EaaSとは?エネルギー業界における最新トレンドと事例2022
2022年04月26日(火)掲載
「脱炭素」をはじめとした環境問題の解消に向け、今、世界各国がさまざまな取組を推進しています。その潮流を受け、とくに今、社会から関心を寄せられている領域が「EaaS」です。あらゆる環境技術において、さらなる開発・発展が望まれている中、EaaSは先端的な環境技術として、市場発展が大いに期待される領域です。
当コラムでは、改めて注目度とニーズの高まる「EaaS」の概要とともに、各国で取り組まれているEaaSの事例と詳細についてご紹介します。当コラムが、今後における事業発展の一助となれば幸いです。
EaaSとは
EaaS(Energy as a Service/サービスとしてのエネルギー)とは、従来のようにガスや電気などのエネルギーのみの提供にとどまらず、関連設備や制御技術などエネルギーを提供するために付随する製品やサービスを包括し、総合的にソリューションを提供することです。
EaaSが与える影響
EaaSサービスの形態によって異なりますが、大きく分けて2つのメリットを生み出します。
一つ目はエネルギー供給の安定化です。ICT技術やネットワークを駆使することで、必要な場所へ必要な形態のエネルギーを相互融通できます。結果、再生可能エネルギーなどで起こりやすい調整力不足の解消や、災害時に想定されるエネルギー不足の解消にもつながります。
二つ目はエネルギーコストの削減です。エネルギーを適切に供給する仕組みが整うため、余剰にかかっていたエネルギーコストの削減を図れるメリットがあります。また、エネルギー管理を運用する人材のアウトソーシングサービスなども存在し、活用によって人件費の見直しを図ることも可能です。
市場規模
サービスとしての世界のエネルギー(EaaS)市場は、今後数年間で大きな成長が期待されています。
EaaS市場分類は、大きく分けると「発電」「運用」「メンテナンス」「エネルギーマネジメント」に分かれます。
なお、市場成長に影響を与えている要因としては、「分散型エネルギー供給(DER)の増加」「再生可能エネルギーによる発電・蓄電ソリューションのコスト低下」「エネルギー効率化に対する税制優遇措置」「新たなエネルギー収益化形態の創出」などが挙げられます。
推進度
先進国のEaaS推進は、非常に進んでいます。製造業をはじめとする幅広い業界で、EaaS導入はエネルギー消費の運用コストを削減できることから高いニーズがあります。とくに北米では予測期間中の大幅な成長が見込まれており、需要の大部分は米国が占めています。
一方で、発展途上国におけるEaaSの推進度は初期段階です。とりわけエネルギー消費量の多い発展途上国では、大いに参入の余地があるといえます。
世界の事例で見るEaaS
EaaSの概要をご理解いただいたところで、以下からはEaaSソリューション提供に取り組む企業を、3社事例としてご紹介します。
エネルギー会社の事例
イタリアに本社を置くA社。同社の展開するサービス例が、法人向けのエネルギーコンサルティングサービスです。
同社のサービス形態によるメリットとして、たとえばエネルギー管理を行う人員の雇用コストや教育コストなどを削減したり、社内の専任従業員が担当する業務の負荷軽減が挙げられます。
また、市場トレンドとなっている脱炭素化を推進することによってエネルギーコスト削減を実現するだけでなく、継続可能・再利用可能なエネルギーへの切り替えや、照明の制御技術などをはじめとするデジタル技術の活用によってデジタル化も促進されます。
結果として総合的なコストカットはもちろんのこと、余剰エネルギーの収益化、顧客体験の向上、投資家含むステークホルダーからの評価向上などを図れるのです。
ガス会社の事例
日本国内でガス事業を営むB社も、EaaSに注力する企業の一例です。同社は、2030年を見据えた長期ビジョン策定において、事業構造がこれからどのように変化するかを最重要視して推進すると述べています。
また事業環境の変化要因として「規制緩和、自由化」「脱炭素」「分散化」「デジタル化」の4要素を挙げ、この要素をもとにEaaSサービスの創出に注力しています。
たとえば、同社サービスのひとつである「スマートエネルギーネットワーク」は、ガスコージェネレーションシステム(都市ガスを燃料として電気を生成することで、発生した熱を他エネルギーとして利用するシステム)や、ICTの活用によって提供されるソリューションサービスです。
当サービスでは、たとえば熱や電気を必要な場所へ供給したり、エネルギー需要の分析・管理を行えます。その結果、省エネ・省スペースの実現や、対象エリアの事業性・不動産価値向上、再生可能エネルギーの利活用などあらゆるメリットを享受できるのです。
また他にも、EaaSサービス提供意志の現れとして、同社は2019年、EaaSによる新事業を創出するための子会社を設立しました。事業創造機能を別会社化することにより、今までより迅速に意思決定・事業創造を進め、EaaSサービスの創出に取り組んでいます。
電気機器メーカーの事例
フランスに本社を置くC社は、EaaSサービスおよび技術で、市場のトップ企業に選出されたうちの一社です。
同社は電気機器のみに留まらず、サブスクリプションサービスやリース、電力購入契約(PPA)やエネルギー削減パフォーマンス契約などを複合したサービスとして提供しており、この提供形態がEaaSであるといえます。また同サービスは「不動産」「IT」サービス業」「病院」など、あらゆる業態に向けてソリューションを提供した実績を誇ります。
加えて同社は2021年、シンガポールの投資会社と提携し、新会社を設立しました。
同社によると、新たに設立した会社では、太陽光と蓄電池を組み合わせたハイブリッド・マイクログリッド(小規模電力網)技術を活用し、持続可能かつ回復力の高いエネルギーソリューションを提供すると述べています。
まとめ
ここまで、EaaSは単なるエネルギー提供に留まらず、関連設備や情報技術を包括して提供することで課題解決に導く「ソリューション手法」であることをご紹介しました。EaaS市場は、世界各国が環境問題を優先課題として捉えており、利害関係者や投資家からの要求が高まっていることからも、今後の成長見込みが大いに期待できる市場だといえます。
その一方で、実際の普及度で見ると、まだまだ発展途上です。特に、企業間での規模に応じてその差異は大きく開いていると言われています。またニーズに伴う参入余地から、エネルギーやユーティリティ、金融・融資業など幅広い業界が技術・サービス開発を急ぎ、業界へのリーディングカンパニー入りを狙っているともされているのです。
EaaSにおける現在の有力株は北米やヨーロッパが中心と言われています。しかし、一部ではアジア各国も今後数年間で収益計上が大きく見込まれているという見解もあります。その点では、日本企業も業界全体のリーディングカンパニーとなれる余地は大いにあるといえるでしょう。今後も引き続き、EaaSの市場動向に着目しておきたいところです。