ダイバーシティ推進~女性活躍推進を実現するために必要なコトは?

人事

2019年08月02日(金)掲載

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外部環境が急速に変化する中で、企業が今後成長し続けていくためにはダイバーシティ経営の推進は必須といわれています。本稿ではダイバーシティ推進経営の中の「女性活躍推進」にフォーカスして、その推進を実現するために必要なことについて、まとめてみました。

経営戦略の実現に頭を悩ませる経営層の方々にとっては、「女性活躍推進」については、後回しにしがちになることも多かったのではないでしょうか。しかし、2016年4月1日の「女性活躍推進法」施行によって、企業も待ったなしで本気で取り組まざるを得なくなりました。

対象となったのは、国や地方公共団体、従業員301人以上の企業で、女性の活躍に関する状況把握・課題分析し、その課題改善にむけて行動計画を策定して、外部へ公表、労働局へ行動計画の届け出が義務付けられました。

企業が届け出た情報は、厚生労働省が運営するWEBサイト「女性の活躍推進企業 データーベース」に公表されており、誰もが見ることができます。

女性活躍推進は、「外部人財の採用」より「内部人財の登用」

「行動計画」ができれば、あとは、実行するだけと考えますが、これがスムーズに進みづらいのが「女性活躍推進」の現状ではないでしょうか。

進め方の見当がつかないから外部から女性活躍推進を実行してくれる女性を採用するというケースもありますが、社内で難しいことを外部人財に頼ってうまくいくケースは多くありません。

女性活躍推進法の施行とともに、人事部内に女性を1名~2名専属で配属して、女性活躍推進を行っていく部をつくりましたという企業は数多くありましたが、推進する部署を用意しても上司は男性の場合が多く、実際にはどのように進めてよいのか悩んでいるというケースも多く見受けられました。

しかし、ここで男性上司が、登用した女性たちに課題改善の推進をある程度まかせることができ、男性上司が計画をうまく動かしていくことで、女性活躍推進はスムーズに進めていけるはずです。

「経営者のコミットメント」が、組織全体の意識改革を導きます。「女性活躍推進」といえば、女性の管理職を増やすためのアクションプランを考えがちですが、それより先にやらなければいけないことがあります。圧倒的に男性が多い企業においては、「女性活躍推進」に違和感を覚える男性が少なくありません。そこで企業が生き残っていくためには、今取り組まなければいけない必要な施策であることを認識してもらうことが必要です。

人口減少・少子高齢化が進み、ダイバーシティ推進経営(女性活躍推進含む)は、待ったなしの重要な取り組みであること。そして、企業としてその実現にむけて、本気で取り組んでいくことを、まずは経営トップから役員や役職者へ伝えることです。

女性活躍推進は、働く人たちの意識改革、そして、風土改革が問われる大きな施策です。経営トップのコミットメントを通して、役員たちにその本気度が伝わることで、そこで働く男性たちの意識改革が起こり組織全体への浸透が進みます。男性社会が当たり前の役員たちにとって、「女性活躍推進」は未知との遭遇です。女性活躍推進はどうしてよいかわからない面倒な施策であることは否めないのです。こういった中で、推進力をあげるには、経営トップが経営ボードの役員たちの意識改革に取り組むことが必要です。

「行動計画」は描けたら、具体的なアクションプランへの落とし込み、実際の取り組みを実現する前に、組織全体へ経営トップが本気で「女性活躍推進」を推進することを宣言することです。

そして、行動計画のそれぞれの取り組みがスタートしてからも、常にその状況を理解し、経営トップの言葉で必要に応じてフォローしていくことが大事です。常に言葉にしていくことで、組織全体に浸透され、意識が変わり、風土が変わってきます。そこには、女性活躍推進の行動計画を進めやすい土壌ができてくるはずです。

女性管理職の数を増やす前に、必要な3つのコト

女性活躍推進において、女性の管理職を増やすために数字を掲げて取り組む企業が多くありますが、女性の管理職の数字をコミットして増やす前に、取り組まないといけないことがあります。男性社会の管理職たちは、女性をマネジメントした経験が少なく、女性のマネジメントを苦手とする人も結構多くいます。一方で、女性たちの中には、男性の上司が自分のことを理解してくれないことに悩んでいる人も少なくありません。こういった双方の思いのギャップを埋めることが、女性の管理職を増やす前に必要なのです。

双方の思いをうまく理解し合うことで、協働する補完関係の良さを生み出すことができます。しかし、理解し合う前に、女性の管理職を増やす状態をつくろうとすると、男性の上司に女性管理職へのフォローの意識が生まれず、女性たちは男性社会がつくってきた風土とそのポジションの重みに耐えきれず、つぶれてしまうこともあるのです。

そのためには以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

ポイント① 女性たちの活躍を生むのは、男性上司の大切な一言!
男性は男性社会で当たり前だったことが、女性活躍推進を実現していく中では、当たり前でないことがあることを理解しないといけません。たとえば、男性は、仕事を任されて昇格すると「嬉しい」と感じる人が多いのですが、女性は「不安」と感じる人の方が多いのです。

男性社会の中の男性管理職の人たちは、その女性たちの不安や戸惑いも理解する必要があります。女性たちが一歩前に踏み出す勇気を持つために、背中を押してあげるということもとても大事なコトです。管理職の女性たちのインタビューから、社内でのキャリア転換のタイミングは、男性上司の一言「君ならできる! やってみたら! と言ってもらったから、今がある」という声も多く聞こえてきます。男性社会で育った女性たちに、自信を持たせてくれるのは、やはり男性上司の一言です。

ポイント② ロールモデルを増やすために
「あの人のようになりたい」といういわゆる「ロールモデルがいない」という言葉は、男性社会で女性管理職が少ない企業ではよく耳にする言葉です。そして、また、一方で昇格している数少ない女性たちのことを、あの人たちは「別格」で私とは違うと、いいがちです。

そんな状況をつくらないためには、女性の管理職を1人や2人という少ない人数で昇格させないことです。女性の昇格で起こりがちなのは、昇格できなかった男性からの心ない言葉に悩んだり、昇格して自身で感じる重圧によって押しつぶされてしまうコトです。

昇格が1人では、その悩みを抱えることになるため、できるだけ複数名で昇格させていくことで、悩みを共有したり、励まし合う環境をつくることも大事です。ロールモデルが、複数名組織の中で見えてくると、女性たちはその中に自身のキャリア像を重ねて考えられるようになります。

ポイント③ 「成功体験」が次へのチャレンジを生み出す
実は、管理職になりたくない、興味がない女性が80%以上もいるという調査結果もあるほどです。女性の管理職数を増やしていく過程の中で、女性たちにも意識改革を促すことが必要です。男性社会で育った女性たちの中には、「女性だから…」と言われたくない。「女性活躍推進」に違和感を覚えると反発して異を唱える女性もいます。頑張ってきたという思いがあるからこそですが、男性社会の中で、他の男性と同じように、その女性が評価されて仕事を任されてきたかというと、実際のところは、男性上司が「女性だから強く叱らなかった」「そこまで任せなかった」という言葉が聞こえてきたのも事実です。

それによって、女性たちの中には、「もっとできるのに」という人もいる一方で、任された経験が少ないために、「私には無理」「私にはできない」と考える傾向が強い女性もいますから、女性活躍推進を実現していくためには、女性たちの意識改革を経験や成長に応じて行っていくことも必要です。

女性は、「私には無理、できない」と男性よりはるかに多く感じています。その躊躇する感情は、成功体験を持つことと周りの一言のサポートによって「これができたら、できるかも。サポートしてくれるといっているのでやってみようかしら」という気持ちに代わってきます。つまり、女性たちにとって「成功体験」は、何よりも次のステージにチャレンジするきっかけとなるのです。

女性活躍推進の7つのステップ

意識改革、風土改革が進んだら、女性が活躍できる場をつくり与えていくことが大事です。女性たちは、チャレンジをして、経験を積み、結果を出すことで、自信を持ちます。上司がそれを意識してフォローすることで、マネジメントの向上にもつながります。

そして、男女がお互いの強みを活かし、弱みを補完し合いながら協働することで、より良い効果を生み出していきます。

女性活躍推進を実現するために、下記のステップで進めて見られてはいかがでしょうか?

1. 経営者が自らコミットし、宣言して推進をリードする
2. 経営のボードメンバー含めて、男性社員の意識改革を行う
3. 男女相互の理解を深める
4. 男性上司の一言フォローが女性のキャリア形成をつくることを意識する
5. 女性のロールモデル作りは複数で!
6. 女性に成功体験を経験させる環境をつくる
7. 女性たちにチャレンジする場をつくる




※記事は執筆者個人の見解であり、パーソルキャリア株式会社の公式見解を示すものではありません

執筆者H.T氏

航空会社・教育ビジネス会社・外資系化粧品会社などさまざまな業界で新規事業立ち上げを経験。ゼロからの事業開発・運営に携わり、組織作りと人財育成、組織マネジメントを専門とする。現在は株式会社ハユルコーポレーションを設立し、多数の企業の事業開発、組織力強化のコンサルティングを実施。

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