サービス導入事例

福岡県醬油醸造協同組合

売上:
100億円未満
業種:
生活用品

新規事業

異業種発の化粧品開発プロジェクト。そこで出会った新たな可能性と、改めて気づいた本業としての価値

福岡県醬油醸造協同組合
  • 理事技術部長/工学博士 植木 達朗 氏
    製造部部長 井澤 圭史 氏
  • BEFORE導入前の経営課題

    業界全体の市場規模の縮小傾向から、新しい事業の柱を模索。食品業界から化粧品業界への異業種参入のきっかけとなるユニークな素材の研究は進んだが、新商品開発のための人材や知見が皆無だった。

  • AFTER導入による成果

    化粧品のブランディングから製造、販売戦略まで一気通貫でディレクションできるプロ人材との協業により、独自性の高い化粧品のスピード開発に成功。今後は販売ルートの構築なども視野に入れる一方、本プロジェクトを通じて本業に対する自信を現場が取り戻す契機にもなった。

醤油から生まれた高機能成分。その可能性に活路を見出すも…

地元醤油メーカー出資の下、主に生揚醤油を製造する福岡県醤油醸造協同組合。高品質な醤油づくりに取り組んできた一方、近年日本全国の醤油消費量は減少しており、業界全体が縮小傾向にある。

醤油以外に柱となる事業の構築が求められる中、技術部の植木氏が注目したのが、醤油の絞りカスから発見した、“天然ヒト型セラミド”。バイオ系研究所との共同研究により、通常の化粧品に配合される合成セラミドと比べ、保湿力とバリア機能に優れていることが実証された。

「このセラミドを使った化粧品は、いいものになるだろうという予感がありました。しかし、組合に所属する従業員はその多くが男性で、化粧品業界に明るい人材がいませんでした。優れた素材を使った新商品企画をしようにも、そのノウハウがなく、市場ニーズも分からない。どのように流通させるかの想像もつきませんでした」

当時をこのように語る植木氏。新事業を立ち上げるにあたり人材不足面の課題を克服すべく、組合内だけで試行錯誤するのではなく、化粧品の製造からブランディング・流通まで一気通貫でディレクションできる外部の専門家が必要であると判断した。その過程において「HiPro Biz」へ依頼を決めた理由を、製造部の井澤氏はこう語る。

「これまでにも外部からアドバイスを受けたこともありましたが、業務の一部分のみへのアドバイスに留まっていたり、業務そのものへの理解が不足していたり、なかなか満足する結果が得られませんでした。その経験もあり、今回事業をご一緒する方の専門性の高さと経験領域の広さにはこだわろうと決めていました。当時私たちの化粧品経験知識はゼロに近いものだったので、化粧品のある一部分にだけ特化した人材ではプロジェクト全体を前に進めるのは難しいだろうと考えていました」

これまでの経緯や課題感などをきちんと伝え、「HiPro Biz」からの提案で出会ったのが、プロ人材U氏だった。
決め手は、国内大手化粧品会社や外資系グローバル企業での化粧品および健康食品に関する長年にわたる経験、さらに商品開発だけでなくマーケティングやブランディング、販売戦略に至るまで幅広い分野において高い視座を持っていたことだった。

「U氏は、一から商品開発に携わり、市場の状況を把握し、流通を構築してきた経験をお持ちでした。化粧品開発の入口から出口まで、さまざまな分野の知見を持つU氏と出会えたことで、商品化への道筋が見えました」と井澤氏。

くわえて、「HiPro Biz」コンサル担当とのコミュニケーションがスムーズだったことも、安心して依頼できる理由となった。自分たちが目指すビジョンを共有し、求める人材の能力について遠慮なく希望を伝えられる関係性にも大きな魅力を感じていた。

醤油づくりチームによる初の化粧品開発プロジェクト。寄り添い続けたプロ人材の存在感

商品開発を始めるにあたり、プロジェクトチームが立ち上がった。主な参加者は、組合員である地元醤油メーカーの経営者を中心とする女性たちだ。幅広い世代のアイデアを取り入れたいと、関係者の家族にまで範囲を広げて編成した。

U氏は、新しい化粧品のコンセプトを作り上げるワークショップを月に1度のペースで実施。まず自分たちが求める化粧品にまつわるキーワードを抽出し、必要な機能を列挙した。そしてイメージ喚起させるビジュアルアイデアを持ち寄り、さらに購入ターゲット層を見える化。回を追うごとに、商品のイメージが具体化していった。

ワークショップ自体はこれが初参加の人も多く、最初は手探りで始まったが、U氏のファシリテーションにより、誰もが発言しやすく活発な雰囲気の中で進行した。
一方でU氏は、まだ形のないものを生み出すという挑戦に取り組むメンバーに、考えるためのヒントを提供し、アイデアが生まれる過程へ丁寧に寄り添った。

このワークショップに植木氏と井澤氏は全て同席。井澤氏は、「初めはこんなに多様な意見をどう集約するのだろうとハラハラしましたが、U氏はメンバーから生まれたアイデアのエッセンスを上手く組み立て、消費者が心惹かれるワードを拾い上げてくれました。どんどんイメージに形が与えられていく様子はさすがでした」と振り返る。

一方、植木氏が特に印象に残っているのは、成分が元来持つ強みをU氏が上手く言語化し、商品のコアバリューを確立させていったことだ。
天然ヒト型セラミドは「環境の変化やストレスに強い」という特徴を持つ。その言葉から工学博士でもある植木氏が想起するのは成分の構造式だったが、一方ワークショップに参加した女性たちが思い浮かべたのは日々の生活や乾燥や紫外線などの環境要因だった。

「同じ言葉でも、思い浮かべるイメージが全く異なることに驚きました。化粧品には、化学と生活が同居していることを、改めて実感しました。新商品の魅力として、この双方を伝えなければなりません。U氏はハブとなって化学面と生活面を行き来しながら、商品のコアバリューを『環境やストレスに負けない乾燥角質をケアする高濃度天然ヒト型セラミド配合のエイジングケア』と、しっかり固めてくださいました」と植木氏。

ブランドの開発は、約5ヶ月という異例のスピードで進行。パッケージデザインにはU氏の人脈の中から美容に定評あるデザイナーが携わり、年齢肌をターゲットとした化粧品に、ふさわしい高級感と、醤油由来の成分をイメージさせる和のテイストを盛り込んだ。

その後、サンプル配布や使用感に関するヒアリングを経て、いよいよ一般販売が近づいている。U氏とは引き続きブランドサイトやECサイトの制作、販路の構築で協業する予定だ。

プロ人材からの“太鼓判”が、本業の自信を取り戻すきっかけに

本プロジェクトを通して、加入組合員である醤油メーカー内にもさまざまな変化が生まれている。醤油メーカーの若手経営者たちが集まる会合では、積極的に関連する質問が投げかけられ、その関心の高さがうかがえる。

「今回のプロジェクトは、業界全体の閉塞感に風穴を開ける存在として受け取られているようです。作り手自身が醤油醸造の魅力や未来の可能性を再確認することができ、本業の醤油づくりそのものもポジティブに捉えられるようになったと感じます」

そう語る植木氏。これからトライアルキットの販売へ乗り出す際に、「元となる醤油そのものの魅力を訴求してはどうか?」などの案も出ているという。

一方で井澤氏は、化粧品分野での造詣を深めたいと、日本化粧品検定の資格を取得した。

「醤油を作り始めた原点を思い出します。知れば知るほどもっと肌の組織や有効成分のことを知りたくて、勉強を始めました。受験会場では女性ばかりの中、僕一人男性ですが、新たな学びの機会を得て、日々充実しています」と笑顔を見せる。

そして何よりの収穫は、改めて醤油の魅力に立ち返ることができたことだ。

「醤油業界そのものが縮小している中で、私たち自身が少し消極的になっていたのかもしれません。当初は、新しい化粧品にとって醤油由来であることが果たしてどこまで特長になるか確信が持てませんでした。
でもU氏から、『醤油から生まれた成分であること。これは他商品にはない大きなアドバンテージです』と太鼓判を押され、メンバーにとっても大きな自信になりました」と井澤氏。

U氏によるワークショップの最中も、醤油のすばらしさに言及するメンバーが多かった。商品名は、「美肌醤潤ウルオイン」。「醤」の一文字にもその思いが込められている。

今回その主役となった天然ヒト型セラミドは、醤油醸造に不可欠な麹菌により生み出され、この麹菌自体、日本人は平安時代からずっと使い続けてきたものだ。

「麹菌は日本酒、味噌、酢など多くの発酵食品にも使われています。ご先祖さまたちは、微生物の働きまでは知らなかったと思いますが、体にいいものだという認識はあってそれを後世に伝えてきたのでしょう。その財産をこの現代において存分に活かしていきたいと考えています」

時代をこえた思いを語る植木氏。U氏とともに挑戦したい今後の展望も膨らんでいる。
例えば、保湿機能の高さを活かしたハンドクリームやシートパックなどさらなる商品の充実を図りたいというのも直近の目標だ。さらにサプリメント開発なども視野に入れ、いずれは協同組合の醤油醸造事業における現収益の約半分に届く金額を化粧品事業で担いたいと考えている。


本業が苦しい状況下、新領域の模索を試みる中で出会った新たな知見。
試行錯誤しながらも、プロ人材とともに進めてきたプロジェクトをきっかけに、新たなビジネスの可能性と出会うだけでなく、既存事業の魅力や素晴らしさを再確認、大きな自信にもつなげられる貴重な機会となった。

企業名
福岡県醬油醸造協同組合
設立
1966年4月
従業員
47名
売上
非公開
事業内容
・製品(生揚)
濃口生揚、再仕込生揚、淡口生揚、丸大豆生揚、ON生揚、その他
・加工調味料
ぽん酢しょうゆ、めんつゆ、だしの素しょうゆ、白だし、焼肉のたれ、ドレッシング、減塩しょうゆ、生揚加工品、その他

担当プロ人材より

目標は異業種から化粧品の新規事業立ち上げでしたので、初年度は主に製品、流通、薬機法まで業界慣習およびセールス・マーケティング知識を習得して頂きました。並行して事業再構築補助金申請のため、中期事業計画策定を支援致しました。化粧品企画・開発の段階では、約90社の蔵元から構成される協同組合組織の利点を活用し「地方創生化粧品プロジェクトチーム」を組合組織内につくって頂きました。参加の女性経営者の皆様には、化粧品ユーザー視点から屈託ない様々なご意見を頂き、企画・開発へ反映する事ができました。具体的にはワーキングセッションにてブランド名、商品コンセプト、ブランドの世界観を構築。その後、パッケージデザイン評価、実売製品の長期使用評価にご協力頂き、最終製品が完成しました。日本初となる独自成分を含むMade in Japanの化粧品が今後、世界市場へ向けて発売できる支援をさせて頂き大変光栄に存じます。

登録プロ人材 U氏 大手グローバル企業で30年以上にわたり、化粧品および健康食品の処方開発、商品開発、営業、マーケティング、ブランディング、広告宣伝、海外事業開発に従事。ブランドデイレクター、取締役事業開発責任者として数多くのヒット商品を市場へ送り出し、事業を拡大させる。2019年会社を設立。幅広い経験・知識・人脈から化粧品・機能性食品・OTC医薬品分野へゼロから参入したい企業、および事業を再構築したい企業を多数支援している。

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