株式会社レゾナック
- 売上:
- 1000億円以上
- 業種:
- 化学
新規事業
技術起点のテーマ選びからの脱却。レゾナックが挑んだ「統合シナジーを生む新規事業創出」の意思決定改革
- 部長
村上 泰治 氏 - 技術戦略グループリーダー
門田 由美 氏

-
BEFORE導入前の経営課題
統合を機に異なる文化・開発スタイルを持つ組織が一つになった一方で、研究テーマは技術起点で立ち上がる事が多く、リソースが多くのテーマに分散しがちだった。さらに、部門を超えた技術の活用や、将来の事業化を見据えた観点でのテーマ間の優先順位付けにも課題があり、R&D組織として技術軸だけでなく市場軸も取り込んだ事業構想の検討をより体系立てて行う必要性を感じていた。このため、市場・顧客起点でテーマを絞り込み、意思決定できる“型”づくりが求められていた。
-
AFTER導入による成果
事業会社での経験とコンサル知見を併せ持つプロ人材・T氏の伴走支援を受けながら、3つのテーマで新規事業構想の強化プログラムを実施。約30名の研究者、マーケティング担当者と共に4か月間にわたって検討を重ねた結果、方針転換/中断/強化の意思決定を実現することができた。現在は個別テーマを超えたドメイン戦略の策定へと議論が進んでいる。
統合で見えた、“新規テーマ探索”のボトルネック
2023年、昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合し、株式会社レゾナックが誕生した。「化学の力で社会を変える」をパーパスに掲げ、売上規模1.3兆円、従業員2万人以上を擁する同グループは、世界トップクラスの機能性化学メーカーへの変革を目指している。事業領域はケミカル、イノベーション材料、モビリティ、半導体・電子材料と多岐にわたり、中でも半導体・電子材料を最重要戦略領域として位置づけている。
もともと、昭和電工が素材を「作る化学」、昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)がアプリケーション向けに材料を開発する「混ぜる化学」を強みとしており、異なる得意分野を持つ両社が一体となることで、シナジーの創出が見込まれていた。しかし、統合後は、期待されたシナジーの発現に向けていくつかの課題が顕在化することとなった。
既存事業では部門間連携が機能している一方で、各事業所に分散するR&D組織においては個別課題に応じて技術情報の共有は行われていたものの、どの部門がどのような技術を保有しているのか、全社で十分に共有できていない状態が続いていた。そのため、技術シナジーを活用した新規事業の創出への道のりはまだ遠かった。
このままでは、統合によって得られた技術資産を十分に活かしきれない。そうした危機感のもと、経営層は研究部門横断の技術戦略を担う研究所戦略部を設置。研究所戦略部がまず重視したのは、統合で得た技術資産を“新規テーマ創出”につなげるために、テーマ選定の考え方や意思決定の型を見直すことだった。技術起点ではなく、市場・顧客が求める機能起点でテーマを設計し、重要度に応じてリソースを配分する。さらに社内外・部門間の壁を越えた技術資源を活用する。こうした方向性を、現場で機能させる具体策が求められていた。
コンサル活用の限界、そして「理論と実践の両輪を持つ人材」という答え
選択肢としてまず思い浮かぶのは、コンサルティングファームの活用である。実際に、レゾナックの研究所戦略部においてもコンサルの活用経験は豊富にあった。研究所戦略部 部長の村上氏は「コンサルティングファームの調査力は非常に高く、未知の分野における市場調査も精緻に整理された提案が得られる」と評価する。
一方で、現場への浸透という観点では課題も感じていた。提案の内容自体は洗練されているものの、実際の運用フェーズにおいては自社の研究開発の実情と十分にかみ合わず、定着しにくいケースがあったという。
同部が求めていたのは現場の議論を前に進め、テーマの取捨選択まで導ける支援だった。だからこそ、理論と実践の両輪を持ち、社内の検討に伴走できる人材が必要とされていた。
村上氏は「事業会社での経験に加え、コンサルティングの知見も併せ持つ人材であれば、現場の実情を踏まえながら適切な支援が得られるのではないかと考えた」と語る。両者のバランスが取れた人材を模索した結果、たどり着いたのが「HiPro Biz」のプロ人材活用であった。
最終的な決め手となったのは、今回参画したプロ人材・T氏の経験、知見と実績だった。同氏は、技術マーケティングの体系化が進んでいなかった時期からこの領域を切り拓いてきた人物である。「この分野であれば、この方にお願いするしかないと考えた」と村上氏は振り返る。事業会社での経験、コンサルティングの知見、そして理論構築の実績を兼ね備えた人材は希少であり、まさに今回の要件に合致していた。
また、関わり方のスタンスにも従来のコンサルとは異なる特徴が見られた。村上氏は「従来のコンサルは成果物を受け取るという関係性になりがちだが、T氏の場合は提案を受けながら、ともに検討を進めていく伴走型の支援だった」と語る。T氏は「我々」という言葉を自然に用い、外部の専門家としてではなく、チームの一員としてプロジェクトに関わり続けた。単に答えを提示するのではなく、ともに考え、実行していく。その姿勢が、プロジェクト全体の空気をつくっていくことになった。
30名の研究者を動かした「エコシステム思考」という新しい地図
中心施策となったのは、3つの新規テーマを対象にした“事業構想強化”プログラムである。約30名が参画し、全体会議を月1回、3チームごとのミーティングも月1回実施。約4カ月にわたり、各テーマの仮説を磨き込み、意思決定へとつなげていった。T氏はまず、研究者一人ひとりが「自分たちの技術をどのような視点で捉えるか」という思考の土台を整えることから着手した。
その進め方において特徴的だったのは、T氏は参加者に答えを与えるのではなく、メンバーの検討を前に進めるための視点を補う役割に徹した点である。プログラム終了後、参加者から「次は自分でやれそうだ」という手応えの声が上がったことも、こうした変化を象徴していると言える。
その中で持ち込まれた最も大きな視点が、エコシステム思考である。研究所戦略部 門田氏は「これまでもバリューチェーンの観点で検討することはありましたが、エンドユーザーのさらに先まで視野を広げるという発想は新鮮でした」と振り返る。プロジェクトを通じて、「エコシステム」という言葉が社内で自然に使われるようになり、部分最適から全体最適へと視点が移行した。研究者の関心が目の前の顧客から産業構造全体へと広がっていった瞬間だった。
そして、3テーマを実際に回したことで、意思決定が前に進んだ。検討の結果、ターゲット変更を含む大きな方針転換に至ったテーマが1つ、検討の末に中断を決断したテーマが1つ、そして意義を再確認して研究開発を強化することを決めたテーマが1つと、各テーマの方向性を明確にできた。特に「中断」という決断は、研究者にとっては受け入れがたい側面もある。しかしT氏の示した枠組みで不足点が見える化され、「なぜ今は事業化できないのか」が共有されたことで、意思決定への納得感が高まりやすくなったという。
成果として現れ始めた変化と、これからの展望
プロジェクトの推進過程では、3チーム間で取り組みの進捗や熱量に差が生じる場面もあった。参加率が一時的に低下するチームも見られたが、T氏は拙速な立て直しを図るのではなく、意欲的に取り組むメンバーを支えながら仮説を強化し、周囲のメンバーを巻き込み直すことで、プロジェクトを着実に立て直していった。
研究部門とマーケティングなどの他部門が相互に補完し合う関係性が醸成されたことも、本プロジェクトの重要な成果の一つである。統合によって生じていた研究開発の考え方の違いに対しても、T氏の理論的な枠組みが共通言語として機能し、組織横断での理解を促進した。「目に見える成果だけでなく、こうした無形の変化が非常に大きかった」と門田氏は語る。
さらに、新規テーマ探索を支える基盤として、技術プラットフォーム(R&D技術マップ)の整備も進んだ。過去に作っても活用しきれなかった状況から、「使える形」にするにはどうあるべきかを議論し、実用性を高めていった。理論面の後ろ盾が得られたことで、関連部門への提言もしやすくなったという。
今回、プロ人材を活用した感想について、村上氏は次のように語る。
「外部の人材を入れることで、自分たちの取り組みではなくなってしまうのではないかという懸念がありました。しかし実際にはその逆で、一緒に考えていくことで、むしろ自分たちのものになっていったと感じています」
外部の専門家を迎えることで主体性が損なわれるのではないか……こうした不安は、プロ人材の活用を検討する多くの企業に共通するものだろう。しかし本プロジェクトにおいては、T氏が一方的に答えを提示するのではなく、レゾナックのメンバーとともに考え、言語化を進めていくスタイルが取られた。
そのため、最終的なアウトプットは“与えられたもの”ではなく、自分たちの思考と経験をもとに構築されたものとして、現場にしっかりと根付いていった。
また、「課題に直面したときに、外部の力を頼っても良いのだと素直に思えたことが大きかった」と門田氏は振り返る。その感覚を持てたことも、今後の挑戦を支える経験となった。
現在、プロジェクトはドメイン戦略の策定フェーズへと移行している。個別テーマの最適化から、将来の事業領域を見据えた意思決定へと議論は進んでおり、2つの重要ドメインの選定を目標としている。T氏の継続的な伴走のもと、「より大きな新事業の創出を早期に実現したい」と村上氏は展望を語る。3テーマの実践を通じて得た型を基盤に、新たな事業の芽が着実に育ち始めている。
- 企業名
- 株式会社レゾナック
- 設立
- 2023年1月
- 従業員
- 連結:21,525名(2025年12月末)
- 売上
- 1兆3,471億円(2025年12月期)
- 事業内容
- 半導体前工程材料、半導体後工程材料、ハードディスク、SiC、自動車部品、アルミ機能部材、基礎化学品、黒鉛電極、リチウムイオン電池材料、機能性化学品、樹脂材料、コーティング材料、セラミックス
担当プロ人材より
専門領域である研究開発や製品・事業開発に関する知識・スキルは不可欠ですが、それを一方的に提供するだけではお客様の真の課題解決には至りません。イノベーションの実現には、お客様一人ひとりの思いや知見、才能を引き出し融合させることが重要であり、私たちはコンサルタントに留まらず、ファシリテーターやコーチ、時に当事者として関わるべきと考えています。レゾナック 研究所戦略部様には最適な環境で受け入れていただき、またHiPro Bizの仕組みにより貴重な学びと成長の機会を得られていることに、心より感謝申し上げます。こういった質の高いマッチングの仕組みこそイノベーションの源泉であると感じます。
登録プロ人材 T氏 製造業で新事業開発を経験後、コンサルティング領域で新商品・新規事業開発や事業設計支援を経て1996年に独立。上場メーカーを中心に、IoT・AIなど先端技術を「モノ売り」から「コト売り」へ転換する新規事業支援を提供。技術の棚卸し、技術マーケティング、R&D戦略、ビジネスモデル構築、技術提携、データ活用の価値設計まで一気通貫で伴走する。
