橘 祐史
- 得意分野:
- 新規事業、
- 研究開発
企業のもつ知財の価値を最大化させ
ビジネスの拡大や競争力の源泉として昇華させる
PROFILE
旭化成株式会社に入社後、繊維事業本部を皮切りに人事部門、企画管理部門、総務部門などを経て、2002年から知的財産部に在籍。商標及びドメインの出願管理業務やビジネスモデルの出願、ライセンス業務などの実績を積んで特許関連のノウハウを蓄積、弁理士試験への合格を果たした。その後、2010年にNAV国際特許商標事務所を設立して独立。弁理士業務を行う一方で、2014年には知的財産をベースに経営コンサルティングを行う株式会社知財ビジネスリンクを設立し、企業に対する知財をベースにした経営コンサルティングを提供している。
経営企画部と知財部でキャリアを積む中で
特許や契約に関する専門性が高まった
旭化成株式会社の経営企画部門などで仕事をしたあと、知的財産部門に移って重ねたキャリアが現在の私のノウハウのベースとなっています。そこでは主に、国内外の企業とのライセンス業務を担い、特に台湾の企業との現地合弁会社設立に関わった際には、特許権のライセンス契約締結後、ノウハウ供与のために海外に駐在。総務部長として相手会社および親会社との折衝窓口として、合弁会社を軌道にのせるべく、原料の購買契約の締結から合弁会社の労働規約の作成まで企業設立のために力を尽くしました。
そして知財部でのキャリアを積むなかで、特許権や契約業務に関する専門性がおのずと高くなり、弁理士試験に合格したことが転機になりました。特許に関するビジネスの拡大など、自分の好きなことを仕事の中心にしたいという思いから、2010年に弁理士事務所を開設して独立。さらに、特許業務とコンサルティング業務は同じ事務所ではできないことから、新たに特許や商標に関するコンサルティング業務をする法人を別に立ち上げました。
現在は株式会社知財ビジネスリンクの代表として、特許権を中心にしたビジネスマッチングの業務を行う傍ら、知的財産を基礎とした経営コンサルティングを企業向けに提供。また、NAV国際特許商標事務所の代表弁理士として、特許権および商標権を取得するための出願の代理業務を行っています。特許権については、これまで国際出願を含めて約60件、商標権について約300件の出願を行い、現在も継続中です。
こうしたキャリアから、知的財産権法(特許法、商標法、著作権法、不正競争防止法)に関する深い知識と経験を有しており、それを活用するための経営マネジメントを提供できます。さらに、これらを融合させたコンサルティングによって、企業の知的財産に新たな価値を生み出していけるのが私の最大の強みです。現在、「つねに経営者に寄り添うこと」をモットーに、HiPro Bizからの依頼案件を含め、多くの企業様に知財コンサルティング支援を行っています。
特許権は重要な
「経営のマネジメントツール」になり得るもの
HiPro Bizからの依頼事例のひとつに、資源・素材業界の大手企業へのコンサルティング案件がありました。同社は一部上場のメーカーにふさわしく、数多くの特許権を保有する知的財産に富んだ企業でした。ところが、知財関連のノウハウをもつ人材が乏しかったこともあり、せっかくの特許を十分に活用できていない現実があったのです。そこで、特許の価値を実際のビジネスに活かしていくためのコンサルティングを提供することが主なテーマとなりました。
支援内容としては、特許それぞれの価値の算定を詳細に行うことから始まり、どの特許を活かすか、何を捨てるかの判断を個別に行うマッピングを実施。ビジネスとしてどう活用していくかの戦略を提案していきました。また、価値算定の方法を社員にレクチャーする勉強会を開催するなど、特許権を収益につなげるためのノウハウの共有を進めました。その結果、次年度の予算に特許の価値算定に関する額が組み込まれたのは大きな成果の一つでした。つまり、社内の特許に対する捉え方が変わり、ビジネスとしての価値を生むという事実が再認識され、経営戦略の中に知財の活用が明確に位置付けられることになったわけです。
こうした事例を見るまでもなく、特許権のもつ本来の機能や意味合いを、会社がきちんと理解できていないという状況は多々あります。単純に、特許権イコール“排他権”であるという認識だけの経営者がまだまだ多いのです。そうではなく、特許権は大切な「経営のマネジメントツール」です。経営戦略の策定や実行についての重要なツールになるとともに、企業の競争力の源泉になり得るもの。それを経営者が理解して価値の収益化を図ることで、自社のビジネスに大きな広がりが出てくることをぜひ知ってほしいのです。
以前私のほうで、ある大手企業の保有する特許権の価値を独自で試算してみたことがあります。結果に驚きましたが、それはもう凄い金額になりましたよ。特許にも多くの種類があり、価値の大小で序列ができます。まずは正しい価値算定を行った上で、上位に位置するものをマーケティング活用していくと良いのです。ぜひ発想を変えて、守りではなく攻めの意識で特許を活用していくことを考えてほしいと思いますね。
アドバイザーというよりは、
ビジネスパートナーの立ち位置で
私がいつも大事にしていることは、特許を得ることや持つことが、お客様のビジネスにどんなメリットを与えるのかを明確にしてあげることです。特許権は持つだけでなく、活かすもの。加えて、得られるメリットは何なのか。そこが企業のいちばん知りたいことだと思いますから。
だからこそ、お客様と一緒に成果を追い求めていくような関わり方――アドバイザーというよりは、ビジネスパートナーという立ち位置が近いのかな、と思います。外から指示していく、というよりは、実際に会社のなかに入って、同じ立ち位置で仕事をしていくというスタンス。自分の好きなビジネスに携わっていけるわけですから、お客様の立場に寄り添って、お手伝いしたい…という気持ちなんですよ。
今後は、現在の弁理士事務所の業務と、知財マーケティング会社によるコンサルティング業務のほかに、特許などの知財を資金化できるような、新たな仕組みづくりを担う会社を立ち上げたいと考えています。たとえば、企業のもつ知的財産を金融担保にすることを可能にするようなビジネス。まだ明確なモデルは確立できていないのですが、今後社会的なニーズは必ず高まっていくでしょうし、特許などの知財をお金に換えられる社会のスキームを新たに創りたいと考えているのです。投資先としての知財のプレゼンスを、さらに高めていけるような知財のインフラづくりを進めたいと思いますね。