グローリー株式会社
- 売上:
- 1000億円以上
- 業種:
- 機械・電気製品
システム
20年のシステム改善運動から組織全体のイノベーションへ。現場の悲鳴と経営層の不安を解消し、自立化した組織による改革が進行
グループマネージャー
- 福井 淳 氏
- 村田 純一 氏
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BEFORE導入前の経営課題
長期的な運用によってシステムが複雑化しており、将来を見据えた刷新が求められた。一方であらゆる分析や対策を模索したものの、優先順位や方法論が曖昧で、推進イメージを持てずにいた。
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AFTER導入による成果
プロ人材によるアウトプットイメージの具体化を通じて、組織としての自走力が向上。その結果、現状分析や課題整理が進み、プロジェクトの方向性が明確化するだけでなく、社内のノウハウとしても蓄積された。
複合的な課題を解決するためには、特化型の支援では限界があった
通貨処理機や生体認証のリーディングカンパニーとして、セキュアな社会の発展に注力するグローリー株式会社。同社が運営する情報処理センター「サービスコネクトセンター」では、電子決済の中継を担い、通貨処理機の売上データを集計・加工・配信するなど、決済情報における重要な役割を担っている。
サービスコネクトセンターでは、多様化する電子決済サービスに対応するため、機能の拡張を続けてきた。一方で、市場ニーズへの対応でシステムが複雑化し、運用・保守にも影響が出始めていた。当時の状況について、システム運用部にてグループマネージャーを務める福井氏は、「システムの構造が複雑になったことで、1ヵ所でも触ったときの影響範囲が広がっており、何かを変えることに対するリスクが高まっていました。運用・保守の面でも、業務プロセスの分かりにくさや、業務量の多さに課題を感じていました」と明かす。同社が事業を成長させていくためには、業務プロセスの改革やシステムの刷新を行い、リソースを最適化することで、人材育成にも注力できる体制の構築が求められた。
しかし、業務プロセス改革、システム刷新、人材育成における課題分析は難航していた。3つのプロジェクトを成功させるには、業務プロセスのどこに問題があるのか、システムをどのような状態に変えていくべきなのか、コア業務とノンコア業務をどのように線引きするのかなどを、現実味のある内容に落とし込むことが必要だ。一方で、現場の協力や経営層の理解も得なければならない。同社は課題の分析・整理だけでなく、ステークホルダーを巻き込むための支援も求めていた。
そんなとき、人事担当者からの紹介で出会ったのが、HiPro Bizだ。プロ人材の候補と面談を行う中で、業務プロセス改革、システム刷新、人材育成の全ての領域で豊富なノウハウを持ち、現場と経営どちらの目線も有するF氏が、同社の期待する支援内容とマッチし、支援プロジェクトが発足した。
現場と経営層を巻き込み、プロジェクト方針が明確化
システム刷新、業務プロセス改革、人材育成の3軸でイノベーションを起こすため、F氏との取り組みはスタートした。まずは継ぎ足しで複雑化しているシステムを、どのように構成すべきかの議論から行われた。今ある機能を適切に分離し、システムアーキテクチャを描くためには、システムの課題を整理する必要がある。実際に現場の声に耳を傾けてみたところ、保守業務のやりにくさに関する課題が挙がった。
この課題を紐解いていくと、システムの構成・動作の複雑さだけでなく、「ドキュメント類の不足で業務の標準化が難しい」「データの管理方法の影響でメンテナンスの設定難易度が高い」「そもそも今の人的リソースではオンプレミスでの作業負担が大きい」など、業務プロセスや人材育成にも関わる内容が含まれていることが分かった。
そこで同社は、オンプレミスからクラウドへのシステム移行の計画を練る一方で、コア業務とノンコア業務の整理を進めていった。この業務整理について、システム運用部の村田氏は「時代の流れもあり、全てを自社完結するというこれまでのやり方に限界がきていました。今後、決済ビジネスを拡大していくには、コア業務とノンコア業務を分けたうえで、会社の役割に合わせて、本当に必要なスキルを伸ばすための計画を立てたいと考えていました」と当時を振り返る。メーカーとしてこだわりを追求する反面、ハード交換をはじめとするサーバールームの管理など、アウトソースできる領域も自社で抱えていたのだ。
この課題を解決すべく、同社は現場の従業員とともに、サービスコネクトセンターの将来構想に向けて、どのように課題を解決していくかを話し合った。現状の分析や課題の整理にはプロ人材の考え方を参考にしている。「課題を現場から聞いて、経営層に説明するという点において、ストーリーを持たせるためのアウトプットイメージが教科書のように分かりやすく、課題のまとめ方も大変参考になりました」と、現場と経営層をつなぐ役割としても、プロ人材の支援は効果的だったようだ。
業務プロセス改革では、業務プロセスの可視化・最適化に向けた提案をプロ人材から受けた。「業務プロセスの改善は、どうしても一般論と現場のギャップが生まれがちです。しかし、いただいた提案は現場に沿った内容で自分事化しやすく、私たちの背中を押してくれるものでした」と当時の印象を語る。同社はプロ人材の提案をベースに、独自の業務プロセス改革に着手した。
これらの課題解決に並行して、システム刷新では先行プロジェクトに向けた提案依頼書(RFP)の作成が始まった。プロ人材と共同で作業を進め、ベンダーの回答を得たうえで、先行モデルの利用に取り掛かろうとしている。
プロ人材の思考法を蓄積しながら、自走する組織へ
結果として、3つのプロジェクトは大きく進展した。システム刷新ではシステム構成上の課題を整理し、コストバランスを考慮したうえで実現可能なラインの見極めができ、プロジェクトで進むべき具体的な方向性が見えた。
業務プロセス改革では、既存の標準化プロセスにアレンジを加え、自社に合った内容に落とし込んだうえで、プロセスの改善を図ろうとしている。人材育成では、コア業務とノンコア業務を切り分け、会社としてどのようなスキルを伸ばしていくかという役割定義に沿って、人材育成の計画を練っているところだ。
全てのプロジェクトにおけるプロ人材の支援に関して、「引き出しの多さにも驚きましたが、自走するための支援が大きかったと思います。私たちが何をすれば良いのか迷わないように、具体的なポイントを教えていただけたおかげで、プロ人材の考え方を学びながら、実際にやってみるという経験も得られました。現場だけの取り組みだとこうはいかないので、きっと長引いて終わらなかったと思います。また、現場と経営層どちらの目線も持ち合わせていて、そのバランス感が抜群でした。現場と経営層にある溝をどのように埋めていくのかに対して、双方が納得するための方法を提案していただけました」と同社は評する。これまで数多くのアイデアを見てきた同社にとって、具体的な改善方法とセットで提案してくれるプロ人材の存在は、新たな一歩を踏み出すための不安を取り除いてくれたようだ。
そして、今回のプロジェクトは、同社の他部門にも影響を与えた。プロ人材との協業による成果を耳にした他部門の従業員と接する機会が増えたことで、部門間での連携を強化するためのきっかけにもなったのだ。
本プロジェクトで培った経験や機会を活かし、同社は3つのプロジェクトを次のフェーズへと進め、さらなる改革を実現していく。
- 企業名
- グローリー株式会社
- 設立
- 1944年11月(1918年創業)
- 従業員
- 3,506名(グループ連結:10,677名)※2022年3月31日現在
- 売上
- 2,265億円(連結売上高)※2021年度
- 事業内容
- 通貨処理機・セルフサービス機器の開発・製造・販売・保守、電子決済サービス、生体認証ソリューション、ロボットSI等の提供
担当プロ人材より
お客様の求めておられるゴールは、単にインフラ基盤の再構築ということではなく、品質の抜本的な向上、業務プロセス革新、人材育成改革など、事業・組織・人全体のイノベーションであることを認識いたしました。プロジェクトの皆様は、的確に課題を認識され、それらを解決できるレベルの高い技術者集団であるにも関わらず、どう進めてよいかが見えなくなっている状態でした。私がご支援したことは、皆様の中にある課題とその解決策を引き出すために、40 年に及ぶ現場での実務経験・ノウハウをお客様の実態に合わせた形での実践事例と具体的な進め方を全体視点でご提示し、そのプロセスをご一緒に伴走するというものでした。お客様の心の奥底にある本質的な課題や具体的な解決策が、ご提示したことがヒントとなって溢れ出すことで、その結果がお客様のものとなり、目指すイノベーションに繋がるものと確信しております。
登録プロ人材 F氏(60 代) 技術士(情報工学)、キャリアコンサルタント。これまでの商品研究開発、カスタマーエンジニア、IT 関連ビジネス、社内情報システム、専門職大学院教員など、40 年にわたる豊富な実践経験とノウハウを、情報システム関連のプロジェクトや人材育成分野で「ひと」にお伝えすることを使命に支援を行っている。