業務の効率化と高度化を実現するAIエージェントとは?種類と活用例も解説

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2025年06月19日(木)掲載

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デジタル技術の進歩に伴い、近年のビジネスシーンでは「AIエージェント」に注目が集まっています。しかし、AIエージェントが具体的にどのようなものなのか、また活用することでどのような効果が得られるのかを把握していない方も少なくありません。

そこで本記事では、AIエージェントの概要を、実際の活用例とともにお伝えします。自社の業務を効率化し、さまざまな経営課題を解決するために役立ててください。

AIエージェントとは

AIエージェントとは、ユーザーに代わってタスクを遂行しながら、環境を自律的に認識・判断・行動・学習することで、目標達成を支援するAIシステムです。身近な例としては、カスタマーサービスのチャットボットや、スマートスピーカーなどが挙げられます。

このシステムの最も大きな特徴は、ユーザーが指示を出さなくともタスクを自動的に遂行してくれる点にあります。詳細は次項でお伝えしますが、従来のシステムでは任せられなかった、複雑なタスクにも対応が可能です。そのためAIエージェントを活用すれば、これまで以上に業務の効率化を図れるほか、技術的な問題で対応できなかった経営課題を解決するための活用が期待できるでしょう。

AIエージェントと生成AIやRPAとの違い

AIエージェントと同様に、DXを支えるデジタル技術には生成AIやRPAがありますが、3者には次のような違いがあります。

AIエージェントと生成AIやRPAとの違い
AIエージェント 生成AI RPA
活用する目的 特定の目標を自動で達成する 新たな情報や成果物を得る 流れが決まっている作業を自動化する
タスクの進め方 膨大なデータを基にタスクを自動で遂行する ユーザーの指示に従ってタスクを遂行する ユーザーの指示に従ってタスクを遂行する
活用例 ・顧客サービス
・リスク分析
・テキストの生成
・画像の生成
・一部業務の自動化

生成AIがテキストや画像の生成、RPAが定型的な作業の自動化に特化している一方で、AIエージェントは多様なタスクの遂行が可能です。
ただし近年では、生成AIも一部のエージェント的な機能(例:ツールの自動実行など)を備え始めており、両者の境界は徐々に曖昧になりつつありますが、次世代のシステムとして、従来の技術では実現できなかった機能を持つAIエージェントに注目が集まっています。

AIエージェントが注目される背景

AIエージェントに注目が集まるようになった背景には、業務の複雑化や慢性的な人材不足の影響があります。

例えばサービス開発の分野では、ユーザーのニーズを分析し、その結果に基づいてサービスを開発することが求められます。しかし、近年では市場動向やユーザーのニーズが激しく変動するため、最適なサービスを展開し続けることは容易ではありません。また、慢性的な人材不足の影響で、開発にリソースをあまり割けないという問題も挙げられます。

AIエージェントを活用すれば、人では難しい業務も自動化でき、人的リソース不足の解消にも寄与します。業務効率の向上だけでなく、人材不足の解消も実現できるAIエージェントの需要は、今後も高まっていくでしょう。

AIエージェントの仕組み

AIエージェントがタスクを遂行するプロセスは、「目標決定」「情報取得」「タスクの遂行」の3つのステップに分けられます。

目標決定

始めにAIエージェントは、ユーザーからの質問や指示を解析し、その意図に沿って目標を設定します。そのあと、設定した目標を細分化して実行可能なタスクに置き換え、最終目標を達成するための準備を進めます。

情報取得

目標を設定したあとは、その達成に向けて必要な情報を収集します。外部のデータベースや蓄積された情報の中から有益なデータを抽出し、それを基にタスクを遂行する準備を整えます。

タスクの遂行

必要な情報が集まったら、AIエージェントは目標の達成に向けてタスクを遂行し始めます。万が一遂行できないタスクがあった場合は、それをいくつかのステップに分けて少しずつ処理していきます。

AIエージェントの種類

一口にAIエージェントといっても、その種類は多岐にわたります。以下で6種類のAIエージェントをご紹介しますので、自社の業務に活かせるものがあるかどうかを確かめてください。

反応型エージェント

反応型エージェントは、あらかじめ定義されたルールに従って行動する、非常にシンプルなAIエージェントです。チャットボットや受発注の管理システムなど、特定の操作に対する自動応答を得意としています。

モデルベース型エージェント

モデルベース型エージェントとは、蓄積されている内部モデルに基づいて状況を判断し、今後の変化を予測して行動するAIエージェントのことです。在庫管理や市場動向の予測などで真価を発揮します。

目標ベース型エージェント

スケジュールの調整や生産計画の見直しといった業務には、目標ベース型エージェントの活用が適しています。目標を達成するにあたって、今必要なアクションを明示してくれるため、行動指針を再確認できます。

効用ベース型エージェント

目標の達成だけでなく、行動の有用性やクオリティを最大化する目的で活用されるAIエージェントが、効用ベース型エージェントです。金融関係の取引や投資判断のリスク予測といった難易度の高いタスクでも、多角的な視点から意思決定をサポートしてくれるでしょう。

学習型エージェント

学習型エージェントの特徴は、タスクをこなすたびに自己学習を繰り返し、精度の高い判断を徐々に下せるようになることです。品質管理や異常の検知など、環境の変化への対応が不可欠なタスクを任せる場合に役立ちます。

階層型エージェント

階層型エージェントは、複数のシステムによって階層構造を成しています。大規模かつ複雑なタスクも効率的に遂行できるため、製造ラインや物流システムなど、サプライチェーンを管理する場面で主に活用されています。

AIエージェントを活用するメリット

AIエージェントを活用することで、企業は多くのメリットを得られます。ここでは代表的な3つのメリットをご紹介しますので、導入の検討材料として役立ててください。

業務の効率化と高度化

業務が効率化される上、AIの力でより複雑なプロセスも実行できるようになることは、AIエージェントを活用する大きなメリットです。

AIエージェントは、従来のシステムでは遂行できなかった複雑なタスクにも対応が可能です。蓄積されたデータを基に自律的に稼働してくれるため、高度な判断や処理が求められる、人力での対応が困難なタスクも手間なく遂行できます。

データの収集と解析の自動化

AIエージェントを活用することで、膨大なデータから有益な情報のみを抽出し、詳細に解析する手間を省けます。

市場調査やトレンドの分析などは業務上で欠かせない作業ですが、人力で行うとかなりの手間がかかります。さらに、これらの業務は難易度が高いことから、人的ミスが起こるケースも少なくありません。

その点、AIエージェントはデータの収集から解析までの一連の業務を自動化できます。人的ミスの発生もある程度防げるため、正確なデータに基づいて、より効果的な戦略を立案できるようになります。

スピーディーな意思決定と精度向上

迅速かつ精度の高い意思決定を行えることも、AIエージェントを活用するメリットの一つです。

AIエージェントは過去の膨大なデータを分析し、その結果を基にタスクを遂行します。先入観に左右されることなく客観的な判断を下せるため、人力では導くことが難しい最適解にもたどり着ける可能性があります。意思決定のスピードと精度が向上すれば、競合他社よりも先に戦略的なアクションを起こし、優位に立つことも不可能ではありません。

AIエージェントの活用例

続いて、AIエージェントが実際にどのような場面で活用されているのかをご紹介します。

パーソナライズされた顧客体験の提供

AIエージェントは、顧客の行動履歴や購買履歴、嗜好の傾向などを分析し、一人ひとりに最適なサービスを提供するために活用されています。

例えばECサイトを運営する際には、さまざまなデータを基にサービスを改善し、顧客満足度を上げる必要があります。AIエージェントを活用すれば、ユーザーの嗜好や行動に合わせた効果的な提案が実現できるため、クロスセルやアップセルの機会を増やせるでしょう。

カスタマーサービスでの活用

AIエージェントは、カスタマーサービスの改善にも役立っています。チャットボットによる自動応答や、トラブルシューティングのサポートなどが代表的な例で、ユーザーからの要望に24時間365日対応できます。また、ユーザーの要望をかなえられる自社の製品をAIエージェントに自動で推奨させれば、売上の増加にもつながるかもしれません。

バックオフィス業務の自動化と高度化

経理や従業員の休暇管理といったバックオフィス業務の自動化も、AIエージェントによって実現します。

バックオフィス業務は、企業にとって欠かせないものです。しかし、専門的な知識を求められる上に手間もかかることから、多くのリソースを割く必要があります。

AIエージェントを活用すれば煩雑なバックオフィス業務を自動化でき、難易度の高さに起因する人的ミスも減らせます。

フロント業務の効率化

宿泊業界や医療業界などでは、顧客対応の窓口としてAIエージェントを導入する企業も増えつつあります。繁忙期でも迅速な対応が可能となる上、人的ミスの発生も予防できるためです。

またAIエージェントなら、多言語の対応や24時間体制での接客も可能です。従業員が別の業務に専念できるほか、顧客側には対応の待ち時間が減るというメリットがあることから、顧客満足度の向上にもつながります。

サプライチェーンの管理での活用

サプライチェーンの管理でも、AIエージェントは活用されています。

在庫管理や市場動向の予想、物流の最適化など、サプライチェーンの管理は非常に複雑な業務です。AIエージェントを導入すればこれらの業務が自動化されるため、工数の大幅な削減が期待できます。さらに、過去のデータに基づいた精密な判断によって、品切れのリスクを最小化し、物流のコストを抑えることにもつながります。

AIエージェントを活用する際の課題

AIエージェントは多くの課題を解決できる便利なシステムですが、活用にあたっては技術的な限界、セキュリティリスク、導入や運用コストといった課題も存在します。これらは2025年現在でも、企業が導入を検討する際の主要な懸念事項とされています。

技術的な課題

AIエージェントのアルゴリズムの性能に技術的な限界があることは、導入する前に理解しておく必要があります。

デジタル技術が発達してきたとは言え、AIエージェントの性能は完璧ではありません。従って特定のタスクについては、十分な成果が得られないケースもあります。

AIエージェントの力を最大限に引き出すには、アップデートがないかどうかを定期的に確認する作業が不可欠です。

セキュリティ面での課題

AIエージェントには、セキュリティ上の課題があることも理解しておきましょう。

AIエージェントの活用時にはさまざまなデータを入力する都合上、情報漏えいのリスクが伴います。外部に漏れた情報が万が一悪用されれば、甚大な被害を受けてしまいます。

また、アルゴリズムがブラックボックス化していることもAIエージェントの課題の一つです。意思決定の過程が不明瞭なため、ユーザーによっては「信頼性が低い」と感じる場合もあるかもしれません。

こうしたリスクを避けるためには、プライバシー保護に十分配慮しつつ、AIエージェントの出力を鵜呑みにしない姿勢が求められます。

費用面での課題

導入する際に費用面での障壁がある点も、AIエージェントの課題といえます。

有用なAIエージェントの導入には、多額の費用が必要です。運用を続けるにあたって維持費がかかる上に、専門的な知識が求められるため、対応できる人員を確保する費用も発生します。従って費用面に余裕のない企業には、導入が難しいかもしれません。

AIエージェントを導入する前に、運用を続けられるかどうかを慎重に検討しましょう。

AIエージェントを運用する流れ

最後に、AIエージェントを運用するにあたって、どのようなステップがあるのかを解説します。実際に運用する際のイメージをつかむために役立ててください。

経営課題の明確化と導入する目的の設定

まずは経営課題を洗い出し、AIエージェントを導入する目的を設定します。

この際のポイントは、手作業で行っている、もしくは時間がかかっている業務に着目し、AIエージェントによって効率化できるかどうかを検討することです。また導入後の効果測定の基準を明確にするために、具体的なKPIを設定することも有効です。

なお多くの企業では、このステップで、資料作成や顧客対応のプロセスでの課題が浮き彫りになるケースが良く見られます。経営課題の洗い出しが難航するようなら、こうした業務を重点的に見直すと良いかもしれません。

AIエージェントで実現可能な領域の特定と費用対効果の試算

次に、洗い出した経営課題のうち、AIエージェントで解決できそうなものをピックアップします。ピックアップした課題は内容を細分化し、AIエージェントによってどれだけの費用対効果が得られるのかを試算しましょう。こうした作業を行うことで、投資のリスクを最小限に抑えられます。

「せっかくAIエージェントを導入したのに、思いのほか効果がなかった…」と後悔しないためにも、このステップは慎重に進めたいところです。

ベンダーの選定

ある程度の費用対効果が期待できると判断したら、ベンダーの選定に移ります。

AIエージェントで経営課題の解決を成功させる鍵は、適切なベンダーを選定することです。自社の業務との適合性や既存のシステムとの親和性などを鑑みて、複数のベンダーを比較検討すると良いでしょう。

また、小規模な概念実証で導入前に効果を測定することも一つの手です。数カ月間の試験運用を実施すれば、導入後のイメージがつかみやすくなります。

導入計画の立案と社内体制の構築

続いて詳細な導入計画を立案し、それを実現するための社内体制を整えます。

導入計画を立案する際には、費用対効果の試算や概念実証の結果を参考にしましょう。これらに基づいて、より効果的な導入計画を策定できると理想です。

またこのとき、AIエージェントの導入に関する推進チームを発足し、役割分担を行うことも重要です。IT関係の部門だけでなく、社内の複数の部門を横断してチームを構築すると、意思決定が円滑に進み、導入の成功率を高められます。

実行と継続的な改善

AIエージェントを導入したあとは、継続的に効果測定を実施し、改善に努めることが大切です。

AIエージェントは、導入して終わりではありません。費用対効果を最大化するには、導入後の実績や顧客満足度、KPIの変化などをきちんと測定し、必要に応じて改善する作業が求められます。チームでのミーティングを定期的に開催して、改善項目について話し合うことをお勧めします。

AIエージェントによって業務を効率化すれば、経営課題の解決につながる

今回は、AIエージェントの有用性を、その課題や活用例とともにお伝えしました。

AIエージェントは、ユーザーが定めた目標の達成を自動でサポートするシステムです。データの収集や解析、迅速な意思決定のサポートなどに長けており、活用することで経営課題の解決につながります。

ただし、AIエージェントには技術的な課題やセキュリティ上の課題があることも事実です。経営課題の解決には、3万名を超える(2025年3月現在)プロ人材が登録し、企業が直面するあらゆる経営課題を解決に導く、経営支援サービス「HiPro Biz」の活用もぜひご検討ください。

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