バックオフィスDXが求められる背景と施策、推進のポイントを解説
2023年05月08日(月)掲載
昨今、さまざまな業界・分野でDX が求められていますが、バックオフィス部門も例外ではありません。しかし、なかにはバックオフィスDXが具体的にどのようなものなのか、わからない方もいるかもしれません。
本記事では、バックオフィスDXの概要、求められる背景、取り組むメリット、推進に向けた施策例、欠かせない重要ポイントを紹介します。
■企業の“守り”を強化するバックオフィスDXとは
■バックオフィスDXが求められる背景
■バックオフィスDXのメリット
■ バックオフィスDX推進に向けた施策例
■バックオフィスDXに欠かせない重要ポイント
■まとめ
企業の“守り”を強化するバックオフィスDXとは
バックオフィスとは、経理・財務・人事・総務・法務など、顧客と直接的にかかわらない部門のことです。直接的な利益を生み出すわけではありませんが、会社全体を支え経営を管理する重要な部門といえます。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」を略した言葉ですが、DX=デジタル化というわけではありません。デジタル技術の活用により、従来の業務や組織を変革させることで企業の競争力を高めることを指します。
つまり、バックオフィスDXとは、デジタル技術によって総務・人事などのバックオフィス業務を変革し、企業の競争力を強化することといえるでしょう。
バックオフィスDXが求められる背景
バックオフィスDXが求められる背景には、おもに以下の2つがあります。
- 働き方改革への対応
- 少子高齢化にともなう労働人口の減少
順に解説していきます。
働き方改革への対応
近年は、社員のプライベートも重視し、働きやすい環境を作ろうという働き方改革が推進されています。経済産業省は以下のように発表しました。
それぞれの働き手が自らの望むように働き、その能力を発揮できるようにするために、また自律的なキャリア形成を行えるようにするためには、多様で柔軟な働き方が、選択肢として確立されることが重要です。
「兼業・副業」、「テレワーク」、「雇用関係によらない働き方(フリーランス等)」を含めた多様で柔軟な働き方を、働き手一人ひとりが自由に選択できる社会へ向けて、今後も施策を検討してまいります。
事実、フレックスタイム制やリモートワークを導入する企業も増えています。一方、バックオフィスの業務は紙ベースの業務が多かったり、書類に押印が必要であったりと、一定の出社が求められる傾向にあります。
こうした状況を改善し、多様で柔軟な働き方を選択できるようになるためにも、バックオフィスのDX化は求められているのです。
少子高齢化にともなう労働人口の減少
日本の少子高齢化問題は深刻化しており、国勢調査では以下のことが明らかになっています。
- 総人口は、2008年がピークで、2011年以降は減少し続けている。
- 15~64歳人口は、1995年をピークに減少し、2018年はピーク時より1,181万人少ない。
- 総人口に占める割合は、比較可能な1950年以降の間で最低となる
※参考:「統計トピックスNo.119 統計が語る平成のあゆみ1.人口 人口減少社会、少子高齢化/総務省
少子高齢化に伴い労働人口の現象も予想されているため、今後業務効率化の実現が急務です。それはバックオフィスも例外ではありません。DXに取り組み、業務を効率化させることが求められています。
バックオフィスDXのメリット
ここでは、バックオフィスDXのメリットを企業・従業員それぞれの観点から紹介します。
バックオフィスDXの企業におけるメリット
バックオフィスDXに取り組むことで企業が得られるメリットは、おもに以下の3点があります。
- 働き方改革を推進できる
- 優秀な人材を確保できる
- コストを削減できる
それぞれ順に解説していきます。
働き方改革が推進できる
バックオフィス業務のDX化が進めば、テレワークなどを取り入れられ、働き方改革にもつながっていきます。
またDX化が進み、バックオフィス業務の効率化を進むと、フロントオフィス業務へも良い影響が生じます。たとえば、資料がデータ化されれば出社せずに資料の受け渡しが可能になったり、電子契約が導入されれば契約業務がよりスムーズに進んだりと営業担当の負担が軽減されるでしょう。
バックオフィス業務のDX化はバックオフィスに留まらず、他部門の業務効率化にもつながっていくため、会社全体の働き方改革推進も期待できるかもしれません。
優秀な人材を確保できる
多様な働き方が可能になれば、優秀な人材の確保がしやすくなるはずです。
バックオフィスのDX化が進み、テレワークやフレックスタイム制を導入できるようになると、求職者に「柔軟な働き方ができる会社だ」と認識され、人気が高まることも予測できます。柔軟な働き方を実現できていることは、既存の従業員の満足度の向上や離職率の低減も期待できるでしょう。
コストを削減できる
バックオフィスのDX化が進み業務を効率化できれば、携わる人員を抑えられ、人件費の削減が見込めるでしょう。
また、効率化によって人的リソースを確保できれば、それらの有効活用が可能です。従業員の業務の幅が広がったり、新たな利益や価値を生み出す可能性につながったりするかもしれません。
バックオフィスDXの従業員におけるメリット
企業だけではなく、従業員にとっても多くのメリットがあります。バックオフィスDXに取り組むことで従業員が得られるメリットは、おもに以下の2点です。
- 働き方改革を推進できる
- 業務の精度が向上する
それぞれ解説していきます。
働き方改革を推進できる
バックオフィスDXに取り組むことで、働き方改革につながります。働き方改革の推進は、企業だけではなく従業員にとってもメリットです。働き方改革のなかで従業員が特に関心が高いのは、勤務時間および残業時間の短縮ではないでしょうか。
厚生労働省は、働く人の労働時間法制の見直しに関して、以下のように発表しています。
「働き過ぎ」を防ぎながら、「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現します
※出典:働き方改革(厚生労働省)
政府も労働時間改善のために、法令で残業時間の上限規制や有給休暇取得を義務付けるなど規制を設けています。
しかし、業務が効率化されないままで労働時間を減らすことは難しいでしょう。バックオフィスDXに取り組むことで業務の効率化が進めば、労働時間の削減にもなり、働き方改革に貢献できます。
業務の精度が向上する
デジタル技術を活用し業務を自動化することで、ヒューマンエラーの減少・業務の精度向上が期待できます。バックオフィスの業務は、細かな作業が多く正確性が求められます。特に、経理が担当する支払い、従業員の給与や保険の管理などはミスが許されません。請求金額の打ち間違いや取引先への支払い遅延などが起こると、企業の信用にもかかわってきます。
しかし、ミスをしないよう意識しても、ヒューマンエラーを完全になくすことは難しいのが現実です。そのため、バックオフィスDXを推進し業務の自動化を進められれば、業務の精度が向上し、リスクも下げられるでしょう。
バックオフィスDX推進に向けた施策例
ここでは、バックオフィスDX推進に向けた施策例を紹介します。代表的な施策例を参考にし、業務効率化や生産性の向上を図りましょう。施策事例は、以下の3つです。
- ペーパーレス化の推進
- クラウドサービスの利用
- RPAの活用
ペーパーレス化の推進
契約書やプレゼン資料など、これまで紙で対応していた業務は多く、ペーパーレス化が進んでいない企業もまだまだ多くあるでしょう。紙の書類や資料を電子化し一元管理することで、印刷の手間や書類管理が簡易化できます。
クラウドサービスの利用
クラウドサービスとは、インターネットを介してデータを共有するサービスです。一度共有したデータはクラウド上に保存され、インターネットにつながっていれば、場所や時間を問わず利用できるメリットがあります。
その他のクラウドサービスのメリットとしては、以下が挙げられます。
- 情報共有が容易になる
- オフィス以外でも、データの閲覧や操作が可能になる
クラウドに保存した書類は、アクセスが許可された全員の閲覧や編集が可能です。また、サインや押印をなくすことも可能なので、リモートワーク推進になります。場所や時間、通勤を必要としないことで業務効率化につながるでしょう。
RPAの活用
バックオフィスDXの施策例として、RPAの活用も有効です。RPAとは“Robotic Process Automation”の略で、パソコンでおこなう業務をロボットで自動化する仕組みのことです。
RPAは、データ登録や他システムとの連携などの業務を得意としています。そのため、定型業務が多いバックオフィスとの親和性が高く、RPAに任せられる業務は多くあります。
たとえば、請求書の発行、勤怠管理、顧客情報のシステム登録などが可能です。定型業務をRPAに任せることで、ヒューマンエラーの防止や、従業員の労働時間を削減できるでしょう。
バックオフィスDXに欠かせない重要ポイント
最後に、バックオフィスDXを推進するうえで欠かせない重要なポイントを解説します。気を付けるポイントは、以下の3つです。
- 業務の問題点を明らかにする
- システム導入にかかる費用を計算する
- 扱いやすいシステムを導入する
業務の問題点を明らかにする
バックオフィスDXに取り組む前に、既存業務の問題点を明らかにしましょう。現在の業務フローや作業内容、所要時間を可視化することで、現場だけでなく経営者も課題を認識できます。特に、課題となる業務からバックオフィスDXを進めることで、業務効率化が進み、その他のDXも取り組みやすくなります。
また、バックオフィスDXに取り組む際は、DXに精通した企業や専門家に依頼するのも有効的です。依頼内容をディスカッションする際、日常業務の詳細や工数を洗い出しておくことで、スムーズに依頼を進められます。
たとえば、勤怠管理業務にRPAを導入するかどうかは、現状の対応時間がどれほどかかっているのかを把握する必要があるでしょう。
このように、既存業務の現状分析をおこない、現場の課題を洗い出すことで、具体的にどの業務のDXを進めるべきか判断できるでしょう。
システム導入にかかる費用を計算する
バックオフィスDXを進める際は、必要なシステムの導入費用を計算しましょう。企業経営のコスト削減は可能ですが、システムなどの導入時は初期費用がかかります。導入費用に対して見込める効果を算出し、システムを導入するかの判断も必要です。
ただし、古いシステムでの運用は、データ活用やセキュリティ、メンテナンス面などで懸念があります。費用対効果を考慮して総合的に判断したうえで、システムを導入することをおすすめします。
扱いやすいDXシステムを導入する
日常業務を効率化するには、システムやツールの扱いやすさが重要です。バックオフィスDXを進める際は、操作性の良し悪しを検討したうえで導入してください。システムの操作性が悪いと、以前よりも工数が増加してしまう可能性もあります。
また、操作が容易なシステムは引き継ぎもスムーズになり、より素早くバックオフィス業務を効率化できるでしょう。その他、トラブルが起きた際にサポートが手厚いかどうかも重要なポイントです。
まとめ
本記事では、バックオフィスDXの概要、求められる背景、取り組むメリット、施策例、バックオフィスDXに欠かせない重要なポイントなどを説明しました。
少子高齢化による労働人口減少や、働き方改革へ対応するためにもバックオフィスDXの推進が求められています。バックオフィスDXを進めることで、企業はコスト削減・優秀な人材確保などのメリットが、従業員は労働時間の短縮・作業の効率化などのメリットを得られます。
バックオフィスDXを進めるうえで重要なことは、従業員にDXを受け入れてもらったうえで、適切に実行することです。実際に業務を行っている従業員の意見をヒアリングしながら、事例をもとに取り掛かりやすいDX施策から始めてみてはいかがでしょうか。
バックオフィスのDXにお困りの際は、コンサルティングサービスや専門家に依頼し、段階的に導入を進めていくことをおすすめします。