アドバイザリーとコンサルティングの違いや契約の際に重要な人選や、ポイントを解説

経営全般・事業承継

2025年05月29日(木)掲載

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経営課題を解決するために「アドバイザリー」や「コンサルティング」の活用を検討する企業は多いでしょう。しかし、たとえ経営者や管理者であっても、両者の違いを明確に理解している方は少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、アドバイザリーとコンサルティングの役割の違いや、それぞれが対応可能な領域について詳しく解説します。経験豊富な専門家の支援を受けたいとお考えの企業の一助になれば幸いです。

アドバイザリーとは?

アドバイザリーとは、企業の経営層や意思決定者に対して、全体的な視点での支援を行います。法務や財務、税務など、さまざまな分野で広範囲にわたるアドバイスを提供し、企業の中長期の経営方針を支援することを目的とします。

企業の成長に必要な施策や、この先遭遇し得るリスクへの備えといった課題に対して、包括的な見解を示す点が特徴です。また、守りの視点や中立の立場を重視します。さらに、アドバイザリーは単発のプロジェクトではなく、継続的に企業に寄り添い、経営判断を支える伴走型の支援となるケースが一般的です。

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コンサルティングとは?

一方、コンサルティングは企業が抱える特定の課題に対して、専門的な知見を基に分析し提案を行い、解決に導く支援スタイルです。戦略立案や業務改善、IT導入など、分野に特化した支援を提供します。

短期集中のプロジェクト型の契約が多く、必要に応じてクライアント企業に常駐して、実行支援を担う場合もあります。現場に入り込んで、具体的なアクションプランを提示しながら、成果の創出を支援するアプローチがコンサルティングの特徴です。

アドバイザリーとコンサルティングの違い

アドバイザリーとコンサルティングは、どちらも外部の専門家が企業に知見やアドバイスを提供する点では共通しており、厳密な線引きはありません。強いて言えば、その支援の「深さ」と「広さ」に違いがあるといえます。

アドバイザリーは、企業全体を俯瞰し、経営の方向性やリスクマネジメントなど、幅広いテーマについて助言する支援が一般的です。一方、コンサルティングは特定の課題にフォーカスし、深い専門性を発揮して具体的な解決策を示す支援といえます。

ただし、プロジェクトの内容や依頼側のニーズに応じて、アドバイザリーのような関与がコンサルティングに求められることもあれば、コンサルティングのような深い専門性をアドバイザリーに求められることもあります。依頼する際には、求める支援の範囲や目的を明確にし、それに適した専門家の選定が重要です。

アドバイザリーが必要となる代表的な領域や業務内容

アドバイザーは、企業の成長段階や経営課題に応じて、さまざまな場面で専門的な助言を行います。特に、将来を見越した重要な意思決定や、複雑な利害調整が求められる分野では、企業の大きな助けとなります。

ここでは、アドバイザリーが必要となる代表的な領域について見ていきましょう。

ビジョンや戦略の策定

企業が中長期的に成長を遂げるためには、ビジョンの策定が不可欠です。アドバイザーは、経営陣と連携しながら企業の内外環境を整理し、長期的なビジョンを描くことを支援します。

経営者の想いをベースにしながらも、外部の視点を加えることで、これまで気づかなかった成長のヒントや新たな可能性を発見できる可能性があります。持続可能な経営を目指す企業にとって、アドバイザーの役割は極めて重要です。

市場・競合調査と戦略の改善

ビジネスシーンでは、事業を取り巻く環境が変化する中で、既存の戦略を見直し、柔軟に対応する姿勢が必要になります。アドバイザーは、市場の動向や競合の状況を的確に分析し、それらを踏まえた現実的かつ実行可能な戦略の再構築を支援します。

特に、新規市場への参入や既存事業の再編を検討している企業にとって、アドバイザーの専門的な知見とリスク分析力は、大きな判断材料となります。状況に応じた提案を通じて、戦略の実行可能性と持続性を高める支援を行います。

組織力の強化

企業の競争力を高めるには、戦略だけでなく、それを実行する組織の力が重要です。アドバイザーは、組織体制や企業文化に関する課題を抽出し、組織力強化の方向性を提示します。

例えば、従業員のモチベーション向上やリーダーシップの育成、評価制度の見直しなど、踏み込んだ支援を行うことも少なくありません。単なる制度変更ではなく、企業風土や理念に沿った形での組織改革を伴走型で支援し、実効性のある変革を後押しします。

事業承継や売却

後継者問題や経営資源の再配分といった課題がある中で、事業承継や売却は重要な経営判断の一つです。アドバイザーは、これらの複雑なプロセスの中で、企業価値の評価や売却先との交渉支援を含め、包括的なアドバイスを提供します。

特に、ファミリービジネスや中堅企業の事業承継では、関係者間の意見の対立が表面化しやすいため、第三者による中立的な立場からのアドバイスが必要になることが多いです。法務や財務、税務といった複合的な要素を調整しながら、円滑な承継や売却の実現を支援します。

コンサルティングが必要となる代表的な領域や業務内容

次に、コンサルティングの系統ごとに、支援が必要となる領域や業務内容を紹介します。

経営戦略系コンサルティング

経営戦略系コンサルティングの領域
  • 新規事業立案
  • 中長期戦略立案
  • マーケティング

経営戦略に関するコンサルティングでは、企業の将来を左右する重要な意思決定を支援します。具体的には、新規事業の構想や立ち上げ時に、市場環境や競合状況を踏まえた戦略の立案を支援することが主な業務です。

また、中長期的な視点で企業のビジョンを描き、それを実現するためのロードマップ策定にも携わります。さらに、マーケティングの領域では、顧客ニーズの分析を踏まえたプロモーション施策やブランド戦略の提案なども行われます。

人事・組織系コンサルティング

人事・組織系コンサルティングの領域
  • 従業員の育成
  • 人事制度
  • 組織改革
  • 研修

企業が成長するために人材の最大限の活用を支援するのが、人事や組織系コンサルティングです。従業員の能力を引き出す育成制度の設計や、評価と報酬を連動させた人事制度の導入はその施策の典型です。

また、変化に対応できる組織への転換を図るために、組織構造の再設計や社内コミュニケーションの強化といった改革を提案することもあります。加えて、スキルや意識の底上げを図る研修プログラムの設計や実施を通じて、企業全体のパフォーマンスの向上に貢献します。

IT系コンサルティング

IT系コンサルティングの領域
  • システム導入
  • DX
  • IT関連の戦略立案

IT系コンサルティングは、企業のDX(デジタル変革)を促進する役割を果たします。例えば、新しいITシステムの選定や導入プロジェクトの計画支援がそれに該当します。また、情報セキュリティ対策やITガバナンスの強化といった、管理体制の構築に関するコンサルティングも重要な業務です。

さらに近年では、ビジネスモデルそのものを再構築するような高度なDX支援も増加傾向にあります。

財務・会計系コンサルティング

財務・会計系コンサルティングの領域
  • 資金調達
  • コスト管理
  • M&A
  • IPO

財務や会計系コンサルティングでは、企業の経営基盤を支える資金面での戦略策定や制度設計を行います。資金調達に関するアドバイスや、財務指標を基にしたコスト構造の見直しなど、実務に即した助言が中心です。

また、M&Aの戦略的実行支援や、企業の成長戦略としてのIPO(株式上場)準備など、大きな転換期にある企業への支援も行います。財務に関わる高度で複雑な判断を、経験豊富な専門家が支援することで、リスクを抑えた意思決定が可能になります。

業務改善系コンサルティング

業務改善系コンサルティングの業務内容
  • CRM(顧客関係管理)
  • SCM(サプライチェーン管理)
  • BPR(業務プロセスの再構築)

業務改善に関するコンサルティングは、日々の業務をより効率的で効果的に運用するための支援を行います。

顧客情報の一元管理や活用方法の最適化を目的とするCRM、またサプライチェーン全体を見直すSCMなどが主な業務です。こうした施策を通じて、業務のスピードと正確性を向上させ、企業の競争力強化に貢献します。

自社に合ったアドバイザーやコンサルタントを探すポイント

これまでご紹介した通り、企業の成長や変革を実現するためには、社外の専門家の力を借りることが有効です。しかし、数多く存在するアドバイザーやコンサルタントの中から、自社に適した人物を選ぶことは簡単ではありません。

ここでは、自社と相性の良いパートナーを見つけるために意識するポイントを解説します。

自社の課題を把握する

まず取り組むことは、自社がどのような課題を抱えているのかを整理することです。経営層や各部門の責任者と協議を重ね、現状の問題点や将来的な懸念を洗い出す作業が必要となります。

その上で、課題の中でも優先度が高いものや、特に外部からの支援が必要な領域を特定しましょう。課題の本質を理解することで、求める支援の方向性や必要な専門性が自然と見えてきます。

課題の解決に必要なスキルや経験を明確にする

課題の内容が明確になったら、それを解決できるスキルや経験とは何かを整理しましょう。

例えば、業務のデジタル化を進めたいのであれば、IT戦略やデジタルマーケティングの知見を持つ人材が適しています。また、業界固有の事情に通じた経験者や、同様のプロジェクトを成功させた実績のある人物なら、実現可能性の高い提案をしてくれるかもしれません。

専門知識だけでなく、チームとの協調性や柔軟な対応力など、ソフトスキルの視点も必要です。

自社に合った候補者をリストアップする

必要なスキルや経験の要件が整ったら、それに見合うアドバイザーやコンサルタントの候補者を具体的に探し始めます。

紹介サービスやSNSなどを活用して、専門性や実績を持つ人材の情報にアクセスすることができます。その際、複数の候補者を比較検討することで、選定の精度を高めることができます。

また、取引先などからの推薦を受けることで、信頼性の高い人物に出会える可能性が高まるでしょう。

候補者との面談を実施する

候補者の選定がある程度進んだら、面談の場を設けて、どのような人物なのかを見極めるプロセスに進みます。

面談では、課題に対するアプローチや過去の成功や失敗事例について詳しく聞くことで、実務能力や問題解決力を見極めることができます。同時に、相手の話し方や価値観、プロジェクトの進め方なども確認し、自社の組織風土にマッチするかを判断しましょう。

単に知識や実績があるだけでなく、信頼して伴走できる相手かどうかを見極めることが、最適なパートナー選びの決め手となります。

アドバイザーやコンサルタントの契約形態と料金体系

アドバイザーやコンサルタントを起用する際は、どのような契約形態を選ぶかで、費用が発生するタイミングやリスクの分担方法が変わります。契約の形は、取り組むテーマの性質や企業側の体制、求める成果によって、最適と判断したものを選ぶとよいでしょう。

ここでは、代表的な契約形態について、それぞれの特徴を解説します。

時間契約

時間契約は、アドバイザーやコンサルタントが活動した時間に応じて料金を支払う仕組みです。必要な時に、必要な分だけサービスを受けられるため、単発的な相談や短期間の課題解決に適しています。

契約上は、1時間単位あるいは半日や1日単位で費用が定められ、活動時間の記録を基に請求が行われることが一般的です。専門性が高いテーマほど、1時間あたりの単価も高くなる傾向にあります。

プロジェクト制契約

特定の業務や目的を達成するために、期間や成果物を明確に設定し、それに応じて一括で報酬を支払う形式がプロジェクト制契約です。

開始時にプロジェクトの全体像が把握できている場合に向いており、あらかじめ取り組みのゴールやスケジュールを定めてから契約が結ばれます。料金はプロジェクトの規模や、契約期間の長さによって決まります。

顧問契約

長期的に継続的な支援を受けたい企業には、顧問契約が適しています。

顧問契約では、月額で一定の報酬を支払うことで、必要に応じて随時アドバイスを求められる関係が構築されます。経営に関する戦略的な助言や、経営陣との定期的なミーティングが行われるなど、中長期的な関係性を前提にしている点が特徴です。

突発的な相談にも対応できる柔軟性があるため、信頼できるパートナーとしての関係を築きたい場合に有効です。

成功報酬型契約

成果の達成度合いに応じて報酬を支払う方式が、成功報酬型契約です。例えば、売上の増加額やコストの削減額など、具体的な指標に基づいて料金が決まります。企業側は、成果が出た分だけ報酬を支払えばよいため、費用対効果が明確になりやすい反面、目標設定や成果の測定方法について、事前に合意しておかなければなりません。

リスクとリターンをパートナーと分担したい場合に、適した契約形態といえるでしょう。

固定報酬型契約

一定の業務内容や期間を定めて、あらかじめ決められた金額を支払う体系が固定報酬型契約です。この方式では、実際の活動時間に関係なく、契約内容に基づくサービスが提供されるため、予算の見通しが立てやすい点がメリットです。

その一方で、業務の範囲や役割分担を明確にしておかないと、想定外の作業が発生した際にトラブルの原因となる可能性もあるため、契約前のすり合わせが重要となります。

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アドバイザリーとコンサルティングは、経営課題の解決に役立つ

本記事では、アドバイザリーとコンサルティングの違いを明らかにし、両者が担当する領域や業務内容について解説しました。

アドバイザリーとコンサルティングに明確な線引きはありませんが、企業が外部の専門家から支援を受ける点は共通しています。自社の課題を把握し、必要なスキルを持った候補者を複数ピックアップした後に、自社の課題に最も適切なアドバイザーやコンサルタントと契約すると良いでしょう。

なお、これらの業務は「HiPro Biz」でも対応が可能です。必要なスキルが明確化できていない場合でも、課題を抱える企業の課題を伺った上で、最適なプロ人材をご紹介します。自社の経営課題にお悩みの経営者・管理者は、ぜひ一度お問い合わせください。

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