成功例から学ぶ、ブランド戦略の立て方とは?

経営全般・事業承継

2022年05月30日(月)掲載

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企業などが自社製品やサービス、企業そのものの価値やイメージを高めようとする活動として、ブランディングがあります。

ブランディング施策を通し、自社ブランドに対するユーザーの共感性を最大限に高め、自社独自の付加価値を創り、競合他社との差別化を実現するためには「ブランド戦略」が必要不可欠です。

ブランド戦略の定義や効果、戦略の立て方などにつき、企業の成功例を交えて解説します。

ブランド戦略とは?

ブランド戦略とは、「ブランドの認知を広げ、価値を高めるための戦略」を指します。ユーザーに自社製品やサービスに対して共通したイメージを持ってもらうことを目的に、ブランド戦略は立てられます。

誤ったブランド戦略を遂行した場合、ブランドが浸透せず、想定とは異なるブランドが確立されてしまう恐れがあります。

ブランド戦略の正しい、かつ効果的な構築に向け、まずはブランディングとマーケティングの違いについて、理解しましょう。

ブランド戦略とブランディングの違い

ブランド戦略と混同されやすい言葉にブランディングがあります。

ブランディングは、ブランド名称の決定やユーザーインサイトを喚起する製品デザインなど、プランド戦略を実現するための具体的な施策を指します。

ブランディングは、共通のイメージを持ってもらうまでの過程に過ぎないことから、ブランディング戦略との違いがあるといえます。

ブランド戦略とマーケティングの違い

ブランド戦略は、マーケティング部門が担う業務だと誤解されるケースがありますが、両者は別物です。

ブランディングはマーケティング活動を規定するものであり、マーケティングよりも上位に位置付けられます。

明確なブランド戦略なしに、マーケティング施策を構築することはできません。

ブランド戦略は、経営戦略とマーケティングの中間に位置する活動であると捉えるとイメージがしやすいでしょう。

ブランド戦略の効果

ブランド戦略がもたらす効果につき、メリットとデメリットの両面から解説します。

メリット

・ブランド知名度の向上

ブランド戦略の遂行は、自社の製品やサービスに対する知名度の向上に寄与します。

一例として、SNSを活用した自社製品やサービスに関する投稿は、知名度アップを目指した企業のブランド戦略の一つです。

一般的にブランド知名度の向上は、売り上げアップ効果が期待できるといわれており、その要因にはザイアンスの法則と呼ばれる「単純接触効果」があります。

単純接触効果とは、人や物に何度も接触することで警戒心が薄れ、徐々に好意を抱く効果を指し、製品やサービスにも同じことがいえます。

ブランド戦略を通し、自社の製品・サービスに数多く接触させることで、ブランド知名度が向上し、結果として売り上げ向上も期待できるのです。

・リピート率の向上

ブランド戦略の成功により、自社の商品・サービスがユーザーにとって思い入れの強いブランドに育った場合、競合他社との比較がされにくくなり、リピート率向上を期待できます。

また、ユーザーのファン化によるリピート率向上により、企業は競合他社との価格競争に巻き込まれるリスクを回避できるため、収益性の高いビジネスモデルの構築も実現可能です。

・ビジネスチャンスの増加

ブランド戦略の一つに、確立された既存ブランドを他製品や別の分野に拡張させるブランド拡張があります。

ブランド拡張の一例として、「テーマパークや映画事業でブランド認知に成功した企業が、ブランド力を活かし、ホテル分野に進出する」などがあります。ブランド拡張の成功を通して、ビジネスチャンスの増加を期待できる点も、ブランド戦略がもたらすメリットだといえるでしょう。

・広告宣伝費の削減

ブランド戦略の成功は、広告宣伝費の削減にも寄与します。

なぜなら、ブランド戦略によりブランドが市場に認知された場合、企業は多額の広告宣伝費を投下することなく、ブランド愛好者からの長期的な製品・サービス購入を期待できるためです。

・優秀人材の獲得

ブランド戦略は、優秀人材の獲得にもより良い効果を発揮します。ブランドを愛するユーザーのファン化が進行するほど、そのブランドに対する愛着や帰属心が増していき、そのブランド企業で働きたいと願う人材の増加へとつながります。

また、ブランドに共感する優秀人材の増加により、自然と魅力的な組織文化が形成・強化されていくことで、ブランド認知が加速し更なる優秀人材の獲得につながるという、好循環を創出できます。

・資金調達力の向上

新規事業の立ち上げや事業運営などで銀行から融資を受ける際、一般的に企業のブランド価値が高い企業ほど、信用度が高く資金を提供しやすい企業として扱われる傾向にあります。

そのためブランド戦略の成功は、安定経営につながる資金調達力の向上も期待できます。

デメリット

ブランド戦略には多くのメリットが期待できる一方、デメリットとなる要素もあります。双方の特性を理解することが、ブランド戦略の成功へとつながります。

・ブランドイメージは変更しにくい

仮にブランド戦略が失敗し、市場で悪いブランドイメージが定着してしまった場合、一朝一夕で企業イメージを回復・刷新することは難しく、リブランディングに向けた広告費が増大する恐れがあります。

また、リブランディングの頻度が多い場合、ユーザーのブランドに対する信用度や愛着度が低下する恐れもあります。

一度付いたブランドイメージは変更しにくいことをあらかじめ念頭に置き、ブランド戦略を構築・推進しましょう。

・意図せずブランドイメージが失墜する恐れも

ブランドイメージは、良いイメージよりも悪いイメージの方が広まりやすい傾向にあります。

ブランド力向上を目指した企業ブログやSNSなどでの投稿が、瞬く間にインターネット上で炎上し、企業ブランドの信用を損ねるケースが数多く見受けられることからも、それは明らかです。

予期せぬ炎上リスクに備え、事前に対策を講じることは、ブランド戦略の実現に欠かせません。

ブランド戦略の立て方

ブランド戦略の立て方につき、5つのステップに沿って解説します。

ブランドの強みを理解する

ブランド戦略を立てる際のファーストステップは、自社ブランドの強みを理解することです。

ただ、強みや魅力の自社で分析する場合、客観性に欠け実態から乖離する恐れがあります。

そこで有効的な施策が、TwitterやInstagramなどをはじめとする、ソーシャルメディアの分析です。

自社製品・サービスに関するユーザーの生の声を収集・分析することで、自社ブランドがどのように市場で認知されているのかが明確になり、それまで認識していなかった自社の強みや魅力を発見する契機にもなります。

ターゲットユーザーを決める

セカンドステップは、ターゲットユーザーを明確化し、決定することです。

その際、各種マーケティング分析による、自社を取り巻く周辺環境の分析は欠かせません。

代表的なマーケティング分析手法として、3C分析やPEST分析、5フォース分析、SWOT分析などがあります。

これらマーケティング分析手法の活用を通し、抜け漏れなく自社の周辺環境や強みが整理されることで、ターゲットユーザーが明確になり、ブランド戦略の成功確度を高めることが可能になります。

ターゲットユーザーの明確化は、ブランド戦略の実現化において最も重要なステップであるといわれています。

ユーザーニーズをはじめ、自社製品・サービスの優位性や競合他社のデータなどを収集・分析の上、設定したターゲットユーザーに誤りがないか、時間をかけ慎重に判断するのが得策でしょう。

ブランドアイデンティティを考える

ターゲットユーザー決定後は、ブランドアイデンティティを策定します。

ブランドアイデンティティとは、ユーザーにブランドの特徴や個性を明確に示し、理解してもらえるよう働きかけることであり、ブランド戦略策定時の長期ビジョンの核になるものです。

多くのユーザーが自社ブランドを共通したイメージで想起できるよう、ブランドアイデンティティを策定する際は、自社ブランド独自の強みや個性を活かしたものにする必要があります。

なぜなら、ブランドアイデンティティが曖昧で他社との差別化が図れていない場合、ターゲットユーザーに対しブランドの魅力やメッセージが意図した通り届かず、ブランド戦略の停滞につながる恐れがあるためです。

ブランドポジショニングを可視化する

ブランドアイデンティティ策定後は、ブランドポジショニングを可視化します。

ブランドポジショニングとは、ユーザーの意識下やマーケットにおける、自社ブランドのポジション(立ち位置)を可視化することです。

「〇〇といえば〇〇(企業名)」といったブランドイメージがユーザーやマーケットで定着していた場合、そのブランドはブランドポジショニングに成功しているといえます。

ブランドポジショニングを可視化し、想定通りのイメージを獲得できていない場合、既存の自社ブランドのポジション(立ち位置)自体を変更することも効果的です。

一例として、〇〇といえば〇〇の要素(ターゲットの年齢層や性別、製品・サービスが用いられる想定場面など)、すなわちポジションを変更することで、製品・サービスのリニューアルなく売上増加がもたらされるケースがあります。

ブランドを宣伝する

最後のステップは、ブランド宣伝時おける最適な媒体の選定です。

市場には、自社ブランドを訴求する媒体が数多く存在するため、自社ブランドの魅力や強みを最も効果的に訴求できる媒体の選定は欠かせません。

一例として、学生向けの製品・サービスであれば、若者の利用率が高いSNS上で自社ブランドを宣伝することがより良い効果を期待できるでしょう。

ブランド戦略の成功例

ここではブランド戦略に成功した企業事例を3つご紹介します。

リゾート業を手掛けるA社の成功例

リゾートホテルを手掛けるA社は、複数のブランドを国内外で展開しており、競合ホテルとの差別化を通した、自社ブランドの確立に成功しています。

A社ブランドの一つに、ホテルで提供するサービスの幅に対して、幅広い価格帯の施設をユーザーが選べる特徴的なブランドがあります。

従来型の高級度に連動した価格設定型ホテルにはない斬新なサービスは、ブランドアイデンティティの策定へとつながり、A社ブランドの早期確立をもたらしました。

大手雑貨・アパレルメーカーB社の成功例

B社は企業理念(哲学)に基づいた、統一感のあるブランドを実現させている点が特徴です。

商品(モノ)と商品が存在する店舗環境、そして情報(ブランドメッセージ)の3つが同じ企業理念(哲学)からデザインされることで、「B社らしい商品」が世にリリースされ、多くのユーザーの心を捉えています。

B社の事例は、ブランド戦略の成功により事業成長を牽引している好例といえるでしょう。

大手飲料チェーンC社の成功例

C社はターゲットユーザーを明確化し、そのターゲットユーザーに向けたサービスを提供したことで、国内外で店舗拡大を実現している大手飲料チェーンとして有名です。

商品価格ではなく、ターゲットユーザーが快適に過ごせる場所の提供に価値を置いたサービスを推進している点が、C社のブランド戦略の特徴といえます。

「居心地良く、ゆったりとした時間を過ごせる場所を提供している飲料チェーン」という確固たるブランドポジショニングを確立したことで、C社は国内外で多くのファン獲得を実現しています。

ブランド戦略のまとめ

前述の通り、多くの人々に愛される自社ブランドを確立させるためには、自社ブランドの強みを理解し、ターゲットユーザー含むブランドアイデンティティを策定し、ブランドポジショニングを可視化の上、自社にとって最適なブランド宣伝媒体を選定する必要があります。

ブランド戦略の成功は、ブランドアイデンティティの早期確立をもたらし、自社製品・サービスを唯一無二のブランドへと成長させることにつながります。

その結果、リピート率の向上やビジネスチャンスの増加、広告宣伝費の削減など、多くの効果を期待でき、安定した売り上げの増加や新規顧客の獲得も期待できます。

ただし、ブランド戦略の効果を最大化させるためには、ブランド戦略に関する専門知識と推進経験を持ち合わせたプロフェッショナル人材の活用が欠かせません。

唯一無二の自社ブランドの創造に向け、ブランド戦略に詳しいプロフェッショナル人材の活用をぜひご検討ください。

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