長嶋 淳
- 得意分野:
- 購買・調達
人と人の結びつきから生まれる
良質の情報で利益を創る、調達・購買コンサルタント
PROFILE
東京電力の子会社である東電工業株式会社(現・東京パワーテクノロジー株式会社)に入社後、電気系技術職として火力発電設備の設計積算・工事管理業務等に従事。その後、東京電力の組織変更に伴い事務職に職種変更。業務グループにて工事受・外注、資材購入の交渉担当を18年にわたり経験。さらに、契約部の部門立ち上げや部門マネジメントに携わり、各部門での原価低減委員、親会社・子会社で構成するコストダウン委員会委員としてコスト削減にも貢献。培ったノウハウを活かすべく、2017年に退職して個人事業主として独立。
調達・購買の仕事は、人との
信頼関係の中で成り立つもの
これまで長年にわたって調達・購買部門でキャリアを積んできましたが、私が考える調達の本質とは、「人と人の信頼関係」にあると思っています。私は最初に、東京電力の子会社である東電工業株式会社に入社して、技術職として施工管理や技術管理に携わりました。その後、親会社の組織変更に伴って事務職に職種を変更。業務グループにて外注・資材調達を担当し、さらに契約部門の新規立ち上げと専業の調達実務を8年間経験しました。この間に、社内や取引先を含めて多くの方々と出会い、調達・購買の仕事は、まさに人との信頼関係の中で成り立つものだという思いを強くしてきたのです。
調達は物品の購買であるのはもちろんですが、それ以上に人と人との関わりや結びつきがあってこそ、現場に大きなメリットがもたらされるもの、それが調達という業務の基本であると私は感じています。
やがて、自分が現場で培ってきたこうした思いや、調達のノウハウについて、若い人たちに伝えていきたいと考えるようになりました。奇しくも、自身の役職が上がるごとに管理業務に忙殺され、本来やりたい現場の仕事が遠のいていくもどかしさもありました。加えて50歳が近くなり、学生時代の友人の独立や起業が相次いだことも大きかったですね。そうした状況の中で、“人と人”のつながりを軸にした、調達という仕事の本質をもっと広めていきたいと考えて、2018年に独立したのです。
従来の取引先や製品が一番良い、
という安易な思い込みを捨てる
たとえばインフラ系の企業などは設備の維持やメンテナンスを行う上で、必要な部品1個1個について、それぞれ違うものを購買しているケースがあります。私はプロ人材として、調達業務でのコストダウンの提案を行っていくわけですが、こうした点の改善案を示したとき、担当者に「そんなことできるの?」と驚かれることが少なくありません。それだけ調達という分野は、従来からの固定観念に縛られてしまっていることが少なくないのです。
用途によって型番が指定されたA社の部品を購入する際、機能的にはそう変わらないで、より安価なB社やC社の製品が存在することは当然あり得ます。その際には、従来の固定観念にとらわれず、価格や機能の比較を丁寧に行った上で、BやCの部品を購買するメリットについても説明していきます。A、B、C各社の製品について、自身で収集したデータを加えて相対表を作成し、分かりやすく提示。それによって新たな気付きを得ていただくとともに、従来の固定観念にくさびを打ち込んでいくわけです。
大きなプラントのほか、町工場であってもそうなのですが、それまでの取引先や購買製品が一番良いものであるという思い込みは強いものです。「この業者とは長い付き合いで、欲しいときにすぐに持ってきてくれる」という間柄や、顔なじみだから安くしてくれているだろうという思いもあるでしょう。でも実際には、対応も含めてもっと良い業者というのは探してみると案外あるものです。全国に視野を広げれば、同程度の品質でありながら、価格が安く、サービスの良いものはいくつも存在するかもしれません。
たとえばあるプラントを扱う会社で、長年関東の会社から鉄板の購買を続けている会社がありました。鉄板の素材の価格はどこでもそうは変わらないだろうし、加工した鉄板を運ぶことを考慮すれば、関東圏内で買ったほうが割安のはずと考えてその業者と取引してきました。ところが実際に現場の情報を集めていくと、実は大阪にある専門業者のほうが、素材も加工も安価で、輸送運賃を含めても大きなコストメリットがあることが分かったのです。現場からの予算提示された金額から、実際の費用その半分以下の額で済むことに。こうした例は、まさに枚挙にいとまがありませんね。
調達・購買の業務で重要なのは
自ら動いて情報収集に努めること
かつて私は、東京電力の子会社に在籍していた時代に、火力、原子力、土木・建築各部門での原価低減委員を務め、親会社・子会社で構成するコストダウン委員会契約部責任者として、方策を提言・実行してきた実績があります。そこでは調達の仕組みの改善によって、約数十億円のコストダウンを実現しました。また親会社も含めた、前年比から大幅なコストダウンにも貢献。従来の固定観念に少しメスを入れるだけで、これだけのコストメリットを生み出すことができるわけです。
その意味でも、調達・購買の業務で重要なのはやはり情報収集です。私の場合、調達部門を通じて培ってきた、エネルギー業界や素材メーカー、事務用品や通信機器、化学薬品など、多業種での豊富な人脈ネットワークがあります。それを存分に活かすなかで、対象となる企業の業界動向や、素材の値動きに関する生きた情報を集めているんです。加えて、それぞれの業界の展示会等に足を運び、生の声や空気を感じるよう努めています。
こうした情報を活用しながら、それまでの固定観念に風穴を空け、新たな購買の流れをつくるために、お客様に納得いただける資料を用意します。その結果、「なるほど」と納得してもらえる場面を作り出せるのは、プロ人材としてとてもうれしいもの。こうした購買・調達の業務を通じて、さまざまな人脈ができあがっていくのは楽しいですし、有意義な情報をお客様に伝えていける喜びがこの仕事にはあります。
キャリアの中で自ら培ったノウハウによって、お客様を笑顔にできるのがプロ人材の仕事です。すごくやりがいを感じるとともに、自分がこれまで長く経験してきた調達・購買のノウハウ、そして自らの人脈の中で勝負していけることが、今はすごく楽しいですね。