありません。文字に起こし、メンバーが見て理解し共感できるような形にしましょう。

市場性と事業性を検証する

新規事業を検討する際には「何を売るか」「どんな計画で進めるか」に意識が向きがちです。しかし重要なのは「どれほどの需要があって、どれくらいのお金が動くのか(市場性)」「顧客のどんな課題を解決し、誰ならば絶対に買うのか(事業性)」をリサーチすることです。市場性と事業性の両方があると明確に答えられない状態では、勝てる事業とは言えません。市場性・事業性を検証するには、以下をリサーチすると良いでしょう。

【市場性】
・市場の特徴、構造、構成
・市場の成長性
・市場に潜むリスク
・市場に存在する既存プレーヤー
・市場成長の引き金になるもの

【事業性】
・ターゲットの特徴
・ターゲットの購入見込み率
・ターゲットにフィットする商品、サービスの要件
・ターゲットとの関係構築方法
・事業に参入している競合他社

製品・サービスづくりの環境を整える

経営をするうえでヒト・モノ・カネ・情報が必要と言われていますが、これは新規事業立ち上げにおいても同様で、これらを揃え環境を整えることが大切です。ヒトはプロジェクトを進めるチームのこと。役割分担を行い、バランスのとれたチーム構成にします。人手が足りなければ、求人を出して新たに採用することも必要になるかもしれません。モノや情報はノウハウ・スキルと言い換えられるでしょう。新規事業のアイデアがあっても、それを形にする力がなければ意味がありません。自社にないノウハウ・スキルは、専門家のコンサルティングを受けるなど、外部人材を活用するのも一つの方法です。カネは新規事業立ち上げに必要な資金・費用のことです。開発費や人件費などを計算し、資金調達を行います。

行動計画を立てる

ここまでのプロセスが完了し新規事業のビジネスプランが明確になってきたら、最後に具体的な行動計画を立てていきます。ここで大切なのは無理のないスケジュールを組むことです。たとえば資金調達や人手不足で新たな人材を雇い入れる際には時間がかかることもあります。現実的な日程で「いつ、誰が、何をするのか」を計画に落とし込んでいきましょう。

新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク

新規事業立ち上げのプロセスを進める際に役立つフレームワークを5つご紹介します。

MVV

MVVはミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)の頭文字からネーミングされた、新規事業の理念や目指したい姿を明確にするフレームワークです。MVVを策定することで、新規事業に対する共通認識が図れたり、やるべきではないことを正しく判断できたりします。

・ミッション(Mission):果たすべき使命、目的
・ビジョン(Vision):目指したい姿、未来
・バリュー(Value):重視するべき価値観、行動規範

3C分析

3C分析は、Customer(顧客・市場)、Company(自社)、Competitor(競合他社)の頭文字からネーミングされた、製品やサービスを考えるフレームワークです。3つの視点で「顧客ニーズは何か」「市場規模は」「競合他社には自社のどの部分で勝てるか」などを整理していくことで、新規事業の具体的な内容を決めていきます。

SWOT分析

SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字からネーミングされた、企業や事業計画の現状分析を行うフレームワークです。競合や市場トレンドといった外部要因と、製品の品質や価格といった内部要因をプラス面・マイナス面に分けて分析することで課題を明確にし、対策を整理するのに役立ちます。

VRIO分析

VRIO分析は、Value(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の頭文字からネーミングされた、企業の強みや競合優位性を明確にするフレームワークです。4つの視点で自社を分析することで「新規事業立ち上げ後にいかに競合に勝つか」などの戦略が立てやすくなります。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは自社と競合他社を比較し、競合優位性のあるポジションを導き出すのに役立つフレームワークです。他社と差別化を図るうえで重要と考える2つの要因を縦軸・横軸に設定し、軸に沿って自社・競合他社をマッピングしていきます。ポジショニングマップをつくることで自社・他社がどのポジションにいるかが一目で分かるようになり、差別化・優位性が図りやすくなります。

新規事業立ち上げの成功ポイント

新規事業立ち上げのハードルは高く、立ち上げても失敗することは少なくありません。成功率を高めるポイントをご紹介します。

強みが活かせる事業を立ち上げる

顧客のニーズを見極めることは重要です。しかしニーズを満たせるアイデアが思いついてもそれを形にするだけのノウハウ・スキルがなければ意味がありません。また既存事業とまったく関連性がないものはリスクも大きくなります。立ち上げ成功には、顧客ニーズが満たせると同時に自社の強みを最大限発揮できる事業を選ぶことが大切です。自社の強みが活かせれば質の高いビジネスにでき、競合優位性も得やすくなります。

経営ビジョンを明確にしておく

経営ビジョンはさまざまな戦略の前提となるものです。新規事業の立ち上げはこの先も生き残っていくため、成長し続けるための戦略の一つ。明確な経営ビジョンがあれば、困難にぶつかったり想定外の事態に陥ってしまったりしても解決への道標となってくれます。

モチベーションを上げる仕組み

新規事業立ち上げを進めるのはほかでもない従業員です。しかし新規事業は困難にぶつかることが多かったり、プロジェクト進行中は収益が出なかったりと、モチベーションが保ちにくく従業員が不満を抱く傾向にあります。そのため外部的動機付けであればストックオプションを活用したインセンティブ付与、内部的動機付けであればビジョンの共有など、モチベーションを上げる仕組みを構築するのが有効的です。

新規事業立ち上げに使える助成金

ここでは新規事業の立ち上げに使える主な助成金を4つご紹介します(2022年12月時点情報)

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに売り上げが低迷する中小企業や中堅企業に対して、事業の再構築を支援するための制度です。通常枠の他に、大規模賃金引上枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠、グリーン成長枠、緊急対策枠があります。

※出典:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)(経済産業省)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)とは、中小企業や小規模事業者を対象に、生産性の向上に向けた取り組みを支援するための制度です。コロナ禍で急速に進んだデジタル化や、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた温室効果ガスの排出対策に対して、設備投資、IT導入、販路開拓などを支援することで、新しい時代への適応や将来に向けた取り組みの強化が期待されています。

※出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 令和3年度補正予算の概要(中小企業庁)

IT導入補助金

IT導入補助金とは、主に中小企業や小規模事業者を対象に、ITツールの導入を支援するための制度です。自社の課題を解決するためのITツールの導入を通じて、業務の効率化や標準化による業績拡大を目的としています。コロナ禍ではテレワークが急速に普及し、導入を検討している企業も増えています。IT導入補助金ではソフトウェア費、クラウド利用費、ハードウェア購入費などが含まれ、ペーパーレスやはんこレスなど、テレワーク実現に必要な環境整備にも役立てられるでしょう。

※出典:IT導入補助金とは(中小企業庁 ミラサポplus)

創業助成金

創業助成金とは、東京都内での創業予定者や創業後5年未満の中小企業等を対象に、必要経費の一部を支援するための制度です。具体的には人件費、賃借料、広告費などが含まれます。創業助成金を通じて都内の開業率を高めることで、新たな雇用の創出や産業の活性化につなげることを目的としています。

知っておきたい失敗事例

新規事業はリスクがありますが、失敗事例を知っておくことでリスクを回避しやすくなるでしょう。ここではよくある失敗を3つご紹介します。

撤退ラインを決めていない

なかなか軌道に乗らなければ撤退も選択肢に入れるべきですが、これまで費やしてきた労力・費用を考えてしまい撤退に踏み切れないケースがあります。しかし採算が取れない事業を続ければ赤字が膨らみ、企業の存続にも影響しかねません。事前に「○○になったら事業をやめる」といった撤退ラインを決めておく必要があります。

チームが肥大化している

必要以上にチームが大きくなってしまうと個々の意見が反映しにくくなり、意思決定のスピードが鈍化する恐れがあります。人材不足やノウハウ不足があれば新たな人材を加えるべきですが、新規事業立ち上げでは臨機応変な対応や新たなチャレンジを求められることも多いため、まずはミニマムなチーム構成ではじめるのが良いでしょう。

市場参入のタイミングが誤っている

市場に参入するタイミングは、需要が高く競争率が低いタイミングがベスト。時期を誤れば、どんなに緻密に進めてきた計画でも失敗する恐れがあるため注意が必要です。また新規事業のアイデアを発案したタイミングでは目新しくても、準備を進めるうちに新規性が失われるということも。市場やニーズは日々変化していますので、常に現状を分析し最適なタイミングで参入できるよう意識しましょう。

まとめ

どんな企業・業界であっても新規事業立ち上げにはリスクがつきものです。本コラムでは失敗のリスクを抑えるために知っておきたい立ち上げプロセス、役立つフレームワーク、成功のポイント、失敗事例を解説してきました。

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お困りごとに対して、必要な期間、必要な領域だけを依頼し、専門家と一緒にプロジェクトを推進することも可能です。成功体験を積み重ねながら、ノウハウを吸収していきましょう。

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