デジタルマーケティングが上手な企業とは?

マーケティング

2020年02月03日(月)掲載

「そろそろ、本腰を入れないといけないと思っている」、企業の責任者がこのような言葉を出すことが多い「デジタルマーケティング」の世界。

創世記は20年ほど前にさかのぼりますでしょうか。企業が自社のホームページを制作し、お問い合わせのフォームや企業情報、企業理念や、採用情報、製品紹介などを「とりあえず」用意し、各種ニーズへの受け口として展開をしてきました。

それから10余年が経ち、人々の生活はすっかり変化し、スマートフォンは一般化しました。皆様の購買行動においても、普段の生活では特段「意識すること」なく、オンラインでの情報収集や、買い物を行っていることでしょう。

そのような時代にあって、どのように「効果的なデジタルマーケティングを展開していくのか?」については、とくにデジタル領域への立ち遅れを感じている企業にとっては、喫緊の課題ともいえるでしょう。

上手くいっている企業は、どのようなデジタルマーケティングを展開しているのでしょうか?
実は、一言でその答えを紐解くと、「投資対効果」や「売上寄与」と言う言葉で表すことができます。

デジタルから投資対効果へ、どのように結びついて行くのでしょうか?

この話を掘り下げる前に、前提として、そもそもマーケティング論とはどのようなものなのかという話を少ししておきましょう。

「デジタルマーケティング」の前段にある「マーケティング」

さて、みなさまは、そもそも「マーケティング」とはどのようなものだとお考えですか?

知っているつもりでも「説明してください」と言われると、意外と言葉にはしづらい言葉です。そして、多くの企業経営者や担当者は、ひとしきり悩んだのちに「広告宣伝をすること」、「リサーチをおこなうこと」など、自分の周囲にある業務をイメージします。

しかし、それらの多くは手段の話であり、核心は突いていません。

こちらでは長い説明は割愛いたしますが「マーケティング」とは、一言で表現すると、「お客様にとっての価値の創造」です。

少し簡単な事例を出して説明してみましょう。

ここに2つのリンゴがあったとします。

見た目も、香りも、大きさも、あまりかわらない2つのリンゴがあります。あなたが、偶然スーパーでそれらを見かけたら、「どちらを買っても変わらないだろう」と思い、「適当に選ぶ」ことでしょう。

しかし、もし、そのリンゴのうちどちらか1つに「青森県産」や「金賞受賞」と言う札が付いていたらどうでしょうか?

あなたは、恐らくその札のついた方のリンゴを「美味しいに違いない」と考え、優先的に選ぶことでしょう。

例え、実はそれら2つが「青森と岩手の県境で育ち、道路一本を跨いでいるだけで、まったく同じ育成環境で作られたもの」であったとしても、あなたはその札のついた方のリンゴを「こちらの方が美味しいに決まっている」と思うでしょう。

もしかしたら、あなたは、「その(県境と言う)事実を知った後」であってもそのように思ってしまうかも知れません。

しかし、ここに実は恐ろしい事実があります。実は、あなたはこのリンゴを選ぶ行程において、最後までリンゴを「食べていません」。

それにも関わらず「美味しいに違いない」と思った(思っている)のです。

さて、どこで何が起こったと思いますか?

実は、あなたは、あなたに渡された「情報」により、あなたの「頭の中」で片方のリンゴの「価値」を感じ、「美味しいに違いない」と判断し、その結果、行動に移したのです。

このプロセスこそが、マーケティングの本質と言えます。

「良いものを作ったから売れるに決まっている」

と言う考え方は、どの企業のどの担当者もが考えていることである一方、お客様にはその商品の「良さ=価値」が伝わらなければ売ることは出来ません。

さながら、あなたが選んだ(そして選ばれなかった)これらのリンゴのようです。

つまり、マーケティングとは、お客様に価値を感じてもらうための一連のすべての行動を指し、それらをデジタル上で行うこと(または、リアルと連動させて数字をとらえていくこと)がデジタルマーケティングの本質と言えます。

デジタルで可視化されるマーケティング

さて、これらの購買行動を理解しはじめたとき、デジタルマーケティングの考え方は大きく成長するチャンスを持ち始めます。

なぜなら、我々マーケターはリアルな現場においては、その行動を「来店」や「購買」といった「顕在化している行動」から推測します。行動は言葉よりも雄弁であるということになるからです。

時には「リサーチ」と言う手段を講じることもあるでしょう。

しかし、これが、デジタルの世界だと少し様相が変わってきます。

たとえば、貴社のホームページで製品の情報をいくつも見ているユーザー様は、恐らく、なんとなく訪問しただけのユーザー様よりも「興味の度合い」は高いことでしょう。

同様に、料金やクーポン、キャンペーンについてまで調べを進めているお客様は、恐らく、前者よりも「より高い購買意欲」を持っているはずです。

これら個人の行動は、通常では個々人の行動を追跡(監視)しなければ、可視化出来ないのがマーケティングの常でした。

しかし、このデジタルの世界においては、それらの行動(ページの閲読)を追跡し、数字の積み上げから遷移率などを予測することが出来ています。更に進んでいる企業は、商談化率、成約率、再来訪率、継続率、LTV(ライフタイムバリュー)など、実に多岐にわたる指標を持ってこれらを管理し、自らの投資対効果を明らかにしています。

無論、これら施策はリアルと連動することも可能です。

例えば、クーポンの発見数についてです。使われた場所やPOSデータとの連動、セミナーへの参加申し込み、イベント参加者へ送ったメールのレスポンスなど、挙げればきりがありません。

つまり、デジタルマーケティングの上手くいっている企業とは、

単純に組織が整っていたり、膨大な広告予算を投じていたり、様々なシステムを導入している企業ではなく、

それら密接に絡み合う「数字」の因果関係を証明し、「売上」への寄与を正しく説明する仕組みが整っている企業なのです。

たとえば、「資料請求が何件取れました!」と現場からの報告を企業経営目線から見たときに「それで、弊社はいくらそれで儲かったのだね?」という類の「ズレ」を、一切生むことなく、その先の視点まで目線を落とす「仕組み」が整っている企業のことです。

結論、そのような企業では、経営層がそもそものデジタル関連予算を「コスト」と捉えず「投資」と考えることができています。

そして、現場はこれら予算を適切に配分し、投資対効果の改善を続けていきます。

そのような「仕組み(勝ちパターン)」を新しい技術を取り入れながら育て続けていきます。

デジタルマーケティングに「遅すぎる」は存在しない

さて、読者の皆様の中には、私が今回、かなり進んだ企業の話もしているため「到底、弊社ではそんな組織は作れない」と思うかもしれません。

もしかしたら、デジタルマーケティングは「専門家じゃないとできない。まずは雇う所からだ」と思ったかもしれません。

しかし、少し待ってください。

あなたが普段スマートフォンを普通に使っているように、あなたの会社の社員、その営業員は、実はデジタルに既に「慣れて」います。

つまり、素地はあるのです。

あとは、シンプルにHOWを考えればよいのです。つまり、「マーケティングのメソッド」を育めばいいということです。

たとえば、「マーケをやろう!」となった時に起こる

なにから、考え、手を付けるべきなのか?
なにを、目標にすべきなのか?
自社の商品の強みはどのようにして見つけるのか?
予算はどのようにして確保したらいいのか?

そのような基本的なことは、経験している人に学べば良いのです。

一般的に、デジタル関連と言うと、どうしても「デジタルスキルを優先した採用」と考えがちですが、皆様の会社の社員には、元気な若い人材がすでにいて、彼らは、当たり前の様にSNSやデジタルでのコミュニケーションを行っています。

そして、「マーケティングを理解すること」と、「貴社のプロダクトに精通すること(売ろう!という愛を持つこと)」のどちらを採用した人間に育みやすいのかと言うと、実は前者です。それらは、シンプルに感情ではなく、理屈でしかないからです。

デジタルマーケティングの面白さは「自社の身の丈に合ったレベルから始められる」という所にもあります。

20年前のホームページを先達たちが「来訪から」「理解促進」はたまた「獲得」へ昇華させてきたように、自社の予算に合わせた組織と体制を構築し、まず一歩を「踏み出すところから」始めてみてはいかがでしょうか。

それが、「デジタルマーケティング成功」への第一歩と言えるからです。

執筆者デ・スーザリッキー氏(株式会社Marketer's Brain代表)

マーケティング担当者として豊富な実務経験を持ち、各社の業績向上に寄与。その活躍により、多数のイベント登壇、商業出版などを果たす。
その後、マーケティング専属プロ人材として独立。業種・国内外を問わず、マーケティング課題解決のプロとして活躍中。

関連コラム

ページTOPへ戻る