ナレッジマネジメントで組織力向上を実現!導入の流れと成功させるポイント

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2025年05月29日(木)掲載

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ナレッジマネジメントは、組織力を高める手法の一つです。ナレッジマネジメントを行えば、業務効率化をはじめとするさまざまなメリットが生まれ、組織全体の成長へとつながります。

本記事では、ナレッジマネジメントの概要とともに、よくある失敗例や成功のために意識したいポイントなど、ナレッジマネジメントに欠かせない情報をお伝えします。組織をさらに成長させたい方はぜひご覧ください。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメント

業務に関する知識やノウハウなど、業務上で役に立つ情報である「ナレッジ」を組織全体で共有し、活用する考え方を「ナレッジマネジメント」といいます。

ナレッジマネジメントが求められている背景には、はたらき方の多様化により終身雇用制度が見直されつつあることが挙げられます。近年の日本では、終身雇用制度を前提とした長期的な人材育成が成立しにくくなっているため、従来の方法で知識を継承することも難しくなっています。たとえば、キャッチアップの場面においても、速いペースで常に新しい情報を取り入れることが社員一人ひとりに求められる傾向があるため、ナレッジマネジメントの実施がより重要視されています。

ナレッジマネジメントを行うメリット

組織にナレッジマネジメントを取り入れることにより、たとえば以下の4つのメリットを得ることができます。

組織力の強化

ナレッジマネジメントを実施し、他部署とも適切に情報を共有することで、組織全体の強化を期待できます。たとえば、カスタマーサポート部門が収集した顧客の意見を営業部門や開発部門にも共有すれば、営業活動や商品開発に顧客の声をスムーズに反映できるでしょう。
適切な情報共有と部署間の連携により、対応力のある組織を目指せます。

人材育成の効率化

ナレッジマネジメントは、人材育成の場面でも役に立ちます。業務に慣れており、結果を出している社員のノウハウを新入社員に共有すれば、教育を効率的に進められる可能性があります。
現在活躍している社員だけでなく、会社の将来を担う社員にも情報を共有することで得られるメリットにも目を向けてみましょう。

業務効率化

ナレッジマネジメントによって効率化できる対象は、人材育成だけではありません。もちろん、普段のさまざまな業務でも効率化を目指せます。
社員個々人が、自身の苦手な業務に必要なノウハウを知ることで、各業務の効率化が実現できるでしょう。また、業務でよくある疑問に対するFAQをあらかじめ収集しておけば、業務上のイレギュラーが発生した際もFAQを参照することでスムーズに解決できます。

属人化の防止

業務の効率化だけでなく、属人化を防げるという点もナレッジマネジメントの大きなメリットです。業務の基本的な流れや、スムーズに進めるためのコツなどを常日頃から共有しておけば、担当者の急な休みや退職があっても素早い代行や引継ぎが可能になります。
そのため、「この人がいないと仕事が回らない…」といった状況が課題となっている組織には特にナレッジマネジメントが有効といえるでしょう。

ナレッジマネジメントを導入する流れ

ナレッジマネジメントを導入する際は、以下のように段階を踏むこととなります。

ナレッジマネジメントの目的を明確にする

ナレッジマネジメント導入に向けて具体的に動く前に、ナレッジマネジメントを行う目的を整理しましょう。目的を明確にし、社内に共有することで、社員一人ひとりが自分事として捉えてナレッジマネジメントに向き合えるようになります。

上記で紹介したメリットを参考に、たとえば「自社にこのような課題があるので、ナレッジマネジメントのメリットを取り入れて課題を解決したい」といったように目的を洗い出しましょう。

可視化や共有したい情報を選定する

目的が明確になったら、「ナレッジマネジメントを行うにあたって、何を可視化したいのか?どのような情報を集めたいのか?」を決めます。ここであらかじめ共有すべき情報を決めておけば、実際にナレッジマネジメントを始めてから社員個々人が「何を共有すればよいのか」で迷うことを防げるでしょう。

ナレッジマネジメントの目的も振り返りながら、「社員はどのようなことで困っているのか」を考えると、共有すべき情報を洗い出しやすくなります。

ナレッジマネジメントの実施方法を決める

続いて、ナレッジマネジメントを実施するにあたり利用するツールを決めましょう。ナレッジマネジメントに適したツールとして、以下の2種類を挙げて考えてみます。

表計算ソフトを活用する

表計算ソフトを普段の業務で使用している場合、ナレッジマネジメントに活用すれば、追加コストがかかりません。フォーマットを決め、共同編集用のファイルを社内で共有することでナレッジを蓄積することも可能です。

ただし、本来は表計算に利用するソフトなのでナレッジマネジメントには不向きな側面もあります。小規模の組織で使用する場合や、共有するナレッジがあまり多くない場合は表計算ソフトでも問題なく運用できる可能性があります。そうでない場合は、基本的にはナレッジマネジメント専用ツールを使用したほうがよいでしょう。

専用ツールやサービスを活用する

ナレッジマネジメントを実施するのであれば、やはり専用ツールを導入したほうがその効果を最大限に実感できます。多くの専用ツールは情報の検索性に優れており、情報共有がしやすい仕組みになっているため、「欲しい情報をすぐに見つけられない」「情報を適切に蓄積できない」といったトラブルも起こりにくいでしょう。

ナレッジマネジメントツールにはさまざまな種類があり、機能や導入コストもそれぞれ異なるため、しっかりと比較した上で自社に合うものを選ぶことをおすすめします。

業務プロセス上に情報共有を組み込む

ここまでの工程で、ナレッジマネジメントを実施するための準備が整いました。ナレッジマネジメントをいつでも始められる状態となったら、情報を共有する旨を社員に伝えます。

ポイントは、ただ「情報を共有するように」と伝えるのではなく、普段の業務プロセスに「情報共有」というタスクを組み込むことです。日常の業務の一環として情報を共有する仕組みを整えましょう。

定期的な見直しや改善を行う

ナレッジマネジメントが軌道に乗ってきたら、「当初の目的通りに運用できているか?」を確認するため、現状を見直しましょう。特に、後述で紹介する失敗例のようなケースはよく起きるため、問題が発生していたらすぐに改善することが重要です。

また、見直しや改善は定期的に行う必要があります。PDCAサイクルを回して、より良い仕組みへとブラッシュアップしていくことで、実施メリットをさらに実感できるでしょう。

ナレッジマネジメントでよくある失敗例

メリットの多いナレッジマネジメントですが、導入時にコツを押さえなければ失敗してしまうこともあります。以下の失敗例をあらかじめ確認し、自社での導入に備えましょう。

社員に目的や真意が浸透せずに失敗

まず紹介する失敗例としては、ナレッジマネジメントの重要性が浸透せず、社員がなかなか情報を共有してくれないケースが挙げられます。

社員が情報を共有しない理由はさまざまですが、たとえば「共有するメリットがわからない」「自分が努力して得たノウハウを社内のライバルに知られたくない」などが挙げられます。また、ナレッジ共有の理解度や優先度が低いと、「業務が忙しいから」といった理由で共有しないことも考えられるでしょう。

運用ルールが定まっていないために失敗

社員の理解は得られているものの、ナレッジマネジメントのルールが明確に定まっていないため、適切に機能しない、といった失敗も起こり得ます。

情報の保管場所についてルールが定まっていなければ、たとえ社員が情報を共有してくれていたとしても、別の社員がその情報にたどり着けないことが考えられます。また、入力形式が決められていない場合は、様式が統一されず非常にわかりにくい状態になってしまうでしょう。

いきなりナレッジマネジメントツールを導入して失敗

社員のITリテラシーによっては、準備段階を踏まずに専用ツールを導入すると、使い方がわからずにナレッジマネジメントが適切に行われない可能性もあります。あるいは、社員個々人が自身のやりやすい方法で進めてしまうこともあるかもしれません。

専用ツールは、基本的にはナレッジマネジメントを簡単に行うためのものであるとはいえ、導入にあたってはある程度の準備が必要になるでしょう。特に、ITツールに慣れている経営者や管理者がツールを選定、導入する場合は要注意です。自身のITリテラシーを基準に進めると、現場の社員が理解や操作についていけなくなってしまうことがあります。

習慣化されずナレッジマネジメントの存在を忘れられてしまい失敗

当初はナレッジマネジメントが適切に実施されていたとしても、半年から1年が経つ頃にはいつの間にか行われなくなっていた、というケースも考えられます。

時間が経つにつれ、社員個々人の中でナレッジマネジメントの重要性が薄れていき、いつの間にか忘れられてしまうと、せっかく情報が蓄積されているにもかかわらず、それらが適切に活用されなくなってしまいます。

社員が知りたい情報が適切に集まらず失敗

「必要な情報が足りていない」ではなく、「情報があまりにも多すぎる」という事態もまた、ナレッジマネジメントの失敗となり得ます。

たとえば、社員が「とりあえず何でも入力する」という考え方でナレッジマネジメントに取り組んでしまうと、数百、数千と情報が乱立し、本当に必要な情報が見つからなくなる可能性もあるでしょう。そのような事態になると、情報がいたずらに蓄積されるだけで、ほとんどの社員がそのナレッジを活用しなくなる可能性があります。

ナレッジマネジメントを成功させるポイント

ナレッジマネジメントを導入するのであれば、前述のような失敗は避けたいものです。以下のポイントを押さえて、ナレッジマネジメントを成功させましょう。

社員への周知を徹底する

ナレッジマネジメントに限らず、新たな取り組みは、その目的や重要性が社内に浸透しなければ効果を発揮しません。そのため、ナレッジマネジメントを始める際は、まず各社員への周知を徹底しましょう。

ポイントは、ナレッジマネジメントのメリットも伝えることです。明確にメリットがある取り組みだということがわかれば、ポジティブな姿勢で協力してもらえるでしょう。 社員一人ひとりがナレッジマネジメントの重要性を理解することで多くの協力を得られるようになり、その結果、必要な情報が適切に蓄積されていくことが期待できます。

ナレッジを共有や活用しやすい環境を整備する

社員が「この情報は必要だ」と思ったときにすぐに共有できるよう、また情報を求めている社員がすぐにアクセスできるよう、環境を整備することも重要です。ただツールを導入するだけではなく、共有フォルダの仕組みや運用ルールなどにも配慮しましょう。

また、オンライン上での共有が基本となる一方、オフラインの環境を整えることもナレッジを共有しやすい環境づくりにつながります。たとえば、休憩スペースを設けて、部署の内外で気軽にコミュニケーションを取れるような場をつくれば、社員同士の心理的な距離が縮まり「仲間のために情報を共有しよう」という気持ちが生まれるかもしれません。

社員が使いやすいと感じるツールを選定する

ナレッジマネジメントの専用ツールには、さまざまなものがあり、機能や特徴、操作性などはそれぞれ異なります。自社に合うツールを導入することで、ナレッジマネジメントの効果を最大化できるため、社員にとって使いやすいものを選びましょう。

特に、ITツールにあまり慣れていない社員が多い場合は、操作がわかりやすく、誰にとっても使いやすいツールを選ぶことをおすすめします。

プロジェクトメンバーを配置して管理する

ナレッジマネジメントは管理者だけで始めるのではなく、各部署の社員をプロジェクトメンバーとして任命すると、より効果的に進められます。プロジェクトメンバーが部署内にナレッジマネジメントへの協力を呼びかけることで、社内への浸透が期待できるためです。

また、ツールの操作やナレッジの共有ルールなどに関して疑問が生じた際も、各部署のプロジェクトメンバーに問い合わせるように決めておけば、仕組みが形骸化せず、適切に運用しやすくなるでしょう。

アンケートやミーティングで意見を収集する

ナレッジマネジメントをより良い取り組みとするためには、定期的な見直しと改善が必要です。社内でのアンケートや、プロジェクトメンバーによるミーティングを通じて、現状のナレッジマネジメントに関する意見を集めましょう。
現場からのフィードバックを適切に反映することで、ナレッジマネジメントの効果をさらに高めるきっかけになるかもしれません。

ナレッジマネジメントに有効な手法

ナレッジマネジメントには、いくつかの種類があります。それぞれ特徴が異なるので、以下のようなパターンを確認しながら、自社に合う方法を選んでみましょう。

ベストプラクティス共有型

「ベストプラクティス共有型」は、社内の成功事例を共有し、社員個々人が成功事例を参考にすることで業務改善を目指すナレッジマネジメントの手法です。たとえば営業のように質の高いパフォーマンスを発揮している社員のスキルを、ほかの社員が参考にしやすいような業務に向いています。

ベストプラクティス共有型のナレッジマネジメントを実施する際は、過去の事例を掘り起こして成功事例を洗い出し、ノウハウを蓄積していきましょう。

専門知識ネットワーク型

社員個々人の持つ専門知識をデータベース化し、幅広く共有することで課題解決のスピードアップを目指すナレッジマネジメントの手法が、「専門知識ネットワーク型」です。たとえば、業務でよく発生するトラブルや疑問をFAQの形式でデータベース化するという方法が挙げられます。

必要な知識や情報がデータベース化されていると、問題が発生した際もすぐにヒントにアクセスでき、迅速な解決のきっかけになるでしょう。

顧客知識共有型

コールセンターや問い合わせ窓口など、顧客と直接接する機会の多い部署では、「顧客知識共有型」のナレッジマネジメントが向いています。その名の通り、顧客の属性情報や対応履歴など、顧客に関する情報を共有する手法です。

顧客の情報が一元管理され、関係者がいつでも簡単に閲覧できる状態が整えば、担当者が不在の場合も一定の品質でのサービス提供が可能となり、属人化防止につながります。また、顧客ごとに適切な対応を行うことで、サービス品質の向上も期待できるでしょう。

知的資本集約型

「知的資本集約型」のナレッジマネジメントを実施すれば、将来的な収益向上を目指せます。この手法では、特許や製造技術、営業ノウハウなどの知的資本を収集し、適切に組み合わせることで、さらなる付加価値を生み出します。

知的資本集約型では、膨大なデータを収集、分析する必要があるため、使い勝手の良い専用ツールを導入してナレッジマネジメントを効率化しましょう。

ナレッジマネジメントに使えるフレームワーク「SECI(セキ)モデル」

ナレッジマネジメントを効果的に実施するためには、「SECI(セキ)モデル」と呼ばれるフレームワークの活用がおすすめです。
SECIモデルでは、Socialization(共同化)、Externalization(表出化)、Combination(連結化)、Internalization(内面化)の4つのプロセスを通じて、個人の経験や勘といった、言語化しにくい知識である「暗黙知」を、誰が見ても理解できる「形式知」に変換します。

また、4つのプロセスにはそれぞれ適した「場」があります。具体例として以下を参考にしてみましょう。

SECIモデルの4つの場
共同化(暗黙知の共有) 創発場 休憩室やランチなど、気軽に会話できる場
表出化(暗黙知→形式知の変換) 対話場 社内ミーティングなど、本格的なディスカッションの場
連結化(新たな形式知の創出) システム場 ナレッジマネジメントツールなど、お互いの形式知を共有できる場
内面化(形式知を暗黙知として習得する) 実践場 個々人の作業スペース

ナレッジマネジメントでは「共有された知識を、どのように活用していくのか」が非常に重要です。SECIモデルを参考に、自社のナレッジマネジメントのフローを組み立ててみましょう。

ナレッジマネジメントを活用し、組織力の強化を目指そう

以上、組織力の強化に役立つ、ナレッジマネジメントの概要を解説しました。

ナレッジマネジメントは、単なる情報共有ではありません。目的を社内に浸透させ、蓄積された情報を一人ひとりが取り入れることで、組織力の強化を目指せます。
本記事で紹介したポイントやフレームワークを取り入れて、ナレッジマネジメントに取り組んでみましょう。

なお、業務の属人化をはじめとする経営課題にお悩みであれば、「HiPro Biz」にご相談ください。さまざまな企業の経営課題を改善に導いてきたプロ人材が、貴社の課題解決を支援します。

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