営業におけるAIの活用とは。AIを搭載した営業支援システムの効果について。
2021年06月11日(金)掲載
昨今、多くの業種や職種でAIの活用が進み、金融・小売・医療などのほか、農業や漁業といった第一次産業にまで浸透しています。そしてその広がりは営業職においても例外ではありません。営業におけるAIの活用とは一体どのようなものなのでしょうか。活用によって、どのような効果が生まれるのかをご紹介します。
営業職はAIによってなくなるのか
「AIの活用が広がると、AIに人の仕事が奪われる」と聞いたことがある方も多いかもしれません。そう言われるのはAIの実装により自動化できる業務が増え、働き方にも大きな変化をもたらすためですが、では営業職もAIによってなくなる仕事の一つなのでしょうか。
結論から言えば、営業職はAIの活用が広がっても、完全にはなくならないと考えられています。理由は「顧客の感情への対応」が比較的多い仕事だからです。感情への対応とは、たとえば会話から気持ちを読み取ってアプローチの仕方を変えたり、熱心に通いつめ感情的信頼を構築したりといったものが挙げられます。
また顧客が人間であることも理由の一つ。仮に将来、AIが人間の感情的な要素を全て理解し実装できたとしても、顧客が人間とのコミュニケーションを求める限りは、営業職はなくならないと想定されます。
AIを活用した営業支援とは
営業職とAIの相性はとても良く、AIを活用した営業支援によって生産性向上の効果が得られると言われています。AIを仕事を奪うものとして見るのではなく、上手く活用していくことが大切です。
営業におけるAI活用において、注目されているのがSFA(Sales Force Automation)です。SFAは「営業の自動化」を意味し、営業の業務プロセスを自動化したり、より効率よく実行したりするための営業支援システムです。SFA自体は2000年代以降には既に存在していましたが、昨今AIを搭載した精度の高いシステムが登場しています。
営業支援システム(SFA)で何ができるのか
まずは基本的な機能をご紹介します。
・顧客管理
顧客の社名や所在地といった基本情報のほか、接触履歴や名刺情報の管理ができます。担当者本人でなくても顧客情報が一目で分かるようになるため、引き継ぎの際などに便利です。
・案件管理
提案商品、進捗状況、受注見込率、受注見込額といった案件の詳細情報が管理できます。上長が案件ごとの状況を把握しやすくなるため、各営業への指示も的確になります。
・商談管理
これまでの商談履歴、商談相手、提案書、進捗状況といった商談の詳細情報を管理できます。商談の中身がわかるため、チーム内でのナレッジの共有や、クロージングのための的確なアドバイスがしやすくなります。
・行動管理
テレアポのコール数、アポイント数、訪問数、受注率といった項目があり、営業一人ひとりの行動プロセスが管理できます。成績の良い営業と成果が出ていない営業の行動を比較し、どこに差があるかを確認できます。
・売上予測・予実管理
営業毎、部署毎だけではなく、顧客別や商品別などさまざまな角度からの売上予測、予実管理ができる機能も備わっています。
SFAはCRM(Customer Relationship Management)と混同されがちです。CRMは「顧客管理システム」と呼ばれ、顧客に関係する情報を一元管理し顧客満足度向上を目的としています。顧客情報の見える化がCRMで、営業活動の見える化がSFAです。
AIが搭載されると何が変わる?
営業支援システム(SFA)の基本機能をお伝えしましたが、ではAIを搭載した営業支援システムは従来型とどう違うのでしょうか。
従来型は顧客情報や案件情報をデータベース化するといった「管理」を担っていました。
一方、AI搭載型は従来の「管理」に加え、AIから「提案」を受け取ることも可能になります。
AIの本質は「自動的に学習する」機能にあります。成約済みの顧客データを分析・学習し、数百万社以上のデータベースから新しい見込み客を自動でリスト化するなど、より実用性が高いのが特徴です。
コロナ禍のような変化の大きい時代は先々の予測が非常に難しくなり、これまでのように直感や経験に頼るのはリスクがあります。そのためデータドリブンな意思決定を加速させてくれるAIの活用は非常に効果的といえるでしょう。
AIを搭載した営業支援システムのメリット・デメリット
AIを搭載したからと言って必ずしも全てが好転するわけではありません。メリット、デメリット、いずれも存在しています。
メリット
・データに基づいた効果的な営業ができる
先述の通りAIが搭載されると「提案」まで可能になります。過去のデータ・顧客リストをもとに「次なる見込み顧客」をリスト化したり、営業の行動を学習・分析することで「どんな行動をすれば実績が出るか」をアドバイスしてくれたりも。効果的な営業の進め方が導き出されることで営業同士の差がどんどん縮まり、チーム全体を底上げしてくれます。
・顧客とのやり取りに注力できる
営業の仕事は意外と事務処理が多いと言われています。AI活用が高度な段階に入ると、見積書の作成といった事務作業やパターン化しやすいものはAIに任せられるようになります。AIが代替することで手間が省けるぶん、顧客とのやりとりといった営業の要に注力できます。
・労働力不足が解消できる
慢性的な労働力不足に悩まされている企業・現場も少なくないでしょう。上記の通り、AI活用が進むと効果的な営業活動ができたり、事務処理をやらずにすむようになります。そのため少人数でも効果的なパフォーマンスが発揮しやすくなり、労働力不足解消の一助となります。
デメリット
・トラブル発生時の対処が複雑
AIにはディープラーニングという機械学習の機能があり、膨大なデータによる学習を通じ自律的に答えを導き出します。しかしその答えまでのプロセスが分かりにくいことは課題の一つ。「ブラックボックス」とも呼ばれており、トラブルが発生した際に原因の特定が困難です。また、法的整備が追い付いていないため、重大な問題が起きた際にユーザー側とAI開発側のいずれが法的責任を負うべきか、定まりにくいことも予想されます。
・費用やコストがかかる
新しいシステムの導入にはもちろん費用がかかります。低価格なものもありますが、営業のやり方によってはカスタマイズが必要になり、思わぬ費用がかかるかもしれません。またAIは継続的に学習しながら運用するものです。システム活用に適した人材が社内にいない場合は、導入や適切に活用できるようになるまでに時間がかかり、コストがかさむことがあるでしょう。
・情報セキュリティのリスクが高まる
AIはネットワークを通じてさまざまな情報を扱います。そのためAIを活用しない場合と比べて、外部からのハッキングによる情報漏洩、内部の人による情報漏洩のリスクも高まるでしょう。ネットワークセキュリティ上の対策は必須です。
AIを搭載した営業支援システムの活用ポイント
AIを搭載した営業支援システムを上手く活用するには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
・活用できる人材を確保する
新たなシステムを導入するうえで重要となるのは人材確保です。どんなに高性能なシステムでも使いこなせる人がいなければ意味がありません。現状そうした人材が営業部門にいない場合は、システム導入の検討と同時に、活用できる人材の育成も必要です。
・企業に合ったシステムを使用する
AI搭載型の営業支援システムはさまざまな種類がありますが、価格が高ければ、高機能であれば必ずしも良いというわけではありません。企業規模に合っているか、現場が求めているものに適しているか、自社の社員が扱えるか…。せっかく導入しても浸透せず使われないのでは意味がありません。それぞれの企業合ったシステムを使用することが大切です。
・導入の目的を明確にする
営業活動はいくつかのプロセスに区分できますが、どのプロセスにAIを活用するのが自社にとって効率的なのか。またAIを活用してどのような成果を出したいのかを定めることが大切です。ここが曖昧なまま導入されると、効果が得られない可能性も。「AI導入」が目的とならないよう気をつける必要があります。
営業にAIを活用したい方は
昨年の新型コロナウイルス感染拡大以後、テレワークを実施する企業が増えたり、商談がオンライン化したりといった変化がありました。
アフターコロナのビジネスシーンにおいては、営業活動もこれまでにない変化が求められています。
変化に迅速に対応するにあたって強力な味方となるのが、今回ご紹介したAIを利用した営業支援システムです。しかしながら導入に際して、コストの問題や技術的なノウハウがわからないなど、課題が多く生じるでしょう。新たなシステムの導入や社内の状況に応じた対策には専門家の支援が有効です。
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