アフリカ急発展?リープ・フロッグ現象で世界が変わる?

新規事業

2022年04月26日(火)掲載

キーワード:

近年、アフリカや中国、インドなどの各新興国において「リープ・フロッグ現象」とよばれる発展が見られるようになりました。すでに各国では当現象の可能性について着目しており、新興国の中で技術革新を遂げつつある、スタートアップ企業への海外投資も急増しています。

当コラムでは、改めてリープ・フロッグ現象について、概要から起こる要因までを、各国の事例とともにご紹介します。

リープ・フロッグ現象とは

リープ・フロッグ現象(leapfrogging)とは、途上国が最先端技術を導入することによって、既存技術で成長を遂げてきた先進国よりも、さらなる発展を遂げる現象です(別名で「リープ・フロッグ型発展」と呼ばれることもあります)。

また「リープ・フロッグ現象」という名称は、発展の度合いが、まるでリープフロッグ(「カエル跳び」の意)の様子に似ているところから名づけられています。

リープ・フロッグ現象の一例としては、アフリカで浸透したスマートフォンの事例が挙げられるでしょう。

アフリカはもともと固定電話も普及しておらず、情報インフラも未整備だった状態から、先進テクノロジーである「スマートフォン」および情報技術を導入しました。結果、通話機能の利便性のみならず、インターネットなどのモバイルサービスにおける利便性も一挙に獲得することに成功しています。

対して日本でどのようにスマートフォンが普及したかを振り返ると、電話交換手を必要としていた初期の電話から固定電話へ、やがて持ち運びできるPHSやガラパゴス携帯からスマートフォンの普及と、順を追って徐々に浸透しています。

双方の浸透度合いを比較すると、アフリカがいかに段階を飛躍して技術導入を進めたかが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

リープ・フロッグ現象が起こる要因とは

では、なぜ新興国でリープ・フロッグ現象が起こっているのでしょうか。考えられる要因をいくつかご紹介します。

先進国が最先端技術導入のモデルとなっている

新興国にとって、新たな技術を導入する際、すでに先進国というモデルが存在しています。すなわち新興国には、ゼロから技術を生み出すためのコストや時間をかけなくとも、最短の手順で、最先端技術を取り入れられるという利点があるのです。

また、消費者側も導入の前例がない分、技術に対するニーズも、先進国ほど複雑ではありません。機能を盛り込みすぎないシンプルな機能でも普及しやすいため、必然と開発コストを安く抑えられるという側面もあります。

技術革新の恩恵が大きく受け入れられやすい

新興国は先進国に比べて、社会インフラや第三次産業の伸びしろが大きく、また日常に密接している分、成長を求められている領域でもあります。発展途上の市場と、技術導入による躍進的な成長見込みが合致することで、消費者にとっては導入時の心理的なハードルが下がるといえるでしょう。

例として、中国やインドでキャッシュレス化が促進された事例も、リープ・フロッグ現象のひとつです。この背景をひも解くと、元々偽札が横行していたことや、高額紙幣が廃止されたことによって、より安全かつ利便的な電子マネーを受け入れやすい環境下であったことが挙げられます。

既存の設備や技術によるしがらみがない

もうひとつ、新興国は技術導入およびサービス開発を進めやすい環境が整っているといえます。

企業を例にとってみると、たとえば先進国でシステムを導入・刷新する場合、既存技術でも十分に運営できるケースが大半です。

そのため、わざわざ新技術導入に対して開発費や人件費など大量のコストをかけることに、ためらいを感じるケースも少なくありません。すなわち、新たな技術へ切り替えた結果の不確実性から心理的抵抗を感じてしまいます。

しかし、新興国では前例が少ない分、技術革新に前向きであり、新サービスの開発が積極的に推進されるのです。

法律や制度の規制が少ない

新技術の実用化や売買、宣伝の側面においても、新興国は先進国ほど規制がかかっていない分、普及しやすい環境といえます。

また、新興国の一部では、類似製品に対する規制も少ない分、新技術の普及が推進されやすい環境であるともいえるようです。

リープ・フロッグ現象の事例

以下からは、リープ・フロッグ現象の事例を3件ご紹介します。

ルワンダにおける医療分野でのドローン活用

ルワンダでは2016年より、ドローンで輸血用の血液や医薬品を提供するサービスがリリースされています。

医療従事者が携帯電話のメッセージ機能で注文することにより、ドローンが射出、オートメーションで運行。現地に到着すると、注文品をパラシュートで投下し配達するという仕組みです。

注文から配達までの平均時間は、約30分。ルワンダだけでなく、インフラが未整備の地域でも、空路を活用することで緊急事態の運送問題を解決できる事例です。

なお、当サービスは、米国のスタートアップ企業によって手掛けられました。

ケニアにおける電子マネーの普及

2007年、モバイル送金サービスがケニアでリリースされました。当サービスは、リリースからわずか4年間で、約80%の世帯に利用され、取引額はGDPの50%に達したともいわれています(※)。

銀行口座がなくとも、携帯から金融取引を実施できる当サービスですが、リリース当時は、銀行口座そのものも一般化されていませんでした。

銀行口座が浸透する前に、モバイルバンキングから先に浸透した当事例も、リープ・フロッグ現象のひとつといえます。

(※出典 国際協力機構(JICA))

インドにおける生体認証を活用した身分証明システム

インドでは、携帯電話料金の支払いを登録証明書と指紋認証のみで完了できる、いわば「生体認証」を活用した身分証明システムの仕組みが構築されました。具体的には、付与された個人識別番号と生体情報の登録によって、国がデータベースで管理できる、いわば日本のマイナンバー制度に近しい仕組みです。

政府が当システムを導入した背景には、導入前までは身分証明書も所持しておらず社会に参画できない層が多数存在していたことや、配給の不正受給が多発していたことも挙げられます。

なお、当システムの浸透度は目覚ましく、2018年時点で約12億人が登録。国民からは先述の恩恵だけでなく、従来の現金やクレジットカードなどがいらない利便性も評価点のひとつだったようです。

まとめ

改めて、当コラムの内容をまとめると、以下の通りとなります。

・リープ・フロッグ現象とは、技術革新によって先進国の成長を追い越すことである。

・リープ・フロッグ現象が起こる要因は、先進国と比較し「コスト」や「規制」の負荷が少ないことにある。

・事例として、社会インフラが整っていなかった各新興国における「ドローン」や「電子マネー」「生体認証による身分証明システム」」などのリープ・フロッグ現象が発生している。

また、新興国のリープ・フロッグ現象を一種の成長モデルとして見ると、あらゆる事業成長のヒントを得られるともいえるのではないでしょうか。たとえば、躍進の背景や要因をひも解けば、中小企業が大企業を超えて躍進するための足がかりともなり得ます。さらには、今後ますます加速を見せるグローバル競争において、リープ・フロッグ現象を遂げたサービスは、ゆくゆくのベンチマークともなりえるのです。その点からも、今後も各国の動きには着目しておきたいところです。

関連コラム

ページTOPへ戻る