【セミナーレポート】金融リテラシー向上で実現する社員のウェルビーイング~みずほフィナンシャルグループに学ぶ、プロ人材と推進するファイナンシャル・ウェルネスの実践~

人事

2025年04月28日(月)掲載

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企業経営において人的資本の重要性が高まる中、社員一人ひとりのウェルビーイング向上への関心も高まっています。特に、金融リテラシーの向上は、社員の経済的な安定と安心できる生活に直結する重要な要素である一方、具体的な施策の立案や実行に課題を抱えている企業がいるのも事実です。

そこで、HiProでは去る2025年2月に「HiProパートナーズフォーラム〜人的資本の力で業界をリードする〜」というセミナー開催し、その中で人的資本経営をテーマとしたパネルディスカッションを実施しました。 登壇いただいたのは、株式会社みずほフィナンシャルグループ 人事業務部 企画チーム ディレクター 宮元 健太郎氏と、プロ人材としてプロジェクトに携わった、カドル株式会社 澤田 清恵氏です。今回は、2社が協業して取り組んだ「ファイナンシャル・ウェルネス」についての取り組みや、プロ人材と協業する上でのポイントなどについて語ったイベントの模様をレポート形式にまとめお届けします。

プロ人材と協業して社内向けの金融教育を実施

(左からみずほフィナンシャルグループ宮元氏、カドル澤田氏)

――まずは、「ファイナンシャル・ウェルネス」の施策に取り組んだ背景や目的について伺えますか?

宮元健太郎氏(以下、宮元氏):当グループの傘下には、銀行、信託銀行、証券、リサーチ&テクノロジーズの4つの会社があり、私たち人事部門は、これらの会社に共通する人事制度の企画や運営を行っています。約2年前からは、社員に対する金融教育である「ファイナンシャル・ウェルネス」の推進にも取り組んできました。

この取り組みの背景には、「人的資本経営の重要性の高まり」があります。従来、ウェルビーイングはフィジカルやメンタル面で語られることが多かったと思いますが、近年では「ファイナンシャル・ウェルネス」も欠かせない要素だと言われています。金融機関とはいえ、ITや事務担当など金融の専門知識がない社員も多く、個々の資産形成に関する支援が求められている現状も踏まえると、社員が安心してはたらき、老後に向けた資産形成を進められる環境づくりが今後ますます重要になると考えていました。

また、当社では昨年頃から企業型DCやさまざまな制度の見直しを行っている一方で、過去から社員に対して退職金や企業型DCなど資産形成に関する情報提供がほとんど行われていませんでした。しかし、終身雇用が当たり前ではなくなり、企業年金の仕組みも変化している中では、社員自身が資産形成に真剣に向き合うことも重要になってきます。これは、安心して長くはたらくためだけでなく、キャリアチェンジを考える上でも大事な視点だと考えています。そこで、金融機関としてリーダーシップを持って取り組んでいくべき課題だと考えました。

一方で、人事制度の改定やシステムの更改など、多くの業務が並行して進行する中で、この施策を推進する余力が不足していました。そこで澤田さまをお迎えし、今回の取り組みを始めることになりました。

――今回の取り組み内容と実施する上で工夫されたポイントなどはありますか?

宮元氏:まず、最初の3ヶ月は現状把握と課題の洗い出しを行いました。改めて振り返ると、基盤づくりともなるこの期間が、非常に重要だったと感じています。そして「ともに学ぶ。ともに実る資産形成」をコンセプトに、プロジェクトメンバーで投資の基本的な考え方や、資産形成、制度改定に関する動画を23本内製し、社内eラーニングシステムで配信しました。また、「いかに全社員に届けるか」という視点から、全社員向けに研修内容をフォローするためのメールを配信することで、多くの社員から反応を得ることができ、課題に気づくこともできました。

取り組みのポイントとしては、「伝えるハードルを下げる、ともに考える」ことを大事にしました。澤田さまと話し合いながら、社内における資産形成に関する情報共有の課題を把握し、そのハードルを下げることを意識しました。人事からの情報発信ではバイアスがかかると考えていたため、社員同士で主体的に考えてもらえるよう、社員を巻き込みながら施策を進めることも意識しました。

社内の「当たり前」を壊し、思考の枠を広げる

――16ヶ月という長期プロジェクトの推進にあたって、澤田さまはどのような点に心掛けされて取り組まれていましたか?

澤田清恵氏(以下、澤田氏):当初から長期のプロジェクトだという前提があったので、最初の目標設定のすり合わせを丁寧に行いました。人事施策を行う上で、KPIやROIなど定量面を重視するケースが多い一方、社員の気持ちや組織の状態など定性的な目標は忘れがちです。今回はその点も含めて目標設定しました。

宮元氏:期限が明確に定まっていないプロジェクトだったため、自分たちだけでは進捗が停滞しがちでした。しかし澤田さまに参画いただいたことで、プロジェクトの推進力が格段に向上しました。また、社内では実現可能性を重視するあまり発想しづらい斬新なアイデアも提案していただき、思考の枠を広げることができました。最終的にそのアイデアを実行したか否かはそこまで重視すべきことではなく、従来の発想の枠を超えた新しい視点や選択肢に触れられたことが、今後の施策展開において貴重な財産になったと感じています。

澤田氏:私がサポートさせていただく意義としては、当たり前を壊したり、飛び道具を提案したりして、思考の枠を外すことだと思っていたので、宮元さまの回答をお聞きして期待された役割を果たすことができたと実感しています。

――取り組み当初は試行錯誤の期間もあったと思いますが、当時から現在に至るまで、ご感想などいかがでしょうか?

宮元氏:週に一度、対面でのミーティングなどを行いながら半年ほど伴走いただいた後、自走していく予定だったのですが、他業務との兼ね合いでこのプロジェクトに集中できなくなってしまいました。そこでさらに半年ほど契約を延長いただいて、引き続き澤田さまとプロジェクトに取り組むことになりました。そこから徐々にミーティングの頻度を減らしていきながら、自走できるようになってきました。

澤田氏:基本的にどの取り組みでも言えることですが、プロジェクトは段階的に発展していきます。最初は方向性を模索する期間があり、その後具体的な課題が明確になってきます。そこから改善のサイクルを確立し、そして社内での推進体制が整ったタイミングで見守る段階へと移行していくのが理想的だと考えています。

プロ人材との協業は、プロジェクト推進力やモチベーションの向上にも寄与

――プロ人材を活用される企業が増えていますが、改めてプロ人材を活用するメリットについてお聞かせください。

宮元氏:正直、社内にも今回のプロジェクトをマネジメントできる人材はいると思いますが、適任者を探す手間が省けますし、何より社内にプロ人材を迎えることで、プロジェクトメンバーの意識改革を促すことができました。「やらなければいけない」という意識が芽生え、プロジェクトへのコミットメントが高まったと思います。

また、オンラインでの取り組みだけでなく、対面でのコミュニケーションの重要性も認識しているため、今後は全国各地の支店に出向き、対面でのイベントなども検討しています。成果を得ることの難しさを実感する一方、楽しさも感じています。人事部だけでなく、さまざまな社員の声を聞きながら、より効果的な施策を展開していきたいですね。

――最後に、人的資本にまつわる取り組みの推進において、澤田さまご自身が大事にされている考え方についてお聞かせください。

澤田氏:私は人事の仕事に取り組んで30年が経ちますが、例えば「女性活躍推進」などの人事施策は、KPIや期日を明確に決めてもうまくいかないことがあると思います。そうした時には「沿いつつ、ずらす」ことが大事だと考えています。現場に寄り添い、関係性を構築した上で、次の一手を打つことが成功につながっていくのではないでしょうか。

まとめ

いかがだったでしょうか。本パネルディスカッションでは、企業として「ファイナンシャル・ウェルネス」を推進する意義や、プロ人材を活用することで得られる成果について闊達な意見交換がなされました。プロジェクトを成功に導くには、実行力のある推進体制を整え、社内外の視点を取り入れながら柔軟に進めることが重要と感じられた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

「HiPro Biz」には澤田氏のような、人事業務や組織管理に精通したプロ人材が多数登録しています。「自社と相性の良いプロ人材と出会いたい」「まずは壁打ちから始めたい」などのご要望をお持ちの企業ご担当者の方は、まずはお気軽にご相談頂ければと思います。

<登壇者プロフィール>

株式会社みずほフィナンシャルグループ 人事業務部 企画チーム ディレクター 宮元 健太郎氏

カドル株式会社 代表取締役 澤田 清恵氏

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