サービス導入事例

マクセル株式会社

売上:
1000億円以上
業種:
機械・電気製品

新規事業

“マクセルらしい”新事業創出を求めて。月2回の対話から始まった、チームの土壌づくりとマインド改革

執行役員 新事業統括本部長
  • 佐野 健一 氏
  • BEFORE導入前の経営課題

    2000年頃より自社発の新事業推進に苦戦していた。M&Aなどにより新事業戦略を進めるが自社らしい事業開発が進まず、新事業開発に向き合う組織を立ち上げるも、組織内に新事業を推し進める風土を整いきれていなかった。

  • AFTER導入による成果

    自社のキャラクターとの相性を重視し「HiPro Biz」のプロ人材をプロジェクトに迎える。月2回の対話やブレストからミニマムスタートし、プロ人材からの知見やアイデアをもらうなかで、組織の行動基準の制定や、自由研究の時間を設定。具体的な改革が、新事業創出に必要なマインドセット醸成に寄与した。

自社らしい、アイデンティティーとなる新事業開発に向けた土壌づくりを

電池や記録媒体などで知られ、機能性部材をはじめとしたBtoB向けプロダクトでも知られるマクセル株式会社。近年は全固体電池の開発に成功し、先進技術の事業化なども推し進めている。
同社はものづくりのコア技術として、「アナログコア技術」を活用したプロダクト開発に強みを持つ会社だ。
具体的には、『まぜる(混合分散)』、『ぬる(精密塗布)』、『かためる(高精度成形)』といった高度なアナログコア技術を別のコア技術に用い、新商品を生み出してきた。例えば前出の全固体電池には、この『まぜる・ぬる・かためる』すべてのアナログコア技術が活用されている。同社には、社会に貢献できるだけのコア技術と、そのコア技術を発展させられるアナログコア技術があるのだ。

その一方で、同社は2000年以降、大きな課題を一つ抱えていた。それは、自社発の新事業の開発にアクセルが踏み込めていない、という現実だった。

「2018年ごろまでは、M&Aなどによって新たな事業を進めていくという戦略をとってきましたが、なかなか奏功しませんでした。そもそもM&Aによる事業創出では、私たちらしい事業となりにくく、事業から“マクセルらしさ”を描き出せていなかったのです」

そう話すのは、同社執行役員である佐野健一氏だ。
こうした課題に対応するため、同社では2021年4月に新事業の創出をミッションとする新事業統括本部を立ち上げ、佐野氏はその本部長を務めることになった。
だが、佐野氏が「新事業をつくるのには相当な覚悟がいる」と語るように、新組織を発足するに至っても、自社のアイデンティティーとなるような事業を創出することは簡単なことではない。
長年、自社らしい事業開発が進んでいないなかで、本部内のモチベーションを高めるためには、まず新事業を推し進め、創出していく各個人の意識を醸成し、その土壌を整える必要があった。しかし、これも容易なことではない。

この現状を打開すべく、佐野氏が相談を持ちかけたのが、「HiPro Biz」だった。
佐野氏は以前より「HiPro Biz」のサービスを活用し、登録プロ人材の力を借りて前述のコア技術を整理した過去があったことから、再び「HiPro Biz」に声をかけたのであった。

重視するのは、その『相性』。是々非々で向き合うプロ人材が手掛けた、2つの支援成果

早速「HiPro Biz」のコンサル担当から、新事業開発の知見に富み、組織改革に資するプロ人材の複数提案を受けた佐野氏。その折、依頼検討する上で重視したのが、プロ人材との「相性」だった。

「社外の方から、当社の社員は『人が良く、真面目』というイメージを持たれることが少なくありませんでした。たしかに真面目で仕事への打ち込み方は精力的。その一方で、目の前のことに意識が集中してしまい、外部に目を向けきれていない側面もありました。
こうした私たちの長所と短所へきちんと向き合ってくれる、そんな方に支援をお願いしたいと考えていました。もちろん、能力やキャリアも重視したうえでではありますが、それ以上に長所を受け止めてもらいつつ、短所にも目配りや指摘をしていただけるといった『相性』を大切にしたのです」

選考の末、同社が依頼を決めたのは、戦略組織コンサルティングの経験が豊富なM氏だった。M氏のどの点に、相性の良さを感じたのだろうか。
佐野氏はこう語る。

「どんな意見や考え方に対しても、良し悪しをはっきりと言われる方でした。遠慮なく、自らの考えをきちんと伝えてくださいました。
新事業開発への向き合い方やマインドセットなど、メンバーの意識や組織内の風土づくりをどうすべきか、そのノウハウに不足があった私たちにとって、是々非々で向き合ってくれるM氏の人柄が非常にマッチしたのです」

その相性はもちろん、上場企業顧問や米系大学院講師といった経歴を有するM氏の知見も、同社にとって示唆に富むものだった。
支援が始まると、同社からM氏に向けたアイデアのブレストや対話を1回2時間、月2回にわたり実施。M氏からのアドバイスにおいて、佐野氏は次のような感想を持った。

「良し悪しをはっきりと言う、と申しましたが、そのアドバイスはM氏独自の考えというわけではなく、きちんとした裏付けがあるものでした。世界中の研究者の文献や統計を示しながら、『だからこそ、こういったアクションをする必要がある』と、具体的にアドバイスしてくださいます。支援の納得感が非常に高かったことも印象的でした」


新事業開発に向けた新たな意識や土壌づくりへの取り組み。そのプロジェクトの具体的な支援成果として、チームメンバーにおける「行動基準」の制定と、勤務時間内における「自由研究の時間設定」が挙げられる。

行動基準とは、新事業統括本部の一人ひとりが新事業開発に向けてどのような行動をすべきか、その姿勢や向き合い方を言語化し、10項目にまとめたものだ。

「M氏との対話を経て私自身が掲げた行動基準の1つに、『出張は一人で行く』という項目があります。一人で出張先へ赴くことで、お客様や社会が抱える課題を見つける目を自ら養う、一人でも課題を見つけられる力を育む、といった意味を込めたものです。
こうした、10項目の行動基準を掲げ、各自が心がけることで、一人ひとりが新事業を生む起点となる、社内に新事業を生み出しやすい風土の醸成をねらっています。
ちなみに、この『出張は一人で行く』という行動基準をとある役員会で報告した際、社外取締役の一人が感銘を受けて、自チームにも共有するようになったと聞きました」

チーム外にも刺激をもたらす本支援。もうひとつの支援成果である自由研究の時間設定は、月間の勤務時間の10%を各自が自由に決めたテーマで研究に費やせるというものである。
新事業に対し、さらに前向きな姿勢で取り組むためにも新事業が創出されやすい環境、つまり社内に新事業創出の“型”をつくることが重要、というのがM氏の考えだ。そこで、メンバー自らが興味のあることに取り組める時間となるような“型”づくりを実践し、自由研究の時間をチーム内に着々と浸透させていった。

新事業開発で最も重要な要素とは。外部の知見を得て、改めて気づいたマインドの数々

M氏の支援により、新事業統括本部内で実践、具現化していった2つの成果。
行動が変われば、意識も変わる。佐野氏は、支援により新事業統括本部の中で起きた意識の変容について、次のように語った。

「新事業に着手しても、その半分はうまくいかないといわれます。では、失敗したら新事業は一切やめてしまうのか?失敗するならば新事業には挑まないのか?といったら、それは違います。そこで重要になるのが、新事業開発に対する我々のマインドです。M氏の支援によって得られたマインドセットは、たとえ失敗してもそれを『学習』と受け止められるようになったことでした。
加えて、課題を見つけにいくその姿勢こそが、新事業の要であることにも改めて気付かされました。
M氏からも、『新事業開発において不可欠なものは知識以上にマインド。それが成功の鍵の60%を占める』とよく言われました。失敗をおそれず、常に好奇心を持って課題を発見してこそ、新たな事業は生まれるのだというマインドセットが得られたことは大きかったです」

プロジェクトを通じこのような気づきを得られたのは、M氏と「HiPro Biz」の現状課題や環境にマッチした支援があったからだと、佐野氏は続ける。

「過去に専門的なコンサルティング会社に依頼したことがありましたが、当社の実情では取り組むのが難しい施策などを提案されるケースもありました。
しかし今回の『HiPro Biz』を通じたM氏の支援は、月2回の対話からのスタート。小さく始められるところに魅力を感じました。そして支援内容も、私たちの求めを理解したうえでの提案であり、また、こちらが気づかなかったところにアドバイスしてくれることもありました。まさに、『かゆいところに手が届く』支援でしたね」

加えて、「HiPro Biz」にはM氏以外にもさまざまなスキルやキャリアを持ったプロ人材が多数所属していることから、企業が抱える多様な課題へ柔軟に対応できるカバー範囲の広さも魅力的だったという。


同社には冒頭で触れた全固体電池のほか、事業化の途上にあるコア技術も存在する。それだけ新たな事業開発につながる起点、きっかけもあるにちがいない。最後に佐野氏は今後についてこう語る。

「新事業創出だけでなく、次はそれを推し進め育成していくステージになると考えています。
社会が抱えるさまざまな課題を自分たちの技術で解決していくため、社内で改善すべきポイントはまだまだあると思います。こんなところもまた、小さく始めて大きな成果に結びつけていきたいですね」

マクセルが自社のアイデンティティーとなるような事業を生み出すことで、また日本の技術革新に新たな風が吹くだろう。そんな未来に向け、「HiPro Biz」はこれからも伴走していく。

企業名
マクセル株式会社
設立
1960年9月
従業員
連結:3,956名 / 単独:1,250名 (2024年3月31日現在)
売上
1291億円(2024年3月期)
事業内容
エネルギー、機能性部材料、光学・システム及びライフソリューション製品の製造・販売

担当プロ人材より

『まぜる、ぬる、かためる』というアナログコア技術(デジタル技術だけでは到達しえない複雑で繊細な領域のモノづくりを実現させる、かけがえのない技術)で前進する企業様であり、また社会になくてはならないマストハブ技術を追求する未来企業でもあります。
技術及び品質へのこだわり、顧客ニーズに対する実直さ、B2BorCというポジションは、相対的にマーケティングや財務面での課題となるように思えます。
新規事業開発は、パフォーマンスゾーンとは異なるマネジメント及びマインドが求められる一方、投資的側面があり、製品化までのプロセスや利益創出までには、実験を繰り返しながら学習し前進するEffectuation的思考様式と行動様式も求められます。これを社内において、理解と共感を得ること自体が挑戦となります。
人材育成、組織開発の側面を含め、理論的支援と運用ノウハウに関してできるだけの情報や示唆をご提供することに留意させて頂きました。

登録プロ人材 M氏 会社を良くする仕事を志し経営コンサルタントとなる。大手コンサルティング会社を経て、2003年米国NYで現在の会社を設立。最初の20年間は生産性と組織開発、この20年間は事業開発と人材開発を中心に支援を行う。過去には、海外の大学院教授職も経験。現在、公益法人の代表理事なども務める。

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