サービス導入事例

九州電力株式会社

売上:
1000億円以上
業種:
環境・エネルギー

マーケティング

プロ人材と挑むデータ分析改革  “電力自由化”の荒波の中、九州電力が推進するデータドリブンマーケティング

エネルギーサービス事業統括本部
営業本部
マーケティング戦略グループ
データアナリティクスチーム
  • 畑 昌宏 氏
  • 土屋 祐介 氏
  • BEFORE導入前の経営課題

    2016年の電力の小売全面自由化により、電力業界は競争が激化し、九州電力はマーケティングの強化を迫られた。顧客に選ばれ続けるためには、社内にあるさまざまなデータを活用する必要があることを認識し、これまでの経験則によるマーケティングからデータ重視のマーケティングにシフトする方針を固めた。しかし、当初は、データ活用に関する知見が不足しており、何から取り組むべきか、課題は山積みであった。

  • AFTER導入による成果

    プロ人材の支援により、技術やスキル、分析環境など、データ分析を進めるために必要な課題を整理し、対応。そして、2020年にデータアナリティクスチームを発足。専門的な技術やスキルを体得しながら、従来対応できなかったスピーディーな分析や効果検証など、具体的なプロジェクトを多数進行。機械学習を活用した高度なターゲティングでは、施策の効果を従来の1.5倍に伸ばすなど着実に成果につなげた。現在もプロ人材からの継続的なサポートを受け、データドリブンマーケティングの更なる推進に取り組んでいる。

電力自由化の波を乗り越えるため、新たにデータ分析チームを発足

1951年の設立以来、電力会社として九州エリアを中心に多くの企業活動や市民の暮らしを支えてきた九州電力。
同社は電力の小売全面自由化が始まった2016年、大きな転換点を迎えた。それまでの電力会社を取り巻く環境といえば、大手電力会社が地域ごとにシェアのほとんどを握る状態だったが、電力自由化に伴い通信会社やガス会社など多くの企業が電力事業に参入。顧客が電力会社を選べる時代が到来した。マーケティング戦略グループの畑氏は、当時を次のように振り返る。

「競合他社が付帯サービスをオプションとして提案するなど、顧客の新たな付加価値を提供し始める中、当社も新たなサービスを始めるなど、お客さまへの提供価値を向上させる取り組みを進めていました。一方で、スピーディーなお客さまニーズの把握、サービスの定量評価や継続的な改善など、お客さまに選ばれ続けるための活動について課題を感じていました。長年の営業活動を通して、社内にはさまざまなデータが蓄積されており、課題解決に向けて、これらのデータが活用できないかと考えました」

データ分析に力を入れるという決断は、顧客起点でPDCAサイクルを回していくためにデータ分析が不可欠であるという気づきによるものだったという。こうした経緯があり2020年春、畑氏も所属するデータアナリティクスチームが発足した。当時のチームは、システムに精通したメンバーのほか、営業業務に詳しいメンバーやデータ分析に興味があるメンバーなど、社内公募からの応募者も含め、6人でスタートした。しかし、メンバー全員がデータ分析の素人であり、何から取り組むべきか右も左も分からない状態であった。

そこで、チームメンバーの知見を蓄えデータ分析をマーケティング施策に活かせる水準にまで引き上げるべく、外部のプロ人材に発足したばかりのチームを導いてもらうことになった。
これまでも別のプロジェクトで「HiPro Biz」のプロ人材を活用し、多くの助言を得ていたことが、今回のプロ人材活用のきっかけであった。

知識を蓄え、実装へ プロ人材と共にスピーディーな分析や効果検証を実現

本件を支援したプロ人材のO氏は、これまでに大企業をはじめ、数十社に対してデータ分析のビジネス活用に関するコンサルティングを行ってきた人物。加えて、データ分析に関するコミュニティの立ち上げといった0→1のプロジェクトも行っている同氏は、まさにチームが発足したばかりのデータアナリティクスチームには最適な人材だった。

「データ分析を行う上では、ビジネス、サイエンス、データエンジニアリングという3つのスキルが必要になります。O氏は、この3つのスキルをバランスよく兼ね備えた方で、さらに、それぞれに深い知見がありました。また、多数の実践的な実績もお持ちのため、O氏から分析技術だけでなく、チームビルディングやチームの価値を向上させる成長戦略まで踏み込んでご提案いただけるのではないかという期待感もありました」

2020年にデータアナリティクスチームが発足する数か月前よりO氏は参画。チーム体制検討や分析環境整備、教育計画策定など、チーム発足のための準備を着実に進めていった。
チームが発足し、第1フェーズとして同氏が実施したのが、メンバーの基礎固めだった。同氏のアドバイスのもと、分析に必要となるSQLやPythonといったプログラミング技術を学び、可視化ツールの習得を進めた。半年ほどで、各サービスの獲得や解約に関する傾向分析を実施するなど、実践に落とし込むところまで進めることができた。

一方で、初期フェーズでの集中的な教育や実践を通して、基礎的な分析力を身に付けたものの、その後の取り組みは、順風満帆なものばかりではなかった。分析結果を社内の意思決定に活用させるためには、意思決定者に分析結果を「興味深い」と捉えてもらうだけでなく、「意思決定に役立つ」と感じてもらう必要がある。解決したい課題と分析結果の関係を理解してもらう必要があり、ヒアリング、仮説出し、施策案の検討など、プログラミング以外の対応も重要であった。それにもかかわらず当初は、高度な技術やスキルを身につけることで、これらが解決するのではないかとの誤解もあった。

さまざまな壁にぶつかりながらも、O氏と共に解決方法を模索。業務改善に向けた働きかけや提案など、マーケターとのコミュニケーションを粘り強く、繰り返し行い、社内で少しずつデータ分析が理解され、活用されるようになっていった。
現在では、データに関する部分のみではなく、上流の課題の整理から関係箇所との調整などの重要性をプロジェクトメンバー各自が理解し、一気通貫での取り組みを進めている。畑氏はこう語る。

「試行錯誤を繰り返しながらも自走できるレベルに成長できたことは、データ分析における考え方や、データハンドリングといった技術面などを初期フェーズで徹底的に基礎から鍛え上げたことが大きな要因だと感じています」

メンバー主体でさまざまな分析プロジェクトに取り組みながら、更なる成長のためO氏が行ったことの一つが、機械学習や統計学に関する継続的な教育プログラムの計画や設計だ。過去の実績から未来を予測する機械学習では、例えばあるサービスの加入実績をもとに、今後どのような顧客がそのサービスに加入する見込みが高いか予測することができる。同じくデータアナリティクスチームのメンバーである土屋氏は、このような機械学習の知見を、自身が担当した会員獲得施策にも活かすことができたと振り返る。

「これまでの施策では、必ずしもサービスに興味関心の高いお客さまにご案内をできていたとは言えませんでしたが、データを活用することでサービスへの興味関心が高いお客さまに絞り込んで送れるようになり、お客さまの満足度向上に繋がっています。従来、数種類のデータしか活用できていませんでしたが、機械学習を用いることで数十種類のデータを複雑に組み合わせて活用することができます。O氏には、仮説の立案から設計、ご案内送付後の評価まで、一連の流れを度重なるミーティングも合わせて伴走してもらい、高度なターゲティングを実装することができました」

施策の効果を従来の1.5倍に 会社を牽引するチームを目指す

O氏の先導や伴走により、データアナリティクスチームはいくつもの目にみえる成果を手にすることができた。先述の会員獲得施策においては、従来の方法と比較し、獲得数を1.5倍に引き上げた。施策予算は同じながらも、機械学習によってこれだけの効果を得られていることについて、土屋氏はこう語る。

「O氏の課題の本質を問いかける姿勢に加え専門性の深さも、課題解決に大きく寄与しています。教科書どおりには解けない問題が多い中、豊富な実績に基づく確かな技術や知見によって、的確に解決に導いていただいたことで、大きな成果を上げることができました」

O氏は2025年においても現在進行形でチームへのサポートを続けている。継続的な支援があることで、共に試行錯誤を続けながら、最適解を見つけ出せている。前述の会員獲得施策の他にも、成長したメンバーによって、さまざまなプロジェクトでマーケターの意思決定に寄与する分析が実施されており、施策の効果をスピーディーに検証し、更なる改善につなげている。
また、社内組織のデータ利活用を推進するため、各サービスの状況が一目で分かるダッシュボードの構築、プログラミング技術を活用した業務の自動化や高度化などを進めており、データアナリティクスチームはデータドリブンな活動の起点にもなっている。

O氏の豊富な経験や、俯瞰的な視点からの目的整理、論点の見極めが、データアナリティクスチームの視座の高まりにつながっている、と確かな手応えを感じる畑氏と土屋氏。データ分析によって、従来よりもスピーディーにPDCAサイクルを回すことが可能となった。さらに先の会員獲得施策のように具体的な成果を得られたことで、チーム全体でもう一段階アクセルを踏もうといった気運が高まっていると、畑氏は話す。

「今後は、電力会社ならではの豊富なデータを活用して、既存サービスの改善だけでなく、お客さまにとって価値のある新たなサービスを検討していきたいと考えています。当社独自のデータ分析の手法を確立していきたいですし、そのために必要な専門的な知識を、引き続きO氏にご教示いただきたいと考えています」

いずれは、九州電力のデータアナリティクスチームの知見や手法、アイデアを、社内だけでなく、グループ会社、さらにはビジネスパートナーとなる他企業との協業にも活用し、ビジネスの加速を狙いたいと、畑氏らは展望を語る。

データに基づいた意思決定への移行は、単に時代の流れに対応するだけでなく、顧客理解を深め、より最適なマーケティングを実現する大きな原動力となった。九州電力のデータアナリティクスチームは、これからもデータドリブンマーケティングを深化させ続けることだろう。

企業名
九州電力株式会社
設立
1951年5月
従業員
4,668名(2024年3月31日現在) ※ 従業員数は親会社の就業人員数を記載 連結子会社を含めたグループ全体の従業員数は21,092人、 うち送配電部門の従業員数は3,770人
売上
21,394億円(2024年3月期)
事業内容
電気事業

担当プロ人材より

登録プロ人材 O氏 大手インターネット企業でエンジニアとしてビッグデータ解析、広告データ基盤の構築、データサイエンスを活用した分析プロジェクトなどを経験。その後、福岡にて独立し、電力、通信、鉄道などさまざまな企業においてDX推進、人材育成を支援。ビッグデータ活用、および生成AI活用支援において、高い専門性を発揮している。

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