営業生産性アップを目指す具体的な企業事例と効果的な施策を紹介
2023年07月04日(火)掲載
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市場競争の激化、働き方改革などの要因で、近年は営業生産性を向上しようという考えが高まっています。営業活動は商談以外の業務も発生しやすく工数が多くなりがちなため、効率的に業務を進められないと営業生産性が低下します。
営業生産性アップにつなげるためには、業務内容や進捗状況の把握、情報や時間の管理などに対する取組みが必要です。
当コラムでは、営業生産性が低下する原因と向上させるための施策、企業の成功事例を解説します。自社の営業生産性に課題を感じている場合は、具体的な取り組みを検討する際の参考にしていただければと思います。
営業生産性とは
営業生産性アップにつなげる方法を知る前に、まずは営業生産性とはどのような指標なのか確認しましょう。
資源と成果の関係を指標化したもの
一般的に生産性とは、労働時間数や従業員数に対してどれだけの成果を産み出したかを表す指標です。営業生産性とは、営業にかかった労働時間や人件費などコストに対し、どれだけ売上や成果などが得られたかを示す指標です。
営業生産性では、営業活動を進めるためにかかった時間や費用をインプット、売上など営業活動の結果得られた成果をアウトプットと呼びます。営業生産性は、アウトプットをインプットで割ることで数値化が可能です。
営業生産性を向上させる必要性
企業の経営を考えるうえで営業生産性の向上が必要な理由を解説します。
激化する市場競争に打ち勝つ
営業生産性の向上が必要な理由としてまず挙げられるのが、他社との競争が激化したことで、市場での生き残りをかけた戦いが求められている点です。競争が激化する背景には、グローバル化が関係しています。
今までは国内市場がメインだった業界でも、グローバル化が進行したことで日本の市場を求めてさまざまな国の企業が参入しました。市場での各社の競争が激化したことにより、市場の需要に対して供給過多となりやがて飽和状態になったことで、売上が低下する傾向にあります。
そのため各社では、これまでより少ないコストで利益を出そうと、営業生産性の向上に取り組む必要に迫られています。
働き方改革の浸透によって生産性向上が一層重要に
働き方改革も、営業生産性の向上が求められるようになった理由として挙げられます。
働き方改革では長時間労働の是正が求められています。残業時間の上限を定めたり有給休暇の取得を義務化したりするなど、さまざまな取り組みが行われていますが、企業から見れば、労働時間を削減したことで売上が下がる懸念もあります。
そのため営業部門では、短時間でも今と変わらない成果を生み出せるよう、限られた時間を有効に使うべく生産性の向上が求められているのです。
営業生産性が低下する主な原因
テレワークだけでなく、日々の業務の進め方が原因で営業生産性が低下する場合もあります。ここからは、営業生産性が低下する主な原因を解説します。
「何となく」で行動している
明確な目的や目標を持たないまま何となく行動していると、営業生産性が下がります。
営業活動ではこれからアプローチしたい相手、業界全体のことなど周辺要素を調べて計画を練り、万全の状態で商談に臨む必要があります。ところが、下調べをせず何も情報がない丸腰の状態では、アポイントを取れて商談にこぎつけても、成果を得ることは難しいのではないでしょうか。成約の見込みがない商談に無駄な時間を割いてしまう恐れもあります。
無駄が多い
無駄な業務が多いと営業生産性は低下します。
利益につながる見込みがある商談なら時間や手間をかけて準備しますが、勝算の見込みがまったくない商談にも同じようにコストをかける、商談を繰り返すなどは、営業生産性を低下させる一因となってしまうでしょう。
情報管理ができていない
顧客に関する資料や情報の管理がおろそかだと、営業生産性が低下する原因になります。営業活動では、過去に実施した手法を参考に活用するケースも多くあります。以前にコンタクトした顧客と再度商談を重ねたい場合、過去に実施したアクション内容と結果がわからないと、手探りの状態になるでしょう。
取引先の資料やパソコンのフォルダを整理していない場合、必要な情報を探すために時間を取られます。これも営業生産性低下の要因につながるといえそうです。
営業生産性アップにつなげる効果的な方法
では営業生産性をアップさせるためにはどうすればいいのでしょうか。以下のような方法をもとに営業生産性の向上を目指して実践してみるとよいでしょう。
業務の自動化
データ入力や日々のタスク管理など、自動化できる業務を自動化するのは有効な手段のひとつといえます。自動化によって業務を減らすことで、営業活動のなかでも売り上げに直結する業務に時間をかけるよう普段から意識できます。捻出した時間を顧客と向き合う時間に当てられるため、より多くの付加価値を生み出せるでしょう。
業務を自動化する方法は、チャットボットによる問い合わせへの回答、Excelのマクロ活用をはじめ、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)などが挙げられます。
業務の可視化
営業生産性向上のために、業務の可視化にも着手しましょう。
業務の可視化を、「営業担当者の動き」と「営業活動の進行具合」、それぞれの視点からみてみます。
■「営業担当者の動き」チェックポイント
- 業務担当者はだれか
- どのような業務か
- その業務にどれだけ時間をかけたか
■「営業活動の進行具合」チェックポイント
- 商談内容
- 各段階でどの程度時間がかかっているか
- 現時点でどの段階まで進んでいるか
「営業担当者」と「営業活動の進行具合」の2軸から可視化を進めることで業務状況の解像度を高められるため、現時点で特に重点的な対応が必要な案件や判断が求められる事項を判別しピックアップできます。
タイムマネジメントの徹底
業務の可視化で時間がかかる業務を把握するだけでなく、タイムマネジメントも営業生産性の向上に必要な方法です。時間は有限だからこそ、業務は効率的に進めたいもの。業務にかかる時間を計算してから、全業務のなかで成果につながりやすい業務を選別し、優先的に着手しましょう。
たとえば、業務内容と業務にかかった時間をセットで記録し、アポイントや訪問など営業活動にどの程度寄与していたか、翌週にチェックします。営業活動に貢献した業務は翌週以降も継続して実施しましょう。この一連の確認と選別の流れを毎週繰り返すことで生産性の高い業務のみが残るため、限られた時間内でも成果を出せるようになるでしょう。
営業プロセスの見直し
営業は、以下のような複数のプロセスで構成されています。こうした営業プロセスそのものの見直しも営業生産性の向上につながります。
- 顧客リストの獲得
- 顧客へのアプローチ
- 提案
- 担当者間での交渉
- 案件の見積り価格の提示
- クロージング
- アフターフォロー
このような営業プロセスの見直しやそこでの課題洗い出しが重要となります。たとえば打ち合わせ先への移動時間なども含めたプロセスを再度確認し、非効率な時間や業務を削減することで、成果を出すまでの時間も短縮できるかもしれません。
営業生産性の向上に成功した企業事例
ツール導入など施策を講じたことで、営業生産性の向上に成功した企業の事例を紹介します。他社の事例を参考に、自社の営業生産性も見直してみてはいかがでしょうか。
マーケティング業/A社
コンサルティングやデータ分析を手がけるA社では、常に多くのプロジェクトが同時並行で動くため、以前から情報管理の効率化が大きな課題でした。
A社は情報のストックが可能なツールを導入し、チームの情報をすべてツールに残すよう取り組みを進め、情報の一元管理に成功しました。必要な情報はツールで簡単にアクセスできるため、情報探索の時間を削減できたのです。またプロジェクトの進行管理に加え、朝礼の記録、取締役会やマネージャー会議の記録など社内の情報管理にも活用されています。
通信・インフラ業/B社
ITインフラの開発と提供を手がけるB社は、営業活動の改善や営業生産性の向上を目的に、さまざまな管理ツールを導入していました。しかし、見直しを重ねるごとにツールの数が増えた結果、情報の散在、情報確認の工数が増えるなどの課題を抱えていました。
B社は営業管理と顧客管理を一元化するため、SFA/CRMを導入したところ事務工数の削減に成功。余った時間を営業活動に充てたことで、残業時間の削減、有休取得率の向上など、営業生産性だけでなく従業員の満足度も向上しました。また、業務の可視化で浮き彫りになった問題も改善でき、法人営業部の年間売上予算の達成にもつながったとのことです。
さらに、他部署との情報共有により、複合提案をおこないやすく、機会損失の防止にも成功するなど副次的効果も得られています。
まとめ
市場のグローバル化、働き方改革など、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。限られた時間とリソースで最大限の成果を上げるには、営業生産性の向上が不可欠です。しかし、その一方で無駄な業務に時間を費やす、情報の散在など、営業生産性低下につながるケースも少なくありません。
営業生産性アップにつなげるためには、業務の可視化や自動化、情報や時間を管理するなどの工夫が必要です。必要に応じてツールも活用すると、業務の無駄がなくなり、営業生産性が向上します。ツールの活用で営業生産性が向上した事例も参考にし、自社の課題や状況に合った方法を導入しましょう。